ハッピー至上主義のヒロアカ冒険譚   作:もーまんたい

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墓参りが長すぎたので、分けました。


夏が始まる

 

墓参りの後。

 

その日、初めて俺は夢を見た。

 

ミッドナイトを神テクで昇天させた後、深い眠りについた俺。今まで、夢を見る暇も無かったが、母さん達に報告して余裕が出てきたからだろうか。

 

 

夢の内容はーー

 

ーー父さんと母さんのものだった。

 

 

最初は、なんてことのない日常。

 

2人と飯を食って、寝て、楽しく喋って、寝た。そんな、夢だった。何だか、寝てばっかな夢だったな。

寝てるのに、寝てる夢見るって睡眠不足が極まってるな。

 

 

次に、旅行の思い出。

 

俺が運命の修復力に打ちひしがれていたところ、それを見かねた父さんが旅行に連れてってくれたんだ。ホントは死ぬほど忙しいのに、わざわざ俺のためだけに、休みを取って。医師がそんな自分勝手に休み取っちゃダメだろ。

 

そう言ったら、職場の人に頼んで代わって貰ったみたいで、大丈夫らしい。それは、その人が大丈夫じゃあないだろ……。

 

結局、旅行に行くことになった俺たちは、北海道へと飛んだ。美味いもんを食べて、露天風呂に浸かったら、少しやる気が出た。

父さんも母さんも、そんな俺を見て、嬉しそうに笑ってた。俺もそれに釣られて笑ってしまう。何がそんなにおかしかったのか、今ではわからないけど、泣くほどに笑ったさ。

 

 

そして最後はーー

 

 

2人を失った記憶だった。

 

 

忘れられもしない、いや、忘れてはいけない記憶。思い出したくない記憶だが、そこには2人との約束が詰まっていた。

 

 

 

 

アレは、俺たちが広島へ旅行に行っていた時ーー

 

 

 

「うぉおおおおおお! ついたぜぇ、広島!!」

 

飛行場まで電車で2時間。

飛行機で、3時間。

 

合計、5時間の移動を終えた俺は叫んでいた。

 

「モブ男、広島は美味いもんがいっぱいあるぞ! 行くか!?」

「行こうーー!!」

「出発進行だーー!!」

 

俺と父さんは、長距離移動の疲れから、逆にテンションがフルマックスを超えてしまい、テンションが壊れていた。

行こうぜ! 一欠片の財宝を探しにな!!

 

「待ちなさい」

「「ぐえ」」

 

父さんとの飯屋巡りは母さんによって阻止された。首根っこを掴むのやめにしない? だって、結構、痛いんだよ?

 

「先にホテルにチェックインしてから、ね?」

「「了解しました! 軍曹ッ!!」」

「うむ、よろしい……では、作戦開始!」

「「ラジャーッ!!」」

 

母さんも別に楽しみじゃない、ってわけでもないみたいで、ノリノリだ。こうして、俺たちは軍曹の指示に従い、泊まるホテルへのチェックインを済ませた。

 

「では、次の任務を与える!」

「「イエス、マム!!」」

「存分に、広島を楽しみたまえ……諸君」

「「イエェェス!マムッ!!」

 

母さん(マミィ)からの指示によって、俺たちは広島を存分に楽しむことにした。いや、その前からその気だったが……こういうのはノリが大事なのだ。細かいことを気にしちゃあいけない。

 

「父さん、父さん! コレ見てコレ! うんこ売ってる!うんこ!」

「おいおい、こんなの売ってたらーー買っちまうだろぉ!」

 

俺がとぐろを巻いた龍のお土産を、持ってきて、うんこと叫ぶ。それを見て、俺に続いて買いに行った父さん。

 

うちでは大体いつもこんな感じだ。

 

父さんと俺は5本のとぐろを巻いた龍を買い、その店を出た。もちろん、1本は母さんのだ。

母さんは、とぐろ巻き龍こと糞をもらって、笑っていた。

 

「母さん母さん! 見て見て!」

「「野糞ぉーー!!」」

「…………ブーーーーッ!!」

 

俺と父さんは、2人でとぐろ巻き糞龍こと一本野糞を地面に置き、その上でヤンキー座り、いや、うんこ座りをしていた。

お茶を吹き出す母さん。

 

「……あはははっ、それは……くくくっ……あー、ダメ……こんなので笑うわけには……ぷぷっ……ぷぅ」

 

このクソくだらないギャグで笑うのが、嫌なのか、母さんは笑いを堪えていた。もちろん、こそに追い討ちをかけないーー俺たち親子ではないのだ。

 

「「おいおい、ケツにくっついちまってるぜぇ!」」

 

俺と父さんがうんこ座りから、立ち上がり、くるっと母さんの方にケツを突き出すと……

 

肛門の辺りにつけられた野糞龍。

 

「ブーーーーッ!! や、やめ……くくくっ、くぅ……てか、それ向き逆ぅ……はぁーー、笑いすぎて、()()()()……」

 

野糞龍は、平たい面が俺たちのケツについているため、とんがり部分が母さんの方を向くようになっている。

 

「コレは母さんのだったのか……」

「プププッ、って、んなわけ、あるかーい!」

 

お腹が痛い発言もといフリをキャッチした俺は、すぐさまリリース。母さんも笑いながら、ツッコミを入れてくる。

 

「その早いフリの感知、そしてツッコミ……流石、俺の息子と奥さんだ。しかし、その恐ろしく早いギャグ……俺でなきゃ見逃しちゃうねぇ」

 

すでに、俺が伝授した技を使いこないしているだと!?なんて人だ、伊達に医師ってわけじゃーねぇみたいだな(?) やるじゃねえか!

 

「……って言うか、2人共、このギャグのためだけに……4個も龍、買ったの?」

「「…………」」

 

もちろん、その通りである。

ケツにつけた龍と地面に置かれた龍、計4個。

1個、5000円のとぐろ龍。

つまり、このギャグには20000円の価値があるってことだ。

 

「……よし、行くか」

「そうだね、父さん……」

 

さっきまで笑って死にそうだった母さんの顔が、般若のようになっていく。

 

「待ちなさい」

「「ひぇ」」

 

命だきゃ、勘弁を!何卒、なにとぞ!!

 

「コレは、自分たちでお土産として配りなさい。そして、辱めをちゃんと受けて、自分達のやったことに価値があったのか、確認しなさい」

「「はい……」」

 

父さんは、コレ職場で配るのか……と嘆いているが、5000円の価値がある野糞だぞ? 貰って……喜ばないわけがないだろ(確信)。

 

「父さん、俺が友達に配って来ようか?」

「ま?」

「父さん、その歳で、ま? は、辞めてくれよ……流石に若作りキツいって」

「ま?」

「うん」

 

喜びのあまり、ま?しか言えなくなった父さんから野糞を友達配る約束をした。

じゃあ、今度、学校で配るかぁ……。

 

5000円の値札はつけたままにしとこ……。

 

 

 

露天風呂。

 

ゴツゴツとしたまばらな岩たち。

 

広い。

 

湯気立ち昇る空間。

 

そこに、ポツンといる2人の親子。

 

「うはぁぁーーー、きっもちぃーー」

「そうだなぁ、やっぱり露天風呂は良いなぁ」

 

2人のおっさんがいるように感じるだろうが、1人は子供である。もっと正確に言うと、よりオッサンぽい、第一声のやつだ。

 

俺と父さんは、明日も楽しむために、今日の疲れを取ろうと、露天風呂へ来ていた。

 

長時間の移動。

それに加え、昼間の買い物。

 

楽しかったが、疲れた。

 

そんな旅行の疲れを取り去り、楽しい思い出だけを持って帰ろと、疲れを癒しに露天風呂へと深く浸かる。

 

「モブ男、ちょっと良いか?」

「ん? なに?」

 

父さんがいつになく、神妙な顔つきで話しかけてくる。

 

「父さんと母さん、無個性だろ?」

「うん、そうだね」

 

そう、2人は無個性だ。

つまりーー

 

「モブ男も、無個性になると思うんだ……」

「まあそうなるね」

 

ーー無個性。

 

この世界に降りたって、どんな個性かと期待していたが、俺は無個性なのだ。

 

しかし、俺は気にしない。

だって、無個性でも夢を叶えた人達(キャラ)を知っているから。

 

まぁ、俺の場合は転生特典があるから無個性ってわけでも無いんだけどな……。

 

「そうなったら、学校でーー」

「気にしてないよ……無個性でも。それに俺は、2人の子供でよかったって、幸せ者だって、思ってるから……」

「モブ男……」

 

そうだ、個性なんてなくっても大丈夫。

 

「それに、父さんと母さんみたいに、お医者さんって道もあるし、今の世の中、ヒーローになる人以外、個性なんて必要ないんだしさ!」

 

にひっ、と俺は笑って言った。

 

「ごめんーーいや、ありがとうな……モブ男……うっ」

「なーに、泣きそうになってんのさ! もう疲れも取れたし、部屋戻ろ。母さんだって待ってるだろうしさ!」

「ああ、そうだな、戻ろうか……」

 

 

 

部屋での食事にて。

 

「うぉぉん、めいちゃん! 俺たちの子供はああ!! 優しい子に育ったヨォォォ……」

「はいはい、わかったから」

 

父さんが、母さんの名、影山メイの名を呼びながら、母さんに泣いて抱きついていた。それを、はいはいと慰める。

あの露天風呂の後、ホテルの自室にて夕食をとっていた俺たち。そこで、父さんが酒を飲んでしまったのだ。

 

父さんは泣き上戸なので、調子にのって飲み過ぎると、すぐこんな感じになる。それを慰める母さんも毎回セットだ。

 

「よかったね、無個性でも良いって言って貰えて……」

「よがっだぁぁ〜〜……ぐおおおおおお」

「嘘だろ……今の会話から寝に移行するのか!?」

 

酔っ払いってめんどくせー……。

母さんに慰めて貰って、そのまま寝てしまった父さんに俺は驚きあきれたが、母さんはいつもの事と、ズルズルと布団の方へ父さんを引きずっていった。

 

父さんを寝室に運び込んだ母さんが戻ってきた。

 

2人で食事を楽しむことにしよう。

多分、明日になって飲まなきゃ良かったと、後悔する父さんに料理の感想を伝えてあげるために。

 

 

「でも、本当に良かったの? ……モブ男」

「ん? 何のこと?」

「無個性のこと……」

 

どうやら母さんと結構、気にしていたみたいだ。まあ、こんな社会だしな。ヒーローに憧れるのが当たり前、個性持ってて当たり前。前世から記憶持って方からしたら、無個性(こっち)の方が普通なんだけどな……。

 

「あー、全然気にしてないって」

「父さんの前じゃないから、本当のこと言っても良いのよ?」

「嘘じゃないよ、ほんとに2人の子供でよかったって思ってるし……それに、個性なんか持ってなくても、2人の子供として生まれて来れただけで、俺は幸せだよ……」

 

ほんとに、幸せ者だ。

こんなに明るい家族に出会えて。

 

個性がないのは、ちょっと残念だけど、そんなものよりも良い家族に巡り会えた。

前世の記憶があるからこそ、わかる。

 

それに、個性はなくとも、俺には強力な転生特典がある。

だから、これ以上求めるのはお門違いだ。

 

「そう……うっ、よかった……本当に……」

「何で母さんまで泣いてるのさ!? もー……はいはい、よしよし」

 

俺は母さんに抱きつかれながら、背中をさすって慰めた。いつもとは逆になっちゃったな。

 

いつもは俺が慰められる方だ。転生して精神年齢は上がっているはずなのに、体に精神が引っ張られているのか、とても精神が幼く、脆い。そんな俺を慰めてくれたのが、母さんと父さんだった。俺が運命に打ちひしがれていたとき、2人が抱きしめて、頭を撫でてくれた。

 

だから、今度は俺の番だ。

 

俺は母さんが落ち着くまで、背中をさすって慰め続ける。

落ち着いてから、食事を終えて、寝る準備をしてーー

 

その日は、家族3人で川の字になって寝た。

 

 

 

 

そして、次の日。

 

俺はミルコに会いに来ていた。

 

実際、会えるかどうかなんてわからない。

色々なキャラに会ってきた。

 

でも、その大半が運命を変えることの出来ないモブ。

 

そして、運命を変える力を持つ、主役達とは会うことすら出来ない。

ミルコは、どっちか分からないが、とりあえず会いに行ってみる。それで、会えなかったら、モブじゃないことが分かるし、会えたら、知り合うことも出来る。

 

モブの力だって、変えられると思うんだ。

 

サー・ナイトアイが言った。 

 

 

ーー未来は変えられない、と。

 

  

本当にその通りで、起こることは変わらない。

世界は、その事象が起こることを運命付けている。

だから、世界は変わらず、今日も運命を行く。

 

だが、同時に彼は言った。

 

 

ーー皆が強く1つの未来を信じ、紡いだ……その結果、未来が変わった、と。

 

 

多くの者が望めば、運命は捻じ曲がり、変わる。

ただ、コレは主人公へと集約された結果なので、よくわからない。実際に、皆んなの望みが、変えたのか、主人公の力なのか、それとも、両方なのかはわかっていない。

だが、俺はコレに賭けている。

 

強力なチート能力も何もかもが、無意味。

 

ならばーー揃えるのみ。

 

変えられる力を、人を、モノを。

 

そのために……ミルコのいる広島へと来た。

 

 

元々、今回の旅行はコレが目的だ。

 

俺が広島に行きたいと言ったことが事の始まりで、初日は、観光地。2日目は、観光地でも何でもないミルコが住んでいる地方。

 

父さん達に、なんでそこ?と聞かれたので、俺は歴史を感じたいんだ、と言った。

集合住宅のある場所に何の歴史があるかは知らないが。

 

 

 

そうして、住宅街とミルコの家を訪ね終えた。

 

で、結論から言うと……会えなかった。

 

彼女はモブではない事がわかっただけだ。

でも、この情報には意味がある……はず。

じゃないと、やってられない……。

 

ミルコに会えないことは、まあわかっていったから良いのだが、モブかそうでないかは、3つの前提がある。

見せ場があるか、どれくらい登場したか、主役達との関係性の3つだ。

 

ミルコの場合は、見せ場があるってことと、登場頻度だ。また、堀越先生の性癖がつまっているため、多くのファンを魅了するキャラであることも理由としてある。

最終章では、戦いになくてはならない存在だったし、登場頻度も多く、ファンも多い。

 

モブなわけがない。

 

そんなことは、わかっていた。

けど、確かめて行くしかないんだ。

少しずつ、少しずつ。

 

 

 

一日中、集合住宅をうろつき回って終えた2日目。

 

俺たちは、電車に乗ってホテルへと戻ろうとしていた。

すっかり当たりは暗くなり、電車に乗っているのも少人数だ。

 

「…………」

 

俺は無言で、電車の外を見ていた。

 

ガタガタと揺れる電車。

 

父さんから頭を撫でられながら、いつもみたいに慰められながら、俺は電車に揺られる。

 

明るいホームに降りて、ホテルへ歩み始めた瞬間ーー

 

 

 

 

ーーそれは突然の出来事だった。

 

 

 

街にーー巨大な塊が落ちる。

 

 

それにいち早く気づいたのは、俺ーーではなく……

 

……父さんと母さんだった。

 

無個性の2人だからこそ、何の力も持たない2人だからこそ、有していた危機感能力。

その全てを自分が助かるためでなく、子のため、息子のために使う。

 

俺は、2人に押されーー飛ばされた。

 

「父さんッ、母さんッ!!」

 

飛ばされながら、2人に手を伸ばす。

 

届かない。

 

時がゆっくりと流れる。

そんな中、短い手を必死に伸ばすが、2人には依然として届かない。

そんな時ーー2人の顔が見えた。

 

ホッとしている顔。

 

2人の背後から、建物の瓦礫が、崩れ落ちてくるのが見えた。

 

ダメだ……ダメだダメだダメだッ!!届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届け届けぇえええええええええええええッッッッ!! 

 

2人が瓦礫に呑まれていく。

 

そして、時が動き始めた。

 

瓦礫の風圧で、俺は吹き飛ばされる。

 

 

「う、うっ……」

 

俺はその場に倒れ込んでいた。

だが、すぐに立ち上がろうとする。

 

よろよろ、とふらついた足つきで。

 

瓦礫に呑まれた2人の名を呼びながら。

 

「と、父さんッ……母さんッ……」

 

何度も倒れながら、周囲を確認する。

 

しかし、辺りに2人の姿はーーない。

瓦礫で作られた空洞が目に入る。

 

ココだ、そう直感が叫ぶ。

 

2人を救うべく、俺はその中へと進んで行く。

 

 

 

そして、2人を見つける。

2人は抱き合っていた。

 

まるで、最後の挨拶を済ませたように。

 

「父さんッ!母さんッ!!」

 

今助かるからね、そう言って駆け寄る。

2人は俺のことを見て、一瞬嬉しそうにするが、ハッと何かに気づいたようで怒鳴る。

 

「来るなッ! モブ男ッ!!」

「来ちゃダメよッ!!」

「何でッ!」

 

頭ではわかっているはずなのに、俺も怒鳴って返してしまう。

 

「こっちは危ないんだッ! 今は大丈夫でも、もうすぐ崩れるッ!! だから、来るなッ!!」

「逃げてッ、モブ男ッ!!」

「む、無理だよ!」

 

そんなの無理だ、崩れそうな所に2人を置いて行くなんて。俺が見捨てられるわけないじゃないか……!

 

「ダメよ! 逃げて、モブ男ッ!」

 

む、無理だ……逃げれないよ……。

 

俺が母さんの言葉に首を横に振ると。

少し考えた様子の父さんがため息をつき、言う。

 

「まあ無理だよなーー……俺たちだってモブ男だったら無理だ」

 

父さんが、ため息をつき、納得したような声を出す。

母さんに咎められるが、それを制止し、言葉を繋げる。

 

そうだよ……だからーー

 

「ーーけどモブ男……お前も逆の立場になって考えてみろ」

「…………ッ」

 

ーー理解してしまう。

わかってしまった……今1番、理解したくないことを。

 

俺が2人の立場なら……逃げてほしい。

生きてほしい。

自分を置いていったとしても……幸せになってほしい。

 

「でも、だからこそ、俺たちもわかる。

 逃げられねーよな……。

 置いてけねーよな……。

 でもなぁ……モブ男。お前がヒーロー達を呼んでくれたら、父さん達、助かるかも……しれないんだぜ?」

 

父さんはいつものふざけた姿からは、考えられないほど真剣な表情で、俺に言った。

 

「だから、外行って、呼んで来てくれるか?」

 

理に適っている。

だが、わかっちまうんだよ。

 

何度も、運命と対峙した俺だから……。

2人が助からないことは……。

 

「い、嫌だ……2人を置いてくなら、俺もーー」

「モブ男、それはダメよ」

 

俺も一緒に死ぬ、その言葉は、母さんによって遮られる。

 

「そうだなー、そうなると平行線だなー……」

「モブ男、ほんとに呼んできてくれないの?」

「い、嫌だ……」

 

うーん、と考える父さん。

 

俺も考える、彼らが助かる道筋を。

 

しかし、思い浮かぶのは、自責の念ばかり。

 

 

ーー俺のせいだ。

 

俺が運命なんて変えようとしたから……。

 

こんなら事なら運命なんてーー

 

 

「まぁ、よく考えたら、別に悪いことでもねーかもな! 夫婦同時に逝けるなんて、中々ないぞ? はっはっはーー!!」

「ふふ、そうね」

 

どこか嬉しそうに笑う2人。

そんな2人を見て、俺は憤りを感じた。

 

な、なにを……。

 

「ーーなに、ふざけた事いってんだよ!! 今そんな場合じゃないだろ!!」

 

この後に及んでふざけ始める父さんと母さんに、俺は怒鳴り散らす。ふざけるな、と今はもっと考えるべきことが……ある。あるはずなんだ……、そう言って瓦礫を退かそうと手を動かす。

 

「モブ男……父さん達はな、お医者さんだ……。

 自分たちがもう助からないことは……父さん達が1番わかってる」

「わからないだろ! 助かるかもしれなーー」

 

血が、大量の血が……俺の目に飛び込んでくる。

瞬時に理解してしまう。

 

……助からない、と。

 

コレじゃあ、コレじゃあ……こんなんじゃ、瓦礫を退けても……こんな事、こんな事が……ダメだ!!

 

「ダメだ!! まだ逝っちゃダメだ!! まだ伝えきれてないことがいっぱいあるんだ!! だからーー」

 

「よく聞け、モブ男」

「聞いて……モブ男」

 

2人が頼む、最後に……と語りかけてくる。

もうコレが最後の会話になると、両親からの最後の会話。

もう2人の声も姿も見れなくなってしまう。

 

嫌だ!と叫びたくなる。

 

けど、2人に残された時間は、数分か数十秒しかない。この数十秒だけは無駄に出来ない。

 

ーーだって、2人と話せる最後の時間なのだから。

 

だから、俺はーー静かに頷いた。

 

「……ゔん」

 

涙で目の前がいっぱいになる。

 

「モブ男、父さん達はそれが何かわからなかったけど、やりたい事があるんだろ? お前のやりたい事をやりなさい。そして、どんな事があっても成し遂げろ。それが父さんとの約束だ……。

 それとな、父さんと母さんはお前の中で生き続ける……だから、一年に一回は墓参りしに来い、そこでどんな一年だったか教えてくれ」

「……ゔん」

 

父さんは最後にそう言って笑った。

 

「母さんからはね……そうね……言いたいことは沢山あるけど、父さんと同じよ。あなたのやりたい事をやり遂げなさい。

 ……あとは、母さんと父さんは、どんな結末になろうと、あなたのことを見守っているわ。だから、どんなことでも挑戦しなさい。父さんと協力して少しだけなら、手伝ってあげるから……」

「ゔん」

 

 

 

そして、2人が口を揃えて言う。

 

「「愛してる、いつまでも」」

「……ゔん」

 

 

 

死に際でさえ、彼らは俺を愛してくれた。

その言葉に、愛に、俺は答えられただろうか。

 

ーー答えは出ない。

 

「生きろ、モブ男」

「生きて、モブ男」

 

俺は何も言わず、走り出す。

 

涙で、前が見えなくなって、転んで、つまづいても……生きようと、もがいていた。

 

だってーーそれが2人とした最後の約束なのだから。

 

 

走って走って走って……走り抜けたーー

 

 

ーーそこで、俺は目覚める。

 

 

 

目が濡れていた。

無意識に涙が出ていたのだろう。

 

濡れた目を擦り、違和感を感じながら布団をまくる。

 

ーーミッドナイト先生が布団の中にいた。

 

すーはーすーはー、と俺の胸筋に顔を埋め、息を吸い込んでいる。

 

「ぐへへへ……あっ」

「…………」

 

やり直すために、一度、布団を元に戻す。

変態は、布団で覆われ、消えていった。

 

まだ目が覚めていなかったみたいだ。

そろそろ、起きなきゃな。

 

もう一度、被せた布団をめくる。

 

「すぅぅぅぅぅ」

「…………」

 

先生と目が合う。

マズい、バレたって顔してますけど、バレないとでも思ってたのか……? てか、さっきも目合いましたよね、コラァ?

 

「……お、おはよう」

「…………」

 

何やってんだ、アンタ……(真顔)。

生徒に手を出したら、それはもうダメじゃん。

英雄(ヒーロー)から犯罪(ヴィラン)になっちゃってんじゃん。

 

「……何やってんですか、ミッドナイト先生」

「……いやーー、あははは……その、一回スッキリしとこっかなって……いやーー、良い胸筋でした……あははは……何言ってんだ私」

「いや、こっちのセリフ」

 

良いお手前でした、みたいな感じで、お礼を言うな。自分でも何言ってるか、わかんなくなっちゃってんじゃん。

ホント、こっちのセリフだからそれ。

 

「で、何でスッキリしようとしてんですか?」

「もう、好き過ぎて……耐えきれませんでした……」

「はぁー、コレからはやめてくださいよ?」

「すぅぅぅぅ……はい」

 

アンタやめる気ないだろ?

返事の前に、吸ってんの聞こえてるし、見えてるから。

 

ちなみに、言っとくけど。

はぁー、死ぬ時はこの胸筋に挟まれて死にたい、とか言ってるけど、アンタほんとに締め殺されそうになってるからな?

 

俺が寝ぼけて、きゅっ、ってしただけで体へし折れるから。

マジでやめて。

先生、殺したとかになったら、もう取り返しつかないし、俺も死んじゃうから……。

 

「わかったわよ、もうしないから……最後に一回、吸わせてくれない?」

「じゃあ、最後の一回ですよ? コレで忍び込まないで下さいね?」

「うしっ」

 

いや聞いてないし。

つか……この顔やめる気ないな……。

俺には、わかる……。

 

明日も布団の中に潜り込んでいる姿が、すでに見えてる。運命と戦っている俺だからこそ、未来を正確に予測することが出来る。

 

ガチで見えるわ。

先生が、布団に潜り込んでる姿と、俺に締め殺される未来が。締め殺されても、今みたいに鼻の下伸ばして死んでるんだろな……。

はぁー、しょうがねえ……。

 

「先生、そんなに筋肉好きなら、いくらでも触って良いですから、マジで俺が寝てるときに、近寄らないで貰っても良いですか? 先生、締め殺すことになっちゃうんで……」

「え」

「いや、もう布団には忍び込まないで下さーー」

「えッッッ!? マジで!? 触っても良いの!? いくらでも!? うひょぉぉぉぉ!!」

「え、ちょっ、ちょまーー」

 

 

 

★★★★☆☆☆

 

 

 

すべてが終わった時、扉が開いた室内に夕焼けが差し込み、衣服(パジャマ)が乱れた俺はベッドの上で力なく横たわる。

 

「…………」

 

ミッドナイト先生の猛攻撃を凌ぎ切ることは出来ず、俺はされるがままに蹂躙された。そして、満足した先生は、リビングにて俺がいつもしている掃除、洗濯、料理をこなしている。ふんふんふーん、と楽しげな声が、リビングから聞こえてくる。

 

「…………」

 

もうすぐはじまる林間合宿。

 

しかし夏休みは、まだ始まったばかり。

あと、2週間。

 

俺は、生きて運命を変えられるのだろうか……。

 

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