ハッピー至上主義のヒロアカ冒険譚 作:もーまんたい
雄英の食堂にて、俺は雄英のビック3と出会った。
俺たちの2個上、3年生の先輩で、ヒーロー育成の最高峰・雄英でトップの実力を持つーー通称「ビッグ3」と呼ばれる生徒の一人。
「どうぞ」
「悪いね」
通形先輩は、相澤先生から「プロを含め、俺の知る限り最もNo.1に近い男」と言わしめるほどの実力者だ。
「いやー、席が無くてね! 困ってたんだよね! 君のお陰で、助かったよ! おっと、カレーはUA限定のーー」
「ビック3の通形先輩が、無名の俺にーー何か用ですか?」
俺は先輩の言葉を遮り、尋ねる。
まさか、ぼっちの俺を憐れんで話しかけたわけではないだろう。何か、狙いがあるはずだ。ニコニコと笑っている、その表情の下に潜んでいる
考えられる可能性は、2つ。
その1、運命によるストーリー修復。
その2、単純に横に座っただけ。
可能性が高いのは、確実にその1だろう。通形先輩が、どのように俺の除籍もしくは退学に関与してくるかは、わからないが、ここで接触してくるのには、意味があるはずだ。
俺たちは、隣同士でカウンター席に腰掛け。
笑顔で、相手の出方を探る。
ーー先に動いたのは、通形先輩だった。
「いやー、実は何も用事なんてないんだけどね!
それよりも、よく俺のこと知ってるね。雄英以外では有名じゃないんだけど……君、1年生だよね」
かなり斬り込んだ質問。
一気に流れを持って行こうとしているのが、見え見えだ。甘えよ。キャラメルラテにホイップ乗せるくらいな。
俺は、へらへらと笑う。
「そりゃー、入学初日から友達から聞きましたからねー。
先輩こそ、俺が1年だってよく分かりましたね」
ニコニコと、睨み合いが続く。
「いやね! 実はね、個性把握テストで凄い記録を出した子がいるって聞いてね! 気になって会いに来ちゃったのさ!」
「そうですか……で、感想は?」
見え透いた嘘をつく通形先輩に、思わず、タメ口をきいてしまう。俺の個性把握テストの記録は、運命の修復力か、何かわからないが、隣のB組にすら伝わっていない。なのに、アンタは誰から聞いたんだ? もちろん、そう聞かないのは、騙し、情報を聞き出すためだ。
「そうだね……かなり強い。すでに俺は超えてるかな」
……かなり、ね。
先輩の感想を聞いた俺は、口角を上げる。
かなりじゃなくて、結構だけどな……。そう、心の中で呟き、今度は先輩について言及する。
「先輩も相当強いですね。プロヒーローと大差ない。いや、ビルボードチャート下位のヒーロー以上だ」
「はっはっはー! そうだね! かなり強い自信はあるよね!」
俺と先輩は、
熱くなった会話では互いに情報を開示しなくなってしまう。それでは意味がない。会話の意味が。
だが、俺と先輩の思惑は、今のやり取りで一致していることがわかった。お互いに“会話”に価値を見出しているのだ。
情報の入手経路がバレることはないだろうが……ラインを守って情報開示していかないとな。何があるか分からないし。
それに、先輩が何の情報を欲しているのか、謎なのがかなり痛い。最初から俺は非常に不利な状態からスタートしている。
俺の聞きたいこと、目的は「なぜ通形先輩が俺に用事があるのか、何が目的なのか」。一方、通形先輩の目的はーー謎だ。
だから、通形先輩は俺の目的である「なぜ用事があるのか、何が目的か」を隠し通せば良い。
それに先輩が気づいているならば……
……俺は会話が始まった瞬間から負けている。
それに気がついているのかについても探りを入れなければならない。始めに何のようか、と聞いたのは完全にミスだ。圧倒的不利な状況に自分から飛び込んでしまった。
だが、悪いことばかりでもないのも事実。
こちらがお前を警戒しているぞ、と始めに言うことで相手は俺にある程度の情報開示を強いられることとなる。
さて、どこまで情報を見せてくれるのか……いや、引き出せるか……勝負だ。
「先輩の個性って何なんですか。教えてくださいよ」
「んー、じゃあ君の名前と個性を教えておくれよ」
「そんな事で良いなら。
影山モブ男、1-A組ヒーロー科所属で、個性は、筋力強化です」
「筋力強化か……まるでオールマイトみたいだ」
なんだか、少し羨むような、そんな表情を見せる通形先輩。
もちろん、本当は個性など持っていないのだが、俺は黙っておく。相手が納得すれば
しかし、つき過ぎれば、いずれバレ、会話は成立しなくなってしまう。だから、少しずつ、覚えられる程度の嘘をつく。
「で、先輩の個性は?」
「俺のはね! 透過さ!」
もちろん、知っている。だが、知らないふりをした。
何故なら、人の個性を既知の場合、その人自身から聞いているか、実際に見るか、記録などの情報を見ていることが一般的だからだ。
見知らぬ人が、自身の個性を知っていたら、そいつはストーカーの部類か、警察の2択だと思って良い。
「透過?……すり抜けるってことですか?」
「そうだね! 攻撃でもなんでもすり抜けるのさ!」
「……なるほど」
透過、通形先輩の個性。
何でも通り抜けることが出来る。
一見、無敵の強個性だが、実際は、欠陥だらけの弱個性だ。個性の発動中は、肉体が無差別にあらゆる物体を透過するため、光や音、空気さえも彼の体をすり抜けてしまう。全身に個性を発動すると、何も見えない。何も聞こえない。呼吸さえもできない一時的に完全な無感覚状態へと陥る。
「それは、難儀な個性を貰いましたね……」
「使いこなすまでに、丸々一年かかったよね。でも、使いこなせれば、無敵の個性さ! どんな個性でも、要は使いようさ!」
「まあ確かにそうですね」
俺は視線をあげ、先輩の向こう側の壁についている時計を見る。
12時半。
もうすぐ昼休みが終わる。
時間をかけて聞き出してもいいのだが、そろそろ良いだろう。俺は、斬り込んだ質問を投げかけた。
「先輩、そろそろ教えてくれませんか。
最初の質問の答えを。
俺は、水掛けの無意味な話し合いがしたいわけじゃない」
無名の俺に、何の用かと。
うーん、と考えた様子の先輩。
しばらくして、やっと先輩が口を開いた。
「そうだね。でもその前に聞きたいことが一つあるんだ。いいかな?」
「どうぞ」
「さっき、友達から俺のことを聞いたと言ったね。
ーーじゃあ何故、君は1人なんだい?」
「ぐはっ(事実が心を抉る音)」
おい、知ってるか? 人には聞いちゃいけない、触れてはいけないことがあるって。単純な質問は時に、罵倒よりも人を傷つけるんだぞ。ぼっち飯相手にその事実確認は、しちゃダメって義務教育を受けてないのか? まったく、コレだから無学は……(雄英=偏差値79)。
俺の周りに漂うぼっちのオーラで察してくれ。
クラスでは目立たな……くはないかも知れないけど。
いい意味じゃなくて悪い意味で、だけどな。
伝われ、そして感じろ俺の気持ち。
「あ、もうすぐ友達来るんで。1人ではないですね……(大嘘)」
「そうか、さっきから20分くらい友達は来てないみたいだけど」
「いやーー! みんなトイレ行っちゃったからなーー!!」
「君だけ残して?」
何でそんなに詰めてくるんだこの先輩。
ぼっちへの追い討ち性能が高すぎて怖いわ。
除籍とか退学じゃなくて、俺を、恥ずか死させようとしてるのか? 心を殺しに来てるのか? なら、俺ら(ぼっち)は抵抗するでェ! 拳でなァ!!
「君、いじめられてるだろ?」
「はい、今まさに」
「え?」
「え?」
★★☆☆☆☆☆
「いやー、すまなかったね!! なんか本当にね!」
「いえいえ、大丈夫です(死ね)」
表情には出さず、俺は心の中で、中指を立てていた。
どうやら通形先輩は、相澤先生から「いじめられているかもしれない生徒の相談に乗ってほしい」と依頼されたみたいだ。
プレゼントマイクの犠牲になったからか?
相澤先生がわざわざ、そんな事をしてくれるなんて。
案外、俺は好かれているのかもしれない。
まあ完全に人選ミスだけどな。
「でも、なんで友達がいるなんて嘘ついたんだい?」
「あ、それは……(恥ずか死)」
コイツ、学習能力が低いのか……それとも、俺を本当に殺そうとしているのか、の2択だな。
ここまで言われても俺が耐える理由がある。
俺は知っている、貴方が曇る瞬間を。
通形先輩は、自信を、師を、個性すらも失う。
それを乗り越え、ラスボス戦では大活躍をするのだが。
だから、俺は耐える、貴方に何を言われても。
心の中で、中指を立てるくらいはするが。
「まだ学校始まったばかりだから大丈夫だよ!」
「確かにそうですね(心の中で立てる中指)」
「まあ本当のかと言うと、こっから仲良くなれる自信はないですね」
ははは、と乾いた笑いが溢れる。
「んー、そうかー……なら、俺が君に伝授しよう! 爆笑必至のギャグを!!」
「通形先輩の必殺技か……なんか想像つくんですけど、それで大丈夫ですか。てか、ウケたこと、ほんとにあります?」
「もちろんさ! お腹を抱えて笑ってたさ!」
「…………」
知ってるぞ、そのギャグ。
ラスボスにすら効いた、最強のギャグだ。
けど、そのギャグがウケるのは、小学生までな気が……。
「ただし! この技を伝授する前に、対価として、君のことを教えてくれよ!」
「まあ、その程度なら全然良いですけど……」
伝授されても使うかは、わからないが、一応ラスボスにも効いた技だしな。とりあえず、習っておくぶんには、問題ないだろう。
「じゃあ、お昼を食べながら、話そう!」
「うっす」
俺は、伝授されたギャグにモブ脱却の呼吸「参の型・桃」と名付けた。
昼食を終え、午後の授業。
ヒーロー科の授業は、午前と午後で全く異なることをする。
午前は、普通の高校卒業に必要な科目。
午後は、ヒーロー基礎学。
ヒーロー基礎学は、ヒーローになるために必要な勉強をする授業だ。例えば、ヒーローに関する法律、ヒーローの歴史、犯罪の種類、もちろん、座学だけではなく、災害救命救助、人質の救助、
ココで、ヒーローになるため基礎を身につける。
「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!!」
HAHAHAHAと特徴的な笑い声を響かせながらオールマイトが教室に入ってきた。
トップヒーローが普通に教室に入ってきているのを見て、A組全員が興奮のあまり震え上がっていた。かく言う俺も、オールマイトの登場に興奮を隠しきれない。なにせ、こうしてオールマイトと直接会うのは初めてだからな。
「オールマイトだ……!! すげぇや本当に先生やってるんだな…!!!」
「銀時代のコスチュームだ………! 画風が違いすぎて鳥肌が……」
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作る為、様々な訓練を行う課目だ!単位数も最も多いぞ! 早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!!」
オールマイトは、BATTLEと書かれたカードを生徒達に見せた。
「「「戦闘訓練……!」」」
「そしてそいつに伴って……こちら!!!」
ゴゴゴ、と教室の壁からはケースが入った棚が現れる。
「入学前に送って貰った『個性届』と『要望』に沿ってあつらえた……『
「「「おおお!!!!」」」
誰しもが一度は考えたことがある、自身のヒーローコスチューム。
それを着込んで戦闘訓練を行える。
その事実に、全員が目を輝かせていた。
「着替えたら順次、グラウンド・βに集まるんだ!!」
「「「はい!!」」」
午前の授業と違い、やる気に満ちたA組は、更衣室へ駆け込んでいく。
全員の着替えが終わり、続々とヒーローコスチュームに身を包んだ少年少女たちが集まる。
「格好から入るってのも、大切なんだぜ少年少女!!
自覚するのだ!!! 今日から自分は……
ーーヒーローなんだと!!
さあ始めようか有精卵共!!!」
個性を使った