未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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1章 ~未来じゃ共依存~
第1話 ねっ、賢者モードじゃなかったの?


 出すもん出したら動く気にならん。

 どうにも事後の無気力状態には抗えない。このまま眠気に身を任せてしまいたい。

 こちとら百メートル走レベルの運動をしていたのだ。しかも、それを何回も。疲れないはずがない。

 窓からカーテンの隙間を縫って差し込む朝日が鬱陶しい。

 視線を向けてみれば、隙間から覗くのは雲一つない青空。どうやら今日は腹が立つほどの快晴らしい。

 

「ねー、純。タバコ取ってー。もう動けなーい」

「……あのな、紅百合。俺も怠いんだが」

「どうせ一服はするでしょ。ついでよ、ついで」

「ったく、しょうがねぇな」

 

 俺は襲い掛かる眠気に逆らいタバコが置いてあるテーブルまで向かう。その際、パンツを履こうと周囲を探したが、どこにも見つからなかった。

 

「おい、俺のパンツどこだよ」

「絶賛堪能中。匂いフェチの前にパンツ置いたのが運の尽きだね」

「人のパンツの匂いを勝手に楽しむんじゃねぇ」

 

 顔も見た目もいいのに、紅百合と来たらこの残念具合である。残念な美人という言葉はこいつのためにあるんじゃなかろうか。

 

「代わりにあたしのパンツ嗅いでいいよ」

「生憎、今は賢者モードだ」

「えへへ、賢者モードなのにこんなバカ話に付き合ってくれるんだね」

「まあ、バカ話してるときがいっちゃん楽しいからな」

 

 溜息をつきながらも箱からタバコを二本取り出し、片方を咥えて火をつける。

 

「ほれ、タバコ」

「んー」

 

 もう一方は口を開けて待っていた紅百合の口に咥えさせ、そのまま自分のタバコの火種を押し付けた。肺を煙で満たすと心まで満たされた気分になる。

 

「わー、純やさしー。大好きー」

「はいはい」

 

 互いに紫煙をくゆらせながらいつもの調子で心の籠っていない会話を重ねる。

 何の生産性もなく、中身のない会話。肉体だけの関係だからこそ成り立つ友情。その全てが気楽で心地良い。

 別に意味なんてなくても楽しい時間は過ごせる。そして、そこに意味があるかないかも俺たちにとっては大した問題じゃない。

 

 タバコを吸い終えると灰皿に吸殻を押し付け、紅百合のタバコも受け取って火を消す。それから横になって布団を被ると、紅百合が身を寄せて来た。彼女の体温を感じていると、段々と人間の三大欲求のバランスが崩れ始めるのを感じた。

 

「ねっ、賢者モードじゃなかったの?」

「……さすがにもう一回は無茶だぞ」

「ちぇー、ケチ」

 

 頬を膨らませる紅百合の頭を撫でると嬉しそうに微笑んでくれた。何だかんだ言って彼女は寂しがり屋なのだ。だからこうして触れ合っていると安心できるらしい。

 

「あっ、また抽選販売の応募手伝ってくれる?」

「どうせモンテカードだろ。とっくに応募しといたぞ」

「早っ!」

 

 枕元に置いてあったスマートフォンで抽選申し込み中の画面を見せる。どうせ新パックが販売される度に泣きついてくるのだからもう慣れたものだ。

 

「こういうのは早めにやらないと忘れんだよ。思い立ったが吉日だ」

「さっすが純、愛してる」

「股間じゃなくて顔を見ろ」

 

 もぞもぞと布団に潜り始めた紅百合を適当にあしらっていると、紅百合は思い出したかのように告げた。

 

「ねぇねぇ、お礼にモンテ最新作モデルの有機ELスウィッチの抽選応募協力したげる」

「マジか! 紅百合、俺も愛してるぜ」

「胸じゃなくて顔を見ろ」

 

 結局、もう一回は無理と言いつつも、イチャイチャしている内にそういう気分になってしまった俺達は最後まで致してしまうのであった。

 

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