未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第58話 解決しなければいけない未来の問題

 越後さんの試合も終わり、いつものように英さんは僕の部屋に来ていた。

 

「相手強豪校なのにすごいかったよねぇ」

「今日のリラいつも以上に気合い入ってたもんね」

 

 相も変わらず、人のベッドでゴロゴロしながらゲームをしている英さんはどこかご機嫌だった。よっぽど越後さんの活躍が嬉しかったらしい。

 

「僕が介入しなかった時間軸だと、どうなってたんだろ」

「……たぶん、碌なことになってなかったでしょうね」

 

 越後さんが英さんを罠に嵌め、財布を盗んだ濡れ衣を着せる事件。それ自体は僕が介入したことにより阻止された。

 クロの話では、本来あそこで越後さんはクラスでの地位を失い、その後どうなったかは未来の英さんも知らないとのことだった。

 

「あたし達の未来だけじゃなくて、リラの未来も明るいものになってるといいんだけどね」

「そうだね」

 

 未来は変えられる。心を許せる友達を得た越後さんの未来だってきっと明るいものになっているはずだ。

 

「いや、人の心配してる場合じゃないよ!」

「びっくりした……急にどうしたのよ」

 

 ベッドから驚いて飛び起きた英さんは怪訝な表情を浮かべる。

 

「英さんは有名企業に就職したけど、セクハラで精神を病む。僕は父さんが交通事故に遭って家庭崩壊の危機。この未来は変えなきゃいけないじゃん!」

 

 英さんと越後さんが友達になり、僕は英さんへの恋心を自覚できたことで浮かれていた。

 でも、そんなことを考える前に解決しなければいけない未来の問題と向き合わなければいけなかった。

 

「確かにそうよね」

 

 ベッドから起き上がった英さんは僕の隣に腰掛ける。その目は真剣そのものだった。

 僕は未来を変える。クロが僕を導いてくれたのだ。それを無駄にするようなことなどあってはならない。

 

「あたしのは中小企業に就職すればいいとして、白君のお父さんが事故に遭う時期はわかってるの?」

「それがわかったら苦労しないんだよなぁ」

 

 クロからは未来に何が起きるかはザックリと聞いていた。

 どうして自分がこんなクズになってしまったのか。あり得たかもしれない僕の未来の一つ。それはなかなかに悲惨なものだった。

 父さんは事故に遭って、母さんは介護に疲れ、家を出た僕は当時付き合っていた女性に騙されて借金を背負わされる。

 その事実を知っていても、時期がわからないんじゃどうしようもないのだ。

 

「白君が家を出たのは高校卒業後よね。一人暮らしって普通の高校生じゃできないし」

「それは間違いないと思う。男子校に通ってたみたいだし、彼女ができたのは専門学校に通い始めた後じゃないかな」

 

 クロは美容専門学校に通い、卒業後に美容師になったらしい。

 美容師になってからは、女の子を引っ掛けては家に居候するクズと化していたようだが。

 

「未来の白君――クロの思考パターンか……」

 

 難しい顔をすると英さんは鞄からノートを取り出す。

 

「今の白君とは真逆の性格なのよね。話したのはデートの後半と成仏する直前だったから、難しいけどある程度の推測はできるわ」

「本当にバケモノみたいな観察力だなぁ」

 

 もはや英さんの観察力は未来予知に匹敵するんじゃないだろうか。

 

「チャラチャラしているように見えて意外と責任感は強い。捻くれ者で素直に自分の気持ちを吐露するのが苦手。自分が嫌いで露悪的に振舞いがち。コミュニケーション能力が高くて、特に女性への気遣いができる……未来じゃあたしのことが好きだった、と」

 

 一瞬、目を泳がせると顔を赤くして英さんはノートを閉じる。

 どうやら、うっかりハメ撮りを見てしまったときのことを思い出しているのかもしれない。あのあと、しばらく気まずかったからなぁ……。

 

「な、何かわかったことある?」

 

 再び発生しかけた気まずさを振り払うように僕は尋ねた。

 

「現時点でわかるのは、性格が真逆でも白君は白君ってことくらいかしら」

 

 英さんは悪戯っぽく笑うと、僕の方へと身を寄せてきた。

 ふわりと香る甘い匂い。そして、感じる柔らかい感触。

 好きな女の子にこんなことをされて冷静でいられるわけがなかった。

 

「とりあえず、未来のことは一旦忘れよ?」

 

 英さんの放つ妖艶な雰囲気にゴクリと喉が鳴った。顔がゆっくりと近づくにつれて心臓の鼓動が跳ね上がる。

 

「英さん」

「なぁに?」

 

 頬を紅潮させ蕩けた表情を浮かべている英さんへ、僕はずっと言おうと思っていた言葉を告げる。

 

「君、英さんだけど英さんじゃないだろ」

 

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