未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第18話 私はそんな大層な人間じゃないですよ

 生徒会室のドアをノックしてから入室する。

 

「失礼します、英です。副会長に呼ばれてきました」

「どうぞ」

 

 返事があったため英さんがドアを開けると、中にいた役員達が一斉にこちらを見てくる。

 

「やあ、英さん。よく来てくれた、ね……?」

 

 副会長の視線はすぐに一点へと移る。英さんの隣にいる僕である。

 学年一の美少女の横に校則違反ではないものの、明らかに不良生徒のような外見をした男子がいるのだ。混乱するのも無理はない。

 できるだけ笑顔を浮かべて副会長の方に会釈をしておく。

 

「彼は同じクラスの白純君です。お昼休みに副会長と話しているところを見ていて心配になったみたいで、ついてきてくれたんですよ」

 

 おいこら、誰がついてきただ。まるで僕が英さんの過激派ファンみたいじゃないか。

 

「そ、そうなのかい」

「はじめまして、白純です」

 

 とりあえず、僕がやるべきことは決まっている。

 生徒会への勧誘に対して、英さんが遠回しに断っても勧誘を続けるようなら、強引に会話に割って入って代わりに断る。

 英さんは優しいから断れないだけで、本当は嫌がっていると僕が強めに言えば威圧感も相まって強引に勧誘もできなくなるだろうという腹積もりだ。

 

「早速で悪いんだが、英紅百合さん。昼休みにも言った通り、君には生徒会に入ってもらいたい」

 

 副会長は思ったよりも直球で要求を伝えてきた。

 

「英さんは部活にも入っていないし、まだ四月だというのに一年生の間での人望も厚い。成績に関しては入試での成績から見て申し分ない。何より君自身、人の為に献身的に尽くすことを進んで行っている。生徒会での活動は君にも合っていると思う」

 

 副会長の言っていることは最もだ。

 他者から見た場合の英さんの性格を考えれば、生徒会ほど彼女に合っている場もないと思う。実際、生徒会役員に指名されたとあれば、ただでさえ高い英さんの評価はストップ高間違いなしである。

 

「あはは、私はそんな大層な人間じゃないですよ」

 

 副会長の言葉に英さんは苦笑して、謙遜の言葉を口にする。

 こんな風に英さんが生徒会入りを拒む理由。それは現生徒会長と比べられるからである。

 

 僕が以前、生徒会長のことを英さんの上位互換と言って怒られたことがあったが、あれは英さん自身も感じていたことなのだろう。

 生徒会に入れば嫌でも似ている二人は比べられることになるし、順当に生徒会長になったとしても、彼女の功績を超えることは不可能に近い。

 

 他にも、越後さんとのこともある。

 越後さんは生徒会長の妹であり、お姉さんに対してコンプレックスを持っている。

 そんなお姉さんにより近い存在になるということは、越後さんのコンプレックスを更に刺激することに他ならない。

 

「そんなことはない! 君は自分を過小評価し過ぎだ」

「いえ、本当に私なんて大したことなくて……」

 

 段々英さんの口元が引き攣り始めている。謙遜して断る方向に持っていこうにも副会長の情熱のせいで逆効果になっているようだ。

 ふと、今は僕がいるが、元の歴史ではどうなったのかが気になった。

 そんな僕の考えを察したのか、隣からぬるっとクロが湧いて出てきた。

 

『紅百合は三年間、渋々生徒会やってたって言ってたぞ』

 

 やっぱり、この場では断り切れなかったらしい。

 となると、僕のやるべきことは英さんの生徒会勧誘を断ることだ。

 

「副会長。熱心な勧誘も良いですが先に言うべきことがあるんじゃないですか?」

 

 この件が引き金になって越後さんからの冤罪事件に繋がるのだとしたら、ここで原因を潰しておくのは悪い手じゃない。

 これ以上の面倒ごとはごめんだ。

 僕は少しだけ副会長を睨みつけるようにして、言葉を続ける。

 

「昼休みにあなたが引き下がらなかったせいで英さんは碌に昼食も食べられなかった。それについての謝罪があって然るべきではありませんか」

 

 僕の言葉を聞いて英さんが驚いたようにこちらを見る。

 勧誘を断る役を頼んだとはいえ、まさか僕がこんなことを言うとは思っていなかったのだろう。

 僕だって言いたくはないが、このまま押し問答を続けても時間の無駄だ。

 

「……すまない、英さん。君の都合も考えずに一方的に話を進めすぎてしまった」

「いえ、私の方こそきちんとお返事をできずにすみませんでした……」

 

 副会長と英さんが謝り合って、お互いが頭を下げる。

 これで英さんへの生徒会入の説得も終わることだろうと安堵していると、副会長がこちらへと向き直る。

 

「ところで白君、君のその恰好は何だ」

 

 副会長は僕の姿を見ながら眉根を寄せてそう問いかけてくる。

 

「何だ、とは?」

 

 とぼけてみせたが、副会長の言いたいことはわかっている。

 

「その髪型にその服装だ。校則違反ではないが、明らかに不良生徒のように見える。君の着ている制服は我が校の生徒であるという証明だ。もう少し見た目には気を使ってほしい」

 

 やはり、校則違反ではないといっても不良生徒に見えてしまうのは好ましくないようだ。

 言いたいことは尤もだが、ここで僕を注意した理由はわかりきっている。

 

「制服は着崩していないですし、文句があるなら校則を変えればいいんじゃないですかね」

 

 真面目な副会長が不良生徒に注意された。そのことによって、他の生徒会役員や英さんの前で恥をかかされたことによる八つ当たりだ。

 そういうしょうもない理由が透けて見える以上、素直に聞き入れるつもりはない。

 僕に反論されるとは思ってなかったのか、副会長は一瞬虚を突かれたような表情を浮かべるがすぐに立て直して口を開く。

 

「生徒会長が苦労して身なりの自由度を上げ、携帯の持ち込みも可能にしたんだ。君のように極端に学校のイメージを損なうような見た目の生徒がいると、生徒会長の苦労も水の泡だ!」

「大層な理由を付けてますけど、副会長が個人的に気に食わないだけじゃないですかね」

「何だと!」

「二人共、落ち着いてください……」

 

 口論になり始めたので、英さんが割って入ろうとした瞬間のこと。

 

「遅れちゃってごめんなさい。ちょっと先生から用事を頼まれちゃって」

 

 まるで図ったようなタイミングで生徒会室のドアが開き、スタイルの良いとびきり美人な女子生徒が入ってきたのだった。

 

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