未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第31話 本当の友達

 放課後。越後さんは英さんを校舎裏に呼び出していた。

 

「ハナブサ、今までごめん!」

 

 勢いよく頭を下げる越後さんを見て、僕は今回の一件がうまく片付いたことを理解した。

 物陰から二人の様子を覗き込んでいると、僕の横からクロが現れた。

 

『これで一件落着だな』

「何が一件落着だ。お前が急に体乗っ取るからこっちは焦りまくったぞ……」

 

 クロに体を乗っ取られて越後さんを罵倒した挙句、掴んだ腕をへし折ろうとしたときは本気で焦った。今までいきなり体の主導権を奪われることなんてなかったから猶更である。

 

『悪かった』

 

 クロは本気で悪いと思っているのか、その場で土下座をし始めた。どれだけ好き勝手やっても基本的に謝らないクロの土下座なんて激レアなんじゃないだろうか。

 そんなことを考えながらふと、気になったことを口にする。

 

「クロ、どうしてあんなに怒ってたんだ」

 

 体を乗っ取られたとき、肉体から弾き出された僕から見てもクロは見たことがないほどに激高していた。どうしてあんなにも越後さんに怒っていたのだろうか。

 

『ケッ……未来じゃさんざん紅百合にえちゴリラのこと愚痴られてたからな。酒奢らされたりしててうんざりしてたんだよ』

 

 クロは鼻の頭をかくと吐き捨てるように言った。

 

「えぇ……そんな理由であんなにブチギレてたのかよ」

『年単位で積もった苛立ちの積み重ねだ。ま、未来は変わったみたいだし、もう越後凛桜が紅百合のストレス源になることもねぇだろ』

「そうだね。これをきっかけに二人が本当の友達になっていければいいと思ってるよ」

 

 すぐには無理かもしれないけど、いつかはお互いに本音をぶつけ合える関係になれたらいいと思う。そうすればきっと、二人の関係はもっと良いものになるはずだ。

 

『ああ、そうだな』

 

 僕の言葉にクロは一瞬だけ目を見開いて、その後小さく笑みを浮かべた。

 

『それで、お前の方はどうすんだよ』

「どうって?」

 

 首を傾げると、クロは呆れたように溜息をつく。

 

『好きなんだろ、紅百合のこと』

「ああ、そのことか」

 

 本音でぶつからないと越後さんの心は動かせないと思っていたから、思ったことをそのまま告げた。少なくとも今の僕は、英さんが猫被りのために必死になって努力する姿は好きだった。

 

「もう偏見はないからね。普通に接してれば好きにもなるさ」

『何だ自覚はなしか……ま、いいんじゃねぇの?』

 

 クロはニヤリと笑うと、僕の背中を押した。物理干渉はできないはずなのに、背中には衝撃が走り、突然のことに反応できず地面に倒れ込んでしまった。

 

「盗み聞き? 趣味が悪いわね」

 

 顔を上げると、目の前には英さんが立っていた。

 

「あっ、いや……そのぉ」

 

 英さんの顔を見ることができず視線を彷徨わせていると、英さんはじっと僕の目を覗き込んで口を開いた。

 

「ありがと」

「へ?」

 

 唐突にお礼を言われたものだから、間抜けな声を出してしまう。

 

「だから、その……越後さんとのこと。白君がいろいろ頑張ってくれたんでしょ」

 

 英さんは少し照れくさそうな表情で続けた。その頬は、ほんのりと朱に染まっているように見えた。

 

「それと酷いこと言ってごめんなさい。白君さえよければ……また一緒に遊んでくれる?」

「僕は構わないけど、なんか今日はやけに素直だね」

「んなっ……!」

 

 思ったことを口にすると、英さんは顔を真っ赤にして僕を睨みつけてきた。

 

「言っとくけど! あたしは完璧美少女でいることはやめないし、越後さんとは和解できたけど、全面的に素を晒せるのは白君しかいないの。だから、これからも約束は継続ってことでストレス発散に付き合ってもらうだけだから!」

 

 英さんは恥ずかしさを紛らわすためか、早口に捲し立てる。そんな素直じゃない彼女も可愛いと思ってしまった。

 

「そうだ。白君、あたしのノート持ってるでしょ」

「ああ、この前忘れていったから返そうと思ってたんだ」

 

 どうやら英さんもノートを僕の家に忘れていったことには気がついていたみたいだ。

 気まずい状態になってしまったから言い出しづらかったのだろう。

 鞄から取り出したノートを手渡すと、英さんはそれを引っ手繰るように胸に抱え込んだ。

 

「中、読んだでしょ」

 

 あれは努力を人に見せようとしない英さんにとっては見られたくないものだ。ここは彼女のためにも見ていないことにした方がいいだろう。

 

「読んでないよ」

「嘘つき」

「うえっ!?」

 

 まさか即答されると思わず、変な声が出てしまった。

 

「あたしの観察眼を舐めないことね。白君って、嘘をつくときに必ずする癖があるからわかりやすいのよ」

「えっ、どんな癖?」

「言ったら今後その癖をやらなくなりそうだから言わない」

 

 英さんを見ると、彼女は悪戯っぽく微笑んでいた。何というか、やっぱりずるいなと思う。こんな表情を見せられたら隠し事なんてできるわけがない。

 

「それより何か言うことは?」

「……大変申し訳ございませんでした」

 

 僕は観念して頭を下げた。僕の謝罪に満足したのか、英さんはにっこりと笑った。

 

「じゃ、ゴールデンウイーク楽しみにしてるね!」

 

 そう言って駆け出す英さんの後ろ姿を見ながら、僕は胸が高鳴るのを感じていた。

 

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