ハッピー至上主義のヒロアカ冒険譚   作:もーまんたい

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物間寧人は否定する

 

 

 

生存キャラの死。

 

生存キャラとは原作で最後まで死ぬことなく生きているキャラのことである。モブにも生存キャラはいて、ソイツらは自身の力だけで生き残っているわけではない。偶然に重なる偶然。運命(すとーりー)によって生かされているのではなく、なんとなしに生き残っている。

 

 

じゃあ俺が原作改変したら?

 

 

答えは……死だ。

 

 

俺が最も恐れていること。死亡キャラを救おうとして生存キャラを殺したんじゃ、意味がない。

しかし、ソレを恐れているだけでは死亡キャラを救うことは出来ない。恐れているだけではダメだ。

恐れ、対策を取らねばならない。

 

 

俺が取った対策のひとつが「主役メンバーとモブメンバーでの合同訓練」。

 

放課後にオールマイトが来ないため、A組B組での合同訓練を開催した。原作に関わることが多い一方、モブの代表格であるB組。

 

何故、B組か。

 

それは2週間の彼らは1人もオールマイトと俺の放課後特訓を観に来なかった。学園中に噂が流れているにも関わらず、彼らは誰一人として来ようとしなかった。

運命の干渉かと思ったが、違った。

 

彼らは、浮かれているのだ。

 

彼らは未だ普通の高校生と何ら変わらない気持ちでこの場に建っている。入学初日に理不尽に晒されオールマイトからの鼓舞を受けたA組とは雰囲気が悪い意味で違う。

 

ーーこの高校に入れたことに。

ーーこの学園生活に。

 

浮かれている。

だから思い知らなければならない。

 

 

No.1を目指す者たちと自身の差を、壁を。

 

 

彼らに、

思い出されなければならない。

 

 

オリジン、自身の原点を。

 

 

ーー心から悔しいと、そう感じたとき。

ーー自分に絶望出来たとき。

 

君たちは()()から()()メンバーへと変わる。

 

 

俺は既に知っている。

モブから主役キャラへと成っていった者を。

 

 

ーー物間寧人(ものま ねいと)

 

 

A組に楯突きボコされる噛ませ犬かと思いきや、彼は"コピー"という強力な"個性"を持ち終盤で大活躍をする。

彼は体育祭にて思い知ったのだ。

 

 

No.1を目指す者と目指さぬ者(自分自身)の差を。

 

 

だから、たった1人で主役メンバー(A組)に楯突き、モブから主役へと成った。

 

 

だが、体育祭で気づいたのでは遅い。

この体育祭までの2週間で、1-A組は原作と違い、途轍もない成長を遂げるだろう。

その成長スピードを肌で感じらろ。

 

遅れるなよ、B組。

 

俺たちは全力でNo.1を目指している。

その差は、君らを死に導くこととなってしまう。

 

 

 

 

 

★★★★☆☆☆

 

 

 

 

 

昔から自身の個性がコンプレックスだった。

 

 

ヒーローは1人で何でも出来る。

 

でも、僕は1人では何も出来ない。

 

"コピー"、僕こと物間寧人(ものま ねいと)に与えられた個性だ。

1人では何も出来ない個性であり、ヒーローには向かない個性でもある。

 

幼稚園や小学校でもクラスメイトから言われた。

「お前の個性じゃ、ヒーローにはなれない」と。

 

もちろん、そんな事を言ってきた子には、その子の個性をコピーして仕返しした。

でも、仕返しの後に毎回のように言われた。

「この弱個性が!!」

その弱個性にやられてるんならお前らはもっと弱いじゃないか、と思っていたが、心では理解していた。

 

全くその通りだ。

 

ヒーローにはなれない個性。

 

だから、僕は周りをこけ落としていった。

自分よりもヒーローに向いている個性を持つ子を、自分のヒーローにはなれない個性で、否定した。

 

そんな事をしているうちに、僕の周りに人はいなくなってしまった。

 

そうして友人なんて足枷が無くなった僕は、雄英高等学校ヒーロー科への進学を叶える。

No.1ヒーロー・オールマイトが通った高校だ。

 

今まで僕を個性で見下していた連中を見返せた。僕の個性でもNo.1に近づけるんだぞ、と宣言してやった。

 

そして雄英では友達も出来た。

 

中学では出来なかった友達だ。

 

嬉しくなって調子に乗ってたら、同じクラスの女子に手刀で気絶させられたが、それでも何だか嬉しかった。だって個性で馬鹿にされたり、見下されたりしない。対等な友って感じがしたから。

 

 

だけど、僕は気づいてしまった。

 

 

ーー自身が浮かれていたことに。

ーーNo.1から遠ざかっていることに。

 

 

話題の1-A組。

ヴィランからの襲撃を受け、生徒たち自身がヴィランを撃退。オールマイト達ヒーローが到着するまでに全てを片付けていたクラスだ。

 

また、オールマイトから放課後に訓練を受けている子がいるクラスでもある。

 

彼の名は、影山モブ男。

 

雄英では時期No.1ヒーローとして名が挙がるほど有名だ。何故か雄英だけの噂に留まり、テレビなどでは取り扱われない。だから、みんな所詮噂だと考えた。

 

だから、訓練場にも行かなかった。

彼と会ったときに噂だったのか否かわかるだろう、と。

 

 

だが、その時はすぐに訪れる。

 

 

噂の影山モブ男がB組に来たのだ。

そして、彼はこう言った。

 

「B組とA組で体育祭に向けて合同訓練をしよう」

 

次期No.1ヒーローと名高い彼だったが、僕にはその凄さがわからなかった。オールマイトのようなカリスマ性があるわけでもない。No.2ヒーローのエンデヴァーのような威圧感があるわけでもない。

 

だから、あんな言葉を吐いてしまった。

 

 

 

 

彼から合同訓練を提案されたとき。

 

「B組とA組で合同訓練をしよう」

 

僕は彼に近づいていき、次期No.1ヒーローが何だって言うんだ。

全然強そうでも、何でもないじゃないか。と、楯突く。

 

「へー、君が次期No.1ヒーロー? 全然強そうに見えないけど。ヴィランを倒せるようにも、見えないね」

「まあ見た目は完全にモブのソレだからな」

「モブ……? 何を言ってるかわからないけど、僕たちと訓練したいんだろ? それ相応の態度があるんじゃないのかい?」

 

おお、良いねぇ、と彼が笑う。

 

気持ちが悪い、罵倒されているのにそれを理解していないのか、理解している上で笑っているのか、どちらにしろ気持ちが悪い。

 

「何を笑っているんだい? こっちには、君の提案を受けないって選択しもあるんだよ?」

「ああ、悪い悪い。物間くん……だっけか? 君は主役(ヒーロー)になれる奴だと思ってな」

 

は? と僕は声を漏らしてしまう。

 

その為にみんなココにいるんだろ? やっぱり次期No.1ヒーローも個性ばっかりで(おつむ)の方はからっきしなのかもしれないな。コレだから強個性の奴らは……。個性ばかりで頭を使うことを知らない。

 

「よし、合同訓練は合同訓練だが、トーナメント式の合同合戦にしようか。そっちの方が楽しそうだろ?」

「体育祭前に個性をバラしたい子は1-B組(こっち)にはいないみたいだけど? さっきから言ってるだろ、それ相応のた・の・み・方があるんじゃないのかい?」

「土下座でもしようか?」

「いや……そこまでしろとは……」

 

コイツ、プライドってものがないのか!? 次期No.1と呼ばれる者がすぐに土下座しようとするな! 

 

そう僕は叫びたかったが、彼が土下座の姿勢をすぐ取ろうとしたため、たじろぐ事しか出来なかった。

 

「ぐへっ」

 

調子に乗り過ぎたことで、僕に毎回手刀を叩き込んでくる暴力女こと拳藤一佳(けんどう いちか)に首への手刀を喰らう。

 

首に手刀をしても頸椎損傷か死かの2択しかないのに……手刀で人が気絶するなんてモブ辛漫画の見過ぎだ……。

 

「ごめんな。コイツちょっと、心がアレなんだわ」

「んにゃ、気にすんな。土下座で合同訓練してくれるなら、安いもんだ」

「そんな簡単に土下座する奴、初めて会ったよ……」

「そうか? 世の中案外、土下座で回ってるもんだぞ」

 

そんなわけあるか、そう言いたいが首が痛すぎて何も言えない。やっぱり次期No.1ヒーローは馬鹿みたいだ。お金で世の中回っているが、土下座では回ってないだろ。もちろん、言えないけど、心の中でそう呟く。

 

「でさ、合同訓練どうする?」

「あーー……嬉しいんだけどさ……体育祭前ってのもあるし、個性バレるのって不利じゃんか……だから少しだけ考えさせてくれない?」

 

暴力女こと拳藤さんは、彼の提案を断る気だ。

彼女の言っていることは正しい。でも、僕らは調子ずいた彼らをわからせなきゃいけない。

 

 

その時、僕の悪い癖が出た。

 

 

自分よりもヒーローに向いている個性を持つ子を、自分のヒーローにはなれない個性で否定する癖。

僕は自身の弱個性で、次期No.1ヒーローと呼ばれるこの男を、ヴィランを撃破した子達を、否定したくなった。

 

 

そして、言ったーーいや言ってしまった。

 

 

「戦おう、君達よりも僕らB組が上であると証明するために!」

「ちょっ……」

 

拳藤さんが僕の提案を止めようとした時。

 

「オォォォ!! いつになくやる気じゃねえか!物間!! 俺も戦うぜ!」

 

上手く熱血野郎こと鉄哲徹鐵(てつてつ てつてつ)が賛同してきた。その勢いのまま、B組男子が「やろう、やろう」と賛同の嵐が巻き起こりーー

 

 

僕らはーー合同訓練という名のリンチにあった。

 

 

調子に乗ったA組を負かしてやろうぜ!とノリノリのB組。体操着に着替えた後、全員で訓練場へと向かう。

 

訓練場には、数名の先生方の姿。

 

そしてーーA組。

 

ワイワイとしている僕らと比べて、静かで空気がピリついている。みんなが極限まで集中しているのがわかる。

 

地味目の少年がブツブツと呪文のように何かを唱えている。だが、その事を誰も文句を言わない。

その程度のことで乱れる集中ではないのだ。

 

メガネをかけた委員長っぽい男子が、深く息を吐く。吐き終わると、目つきが変わる。

 

普段麗らかそうな茶髪女子は、全く麗らかじゃない。

 

 

僕らはその空気に呑まれる。

 

 

イケイケヤレヤレといった雰囲気は彼らのピリピリとした雰囲気に打ちのめされた。賑やかさは無くなり、僕らを緊張感が包む。

 

そんな中、1人へらへらとしている男。

 

 

ーー次期No.1ヒーロー・影山モブ男。

 

 

彼が近づいてきて、

 

「よっ、全員集まったみたいだな。じゃあ、さっそく始めようか。合同訓練開始だ」

 

その合図と共に、合同訓練が始まった。

 

AB組合同訓練という名のリンチ合戦。

 

そのリンチ合戦は、体育祭の最終種目を模したトーナメント戦で行われた。

 

結果は……全敗。

 

B組には、誰1人としてA組に勝てた者はいなかった。

調子に乗ったA組をボコそうと挑んだ僕らは、彼らにボコボコにされ、この程度かと見下された。いや、僕らがそう感じた。

 

そして、僕らは気づいた。

 

 

ーー調子に乗っていたのは、僕らだ。

 

 

A組はこの合同訓練で得られるモノを模索し、それを得て帰った。僕らに与えられたモノはーー絶望。

圧倒的な差を見せつけられた。

 

No.1を目指す者とそうでない者の差。

 

上位ランクのヒーロー達は学生時代に多くの逸話を残していく。彼ら1-A組は、そんな日本を担うにふさわしい将来のプロヒーローたちなのだろう。

 

僕らもそんなヒーローになると夢みていた。

 

 

だが、そんな妄想(ゆめ)現実(絶望)へと変わる。

 

 

その日、1-B組の全員が枕を濡らしたことだろう。全員が妄想(ゆめ)から覚めてしまったのだ。

自身はNo.1ヒーローにはなれない、という事実を彼らに突きつけられた。見せつけられた。

 

 

ーーNo.1になる者はこういう者だ、と。

 

 

ココで彼らに夢を託せば……どれだけ楽になれるだろうか。僕らのNo.1ヒーロー・オールマイトのようなヒーローになるという夢を、主役である彼らへ渡せば、どれだけ……。

 

 

でも、それを許してくれるほどーー僕らのオリジンは甘くない。

 

 

ーーNo.1になれない個性だ。

ーーお前はヒーローになれない。

ーー無理だ、諦めた方が良い。

 

 

そんな自分自身の声を……否定する。

 

 

否定だけはいつもしてきたからね……。

 

 

僕は、この絶望を無駄にはしない。

 

 

この"絶望"を燃やして、No.1になってやる……。

 

 

否定してやるよ、1-A組……。

 

 

……何度、君達に否定されようとも。

 

 

……僕らが主役(ヒーロー)で君達がモブだ。

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

B組の教室。

 

クラスメイト全員の絶望が静寂へと変わったせいだろう。あの熱血野郎こと鉄哲徹鐵(てつてつ てつてつ)でさえも黙り込んでいる。いつもの賑やかさはどこへやら。

僕はそんな皆んなを見てニヤリと微笑む。

 

みんなはコイツは元気そうで良いな、なんて思っているんだろう。失礼な奴らだな……。

 

一瞬、ムッとなってしまったが、僕は皆んなのために教壇の前に立ち、爆弾を解き放つ。

 

 

「あっ、みんなに言っとくんだけど…………A組との合同訓練さ。今日も頼んどいたから」

 

 

沈黙が教室を流れる。

 

 

「「「ハァ!?」」」

 

全員が驚愕のせいか変顔をしている。

予想通りの反応に、僕は笑ってしまう。

 

 

ごめんごめん、と前置きをして、

 

「僕らはみんな、雄英ヒーロー科だ。それは1-A組も同じ。なら! 僕らだって彼らと同じ……いやそれ以上を!目指せるはずさ!!」

「「「…………ッ」」」

 

クラスに衝撃が走る。

自分達も到達できる、No.1ヒーローを目指してもいい、と自分達が欲していた言葉。

諦めかけていた夢に再び火が灯る。

 

 

皆んなの眼が変わった。

 

 

絶望したような眼から、希望を持ち絶望に打ち勝とうとする眼に。

 

ギラついた眼。

 

夢を叶える者達の眼、彼ら1-A組と同じ眼だ。

やってやるよ、と眼で語っている。

 

 

僕はそんな皆んなを、自分自身を、鼓舞するために……そして、夢を諦めるな、と全員へ宣言する。

 

 

 

 

「挑もう、何度でも。彼らが主役じゃない……僕らが主役だ」

 

 

 

 

僕が宣言から数秒して、

 

「ウオォォォ!! その通りだぜ、物間!! オレ達こそが主役だ!!」

「行くぞッ…!B組!!」

「おお!!」

 

静寂の中に投下された爆弾は上手いこと弾け、B組全員のやる気を回復させることに成功した。

 

 

良かった……成功だ。

 

 

もしも失敗していたら、友達を失うか、いじめられるか、の2択だったからね。危ないところだったよ……。

 

ふぅ、と安堵から息が溢れる。

 

そして、

 

僕はそれを扉の隙間から覗いている彼を一瞥する。

 

 

コレで良いのかい? と聞くように。

 

 

もちろん彼ってのは、影山モブ男くんのことさ。僕が朝イチで彼に合同訓練を申し込んだとき、「B組を鼓舞すること」を条件にもう一度、合同訓練をしてくれることになった。

 

もちろん、元からその気だったので、問題はない。でも、なぜ彼がそんな事を望むのかはわからなかった。彼の目的は何なのだろうか、そんな問いはどうでも良かった。僕らの目的の邪魔をしないなら、僕は利用させて貰うだけさ。

 

 

……僕らが主役(ヒーロー)になるために。

 

 

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