怪獣バスターズ 星征大乱   作:雪晒

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久しぶりの登場なのでおさらい

浦菱唯(ウラビシユイ)
……S4の隊員。シルバーバルタンから日本政府に打診された「ダークバルタン殲滅作戦」に参加し、先輩の仇討ち・湖田の手がかり獲得のため、戦闘力トップ層の特錬隊員を目指す。特錬試験を受けた後、佐納と共に入院していた。

佐納奏(サノウカナデ)
……S4の隊員。ウルトラマンに憧れを抱く。浦菱と共に特錬試験を受けた後入院していた。鹿津宮との接触により自分は本来特錬試験を受けられる立場になかったことを知って、大きなショックを受ける。


第82話 キモい

「以上」

 

 足に肘を置き、前のめりの姿勢で話していた鹿津宮(カツミヤ)は、椅子に背を預けた。

 

「俺の話は、おしまい」

 

 ふう、と息をついた。隣に座るクイロが「ご清聴感謝します」と軽く頭を下げる。

 

 浦菱唯(ウラビシユイ)もまた、病院のベッドの上で深く息を吐く。自分の体が強張っているのに気づいた。握っていた布団を離すと、深いしわと手汗の跡が残っている。

 左隣を見る。一緒に話を聞いていた佐納奏(サノウカナデ)もまた、体を固く縮こめていた。

 

「お前らがいついびきをかき始めるか楽しみだったんだが、思ったよりも真面目に聞いてたな」

 

「……寝られるわけないでしょ。こんな話聞かされて」

 

 浦菱は額に手を添える。ひどく情報量の多い話だった。

 

 頭の中で話を整理する。

 

 まず、この鹿津宮杏次(キョウジ)という男、そしてペガッサ星人クイロが唐突に病室に現れたのだ。目的は、佐納を連れていくことだという。

 掘り下げると、佐納と似た境遇のS4隊員が異なる状況で危機に見舞われていると話した。似た境遇とは、具体的にいえば、昨年8月の『アペヌイ大怪災』において、被害地域で防衛活動にあたったS4隊員のことだ。

 

 その隊員たちが、服薬と見せかけてアレルギー症状を引き起こされそうになっていたり、辞令によって危険度の高い任務を任されていたりと、様々な危機に見舞われている。鹿津宮とクイロはそう説明した。そしてこの奇妙な状況を察知することができたのは、八十川・安生のふたりから話を聞いたためだという。以前浦菱がSNSで知り合った、航行機事故の生存者である。彼らもまた、事故に関する聴取で情報の齟齬が生じるという奇妙な状況の中にあった。

 

 そしてその聴取の担当者が鹿津宮の姉、花梨(カリン)だということを知らされる。さらに、当の本人は殺されたとまで鹿津宮の口から言い渡された。あまりに理解の及ばないところで何かが起きていると感じた浦菱は事の顛末を話すよう要求し、鹿津宮は語った。

 

 彼らは、航行機事故の『ダークバルタン犯人説』に異を唱えていると――。

 

(あれ?)

 

 顔を上げる。室内に置かれたウォーターサーバーの飲む鹿津宮と目が合った。

 

「いや鹿津宮あんた、以上じゃないわよ」

 

「あ?何がだ」

 

「話!まだ肝心なこと聞いてない」

 

「そうです!どうして、私を連れて行こうなんて言うんですか」

 

 佐納もまた、本題が語られていないことに気づいた。

 

「あんたが、ダークバルタンは航行機事故を引き起こした存在じゃないって主張する意味と理由はわかった。でも、まだ奏を連れて行く理由は見えてこない。言っとくけど、これじゃ協力はできないからね」

 

 鹿津宮は首の関節を鳴らしながら「そういやそんな話だったなぁ」と適当に返す。

 

「ま、佐納みたいなやつに働きかけるのは、ダークバルタン無実説の拡大と絡んでるんだが」

 

「話せって言ったのは私たちだけど……ほんとに長い経緯ね。こんだけ話して、ようやく本題はこれから?」

 

「お前にとってはどうなんだ?」

 

「え?」

 

 浦菱には問いかけの意味がわからない。鹿津宮は口の端をつり上げ、優越感を露わにした。

 

「航行機の事故の話を随分熱心に聞いてたなあ、浦菱。特に、湖田(コダ)の名前が出たときには前のめりになってたぜ」

 

 顔に熱が上る。どうして自分は、湖田のこととなるとこうも余裕を失ってしまうのだろう。

 

「何か湖田さんに思い入れがあるようでしたね」

 

 丁寧に尋ねたのはクイロだ。

 

「八十川さんと安生さんの名前も、私たちが接触する前から知ってましたよね。ということは、二人がやってたSNSで繋がりがあったんですか?」

 

「……当たり」

 

「やはりそうでしたか。杏次が湖田さんについて話す度に目を白黒させてたので、こっちが驚きましたよ」

 

「知らないことが、たくさんあった。湖田先輩に両親がいなかったこととか、大学で専攻してた研究内容なんかも……」

 

 湖田が所属した研究室では、外惑星における恒星の熱をエネルギーに変換する発電技術について専攻しているという。この情報から鹿津宮は、ダークバルタンが独立後にエネルギーを獲得するため、精通する湖田を攫ったという仮説を立ててていた。

 

 だが、浦菱の考えでは、この仮説はおそらく――。

 

「くっくっく……」

 

 対面では、鹿津宮が苦笑していた。

 

「いやあ、お前らの反応は新鮮でよかったよ。ドラコを倒しちまうような特錬隊員サマでも、知らない事っていっぱいあるんだな」

 

「今関係ないでしょ。それにね、私たちは特錬隊員じゃない。特錬隊員の試験を受けただけ……あれ?」

 

 強烈な違和感が浦菱を襲った。

 

「どうしてッ」

 

 その正体を、佐納が問いただす。

 

「どうして、私たちがドラコと戦ったことを知ってるんですか?話してない……ですよね」

 

 そうだ。鹿津宮が知っているのは、自分たちがS4の新規特錬隊員選抜試験を受けるということだけ。試験の内容なんて、ましてやどの怪獣を討伐したかなんて、知るよしもない。

 

 鹿津宮は答えない。ただ半開きの目をこちらに向けるだけだ。わかるだろ、とでも言いたげに。

 

「……そうか!あのバルタン星人だ!」

 

 佐納が首をこちらに向けた。

 

「あのバルタンって……ドラコ戦の時の?」

 

「そう。まるで私たちを助けるみたいに、ドラコを相手取って戦ってた、あの巨大バルタン」

 

 特錬試験終盤、浦菱と佐納は体色の暗い巨大バルタン星人と遭遇した。どういうわけかそのバルタンはパワードドラコに立ち向かい、ふたりに敵対的な行動は起こしていない。むしろ、浦菱をハサミに入れて投げる連携プレーを見せるなど、協力的ですらあった。

 

 鹿津宮の口から「怪獣墓場におけるドラコの討伐」という話が出た。これはつまり、鹿津宮が確実にダークバルタンと接触していることを裏付ける。

 冷静に考えれば、鹿津宮の話は全てでたらめ、嘘八百を並べ立てていたという可能性もあった。だがドラコ討伐は、浦菱と佐納しか知り得ない話だ。厳密に言えば試験を担当したオペレーターも戦いの内実は知っているが、特錬試験に関しては他言無用が厳しく言い渡されている。一般人の鹿津宮が知る術としては、S4関係者以外の目撃者づてに話を聞くしかない。そしてそんな人物は、あの巨大バルタン星人しかいなかった。

 

 また、八十川・安生の聴取によって判明した、運輸安全委員会内部の情報の齟齬。鹿津宮がこれを知っていたということは、「八十川と安生」か、「聴取担当者である鹿津宮花梨」、少なくともどちらかと密接な関係であることを示す。

 

 これも鹿津宮の信用に貢献する。話が嘘だったという可能性は、やはり否定されるのだ。

 

「あのバルタン、色が黒っぽいから変だと思ったけど……やっぱりダークバルタンなんだ。鹿津宮、あんたはミクソメをはじめ、ダークバルタンと接触してる。だから怪獣墓場で戦った個体からドラコ戦の話を聞いたってこと――」

 

「さあて」

 

 鹿津宮は椅子から立ち、ううんと唸って腰を反らせた。

 

「そろそろお(いとま)すっかな」

 

「は!?」

 

「なんでここで切り上げるんですか!」

 

 佐納の言うとおりだ。傍らのクイロも「いいのか?」と鹿津宮に尋ねた。

 

「本来はここで佐納を連れていく……予定だったんだが、よく考えたらお前ら特錬隊員になれるかもしれないんだよな。だったら、計画変更の余地がある。アイツと一回話し合いたい」

 

「アイツって、ミクソメさんのことですか?話の前にも言ってましたよね、『アイツの意向に沿わないのは困る』って」

 

「ああ。ミクソメとは連絡を取り合っている。ただダークバルタンの方がゴタゴタしてるみてえで、会ったのは斎場を除いて数えるほどしかない」

 

 計画の変更と、浦菱達が特錬隊員になる可能性があることには、どんな関係があるのか。さらに問いただしたいことが増えた。

 

「待ってください!」

 

 佐納はベッドから降りた。

 

「まだ話は終わってないじゃないですか。私はどうして連れて行かれる予定だったんです?何に利用されるんですか」

 

「ここでサヨナラってわけじゃねえよ。お前らは貴重な人材だからな。退院した後にでもクイロか、別のペガッサ星人を差し向ける。今日はもう遅え。3時だぞ、寝ろよ」

 

「だから寝られないですってこんな話聞かされて!」

 

「入院患者だろ、寝る以外にやることあんのか」

 

「通報する」

 

 浦菱は声に凄味を効かせた。鹿津宮とクイロが素早く反応する。

 

「話さないならあんたらを通報する。墜落事故について嗅ぎ回ってる奴らがいるって」

 

「大きく出たな。でも意味ねえよ。俺は顔を名前も全部割れてんだ。ここ惑星モシリスにいるってことを明かしても、俺はすぐに別の星に飛ぶ。そもそも地球からモシリスに来るのもペガッサの円盤で来たんだからな」

 

「ならクイロを……いや、地球にいるペガッサ星人全てが協力者だって通報する。クイロ、あんたは今、ダークバルタン無実派じゃないってテイで異星宥和政策を継続してるんでしょ」

 

「それは少々困りますが……その場合こちらは杏次の情報を売って信用を稼ぎましょう。『ペガッサ星人の誰々と会った』、『どこどこで知り合った』などの適当な情報ですが、証言者としての価値があると売り込めば、情報源として重用してくれるはずです。当の杏次はとっくに逃げおおせていますから無傷ですし」

 

「でもそれ以前にお前ら、本当に俺達のことを通報したいのか?」

 

 鹿津宮の言葉にどきりとした。浦菱の虚勢を、まんまと見抜かれている。

 

「……ごめん、ナシ。通報する気なんてない」

 

「やっぱハッタリかよ」

 

「あんたたちの抹殺に動いた組織Xに情報を渡せば、奏の身に降りかかる危険がなくなるかもしれない……ってちょっと考えたけど、冷静になったらそんな確証はなかった。組織Xと佐納にアクションをしかける勢力が同じとは限らないし」

 

「だよなぁ。それにお前ら二人とも、俺の話に聞き入ってた。姉貴が殺されたって話を聞きながら……ちょっとキレてただろ?」

 

 鹿津宮はなぜか得意げだった。余裕しゃくしゃくな様子に苛立ちながらも、「その通りよ」と浦菱は同意する。

 

「あんたたちの話には信憑性がある。八十川さん達と会ったこととか、ドラコの討伐を知ってること。他にも、乗客の中で衰弱死が出なかった、って違和感は私も感じてたし、真剣に事故のことを調べてるってのはわかったの」

 

 衰弱による死者がいないという違和感に気づいたのは、佐納の発言がきっかけだ。イメルに派遣された経験がある彼女は、あの星が地球の冬と同じくらいの気温であることを知っていた。

 

 佐納の方を見ると、入院着の側面をきゅっと握り込んでいた。

 

「鹿津宮さんの『ダークバルタン無実説』が正しいという保障はありません。けれど、今世間で『ダークバルタン犯人説』が当たり前のように行き渡ってる状況はおかしいです。そう思ってしまうくらいには、信憑性があるな話でした」

 

「だからこそ、正しさを貫徹しようとした花梨さんが殺されるのは許せない」

 

 続けた浦菱の言葉を聞き、鹿津宮は静かに瞳を閉じた。しかしすぐに薄く開き、疑いの目線を向ける。

 

「たしかに、白銀たちはシルバーの主張を通すために反対の思想を持った姉貴を殺した。真実に蓋をして都合のいい嘘を貫くための工作だ。でもそうすれば、地球はシルバーバルタンという強い後ろ盾を獲得できる。後ろ盾があれば、他の異星人から脅かされなくて済む。客観的にみれば、地球を守ろうとしたんだ」

 

 まるで心の底から正しいと思っているかのように鹿津宮は言う。

 

「だから俺は意外なんだよ。地球の平和を守る。お前らが所属してるS4と同じ目的だろ?」

 

「平和なんか守れません」

 

 佐納がぴしゃりとはねのける。

 

「シルバーバルタンは地球人のこと、ダーク殲滅のための小間使い程度にしか思っていないはずです。友好関係が欲しいという地球側の心理を利用して、元は同胞だったダークを滅ぼすよう仕向ける。鹿津宮さんの予測が正しければ、自作自演をしてまで……。そんな種族が、心の底から地球の平和を願うわけない。むしろ関係をもったら終わりです。侵略、あるいは隷属させる選択肢に、地球という惑星が入るだけ」

 

 浦菱も同じ意見だった。シルバーバルタンは信用ならない。

 

 鹿津宮姉弟が唱える『ダークバルタン無実説』は筋が通っている。花梨が殺され、弟の杏次も命を狙われたという状況、航行機事故を取り巻く不可解な要素、クイロとミクソメの証言などが信憑性を高めている。

 しかし、あくまで『ダークバルタン側』の意見ということを忘れてはならない。シルバーは「ダークは地球を狙っている」と主張した。それと同じように、ダークもまた「我々は無罪だ」と訴えているに過ぎない。明確な証拠には乏しかった。

 

 すなわち、シルバーバルタンからの話が実は正しい、という可能性も捨てきれない。捨てきれないが、ダーク討伐に地球を頼っている現状は、「地球人を小間使いとしか思っていない」という佐納の言葉がどのみち正しいことを示す。浦菱の中に、シルバーに対する信頼感は毛ほどもなかった。

 

(そもそも、どちらが正しいかなんて)

 

 拳の内側で爪を立てた。もとはダークとシルバー、バルタン星内における種族間の対立構造だった。しかしそれが拡大し、全く無関係の地球に協力を依頼する。その意図がわからないし、道理に悖る願い出だとも思う。もともとは自分の惑星の問題ではないのか。それが飛び火して、こっちは大切な人を失ったのだ。

 

 野笠(ノガサ)は、篠山(シノヤマ)は、バルタン星人に殺されたのだ。

 

「奏の言う通りよ。白銀とかいう男の組織は見通しが甘い。そんなあっさい思考で動いてるくせに、シルバーの主張は維持しておこうと必死になって動いて、人まで殺す姿勢が何より……キモくて仕方ないって言ってんの」

 

 ぶはっ、と鹿津宮が盛大に吹き出した。

 

「キモいときたか!っはは!いいねえお前」

 

「正義の心、とか期待した?」

 

「これっぽっちも」

 

 鹿津宮はくっく、と笑いの余韻を引き摺る。

 

「安心しろよ。俺達もお前らとの縁は切りたくねえ。話の続きは今度してやる。そうだな、退院するタイミングでもう一度接触するさ。俺達の話を聞くかどうか、考えておけよ。佐納は、それまでせいぜい警戒して過ごせ」

 

「でももう少し――」

 

 食い下がろうと浦菱もベッドを降りるが、鹿津宮らの足下には既にダークゾーンが開いている。危害を加えるための能力でないことはわかっているが、やはり宇宙空間をくり抜いたようなこの暗闇には身がすくむ。

 

「では」

 

「またな」

 

 鹿津宮とクイロは、闇に吞まれて消えた。残ったのは、真夜中の静けさだけ。

 

「唯ちゃん」

 

 佐納は、不安げな瞳を向けた。

 

「なんか私……頭パンクしそう」

 

「私も」

 

 ベッドに腰を下ろす。話に耳を傾けていただけなのに、思ったよりも疲れていた。

 

「これから……どうすればいいんだろう」

 

「また、クイロさんの方から来てくれるって言ってたけど……」

 

 話を聞くかどうか考えておけ。鹿津宮はそう言った。だが、選択肢など一つしかない。

 

「鹿津宮の奴、引き際をわきまえてるなぁ」

 

 佐納の身に降りかかる危難の対策も講じられないまま、鹿津宮達の行動の真意も不明のままだ。

 彼らは他言無用の情報を開陳した後、中途半端切り上げた。これは浦菱達にとって、目の前に餌を垂らしているのと変わりない。食いつかずにはいられない、大きな餌を。

 

「正直、聞くしかない」

 

「やっぱり、そうだよね」

 

 鹿津宮杏次。ペガッサ星人クイロ。この二人によって、自分たちの命運が思いがけぬ方向に傾けられた。その行く先を知るには、もう一度会って話を聞かなければならない。

 

 佐納の言った通り。言葉そのままの意味で、頭がパンクしそうだった。

 

 ダークバルタン。それは特錬隊員が今後殲滅作戦に取り組むと予想される敵性外星人。

 ()()()

 

 地球に対する明確な害意を持ち、モシリスにおける襲撃、及び湖田が失踪した航行機墜落事故の主犯とされる存在。

 ()()()

 

 鹿津宮の話はそれらを全て覆し、日本政府にコンタクトを取ったシルバーバルタンを逆に糾弾する内容となっている。それどころかダークバルタンは被害者であり、怪獣墓場では浦菱達を援護してくれた可能性すら浮上した。

 であれば、モシリスでEXゴモラとの戦闘後に仕掛けてきたあのバルタン星人もシルバーということか。体色が黒っぽかったのは、おそらくダーク族に見せるための偽装工作。

 

 敵は、ダークバルタンではなくシルバーバルタン。

 

――ダークバルタン無実説の拡大。

 

 鹿津宮はそう言った。ミクソメも「地球人の疑いを晴らしたい」と話していたらしい。まるでダークが正義の味方であるかのように話す。実際、浦菱と佐納も特錬試験で命を救われたのかもしれない。

 

 だが。

 

 浦菱は、ベッドに拳を振り下ろした。ばすん、という音に、佐納がたじろぐ。

 

「唯……ちゃん?」

 

「……ごめん。整理、できなくて」

 

 たしかにダークバルタンは悪くないのかもしれない。バルタンという種族にとっての戦闘要員であり、苦しい境遇だった。だからこそ、独立の道を選びシルバーと対立する。それは理解できる。

 しかし、その諍いに地球は全くの無関係であったはずだ。なのに、どうして消息を絶つ人間が出なければならない。

 

 湖田と殻島はどうして。

 

 何より、失われた命にどう折り合いをつけたらいい。彼らの死は、不幸な事故でしかないのか。

 

 航行機の乗客は。

 

 野笠幸彦(ユキヒコ)は、篠山朋音(トモネ)は。

 

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