当然高校生の僕達がビールを飲むことはできない。
「ラムネ二つください!」
ただシュワッとしたものは飲むことができる。
僕は瓶に入ったビー玉入りの青い容器を受け取って蓋を開けた。
キンキンに冷えていて非常に美味しい上に、口の中をさっぱりさせてくれるラムネは焼き鳥とも相性がいい。これがビールだったらもっと良かったのだろう。
「あれ、開かない……ふんぬっ」
物足りない気分でいると、紅百合は右手に力を込めて一生懸命ラムネを開けようとしていた。
「貸してみて」
見かねて僕は紅百合の手からラムネを奪って力を込める。すると、勢いよく泡が立ち始めて溢れそうになる。
「うわっ」
「おっと」
紅百合はそのまま慌てて溢れ出すラムネに口をつける。
「危なかったわね。ちょっと零れちゃったけど、ハンカチ使う?」
ラムネを受け取った紅百合は持っていた巾着袋からハンカチを取り出す。
『今の完全にフェ――』
「あ、ありがとう!」
僕にだけ聞こえるモモの発言を遮りながらハンカチを受け取って手にかかったラムネを拭く。
それから焼き鳥とラムネを堪能した僕達は出店をてきとうに回ることにした。
「とりあえず、定番の射的でもする?」
「おっ、いいわね!」
紅百合はニヤリと笑うと、僕の提案に頷く。
紅百合はお金を払ってコルク銃を受け取り、適当な景品を狙って撃つ。
パンッと軽い音が響き渡り、コルク弾は見事に外れてしまった。
「ぐぬぅ……何で当たらないのよ」
「紅百合にもできないことってあるんだ」
「射的なんてやったことなかったのよ。基本とってもらう側だし」
「あー、男子に貢がせてるのが想像できるね……」
中学時代が容易に想像できる。紅百合に貢ぐために血眼になっている男子は一人や二人ではなかっただろう。
「意外とこの銃重いのよね……」
銃を持つ腕もプルプルと震えているし、狙いを定めるだけでも精一杯だろう。
結局、紅百合の撃ったコルク弾が景品に当たることはなかった。
「ちくしょう……」
「じゃあ、僕の番だね」
僕が銃にコルクを詰めていると、紅百合は自分の手をじっと見ている。
紅百合が狙っていたのは一番上の段に置いてある豆シヴァのぬいぐるみのようだ。
「よっ、と」
俺は精一杯身を乗り出して片手で銃を持ち、至近距離で景品に打ち込む。
豆シヴァの脳天を穿った一撃はあらぬ方向へと弾き飛ばされた。
「いや、弾跳ね返されたけど」
「ね、狙い変更するかなー」
ここは格好良くぬいぐるみでも落とせたら良かったのだが、屋台の射的はそこまで甘くはなかった。
結局、中身がショボイお菓子の詰め合わせセットを落としたことで射的はやめることにした。
格好つけようとして無理した結果、腕が攣りそうになったのだ。ちくしょう。