やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ   作:上代わちき

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七話「G6撤退支援」

 

 

 

 やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ。

 

 

 今回はベイラムからウォッチポイント探査の仕事を受けたよ。

 要するに地下に潜ってコーラル集積所を探せってお話だね。

 

 

 

 まず最初にネペンテスをもぐもぐして、降下させたガレージヘリでぐっすりした後エンフォーサーをもぐもぐして、またぐっすりした後無人ACをもぐもぐしたよ。

 時間制限程度でどうにかなるほどボクは弱くないってもんだい。

 

 今は、未踏領域を前にベイラムからストップがかかってるってところだね。

 なんでも、後から追い上げてくるアーキバスの迎撃に専念してくれってことらしいねぇ。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 今ベイラムはかなりの劣勢に追われている。

 

 すべてのきっかけは、ボクが必至こいて生かしたナイルさんの謹慎騒動。

 ウォッチポイントの探査依頼をボクに取り付けてくれたのを最後に、上層からいきなりよくわからない罪状をでっちあげられて動けなくなっちゃった。

 

 

 ナイルさんだけじゃない。

 イグアスもヴォルタ君も連絡がとれない。

 G3の不穏っぷりを考えると、今レッドガンでまともに動けるのはミシガンさんとレッド君だけだ。

 

 

 

 

 一方で、他勢力はもう露骨に対ベイラム同盟を築いている。

 アーキバスを中心に、いろんな勢力が結託して後ろからベイラムを襲ってる。

 

 ベイラムはボクの壁越え介入で勢いづいて、そのままの流れでここまで勢力を伸ばしてきたからね。

 そりゃアーキバスからすればなんとしてでも勢いを削ぎたいんだろうねぇ。

 

 

 

 一応ボクの方で、じいじと一緒にホーキンスっていうヴェスパー番号付きを伏撃しているが。

 アーキバスもアーキバスでどこかから仕入れたステルス機でベイラム部隊への奇襲を繰り返している。

 

 

 

 良くない流れだ。

 このタイミングでナイルさんが謹慎させられたのにも、なんとも言えない流れを感じる。

 

 かなり大きい何かが、ベイラムを負かしてアーキバスを勝たそうとしている。

 そういう感じだ。

 この具合だと、その大きい何かはベイラムに潜り込んでレッドガンの足を引っ張ろうと上層部を煽っている……そんな邪推すらできちゃうね。

 

 

 

 厄介だ。

 こっちはただの独立傭兵で、そういう盤外戦略をとられるとまともに身動きが取れない。

 ボクが介入できないところから、ベイラムそのものが泥船に作り変えられている。

 

 

 

 おそらくRaDはそういうアーキバスの流れに乗ろうとしていて、表にこそ見えないがアーキバスを支援しているようだ。

 ブルートゥを生かした件も相まってか、完全にこちらと敵対している形だね。

 何気に例の少年も、RaD側のスナイパーと一緒に封鎖機構の『アイスワーム』撃破を成し遂げて、その実績で地上とはいえアーキバス方として活動しているみたいだし。

 

 

 

 

 それはさておき。

 

 他方でルビコン解放戦線は、ウォッチポイントの件と前後して途端に動きを見せなくなった。

 一番最初に解放戦線へ取り次いでくれたラスティも、全く音沙汰なし。

 この調子だと、コーラル争奪戦からリタイアの流れだろうねぇ。

 生憎ボクには関係ないから、同情はしてあげないけど。

 

 

 

 

「やぁ、無事かな? レッド君」

「アルノさん?!」

「うんうん。けがはなさそうでアルノさんは安心だ。ここはボクが受け持つよ」

 

 

 この日は、地下に停泊したガレージヘリでタバコ片手にゲームしてた。

 その時に謹慎中のナイルさんから、非公式ながら仕事の依頼が舞い込んできてねぇ。

 

 内容としてはレッド君の部隊が大変だから、救援に言ってくれって奴だ。

 だからこうして急いできたわけだ。

 

 

 

 

「気を付けてください……こいつら、姿を消してきます!」

「つまりスキャンの出番だね、わかるとも」

 

 

 スキャンを駆使して、レッド君を襲っていたステルス機数機を見つける。

 見つけたら、そこへ容赦なくミサイルと拡散バズーカをぶっぱだ。

 

 もしそれでも生きてたら、今度はガトリングでダンマクドウをお見舞いするのみ。

 勿論重ショとキックのチンピラコンボも忘れずに。

 

 

 

 

「あのステルス機どもが、あっという間に……!」

「ぼやいてないで早く撤収したげて。ナイルさん、心配してるから」

「副長が……?! わかりました。アルノさん、この御恩はいつか必ず……」

 

 

 

 …………。

 今、少しチリっとしたね。

 

 これは、まずい奴だ。

 

 

 

 

「っ?! 増援?!」

「……あれもボクが受け持つ。君は、今すぐここから離脱するんだ」

「アルノさん?」

「あれは……少し集中しないとまずいかもね。頼む、行ってくれ」

「……わかりました。どうかご武運を」

 

 

 先にレッド君をMT部隊ともども撤収させる。

 

 勿論突然現れた増援はそれを追いかけようとするけど、その前にボクが立ちふさがる。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 増援は一機。

 青い火を吹かすACだね。

 

 見た感じ、以前噂になったシュナイダー製の試作軽量四脚型だね。

 装甲を削いだ空力特化型で、速度こそ馬鹿にならないけどパイロットの人命は度外視しているって奴。

 

 

 

 最初に話を聞いた時はとんでもなく笑えたものだけど。

 こうして相対すると、まるで化け物みたいで何かが気持ち悪いな。

 

 はっきりいって、笑えない。

 

 

 

 

「そこにいるのは……誰だ?」

「君は……いつかの第四隊長だね」

 

 そのACに乗っていたのは。

 いつからか音信不通になっていた、ヴェスパーの第四隊長だった。

 

 

 V.Ⅳラスティ。

 AC『スティールヘイズ・オルタナティブ』。

 

 識別曰くそれがあのACの名前で、彼の状態を物語っている。

 

 

 

 

「私は……ベイラムを……消さなければならない」

 

 

 彼は、四脚特有のホバーモードを起動してボクの頭上を陣取った。

 

 四つ足を変形させて空中を飛ぶそれは、酷く速い。

 だが、アリーナデータで見た彼の速さとは、まるで違う速さだ。

 

 

 

「企業の命令を……コーラルを……障害は、すべて消す……」

 

 頭上からバーストハンドガンとバーストライフルの弾幕が降り注ぐ。

 プラズマミサイルのおまけつきだ。

 

 なんとか逆関節特有の機動力でいなしていくが、それ以上に奴の速度が速すぎて振り切れない……!

 

 

 

「私は……何に、なった……? 私は……なにかされた、のか……?」

 

 だから被弾を覚悟で奴の上までジャンプして、拡散バズーカで思いっきり痛打を叩きこむ。

 その衝撃でスタッガー状態まで追い詰めたが、追撃する前にアサルトアーマーを展開されて無理やり後退させられる。

 

 

 

 

「戦友を見つけなければ……今のままでは…………なんとしてでも、我々の戦友を……見出さなければ……!」

 

 

 酷い声だ。

 明らかに、ラスティはまともな状態じゃない。

 

 アーキバスには、ファクトリーとかいうろくでもない施設があると聞いたことがある。

 人間をACに組み込む部品に加工して、懲罰部隊感覚で使いつぶせる玩具へ仕立て上げる工場だそうだ。

 

 

 この感じだと、ラスティもその被害にあったのかもしれない。

 

 以前の感じだと、ラスティと解放戦線は何らかの形でつながっていて。

 アーキバスからすれば背信行為もいいところだっただろうから、ファクトリーの実験体にする理由には困らなかっただろうねぇ。

 

 途中から解放戦線の仕事がボクの方に来なくなったのも、案外それが絡んでるのかも。

 

 

 

 

 

 それにしたって、これは酷い。

 

 

 

 

 

「私は……何を間違えた……?」

 

 

 

 ラスティの末路は、あっけないものだった。

 

 

 また変形ホバーモードで頭上からバーストハンドガンとバーストライフルの弾幕を降り注がれて。

 今度はこっちがスタッガーに追い込まれた。

 そこをレーザースライサーで追撃しようとしてきたから、今度はこっちがアサルトアーマーを展開して奴にクリーンヒットさせた。

 

 後は、いつものように重ショットガンで奴の姿勢を崩し、逆関節を使った超強化キックで吹き飛ばしておしまいだ。

 

 

 

 もしアリーナで使っていたような二脚なら、こうまであっさり片付かなかっただろうね。

 間違いなく、四脚を振り回すよりは二脚の方が動きのキレが違っていた筈だ。

 

 まるで、翼をもがれた鳥。

 あるいは、口だけなく足も潰された狼。

 

 

 そんな印象の、機体だった。

 

 

 

 

 

『アルノさん……どうか返事を、アルノさん!』

「聞こえているよ、レッド君。ひとまず、こっちは片付いた」

 

 

 増援がないことを確認してから、タバコに火を点ける。

 そして一服して落ち着いてから、通信に応じる。

 

 レッド君の声は、やけに焦燥に満ちていて。

 すぐ、タバコの味がわからなくなった。

 

 

 

 

 

『副長から連絡がありました……。総長が……ミシガン総長が。転んで、死にました……!』

 

 

 

 レッドガンの総長、ミシガンさんの死。

 それを聞いて、ボクはようやく悟った。

 

 今回の話は、陽動だ。

 できうる限りの工作でミシガンさんを他のレッドガンやAC乗りから孤立させ、彼へ一気に火力を集中させて袋叩きにしたんだ。

 

 

 

 あの人の死は、ベイラム陣営にとって大きすぎるもの。

 完全に巻き返されたといっていい。

 

 

 

 ACや戦力としてはまだベイラムの方が盤石だが、根拠のないカンがこの先の未来を予知している。

 ベイラムは、もう終わりだ。

 

 

 




スティールヘイズ・オルタナティブ
ファクトリーで『加工』されてしまったラスティが駆る、新型の軽量四脚AC。
武装はバーストハンドガン・レーザースライサー・三連プラズマミサイル・バーストライフル。
フレームは、シュナイダー製の試作パーツ「LAMMERGEIER」シリーズで統一。
ブースターはシュナイダー製瞬発力特化型の「ALULA/21E」、FCSはファーロン製の中近距離用モデル「FCS-G2/P05」、ジェネはアーキバス製軽量向けの「VP-20S」。

基本的に空中ホバーモードを維持し、並外れた機動力で接近しては相手の頭上に張り付き、バーストハンドガン・バーストライフル・プラズマミサイルの弾幕を降り注ぐ。
相手がスタッガーにまで追い込まれたなら、レーザースライサーで追撃する戦法。

元となった「スティールヘイズ」と比較すると、武装構成はそのままにフレーム一式とジェネレータを換装している。
ナハトライアーフレームからレマーガイアフレームへ換装したことで、近接武器適正が向上してレーザースライサーの威力が増強されている。
また四脚ホバーモードの仕様で、バーストライフルのチャージショットを足を止めずに使用可能。結果、機動力と攻撃力がより高い状態で両立している。
一方で外見にかつての面影はまるでなく、さながら怪物になり果てたかのような印象を相手に与えるほか、二脚時に見せた動きのキレがなくなっている。
ジェネレータも、BAWS製の橙色の火のものからアーキバス製の青い火を吹かすものへ変わっていることもあり、ラスティの尊厳を徹底的に破壊する仕上がりになってしまっている。

「オルタナティブ」とは「代替」もしくは「代わりとなるもの」という意味。要するに「スティールヘイズの代わり」。
余談だが実機のゲームシステム上では文字数の都合で「スティールヘイズ・オルタ」となる。


ラスティは解放戦線からのスパイであり、それを原作よりも早い段階で確信したスネイルによってファクトリーに送られた。
その結果ラスティは『部品』へとなり下がり、人命を度外視する代わりに攻撃力と機動力に優れるシュナイダー試作フレームACに組み込まれた。
同フレームはスネイルにとって貴重なパイロットを失うリスクが大きい、頭と胃を痛める代物であった。
それでもあるものは仕方ないと何とか活かそうと考えた結果、使いつぶしても問題ないファクトリー製『部品』のフレームとして運用することにした。
『加工』されたラスティは、その第一号として適任であった。






メタ解説。
本作でラスティをゲスト出演をさせるきっかけとなった功労機であり、同時にラスティを惨い末路へ追いやる元凶となった大戦犯。
追加フレームがラスティの元機体と同じシュナイダー製であることと、フレームの特性的にラスティの武装と妙に相性がいいのがきっかけで考案に至った。
性能的に強くはなった部分があるが、その代わりスティールヘイズの格好良さが損なわれている。という部分が怪物になり下がった様を想起させる。

それでもせっかく考えたんだからドラマを捏造して登場させたいと考え、本作のシナリオに組み込んだ。
ミシガン死亡の情報を出す前に、話のテンポ的にワンクッション中ボス戦を挟みたかったのもあり、筆者的には最適なポジションだった。
二次創作の主流派はシュナイダー自体がかなりの暴走をしている変態企業である点にあるが、本作はあえてスネイルにファクトリー送りにされた末路として運用。
フレームだけでなくジェネも元機体から換装しているのは、ラスティが闇堕ちしたことをより強調するためである。
ごめんね、戦友。
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