未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第72話 モモのいない時間

 それから話の流れでメンバーを集めて男女混合でのバスケが始まった。いや、女子は越後さんだけだけど。

 その女子一人が桁外れに強い。というか、相手にならない。未来の日本代表は伊達じゃない。

 越後さんを抑えられるのは筑間先輩くらいしかいない。どうやら僕と1on1をやっていたときは本気じゃなったようだ。

 というか、筑間先輩はあんなに上手いのにバスケ部サボってるんだろうか。

 

 結局、越後さんと筑間先輩の超次元バスケについていけず、他のメンバーもすぐにバテてしまった。

 僕は他のメンバーと交流がなかったこともあり、さりげなくフェードアウトしてグラウンドの隅でしゃがみ込んでいた。

 

「冷たっ!?」

 

 頬に突然走った冷たい感触に驚いて振り返ると、そこには学校ではあまり見ることのないダウナー気味な英さんがいた。

 

「お疲れ。はい、スポドリ」

「ありがとう」

 

 受け取ったスポーツドリンクをありがたくいただく。

 ヒンヤリとした感触が喉を潤していくのが心地よい。夏の日差しも相まって最高の気分だ。

 

「どういたしまして」

 

 英さんはハンカチを引いてから僕の隣に腰を下ろすと、自分の分であろうペットボトルの蓋を開けて口をつける。ごくりと英さんが喉を鳴らすのと同時に首筋を汗が伝う。

 夏ということもあり、その動作がとても様になっていた。

 

「あれ、モモは?」

「何かずっと怖い顔してリラと筑間先輩の方睨んでる。未来じゃ何があったんだか……」

「筑間先輩と何かあったとか?」

「何かあるならリラでしょ? あたし、バスケ部入る気ないし」

 

 モモの様子に二人が関係していることは確定と見ていい。一体、何があったのだろうか。

 

「まだ昼休みは時間あるけど、英さんはバスケやらないの?」

「白君がついていけなかったあのバケモノ達についていけると思う?」

 

 英さんはジトっとした視線で僕を睨んでくる。

 英さんは成績優秀なだけでなく、運動神経もいい。でも、運動に関しては優秀なだけで飛び抜けて言いわけじゃない。レベル感でいえば、ドラゴンボーグのグリリンみたいなものだ。

 

「それにあれはバスケじゃないわ。バヌケよ」

「テニヌみたいに言うな」

 

 僕がツッコミを入れると、英さんはクスッと笑みを零した。

 

「こういうの久しぶりね」

 

 こういうの、とはこの空気感のことだろう。ここ最近、お互いが抱えているもののせいで、なかなか会話を楽しむ余裕がなかった。

 

「どこかの誰かさんのせいで毎日てんやわんやだからね」

「それは断じてあたしのせいじゃないわ」

「わかってるよ」

 

 今思えば、クロは茶々を入れて来ることはあっても、基本的に僕と英さんの二人の時間を尊重してくれていた。

 それに対して、モモはとにかく僕の劣情を煽ったり、告白を急かしたりしてきた。

 英さんらしいと言えば、英さんらしい強引さだ。

 

「いい加減あの悪霊から解放されたいわ」

「いや、悪霊って」

「あれは悪霊、痴女の悪霊よ」

「まーた特大ブーメラン投げてらぁ」

「うっさいわね」

 

 また睨まれた。うん、恥ずかしがってバタバタしている英さんも可愛いけど、不思議と彼女にはこういう表情の方が似合っている気がしてしまった。

 

「それより、英さん。最近ガス抜きできてないけど大丈夫そ?」

「ガス抜き?」

「ほら、僕といてもモモがいろいろ邪魔してくるし、学校じゃ猫を被ってるからストレスとか大丈夫かなーって……」

 

 元はと言えば、僕と英さんとの関係が始まったのも彼女のストレス発散に付き合うようになったのがきっかけだ。

 未来でのこともある。

 英さんの精神状態は常に気にかけておきたかった。

 

「なんだ、そんなこと気にしてたの」

 

 英さんは僕から視線を逸らして、どこか遠くを見ながら呟いた。その横顔がとても綺麗だったのは言うまでもない。

 

「あいたっ」

 

 そして、悪戯っぽく笑うと僕の鼻の頭を指で弾く。

 

「人の心配ばっかしてないで自分の心配をしなさい」

 

 人差し指をビシッと僕の顔の前に突き立てる英さんは、いつになく格好良い。

 どうやら心配されていたのは僕の方だったようだ。

 

「あたしはもうそんなに柔じゃないわ」

「いや、モモがいる時点で説得力皆無なんだけど」

「せっかく人がカッコつけてるんだから素直に受け取りなさいよ、バカ!」

 

 照れながら英さんが僕の肩を殴りつけてくる。

 こんな一時がたまらなく愛おしかった。

 

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