怪獣バスターズ 星征大乱   作:雪晒

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第38話 忍ぶ

 とろとろとした歩みを繰り返し、倒れたEXゴモラの頭部へと向かった。本当に息の根を止めたかどうか、念のための確認だ。

 頭には、3本目の角のようにブレードが深々と突き刺さっており、身じろぎ一つしない。亡骸に登って力の限り引き抜くと、先端には半固形のピンク色が付着していた。血液とは違う。脳みそだろうか。

 

「倒したわよね」

 

「ああ、俺達が倒した」

 

 倒した。もう一度口の中でなぞらえる。

 戦いは終わったのに、体から熱が引かない。浦菱が深く息を吐き出していた。彼女も同じなのだろうか。

 

 地面に降りると、野笠と篠山が来ていた。二人とも砂まみれでひどい顔だ。

 

「野笠さん、篠山さん」

 

 殻島は思わず頭を下げた。

 

「ど、どうした殻島?」

 

「これ何の礼や!?」

 

 足しか見えないが、二人とも慌てている。

 

「ありがとうございました。篠山さんのバリアに、野笠さんの指揮……何度も救われました。お二人がいなければ、何度も死――」

 

「頭上げや」

 

 篠山の優しい声を受けた。おそるおそる直ると、二人ともくしゃっとした笑顔をこちらに向けている。

 

「ありがとうはこっちのセリフやで。殻島が来んかったら、それこそどうなってたか」

 

「お前が頭を下げるんなら、こっちは土下座をしなくちゃいけなくなる。だから胸を張れ」

 

 ポンと肩を叩かれる。

 

 熱はまだ体に籠もっている。

 自分は、何かを変えることができただろうか。リクの制止を振り切って、自分だけの責任でここまで来てしまった。それでも、誇っていいくらいには、価値を発揮できただろうか。

 

――君はこれから、たくさんの人を救ってあげられると思うよ。

 

「湖田……」

 

 はっとして浦菱を見る。湖田の名前を呼んだ瞬間を聞かれるのは恥ずかしい、と危惧したが、浦菱はしゃがんで足のあたりをさすっているだけだった。

 どうかしたか、と訊こうとしたとき、インカムに通話が入る。

 

『うぅっ、ふっ……ぐ、み、皆さん』

 

「リク?」

 

 野笠が代表して出た。

 

『う、皆……よく……よくご無事で』

 

「お前……泣いてんのかよ」

 

『だって、本当死んじまうかと……俺、何にもできねえし』

 

「馬鹿野郎。メカ呼んだのも怪獣装備のこと説明したのもお前だろ。助かったよ」

 

 その言葉でいよいよ会話にならないレベルで嗚咽を始めたため、野笠は申し訳なさそうな顔をしながら通話を切った。

 

「終わり、ましたね」

 

 浦菱は立ち上がり、遠くを見やる。視線の先は地平線だった。いや、大岩や起伏があり、完全な地平線ではなかったが、深い藍の空と対比してじんわりと水色が浮かんでいる。

 

「朝ですね」

 

「ああ、まあ、俺達の時間じゃもうすぐ夕方なわけだが」

 

 人間の生活とは相容れない星の昼夜。その切れ目はどこか、仕事終わりの風情と開放感を感じさせてくれた。

 

「さあ、帰ろう。ああそれと殻島。なんか食いたい物あるか?」

 

「え、どうしてですか?」

 

「お前の功績はでかいからな。また奢ってやるよ」

 

「……マジでなんでもいいんですか?」

 

 野笠が肩をすくめた。OK、ととらせてもらおう。

 

「じゃあそっすね……前は中華だったんで、今度は焼肉とか――」

 

 言葉が、何かに遮られた。大きな音と風圧。砂煙。

 

 五感をほとんど覆う衝撃で、何かが振ってきたのだと察する。だが、何かとは何だ。

 

「唯、殻島!平気!?」

 

「周囲を警戒!」

 

 先輩二人はすでに意識を切り替えていた。戦いはまだ終わっていないというのか。

 

「殻島……!」

 

「浦菱ッ!」

 

 互いを向き合う。砂が晴れ始めている。衝撃が起きた源へ、揃って視線を移した。

 

「…………え?」

 

「こいつは」

 

 そこいるのは、怪獣ではなかった。巨体でもなかった。せいぜい人間と同じ全長。殻島すら知っている、その名。

 

 兜のような頭部は二方向に分かれ、その下に爛々と光る黄色い眼。人間でいう口の部分には細長い管。セミに似ている。すらりとした痩身に、腰と肩の装飾。手を覆う大きなカバー。いや、(ハサミ)なのか。

 

「星人……」

 

 目の前に姿を現した存在は、敵だった。敵だと受け入れるしかなかった。様々な種が幾度となく地球を襲撃し、ウルトラマンの宿敵とまで言われた。

 

「バルタン星人」

 

 それは今、人間の前に姿を現している。

 

 

 

 

 

 その眼は黄色一色に光り、焦点は不明だ。そのはずなのに、殻島はバルタン星人がこちらを捕らえているのだとわかった。それも、標的として。

 

 動かなくては。剣を取って戦わなくては。いや、戦って勝てるのか。

 では逃げるか。だがすぐに、それが可能かという同種の問いにぶつかる。人間が思いつく選択肢に先回りしかねない知性と能力を、目の前の異星人からは感じる。

 

 不意に、通電。

 

『皆、今すぐ逃げ――』

 

 リクの言葉が終わらぬうちに、野笠はハンマーを大きく薙ぎ払った。凄まじい速さだったが、バルタンは予期していたかのように飛び退って回避する。

 

「浦菱!殻島!逃げろッ!」

 

 その指示に対応できない間に、今度は篠山が殻島の手からブレードを奪ってバルタンに斬りかかる。二人は示し合わせていたかのようにバルタンへと攻撃を加えていった。

 

「早よ逃げや!」

 

「でも、おふたりは」

 

「俺達が足止めするっ。少しでも遠くに」

 

「加勢します!」

 

「アホ抜かすな!いいから唯連れて行きぃ!」

 

 有無を言わせぬ圧があった。逃げるしか、ないのか。

 

「隊長、篠山さ……」

 

 浦菱はいまだ、逃げるという選択肢を取れずにいた。震える足で立ち上がり、血走った目を乱入した異星人に向けている。が、明らかに様子がおかしい。

 

「お前、まさか足が」

 

「……なんともない」

 

「さっきの、とどめの時」

 

「平気だから」

 

 下手すぎる嘘だった。思い返せば、地雷的のように用いるショックマインを、ボードを隔てた足の下で起動していた。加えて高所からの着地。足に負担がかかるのは殻島にもわかる。

 浦菱は動けない。この状況では、篠山の言葉に従う他ないと理解した。

 

「……退くぞ」

 

「ふざけないで……」

 

「その足じゃ戦うことなんてできねえ!」

 

「できるできないじゃないでしょ、あんた一人で逃げればいいじゃない!」

 

「篠山さんは『お前を連れて逃げろ』って言ったんだ!」

 

 篠山はよほどのことがなければ「先に逃げろ」などと言わないはずだ。なぜなら、浦菱の能力を信頼しているから。浦菱は強く有能な隊員だと疑っていないゆえに、多くの場合はともに戦おうとしていただろう。庇護対象ではなく仲間だと心の底から思っている、本物の信頼関係だ。

 

 その篠山が、今回ばかりは何よりも優先して逃げろと言った。その重みは殻島にもわかる。

 

 浦菱はわなわなと顔を震わせたが、すぐに戦う二人に背を向けた。

 殻島は肩を貸す。

 

「リクさんに応援を頼んでくれるか」

 

「わかった!」

 

 ドライバーを起こし、通話を求める。しかし。

 

「……出てくれない」

 

「は?」

 

「何にも音沙汰がないの」

 

 殻島は最悪のデジャブを感じていた。以前レラトーニでもこんなことがあった。

 いや、リクは信用できるはずだ。なぜ出てくれない。

 

 走りながら、背後にちらりと目をやる。野笠と篠山の攻撃は一分の隙もなく、どこまでも洗練されていた。だがその攻勢を、バルタンは避ける。自分から攻撃はせずに、針穴に糸を通すような回避を積み重ねていた。

 

 二人の体力がもたない。一刻も早く応援が来てくれなければ。

 

「全員、死んじまうぞっ……!」

 

 

――――――――――

 

 

「な、なんで」

 

 リクは目を剥いてモニターを見つめていた。

 

 バルタン星人が来る時、何の反応もなかった。通常、人間大の生物の生体反応であれば事前に感知できるはずだ。にもかかわらず、地面に降り立ったバルタンに、レーダーは何の予兆も示さなかった。

 

「クソッ!まさか……」

 

 相手は星人だ。レーダー網をかいくぐるカモフラージュを施していたか。

 

 いや、この際そんなことはどうでもいい。一刻も早く応援を呼ぶ。

 本部に通電だ。先ほどのEXゴモラの存在があるため、本部はこちらへの警戒態勢が続いている。最も迅速に動いてくれるはず。

 

 そう思って、通話の表示に触れかけた時、逆に通話要請がきた。現場の浦菱達ではない。本部からだった。

 

「もしもし!?」

 

『第4調査地、金城オペレーターですか』

 

「そうです!応援を――」

 

『命令です。動ける隊員は今すぐ調査地外縁に向けて出撃を、負傷した隊員はすぐにエスケープを!』

 

「……えっ?」

 

 本部側の男の声が張り詰めている。バルタンの危機をすでに察知したか。だが、「動ける隊員は調査地外縁に出撃」とは何だ?

 

『繰り返します!動ける隊い――』

 

「待ってください!どういうことですか。こっちはバルタン星人の奇襲を受けて――」

 

『バルタン!?まさかそっちも』

 

「……おい、そっち『も』って何だよ」

 

 声が震える。手もだ。血の気が引いて、冷たくなっていく。

 

『現在、軽科(かるしな)市から砂野見(すなのみ)市の調査地にて、複数体の巨大怪獣が確認されています』

 

 聞いた瞬間、血が逆流したような感覚に襲われた。鼓動に合わせて、頭に鈍い痛みが響く。

 

「そ、そのうち、モシリス県に接近してるのは」

 

『……現在9体、今後も増加するおそれがあります。それに、あなたが担当されている場所には』

 

「バルタン星人がいるんだ。因果関係はわからないが、応援は最優先にしてもらいたい」

 

 返答が滞った。

 

『……すみません、現在軽科市と葉鐘(はがね)市近郊の第2調査地にダイゲルンが接近しています。その他の地域も……応援は救援要請ごとに行うので、星人ということを加味してもまだ――』

 

「ふざけるなよ!」

 

 立場を忘れ、声を荒げる。

 

「こっちはすでにEXゴモラと戦ってるってさっき言ったはずだぜ!本部のあんたらだって把握してるだろ、これ以上隊員に負担がかかったら死ぬんだよ!今すぐ人でもメカでも寄越せ!」

 

「り、了解し――」

 

 承諾したことがわかると返答の途中で切った。

 

 今度は調査地の4人に向け通話を繋ぐ必要がある。。

 

 リクは最低限の現状把握のため、戦闘中の部隊の映像に目を向ける。次いでバルタン星人の反応を感知したレーダーも。バルタンの攻撃の傾向や周囲の異変があればそれを見つけないと。

 

 だが、本部からの通電内容が強い雑念となって目を皿にしても、脳は無数の巨大怪獣の進撃を思い浮かべてしまう。

 9体。いや、怪獣同士の共鳴的行動を考えると十数体が日本の居住区に向かってくる。その状況はまるで、昨年度「惑星アペヌイ」で起きた毒ガス怪獣による侵攻だ。

 

「まさか、ここでも」

 

 不安と恐怖で、呼吸すら浅くなってくる。

 

「ここでも起きるってのかよ、大怪災(だいかいさい)が」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「ふっ、ふっ、ふっ」

 

 モシリスの大地にうっすら日が差し始めている。1時間ほどが経つ。広大な砂漠の星にも無数の怪獣は存在しているが、惑星の地表全土に均一に生命が散らばっているわけでもない。人間の社会に人口密度があるように、モシリスにも怪獣が多く出るところとそうでないところがある。

 男が走っているのは、明らかに「そうでないところ」であった。地平線に沿う岩山とまばらな植物が鋭利な影を伸ばす。地形には起伏による緩やかな凹凸があり、影の黒を屈折させていた。

 

 影は動かない。地球より自転周期が遅いモシリスは、日の出による景色の変化も張りがなかった。今はひとりの男が景色の中で唯一の動きだ。

 

「ふ、ふ、ふう」

 

 格好を見ればS4の人間であるとわかる。共通のS4スーツではないがかわりに金と褐色が混じる生物的な装具――メテオールアーツを身につけている。他に物珍しい点といえば、体型。装備の上からでもわかるたるんだ腹が走る度に揺れ、影も横に大きい。

 が、反面走る速度は目を見張るほど速い。テンポこそジョギングのように緩やかだが、一歩で数メートル前に進んでいる。メテオールアーツだけでなく、装着者本人の体力と技量もあるだろう。

 

 男が走る位置の延長線、その大地に黒いふたつの突起が飛び出ている。上に向けて伸びるわ小さな突起は、ちょうどその間に男の足が置かれた瞬間地面から勢いよく突き出た。

 

「うおお!?」

 

 男は飛ぶ。突起の罠に刹那で反応したためだ。地面から現れたのは虫のアリジゴクをそのまま人の身長程まで肥大化させた怪獣――アントライオンと呼ばれる小型怪獣だ。

 

「あ、あっぶねえ」

 

 男は宙を舞ったまま腰のハンドガンを抜き発砲。エネルギー弾がアントライオンの表皮で弾け、甲殻を貫く。連射を浴びたアントライオンは虫らしく腹を見せて絶命した。

 

 ふくよかな身を翻して着地。すと、というよりもどすんという音だった。

 

 すぐそばで、再度小さく砂が持ち上がる。また別種の怪獣だ。半径2メートルほどのドームが地中から飛び出したように見えたが、それは怪獣のフォルムだ。半球状の体の一部に赤い目がふたつとその間から鼻が鋭く伸びる。コサメクジラという小型怪獣だ。

 

「ひっ、まただ」

 

 びくつきながらも男の狙いは正確2体現れた個体のうち1体の目を撃ち抜いて即死させ、もう1体の後ろに回り込みキックで体をひっくり返す。亀のようにじたばたするコサメクジラの腹に弾を放った。

 

「長官、聞こえますか長官」

 

 S4の男は「長官」と呼ぶ相手に通話を繋いだ。長官、ここではモシリスの外惑星統括長官である久茂祈(クモイノリ)を指す。レラトーニの谷神義邦(ヤガミヨシクニ)と同等の階級にあたり、S4についてはモシリスで最も大きな権力を有する人間である。

 

「おかしいですよこの辺。いつもだったら小型怪獣もいないのに、今日はかなり出ます」

 

『高宮隊員、今あなたのいる場所は』

 

 低い女の声が男に聞いた。高宮と呼ばれた男は「第7調査地から大きく北に出たところです」と返答する。

 

「いつもならいない場所に怪獣がいる……やはり報告いただいたEX進化個体の出現が原因でしょうか」

 

『ええ、おそらく。何の前触れもなく進化するというのも不可解ですが』

 

 EX怪獣は極めてイレギュラーの変異個体。その多くは攻撃性や凶暴性が以前に比べて桁違いに膨れ上がっており、生息地を同じくする怪獣にも影響を及ぼす。

 

 この一環で、人間が「巨大怪獣」と分類する30~60メートルほどの怪獣にはひとつの傾向がある。それはEX怪獣の存在を感知すると同様に凶暴性・攻撃性が高まるということだ。

 科学的な根拠は現在も調査中だが、おそらくEX変異というイレギュラー発生を受け、自身の縄張りの防衛を行おうとするためであるとの見識が有力だ。そして、対EX怪獣への敵対意識が生じ、一戦交えようと進撃を開始する怪獣も珍しくない。

 

「今回の場合も、現れたEXゴモラに感化され複数の巨大怪獣が県に向け動き始めていると考えます。だからこそ、あなたにお願いしました」

 

 ごくりと唾を飲み込む。

 

 高宮博夢(タカミヤヒロム)。彼は優秀な隊員だった。S4において一握りの成績優秀者に与えられる特別錬成隊員の立場。その中で、高宮は第9位に位置する。順位は単純に全S4隊員を連ねたものであるため、彼は3万人いるS4調査隊員の中で9番目の強さを誇っている。戦闘力においては他の追随を許さない高宮であったが、胸中では不安と心配が増殖していた。

 

「西に行くほど怪獣の数も被害も多い、でしたよね」

 

『ええ。向かえますか』

 

「今すぐにでも」

 

 言い終わる前に、高宮は足裏から気配を感じる。それは地響きというほどのものでもなかったが、高宮のすぐれた危険予測能力で嗅ぎ取ることができた。

 

 地面がなくなる。比喩でなく、突如として突き出た触覚と棘のある巨体に周囲半径数十メートルの砂原は消失した。その穴から這い出るのは、奇怪なフォルム。

 怪獣であるのは間違いない。しかしよく見受けられる二足歩行でも、四足歩行でもない。腕や足と呼べる器官はなかった。ただ一つ一目で理解できる頭部は、驚くべきことに下、地面に接している。

 

「こいつは」

 

 飛び退って崩落を避けた高宮が見上げる。

 

 頭の上には凹凸のある腹面と、断崖絶壁を思わせる無数の棘が生えた背面。頂点には横に並んだふたつの発光体と2本の触手が生える。

 

「長官、地底怪獣ツインテールが出ました!」

 

 50メートルは越えている。平均的なサイズと比べてもでかい。

 

「今すぐにでも、というのは撤回します。こいつを片付けないと」

 

 モシリス県西部は、今高宮が目の当たりにしている状況よりも危機的なのだろう。だからといって、遭遇しつぃまった巨大怪獣を看過できない。

 

 ツインテールは高宮に向け、上空の触手を振り下ろす。てっぺんから地面までの高さを、ツインテールの触手が一瞬で行き来した。

 

 回避した直後、高宮はツインテールの奥の景色に目をやる。砂が激しく巻き上がった上空、ぐにゃりと歪む空気があった。陽炎か?いや、あの奇妙な輪郭、そしてなにより動いている歪みの正体は。

 

「透明怪獣が……!」

 

 絶句した。ツインテールだけなく、やつも排除していかなければ。

 

 モシリスと言うことはネロンガか。いや、あの直線的なフォルム。忍者怪獣サータンだろう。

 

「久茂長官、申し訳ありません」

 

 高宮はツインテールの眼球に弾丸を撃ち込む。久茂に謝罪したが、心の中では、怪獣災害の対応に駆られている全てのS4隊員に向けて頭を下げていた。

 

「少々手間取りそうです。到着は、遅れるかと」

 

「……問題ないわ。務めを果たしてください」

 

「僭越ですが」

 

 痛みに喘ぐツインテールが無我夢中で触手を振り下ろす。が、身を翻した際に細長い何かが体から千切れ飛んでいく。

 

〈ガアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!〉

 

 高宮のチャージショットは触手の付け根を撃ち抜き、その威力とツインテールが攻撃しようとした反動で片方が弾け飛んだのだ。

 

「他の特錬隊員、できれば10位以上の人間に来ていただくことはできませんか」

 

 久茂をはじめ、統括長官は非常時に際しトップ10の隊員を惑星に招聘する権限をもっている。しかし、ほとんどの場合星間移動が必要になるため、呼ぶことはできても迅速な対応には限度がある。

 今回はどうか。

 

『すでに何名かの隊員に依頼をしています』

 

「本当ですか!でも、来てくれる人は」

 

「あさひ95に配属されていた暮時(クレトキ)隊員が北西の防衛にあたってくれます」

 

 目を見開いた。同時に根付いた不安が摘み取られていく。

 

「……ありがとうございます」

 

 言って通話を切った。大丈夫だ。暮時なら、2位の彼なら。間に合うかどうかはわからないが、彼がこの星に降り立った瞬間から被害が最小限に抑えられることはほぼ確定した。

 

〈ゴゴォガアアアアアアア!!!〉

 

 迫りくる巨体を前に、高宮も前へ出る。もはや銃を使うまでもない。

 

 前方へジャンプした直後、防具の各所にしつらえたカッターが伸びた。特に左右の手甲から伸びた鎌状の武器がものものしい。

 

「――ふッ」

 

 ハグするように左右の腕を閉じると、ツインテールの体に真一文字の傷が大きく刻まれる。血に染まりながらごろごろと転がる巨体。噴出した血液はあたりに飛び散り、渇きの大地に異色の水分が降り注いだ。

 

 できることをなすだけだ。

 

 高宮はツインテールの死骸を越え、サータンへと向かっていった。

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