ハッピー至上主義のヒロアカ冒険譚   作:もーまんたい

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個性把握テスト

 

個性把握テスト。

入学式がなくなり、唐突に始まった個性把握テストは、誰もが予想していない方向へと向かっていった。

 

「最下位除籍って…!! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽過ぎる!!」

 

それは、個性把握テストの順位が最底辺の者をヒーロー科から追い出す、というものだった。

あまりにも理不尽な決定に、麗日はクラスメイトを代表して声を上げた。

 

「自然災害……大事故……身勝手な(ヴィラン)たち……いつどこから来るかわからない厄災……日本は、理不尽にまみれてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのが、ヒーローだ」

 

 

 

オールマイトという平和の象徴がいてもなお、収まらない犯罪。しかし、犯罪率が約6%というのは、前世の日本と同様程度の犯罪率であり、年間60万件の事件が起きていることになる。

 

ただし、こっちの日本の方が、重要犯罪、いわゆる殺人、放火、強盗、性犯罪などの割合は倍以上で、約30万件以上の犯罪が、重要犯罪だ。

 

こちらでは、大体10人に1人が、その重要犯罪に巻き込まれたことがあり、毎日、日本の何処かで、殺人、放火、強盗、性犯罪が起こっている。そして、それに加えて、個性による事故、前世の日本でも起きていた普通の事故、大事故、自然災害。

 

 

人々は常に、危機に晒されている。

 

 

だから、ヒーローはどんな理不尽(ピンチ)にも、立ち向かっていかなければならない。

 

 

 

「放課後マックで、談笑したかったなら、お生憎。これから3年間、雄英は、全力で君たちに苦難を与え続ける

 ……"Plus Ultra (プルス・ウルトラ)"(更に、向こうへ)さ」

 

ニヤリ、と相澤先生は、笑って麗日やひなたの反論に対して挑発で返して焚きつける。

 

「全力で乗り越えて来い」

 

 

肌を刺すような雰囲気。

 

A組を覆う空気が変わった。

 

入試のような、ピリピリとした空気。

 

全員が前を向きーー

 

ーー理不尽(ピンチ)を乗り越えようとしていた。

 

 

もちろん、俺も余裕をぶっこく暇はない。

今までの経験上、理不尽除籍される可能性は大だ。

 

1位を狙ってやらないと、変な自己紹介をしたまま消えた(フェードアウト)、ただのモブになってしまう。

 

それに、雄英で活躍してモブから主要キャラにジョブチェンすれば、より大きなストーリー改変も叶うかもしれないしな。

 

 

 

 

 

 

 

第1種目:50m走

 

ピピッ『3秒04!!』

 

飯田が脹脛のエンジンを使って全力疾走すると、驚異的な記録を叩き出した。しかし、当の本人は、何やら納得のいっていない様子だ。

 

(50mじゃ、3速までしか入らんな……)

 

 

 

飯田天哉(いいだてんや)

“個性”『エンジン』

見たまんまだ! 足が速い!

 

 

 

飯田に続いて蛙吹もゴールした。

蛙吹の記録は、5秒58。

 

「ケロ…」

 

速くも遅くもない、喜べない記録に、微妙な顔をーー多分、いや、微妙な顔して……ないな。

両生類系と爬虫類系、昆虫系の個性は、表情が読み辛いんだよ。蛙吹なんて、無表情に近い。

 

 

 

蛙吹梅雨(あすいつゆ)

“個性”『カエル』

カエルっぽいことは大抵、出来るぞ!

 

 

 

次は、麗日と尾白の番で、尾白は尾を使って麗日より早くゴールした。

 

ピピッ『6秒56』   

 

 

 

尾白猿夫(おじろましらお)

“個性”『尻尾』

頑丈で力強い尻尾が生えているぞ! 

オールラウンダーな個性だ!

 

 

 

ピピッ『7秒15』

 

尾白に少し遅れて、麗日がゴールし、測定器が麗日のタイムを発表する。

麗日は服と靴に触れて軽くして走ったお陰か、中学の時よりタイムが上がっていたらしく、麗日は息を切らしながら喜んでいた。

 

 

 

麗日お茶子(うららかおちゃこ)

“個性”『無重力ゼログラビティ』

触れたものにかかっている引力を無効化する!

ただし、キャパオーバーすると激しく酔う!

 

 

 

芦戸と青山が、スタートラインに並んでいる。

芦戸は裸足でクラウチング、青山は後ろ向きだ。

 

「フフ… 皆工夫が足りないよ。“個性”を使っていいってのは、こういう事さ!」

 

見るからにナルシストな男子青山は、後ろを向いてジャンプするとスタートの瞬間に腰のベルトからビームを噴射することで、高速移動をする。

 

圧倒的な速さと、個性の使い方に、クラスメイトが湧き上がる。

が、途中でビームが切れて背中から地面に着地し、もう一度ビームを射出する頃には隣で走っていた芦戸に抜かれていた。 

 

芦戸は、どうやら、溶解液を足裏から出して、スケートやローラーの要領で滑ったみたいだ。個性の使い方が、上手いな。

 

 

 

ピピッ『5秒34!!』

 

 

 

芦戸三奈(あしどみな)

“個性”『酸』

身体中から溶解液を噴出することができるぞ!

 

 

 

ピピッ『5秒51!!』

 

「1秒以上射出するとお腹壊しちゃうんだよね」

 

(((何だこいつ)))

 

「オムツ履けば、最強じゃん」

 

(((何言ってんだコイツ)))

 

俺が、漏らすことを前提に考えた発言をすると、クラスメイト達から白い目で見られる。

言いたいことが、あるならハッキリ言えぇ?

 

 

 

青山優雅(あおやまゆうが)

“個性”『ネビルレーザー』

臍からレーザーが出る!

持続時間がネックだ!

 

 

 

そして、次は爆豪と緑谷の番となった。

 

「爆速!!」

 

「へ?」

 

「ターボ!!」

 

「どわぁ!!」

 

駆け出しは両者、普通だったが、爆豪は途中で手を後ろに向け、掌から爆発を起こし、推進力を得ることで、緑谷を置き去りにして行く。

隣を走っていた緑谷は、爆豪の爆発に妨害され、だいぶ遅れてのゴールとなった。

 

ピピッ『4秒13!!』

 

爆豪は、自身の掌を見て、更に速くなれないかと、思案する。

 

 

 

爆豪勝己

“個性”『爆破』

掌の汗腺からニトロのような汗を出し爆発させる!

 

 

 

ピピッ『7秒02!』

 

走り終わった緑谷は息を切らしており、自分は他のクラスメイトとは違って“個性”を使いこなせないため焦っていた。

 

焦る緑谷を横目に、俺は自身の番に備える。

ソフトボール投げ同様、周りに被害が出ないように、最後に1人で走る許可を得たからな。

爆豪みたいに、隣のやつに迷惑かけたく無いし。

 

 

俺の前の2人が走り終え、ついに俺の番が回ってきた。

 

クラスメイト達の視線が突き刺さる。

さっきのモブ脱却の呼吸「弍の型・宣戦布告」が効いてるみたいだ。現在の50m走1位は飯田の『3秒04』か……。

 

 

 

 

なら、俺はーー

 

 

 

クラウチングをし、地面を抉り、駆け出す。

 

 

ピピッ『0秒01』

 

 

ーー1秒を切る。

 

 

 

確実に、1位を取るために、除籍されないために。

モブを卒業するために。

 

おお、と歓声が上がる。

 

 

 

 

ーーしかし、誰も俺に近づいて来よとはしない。

 

 

 

 

俺が近づくと、離れる。

磁石のN極S極同士のように。

 

そうなっている原因は……

 

……このくっさい体操服だ。

 

あと、黄ばんでるせいでもある。

相澤先生の体操服らしいけど、なんで古着を掘り起こしてきたのか、わからない。もっと、わからないのは、この汚い体操服を人に着させようとしていることだ。

この汚さが、理解できていないのか……?(困惑)

 

なので、相澤先生に、何で距離を置かれているのか、嫌味っぽく聞いてみた。

 

「それは、お前が自己紹介で滑ったからだろ」

 

ふーん、あくまで俺に非があると?

この体操服、こんなに臭いのに?(強者の風格)

 

「ああ、あの滑り具合は、スケート選手並みだったからな」

「ふ、ふーん……そんなに褒めなくても良いんじゃない?(負け犬)」

 

俺、あの人嫌いだわ。

新品じゃなくて、自分の古着渡すドケチ小汚なオジサンめ。

 

そう言いつつ、俺は先生から距離を置く。

あの人と、一緒にいるのは精神衛生面上、良くないからな。戦略的撤退ってやつだ(敗走)。

 

一応、言っておくが。

 

俺が、自己紹介をミスったからではない。

俺のせいではない(大切なことなので、2回言った)。

 

 

こうして俺は、ぼっちとなった。

体育でパートナーがいなくて先生と組まされていたようなものなので、元々、ぼっちと言えば、ぼっちなのだが。

先生からも離れてしまったため、話す人すら、いなくなってしまう。ぼっち(友達ぜろ)から、真のぼっち(周りの人ぜろ)に。

 

 

先生の元へ、帰るのことも一瞬考えたが。

あの人、嫌いだしな……(最近できた黒歴史で心を抉ってくるから)。

それに、ぼっちは次第に空気になっていくから、早めに友達を作りたいんだけど……無理そう。

 

 

俺は、どうにかクラスメイトとの間にできた壁を取り去るべく、思案を巡らせる。

 

 

はっ! その瞬間、モブ男に天啓が降りた。

 

じゃあ、脱げば良いじゃないかって……

……確かに。

 

は? 天才か? 天才だったわ(確信)。

 

 

俺は、くっさい黄ばみ体操服を脱ぎ捨て、みんなの方へ歩み寄る。上裸になることで、汚さとはオサラバ。モブ汚から、綺麗なモブ男へと。さすがに、ズボンは脱げないので、仕方なく履いている。

 

ん? 何で、みんな遠ざかっていくんだ?

 

俺が近寄ると、一定の距離を保つために、みんなが後ずさる。コントかと、言わんばかりに、一歩進むと、ニ歩分下がられる。

 

何? ズボンも脱げってこと?(半ギレ)

 

いや……まさか! すでに俺に臭いが染み付いている!? 

 

 

くんくん、と自身の体を嗅ぐ。

 

臭くはないと、思うんだけど……。

 

誰か、嗅いでみてくんない?

 

あ、無理? そうですか……。

 

 

 

 

こんな感じで、俺は、クラスメイトと距離を置かれ、ぼっちのまま個性把握テストを終えた。

 

原作通り、緑谷は指スマッシュで、相澤先生からの理不尽を乗り越えることに成功。

さすが主人公(ヒーロー)と言いたくなる、逆転劇だった。

 

 

ちなみに、俺は総合1位。

 

2位に、八百万。

3位は、轟。

 

最下位は、緑谷。

 

 

 

八百万百(やおよろずもも)

“個性”『創造』

生物以外なら、何でも作れる!

ただし、知識がないものは作れない!

 

 

轟焦凍(とどろきしょうと)

“個性”『半冷半燃』

左右それぞれで、氷と炎を出せるぞ!

 

 

緑谷出久(みどりやいずく)

“個性”『超パワー(ワンフォーオール)』

そのまんまだ!

自分の肉体が壊れる程のパワーを出せるぞ!

 

 

 

最下位の緑谷は、相澤先生の合理的虚偽によって除籍を免除された。

 

総合1位の俺は、除籍させることはなかった。

発表されるとき、心臓が口から飛び出るかと思うぐらい、緊張したからな。

ホッとしたのもつかの間、相澤先生から次問題を起こし(上裸になっ)たら、除籍にするからな、と謎の釘をさされた。

 

まあ、とにかく理不尽除籍はなかったからヨシとしよう。あとは、このくっさい体操服を返して、新品のを買うだけだな。

 

どこで体操服って買えるんだろ……。

 

 

 

 

 

★★★☆☆☆☆

 

 

 

 

 

入学式翌日の授業。

 

個性把握テストを、雄英の洗礼を受けたA組は、今日から始まる過酷な授業に震え上がっていた。

 

それも、記憶に新しい相澤先生の「これから3年間、雄英は、全力で君たちに苦難を与え続けるーー“Plus Ultra(プルス・ウルトラ)”さ」という発言が、原因なのだが。

 

 

「んじゃ次の英文のうち間違っているのは? おらエヴィバディヘンズアップ! 盛り上がれーー!!!」

「うぉおおおおおおお! よんべぇだぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

(((普通だ……普通じゃない奴いるけど)))

 

(クソうるせぇ)

(あっ、関係詞の場所が違う……ほんとに4番だ)

 

一限目のプレゼントマイクの授業は、難しいものの、普通と言えば、普通の高校と同じ内容で、普通の授業だった。

ほとんどのクラスメイトはホッとする。

 

相澤先生の発言が、ただの脅しだったことに今日になってやっと気づくことが出来たのだから。

 

一方、モブ男はーー

 

「(プレゼントマイク……貴様だけは絶対に許さん! 俺が除籍されない程度に授業を荒らしてやるぜぇ!! ゼハハハハハハハ!!!)」

 

など、と企んでいた。

 

プレゼントマイクのラジオにて、自己紹介の仕方を伝授され、見事に入学日に黒歴史を生産したモブ男は、プレゼントマイクへの復讐を実行する。

 

前世に比べて、科学技術が発達したヒロアカの世界。

文明(テクノロジー)の発展と伴って、難解になった学問達は、前世の知識しかないモブ男には、理解が困難だったが。

運命(ストーリー)と違い、勉強すれば、勝手に上がっていく成績を見て、のめり込んだ。

また、ヒロアカ世界の発達した科学技術(テクノロジー)は夢のような世界だった。

 

 

例えるなら、ドラ◯もんの世界だ。

 

意思を持つAIロボット達。

ブラックホールの引力に耐える素材。

0.01ナノの半導体。

太平洋に浮かぶ人工島<I・アイランド>

 

 

勉強さえすれば、その知識が、夢の科学技術(ひみつどうぐ)が、手に入る。コレは、勉強するしかないだろ。

 

雄英のサポート科に行くか、I・アイランドの高校に行くか、悩んでいたくらいだ。元々、ヒーロー科は落ちたと思ってたからな。

 

I・アイランドの高校は9月から入学なので、今からでも行けるが、まあ、そんなことはしない。もしも、9月までに退学させられたら行くつもりだが。そうならない様に頑張るけど。

 

 

俺が脳内解説をしていると。

 

「ヘイヘイ!! お便り『クラスの人気者になるためには、どうすれば良いですか』さんよ! 元気が無くなってるぜ!! テンション上げてけーー!!」

「ぐふっ(黒歴史を抉られた音)」

 

(((やっぱり、あの自己紹介はプレゼントマイクだったんだ)))

 

プレゼントマイクによって、恥ずかしいエピソードが掘り起こされ、俺は撃沈する。

 

(((ようやく静かになった)))

 

 

だが、そんなクラスの安堵もすぐに終わりを告げる。

 

「モブが夢を見る時代が終わるって……!!?  えェ!!?  オイ!!!! ゼハハハハハハハ!!! 人の夢は!!! 終わらねェ!!!!」

 

ヒャッハー、とモブ男が復活すると。

 

 

ピシャ、と扉が開きーー

 

 

「お前ら、いい加減にしろよ?」

 

 

相澤先生の首に巻かれた捕縛布によって、俺とプレゼントマイクは口を塞がれる。

 

「コレ以上、五月蝿くすんなら……校庭で授業させんぞ」

 

(((お前らって、影山+プレゼントマイクじゃなくて……A組+プレゼントマイク……!?)))

 

まさかの相澤先生のお前らは、俺とプレゼントマイクではなく、A組とプレゼントマイクだったらしく、クラスメイトは驚きを隠せない。

 

「返事は?」

 

「「……あい」」

 

相澤先生が、教室を出てからは、静かな授業が行われた。

 

しかし、クラスは俺とプレゼントマイクへの怒りを纏った空気で覆われていた。

 

 

 

 

 

こうして俺は、ぼっち飯をする羽目になったのだ。

 

「くっそーー……なんで、こんな事に……」

 

昼食の時間になると、食堂は賑やかで、人で溢れている。

そんな中、俺は1人で飯をかき込む。

 

「めちゃくちゃ上手いな、このカレー」

 

独り言を言っていると、周りからチラチラと見られるが、気にせず、カレーを口へ運ぶ。

 

「それにしても、人多いな」

 

雄英の大食堂「メシ処」

 

クックヒーロー『ランチラッシュ』を始めとする一流の料理人達が調理しており、一流の料理を安価で頂ける。だから、大抵の学生は弁当など持って来ず、学食を食う。

 

しかし、そんな大人気な雄英の食堂は、学年ごとには別れておらず、全学年がこの大食堂に集まる。

 

なぜか。

 

それは、クックヒーロー『ランチラッシュ』がいるからだ。

 

クックヒーロー『ランチラッシュ』

 

コック帽と制服を身にまとい、顔にはパイプが付いた機械的なマスクを着けており、雄英の食堂「メシ処」の切り盛りしている。サムズアップしている姿が印象的なヒーロー。

 

彼は、数々の偉業を、災害地にて成し遂げた。

 

災害地にいた人いわく、「1万人の被災者にフルコースでフランス料理を提供していた」「瀕死の患者が彼の料理で生き返った」など。

 

 

もちろん、彼はクックヒーローとしてだけではなく、料理家としても超一流だ。

 

世界的な一流料理家いわく、彼の出す料理は手をつけたら止まらないし、その美味しさを再現できない。

 

確かに、実際に食べてみると分かる。

このカレーにしても、辛過ぎず、甘過ぎず、でも辛いのが苦手な人も、甘いのが苦手な人も食べれそうな。

そういう味だ。

個性を使っているとしか思えない味だが、コレは彼の個性ではない。つまり、この味は彼の技術ということになる。

 

 

 

食ってみろ、飛ぶぞ。

 

 

 

そんな事を考えているとーー

 

「やあ、隣いいかな?」

 

独特かつシンプル顔が、横に現れる。

 

金髪に特徴的なクリクリの目、ガッシリとした体格。

 

ーー通形ミリオ。

 

それが、俺とビック3との邂逅だった。

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