どんな未来になったらみんなが幸せになれるのか。
誰かを幸せにするということは誰かを不幸にするということでもある。
本当の意味でみんなを幸せにすることなんてできないのかもしれない。
「んで、こんなとこに呼び出してどうしたんだよ」
筑間先輩は楽しそうに笑ってバスケットボールを人差し指の上で回転させていた。
「そんなの決まってるじゃないですか。バスケですよ」
「だな!」
夏休み中の夜の公園には周辺がオフィス街ということもあって人はまるでいない。
これなら思いっきり動けそうだ。
僕と筑間先輩は出会ったときのように1on1を始める。
先輩はフェイントのかけ方がうまい。
さらにディフェンスに回れば、あっという間にボールを取られてしまう。
本来なら僕が相手できるレベルの人ではないのだ。
「これをブロックすんのかよ!」
「結構やるでしょ?」
それを補ってくれるのはクロが昔から練習して刻み込んでくれた感覚だ。
一通り動いた後、僕達はタオルで汗を拭い、水分補給をする。
ポイントは筑間先輩の方が有利だったけど、かなり食らいつけた方だろう。
お互い一息ついたところで、僕は思い切って踏み込んだことを尋ねた。
「筑間先輩、どうしてバスケやめちゃったんですか」
「やめてねぇよ。ほら、こうして――」
「本気のバスケの方ですよ」
僕の言葉に筑間先輩はすん、と真顔になって口を噤んだ。
「大体の事情は知っています」
「そうかよ」
目を細め、ぶっきらぼうな口調になる筑間先輩。彼の纏う雰囲気からは落胆の色が見て取れた。
そりゃそうだ。
良い感じに懐いてきたバスケの才能がある後輩なんて、筑間先輩からすれば理想の後輩だっただろう。
それがわかっていながら自分の地雷を踏み抜いてくるのだから。
もちろん、バスケの才能に関してはただの錯覚だ。
僕の肉体に刻み込まれたそれはクロの遺したものに過ぎない。
「だから、何だってんだ。お前には関係ねぇだろ」
「関係ありますよ。友人が悲しむんで」
妬み嫉みでバスケをすること奪われたことはかわいそうだと思う。
だけど、この人は僕がバスケ部に入ったところで情熱を取り戻すことはないのだ。
「筑間先輩って、バスケがうまい自分のこと嫌いですよね」
「な、にを……」
モモの時間軸の僕はさぞ誤解したことだろう。
あのクロが残した情報なのだ。間違っているはずがないのだと。
少し考えればわかることじゃないか。クロにだってわからないことはある。むしろ、多い方なのだ。
「うますぎるから周りと楽しくバスケで〝遊ぶ〟ことができなくなったんでしょう?」
「っ!」
僕の言葉に筑間先輩は初めて目を見開いて驚愕を露にした。
「それに、なまじ越後さんのヒーローになっちゃったもんだから引っ込みつかなくなってるんじゃないですか」
「お前はエスパーか何かか」
乾いた笑いを漏らしながらも筑間先輩は僕の言葉を否定しなかった。