未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第43話 モンラボ その1

 突然の出来事に頭が真っ白になる。

 

「え、ちょっ、英さん!?」

「あれあれぇ? 手ぇ繋いだくらいで何を慌ててるのかなぁ?」

 

 動揺する僕を見て英さんは楽しそうに笑い、そのまま僕の手を握りしめたまま歩き始めた。どうやら、さっきの意趣返しらしい。

 

「……英さんって結構子供っぽいとこあるよね」

「そうかしら?」

 

 それからしばらくの間、僕は英さんに手を引っ張られながら歩く羽目になった。

 ラッシャイシティは池袋駅からラッシャイ通りを超えた先にある。ゴールデンウィークということもあり、ラッシャイ通りはいつも以上の人混みで溢れていた。

 これはある意味手を繋いでおいたのは正解かもしれない。

 

「英さん、はぐれないようにしっかり繋いでおいて」

「えっ、うん……」

 

 先程までぐいぐい僕を引っ張っていた強引さはどこへやら。英さんは急に大人しくなった。

 

「地下通ってそのまま入ろうか」

「わかったわ」

 

 口数も少なくなった英さんの手を引いて歩いて行く。

 地下通路の動く歩道に乗ったところで、英さんが尋ねてくる。

 

「白君、ラッシャイシティ行くのはいいんだけど、まずはどこいくの?」

「そりゃラッシャイシティに来たらまずはあそこしかないでしょ」

 

 僕は得意げに笑ってみせる。

 僕と英さんが共通して好きなもの。それはモンスターテイルズだ。

 その専門店がラッシャイシティの中には存在する。

 モンスターラボ、通称モンラボ。モンテ関連グッズと取り扱っている専門店で、オリジナル商品だけでなく、食料品からゲームソフトまでモンテと付いてるものは何でも売っているモンテ好き御用達のお店だ。

 

『何でこの時代で池袋にモンラボが……まだ移転前のはずじゃ……』

 

 クロは池袋にモンラボがあることに困惑していた。僕としてはモンラボが池袋にあることに不便はないのだが、歴史がズレていると考えると少し気がかりだ。これがバタフライエフェクトというやつだろうか。

 モンラボに今まで行ったことがないらしい英さんは、初めてのモンラボに目を輝かせていた。

 

「さっすが白君、愛してる」

「モンラボ見ながら言われても説得力ないって」

 

『っ……!』

 

 英さんの軽口に思わずツッコミを入れると、何故かクロが表情を曇らせていた。

 クロのこんな表情は初めて見た。もしかしてこの前、僕が言外に「今の英さんを見ていない」って言ったことを気にしているのだろうか。

 

「入場待機列えっぐ……」

「あはは、ゴールデンウイークだからね」

 

 ラッシャシティ三階の中心部の広い区画にモンラボは店舗を構えている。その区画をぐるっと囲むように行列ができていた。最後尾に並びつつ僕達は待っている間、雑談をしていた。

 

「そういえば、デートで混雑してるところに行くとカップルが別れるって言うよね」

「人混みでイライラしたり、列で一時間以上待たされたり、単純に疲れて気が利かなくなったり、理由はいろいろよね」

 

 英さんは淡々と答える。

 

「でも、待ち時間はわくわくした気分を増幅させることもできるし、混雑してるってことはみんなが良いと思って来てる場所って証明でもある。あたしは特別な日くらい混んでる場所に来るのも悪くないと思うわ」

「なるほど、閑散とした遊園地よりは人がいる遊園地の方がテンション上がるもんね」

 

 英さんの言葉には妙に納得させられた。

 

「それに、白君が一緒なら退屈しないで済みそうだし」

「……それは何よりで」

 

 英さんは悪戯っぽく笑う。普段見慣れない私服も相まって破壊力がすごい。どうやら最近の英さんはこういうネタで僕を揶揄うのがマイブームなようだ。

 

 そんな風に話をしているうちに、僕達の後ろにまた新たな客が並ぶ気配があった。

 周りを見ると、ちらほらとカップルらしきペアが並んでいた。

 並んでいる人たちの雰囲気は様々だ。友人同士、家族連れ、カップル、一人で来ている人もいれば複数人でグループになっている人もいる。

 

「ねぇ、あたしと白君って周りからどう見えてるのかな?」

 

 英さんは僕の顔を覗き込んでそんなことを言ってきた。まだ僕を揶揄うのは継続中のようだ。

 彼女のことだ。僕に〝周りからは恋人に見える〟と言わせたいに違いない。ならばここは恋人関係を否定しておくべき場面なのかもしれない。

 

「仲の良い男女の友達に見えるんじゃない?」

「ふーん、そういう感じなんだ」

「不満?」

「別にぃ」

 

 英さんはわざとらしくそっぽを向いて拗ねる素振りを見せると、すぐにこちらを振り向いた。

 

「よーく、わかりました」

 

 頬を膨らませると英さんはジトッとした視線を向けながら顔を近づけてきた。

 シャンプーの香りなのか、ふわりと甘い匂いが鼻腔を刺激する。

 思わず目線を逸らすと、視界の端で英さんがニヤリと笑った気がした。

 

「あれあれぇ? 仲の良い男女の友達なんでしょ。何で目を逸らすのかなぁ?」

「本っ当、良い性格してるよ」

「お褒めの言葉をいただき恐縮です」

「褒めてない」

「あたしにとっちゃ十分誉め言葉よ」

 

 英さんは満足そうに微笑んだ。

 ちょうどそのとき、入場待機列が動き始める。僕達はゆっくりと進んでいき、ついに店内へと足を踏み入れた。

 

 

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