怪獣バスターズ 星征大乱   作:雪晒

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第57話 関係ない

 1週間ほどが経過していた。佐納(サノウ)は部隊に復帰済み。試験はあと4日残っている。最終日は座学のテストが半日行われて終了するため、討伐点を稼げるのはあと3日だ。

 浦菱(ウラビシ)、佐納、ゴウの3人は怪獣墓場の岩場に座り、マップを睨んでいた。

 

 評点稼ぎのラストスパートをかけたい。そのために効率のいいルートを模索していた。オペレーターのカグラから情報を得つつ、小型・中型・大型それぞれの怪獣の出現予測場所を挙げ、どのように進むかを考える。

 出撃前にある程度の話し合いをしていたこともり、短時間で決まる。小型~中型の怪獣を標的に、質より量の討伐点を挙げるという方針だ。近場の小型ボーンザウルスを一掃した後、20~30メートルの宇宙怪獣エレキング、および甲虫型宇宙怪獣バグダラスを討伐する。

 ドラコやジェロニモンほどの危険性はない。落ち着いて対処すれば問題はなかった。

 

 が。

 

「うわぁっ!?」

 

「ちょ……何コイツ!?」

 

 怪獣の動きに体がついていない。敵に隙がない、というよりも、隙を見落としていることに戦闘中気がつく。

 

 佐納との足並みが揃わなくなっていた。

 

 バグダラスの触手を避ける最中、ドンと佐納にぶつかった。同じ方向に倒れ込み、立ち上がった時にはピンク色の触手が目の前に迫っている。息を飲んだところで、バグダラスの背中を駆け上がるゴウが見えた。そのまま頭部に足を置き、至近距離でバズーカを撃ち込む。殻が弾けた後に濃い体液が噴き出し、バグダラスは血泡を吹いて倒れた。

 

「すみません、助かりました」

 

「おう」

 

 ゴウは浦菱と佐納のぎくしゃくした関係に干渉してこなかった。ふたりの連携の拙さに気づかないほど鈍くはないだろう。意図的に言及を避けているようにも思える。

 

『三人とも、お疲れ様です。少し大丈夫ですか』

 

 声が耳に響いた。オペレーターのカグラだ。

 

E六(イーろく)エリアに受験者部隊の瀬戸(セト)部隊がいるんですが、小型怪獣が多く苦戦中とのことです。瀬戸さんたちはひとりが1ジェロニモン戦の負傷でリタイアしてしまったので、現在2名しかいない状況です。それで、応援を頼めないかという要請がありました。もちろん、受け入れれば評点の加算にはなりますけど』

 

 唐突な救援願いに、「私が」と佐納が反応した。

 

「私が、行きます」

 

 へにゃりとした挙手をする佐納。あまりの即決ぶりに浦菱は狼狽えた。

 

「奏、でも」

 

「大丈夫だよ。もともとの予定だと、ここから先は小型怪獣の掃討だよね。それなら、私がいなくても切り抜けられると思うよ」

 

「そうじゃなくて、あんたまた危ない目に」

 

「私だって平気だよ。実際の任務では状況に応じてこういう事態もあるし、臨機応変に対応していかないと。それに……今日はあんまり、調子よくないから」

 

 付け加えた最後の理由が本命なのだと思った。そんなことない、と返す前に「ゴウさんも、それでいいですか」と佐納は確認をとった。

 

「構わねえが、気ぃつけろよ」

 

 やはりゴウは止めない。去就に迷っているうちに佐納は準備を整え、離脱してしまった。

 

「行くぞ浦、俺達は俺達のルートを継続する」

 

「……はい」

 

 隊が分かれた後、ゴウと浦菱は小型怪獣の群れに遭遇する。スペースワームと呼ばれる、古代怪獣ツインテールを小型にした姿が、ざっと見渡して10匹。面倒だがふたりなら片付けられる。

 浦菱は群れの隙間を縫ってボードで斬りつけ、ゴウは数体をまとめてバズーカで吹き飛ばす。掃討はすぐに終わった。が。

 

「ふー……」

 

 想像以上に息が切れていた。やはりいつも通りの動きができていない。体に変な力が入って余計な体力を消費している。

 佐納が離脱したゆえか、彼女の言葉が棘となって今も胸に刺さっているからか。

 

「浦、少し休憩をとるぞ」

 

 ゴウはやはりぶっきらぼうな言い方だが、これまで彼から休憩を打診してきたことはほとんどなかった。気を遣われているとわかり、「大丈夫です」と返そうとしたが息が整わない。

 

「……では、5分だけ」

 

「10分だ」

 

 浦菱が了解する前にゴウはスペースワームの遺骸から離れ、岩場に腰を下ろした。

 浦菱も地べたに胡座(あぐら)をかく。動きを止めると息はすぐに整ったが、もう大丈夫ですと言えそうな雰囲気でもない。

 ゴウはずっと黙していた。沈黙は休憩時間を長く感じさせるが、嬉しくはない。

 

 佐納が、鎮痛剤の服用を拒んでいた。その理由は、彼女自身が経験したアペヌイの大怪災に起因すること。これらはゴウに話していない。他言を禁じられたわけではなかったが、かなり佐納個人の経験と思想に踏み入る話題だったためだ。

 

 しかし、試験期間中とはいえゴウは同じ部隊の人間、仲間だ。その仲間に開陳しないことへの迷いと後ろめたさも頭の片隅にある。戦闘の動きが奮わない原因のひとつでもあるのかもしれない。

 

「今日をあわせてあと4日だな」

 

 思い出したかのようにゴウが言った。あと4日とは、試験の期間。その日数で、自分たちが特別錬成隊員になれるかどうか決まる。

 

「ですね」

 

 浦菱は試験の内容を脳内で振り返った。果たして、合格基準点に達しているだろうか。

 全体的な動きは、悪くなかったように思う。訓練も座学も真面目に受けた。エリアの開拓も。

 できる限りのことはした、はず。

 

 なのに胸にしこりが残るのは、やはり佐納のこと。

 

 庇われて、傷を負わせてしまった。己の無力感に苦しんでいる彼女に慰めの言葉を何一つかけてやれない。

 咄嗟に飛び出した「助けられなかった人の分まで戦う」という言葉は佐納の考えと相剋していて、それゆえに自分の利己心も気づかされた。

 たくさんの人を救いたい。佐納の公平で純粋な意欲に対し、浦菱はなんとも自分が狭量に思えた。

 

――ウルトラマンが、いてくれたらな。

 

 その言葉は、まるで呪いのように脳内を行き交う。当初はS4の自負をないがしろにされたようで怒りがあった。しかし、怒った時点で本心はわかっていた。

 

(私もウルトラマンを望んでいる)

 

 自分に弱さがあってもなくても、ウルトラマンには関係ない。ただ倒す。ただ救う。そういう存在だ。感じた怒りは、自身の弱さを認めた反動で生まれたのだと、今は思う。

 だが現実にはいない。光の戦士は地球をとっくの昔に去った。外惑星でウルトラマンと考えられる姿が確認された事例はあるが、一番新しくても100年以上前だ。残ったのは、何もできない地球人だけ。

 

「ゴウさんは」

 

 そばの男に意図せず訊いていた。

 

「今もウルトラマンがいてほしいと思いますか?」

 

「何だ、藪から棒に」

 

 ゴウは怪訝な顔を見せたが、すぐに「ま、そりゃ思うわな」と返す。

 

「ウルトラマンがいりゃあS4はこんな大規模に組織化しなくて済むし、それだけ怪獣と戦う人間も減る。平和の形としてはより安定してるな。まあそうなったら俺達は飯の食い上げだが」

 

「はは。そうですね」

 

「浦、なんか変だぞ。どうした」

 

「私は、弱いなと思って」

 

 ぽつりと溢した。

 弱い。口にする度肩から力が抜けていくような気がした。今はどうしようもなく、ウルトラマンが欲しい。

 

「一人じゃなんにもできなくて、それどころかこの前は奏を怪我させちゃって。ウルトラマンとは大違いだ」

 

「ん~……」

 

 ゴウは目を瞑りであごひげをいじっている。やがて難しい顔のまま、目だけを開いた。

 

「わからんなぁ。自分が弱いことがそんな落ち込むことか?」

 

「そりゃ、そうですよ。これでも誇りをもってS4隊員をやってる……やってるつもりだったんです」

 

「でもお前が言った『一人じゃなんにもできない』ってのはほとんどのS4隊員に共通するだろ。一人で巨大怪獣を討伐できる奴なんて特錬隊員でも上位層だけだ。それが地球人の限界。つまり」

 

 ゴウはしゃがみ、地べたにいる浦菱と目を合わせた。

 

「お前が弱いっつってのんのは地球人全体の問題だ。お前個人の問題じゃねえ」

 

 肩の荷を下ろすつもりで言ってくれたのだろう。しかし、気持ちは楽にならなかった。

 弱者の範囲が人類全体に拡大しただけで、その人類には自分も含まれているからやっぱり私は弱くて。

 だが、ゴウが「地球人は弱い」と発言するのには違和感があった。彼は基本的にネガティブなことを言わない。割と常に深く考えず発言している風だから、もしかしたら楽観的な方に考えが流れているだけかもしれないが。

 

「ゴウさん、さっきウルトラマンがいてほしいって」

 

「おう、言ったな」

 

「だったらやっぱり、私の同じように地球人は弱いと思ってるんですか?」

 

「いや?全然思ってないぞ。『弱い』って言ったのはお前だろ」

 

 ゴウは飄々と言った。

 

「第一お前、私は弱いつったけどそれはウルトラマンと比べてだろ。そんなん自分の方が見劣りして当たり前だ」

 

「当たり前だって、私も奏も、その弱さに歯がゆい思いをしてるんです」

 

「さのの奴もなのか?」

 

 しまった。つい口をついて出た。しかしゴウは追及を避け、続ける。

 

「まあ、お前らがウルトラマンに憧れや劣等感を抱くのは勝手だが、そんなこと怪獣は斟酌してくれねえ。あいつらただの災害だからな。気まぐれに外惑星の街に攻め込む厄介なやつらだ。でも――俺達は倒せる。大勢ならな」

 

 倒せる、の部分に力が込められていた。

 

「そんな大枠の話じゃねえって言いたいんだろうが、大枠の話をさせろよ。S4はウルトラマンみたいに3分で怪獣を倒せないが、ウルトラマンはこないだのモシリスみたいな広範囲の侵攻には対応できない。そこで死ぬ隊員、怪我する隊員はそりゃ出るかもしれんが、最低に悪く言えばそりゃ個人の問題だ。地球人全体は関係ない」

 

「地球人全体?」

 

「平和に暮らす一般市民の皆様だよ」

 

 それは、佐納が必死に守ろうとしていた存在だった。

 

「俺から見りゃな、お前もさのも大して弱くねえんだ。ただお前らが光の巨人と自分を比較して、悔しがってるだけ。別に比較するなとは言わねえが、悔しいからって、S4の仕事から逃げるわけにはいかない。『ウルトラマンと同じ働きができない』からって、防衛を放棄することはできない」

 

 話の途中でゴウが「そうか」と再びあごひげに触れた。

 

「さのの奴、どうも自己犠牲的な戦い方が目立つと思ったら、ありゃウルトラマンに憧れて必死に他人を守ろうとしてたのか」

 

「急に冴えますね」

 

「急にとは何だ、いつでも冴えてるだろ。ま、そうだとしても話は変わんねえよ。自分は弱い。悔しい。やってらんねえ。そう思っても戦わなきゃいけねえんだ俺達は。今はその責任を試されてる場だろ」

 

 ゴウは自身の胸を指さした。

 

「優劣じゃなくて事実を見ろよ。自分は誰で、何のためにここにいて、何ができるか。たとえ怪獣でも、ウルトラマンでも、そこに他者の余地を挟むな」

 

 言葉に促され、浦菱も自分の胸に手の平を当てた。自分になにができるか、何をすべきか。

 

(ゴウさんは、「弱さを受け入れろ」ってことを言いたいのかな)

 

 いや、少し違う気がする。受け入れる受け入れないは、もはや関係ないのだ。重要なのはその選択によって、自身の能力を左右されないこと。いつ何時も、S4隊員として戦場に立っていること。

 

 それはたしかに重要なことだ。だが、佐納に伝えることは少々酷ではないかとも思ってしまった。

 部隊の仲間を失った悲しみ、人を救えなかった悔しさ、ウルトラマンのようになりたいという幻想。それを背負ったがゆえに彼女は傷を負う。しかし、それらを背負っていたからこそ今彼女はこの試験まで登り詰めることができたのではないか。逆に言えば、ゴウの言を貫徹できなければ特錬隊員の資格は得られないのか。

 

 佐納の考えは自分を責めすぎていて、同時に憧れが強すぎる。でも、間違っていると切り捨てたくない。なんとも複雑な心境だった。

 

『ゴウさん!浦菱さん!』

 

 突如高い声が鼓膜を震わせる。カグラの通信だ。

 

『今、E六エリアに高エネルギー反応が確認されました!佐納さんが向かった場所です!』

 

 衝撃で、声がそのまま脳を震わせたような感覚に陥る。ゴウが立ち上がった。

 

「デカそうか」

 

『これだけの生命熱数値……巨大怪獣なのは確実、それも50メートル越えかと思われます』

 

「E六には瀬戸部隊と佐納しかいなかったか?」

 

『佐納さんと同じように、他の部隊から助っ人が……でも、それも1名だけです。総勢4人、応援は要する人数かと』

 

「ゴウさん、行きましょう!」

 

 出立を促した。が、剛はヘルムを装着せずに渋っている。

 

「奏が危ないんです!行かないと!」

 

「だが、どうやって」

 

 息を飲んだ。ゴウたちの部隊にとって、E六エリアは未到達。他の部隊によって設定された場所だ。

 

 そもそもこの試験では、明確な範囲が決まっていない。各々の部隊がが転移渦を潜りながら移動し、エリアの名前を設定。それが全部隊に共有される形式だ。しかし共有されるといっても、明らかになるのは割り当てられたコードのみ。行き方は明示されない。

 したがって、浦菱たちが明確にわかるのは自分が行ったことのあるエリアと、せいぜいそこから直結する範囲だけだ。

 

 E三までは行ったことがある。だがそこから先、どの転移渦を潜っていけばいいのかがわからない。

 

「そんな……でもここにいたって」

 

「ああ、どうにもならねぇ。ひとまず別のエリアに向かおう」

 

 ゴウは焦りを汲み取り、即座に武器を背負った。

 

 ともにエリア端まで向かい、中空に浮かぶ紫の渦に突っ込む。景色が一瞬で変わり、想定通りの地点まで移動ができる。

 行った先で他の隊員がいたら、ルートを知ってないか聞いてみよう。望みをかけての移動だったが、目に映った景色に地球人はいない。

 

「う……」

 

「最悪、だな」

 

 代わりにいたのは、小型怪獣の群れ。

 

「ゴルグォ……」

 

「ボオオオオオオオオオ!」

 

 浦菱とゴウがいる、道のようなエリアの先で待ち構えるのは、太古の恐竜が骨格だけになった姿のボーンザウルス。ラプトル系というのだろうか。隊長は1から2メートルほどだが、群れなのは厄介だ。

 そして、スペースモス(はね)の端から端まで人一人分の長さがある巨大な蛾、スペースモス。ゴリラに似た小型怪獣はメカコングと呼ばれ、青と黄色の派手な鎧を纏っているように見える。

 

 それぞれが数匹で固まって縄張り争いの最中だったようだ。しかし今は、全ての怪獣の視線が結託してこちらを向いている。焦る浦菱を逆撫でするように、威嚇行動を取っていた。

 

「やるしか、ないですよね」

 

「ああ、いくぞ!」

 

 浦菱が先手を仕掛け、群れの前にショックマインを設置。距離を取り、爆破したのを見届ける。貴重な兵器だがまとまった小型怪獣に対する威力は絶大だ。一つくらいは使っても惜しくない。

 

 勢いを削いだところに今度はゴウが走り込んでくる。バズーカ持ちは本来候補から射撃に徹するが、今回はエリアの転移渦まで向かわなければならない。一にも二にも突撃だ。

 

「おおおお!!」

 

 至近距離のバズーカはやはり強烈で、ゴウに近づいた小型怪獣はすべからく体の一部が塵にされている。空いた背後を守るのは浦菱の役目だ。ボードごと自分の体を滑り込ませ、宙で体を捻ってスペースモスを退かせる。

 しかし、ゴウの進みが途中で遅くなり、ついには止まった。群れは思っていたよりも大きい。駆け抜けることは叶わなかったか。

 

 浦菱が左に視線を戻すと、視界の端から裏拳が躍り出た。

 

「ふっ――!」

 

 顔の前に腕を出し、なんとかガード。したものの腕はびりびりと痛む。ボードはこういうときの防御に弱い。

 

 腕を下ろした先にいたのは、異形の人型、メカコング。体高は2メートルほどあるか。

 面倒な奴に当たった。

 

「浦!!」

 

 小型怪獣にもみくちゃにされるゴウが、一際大きな声を放った。

 

「何です!?」

 

「これは黙ってた情報だが、このエリアにはな、俺達が目指してる転移渦とは意外にも、目立たない場所にもう一つ別の転移渦があるんだ!」

 

 驚愕した。以前作成したマップでは、今の場所は一つだけしか登録してなかったが。

 メカコングの拳を避けつつ、問答を続ける。

 

「なんでっ!そんなこと!知ってるんですか!?」

 

「昨年の試験でたまたま見つけたんだッ」

 

「じゃあなんで黙ってたんですかッ!」

 

「抜け駆けで俺だけ使って点数稼ごうと思ってたんだよ!」

 

「小賢しいな先輩のくせに!」

 

 くせに、と同時にスカルコングの腹にパンチを打ち込み、体勢が崩れたところをボードの刃で切り裂いた。

 やっぱり試験続投組は有利じゃないかと憤慨する。しかし、それを告白したということは。

 

「それ、私が使ってもいいんですね!?」

 

「ああ、俺の記憶が正しけりゃ、今回の試験では俺達がまだ登録してないエリアだ。もしかしたらE六まで直で行けるかもしれん。確率は低いが、今からルートを探しても確実に間に合わねえ。使っちまってくれ!」

 

「場所は」

 

「先の岩場を降りて左、洞穴の中だ!俺はここで小型を抑える」

 

 再度ゴウが小型怪獣を砲撃で吹き飛ばした。そしてこちらに目線を流す。行けの合図だ。

 

「ありがとうございますッ!」

 

 浦菱は、スピードをこれ以上出ないというほど上げる。

 

「カグラさん」

 

 ゴウが言っていた転移渦は、見えづらい場所に合ったがすぐに発見できた。浦菱は入る前にカグラに通話を繋いだ。

 

「先日登録した装備の、転送準備をお願いします」

 

『それって……浦菱さん、まさか』

 

「ええ。私のメテオールアーツです」

 

 数日前、ようやく研究部から届き、多少の説明を受けた。実戦投入はまだ早いと思っていたが、なりふり構っているときではない。

 ゴウと別れるとき、すれ違う刹那に聞こえた「頼んだ」という声が、浦菱の体に熱い血を巡らせていた。

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