未来じゃ共依存!   作:サニキ リオ

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第73話 気持ちを伝える大切さ

 久々に肉体的疲労感を味わうことになった。

 この前筑間先輩と1on1で盛り上がったときはならなかったというのに、越後さん恐るべし。

 

「ただいまー」

「おう、おかえり」

 

 家に帰ると、家にいた父さんがソファーで寛ぎながらテレビを見ていた。

 父さんは大型トラックの長距離ドライバーをしており、いつもなら真夜中に帰ってくる。こんな時間に帰ってくるなんて珍しいこともあったもんだ。

 

「珍しいね、父さんがこんな時間に帰ってくるなんて」

「先方の都合で配送がなしになったんだ。んで、今日は仕事がないから帰ってきたってわけだ」

 

 部屋を出て玄関へ向かうと、そこにはいつも通りラフな格好をした父さんがいた。

 カランカランとステンレス製のタンブラーを鳴らしながら父さんは地上波で放映されているアニメ映画を見ていた。

 

「そういや純」

 

 見ていたアニメ映画を一時停止すると、父さんはこちらを振り向く。

 

「実はもっと遠方の配達ルートを引き継がないかって話が出ててな。そっちの方が稼げるし、受けようと思ってるんだ」

「えっ」

 

 ふと、以前クロから聞いた父さんの未来が頭をよぎる。

 父さんは交通事故に遭って酒とギャンブルに溺れるようになる。

 もし、この配置転換が原因だとしたら……止めなけばいけない。

 

「お金もいいけど、もっと家での時間増やしたら?」

 

 焦っていたせいか、ついそんな言葉が口を突いて出てきていた。

 

「母さんもそうだけど、働きすぎなんだよ。そりゃ苦労のない生活をさせてもらってる身としては文句は言えないけどさ」

「意外だな。純はそういうの気にしないと思ってた」

「我慢、してたんだよ」

 

 僕自身は忙しい両親に対して不満はなかった。小さい頃からいつだってそばにクロがいたからだ。

 でも、クロが来る前は寂しさを感じていたこともあったのだ。

 

「運動会も、学芸会も、授業参観も……一度だって来たことなかったじゃないか」

 

 みんな親がいるのに僕だけいない。そんな状況を惨めに感じたことは一度や二度じゃない。

 そんなときにクロが表れた。鬱陶しく思ったことは数知れないが、あいつは常に僕をかまってきてくれた。

 

 そんなクロがいなくなったからこそ、わかったのだ。

 家族で過ごす時間が少ないというのは、僕にとって寂しいことなのだと。

 

「別に今更家族の時間を増やせって言ってるわけじゃないよ。大人になったとき、一緒に酒を飲みながら話す時間もなさそうだなって思っちゃっただけだから」

 

 それは紛れもない僕の本音だった。

 大人になったとき、父さんや母さんと一緒に何かしている姿が想像できない。それが嫌だったのだ。

 

「純、ごめんな」

 

 父さんは僕に向かって深々と頭を下げた。

 

「物わかりのいいお前に甘えてたみたいだ。父親失格だな」

「そんなことないって。これはただの我儘なんだから」

「子供に我儘の一つや二つ言わせられないで何が親だ」

 

 父さんはそう言ってガシガシと頭を掻いた。

 こうして腹を割って話すのは初めてのことだった。

 もちろん喧嘩をしていたわけでも、仲が悪かったわけでもない。ただ単に僕にとって父さんは昔から遠い存在だったというだけのこと。

 

「じゃあ、これからはちょっとだけ我儘になるよ」

「バカ言え! 思いっきり我儘になっていいんだよ」

 

 その距離が少しだけ縮まった気がした。

 満足感に浸りながら自分の部屋に戻ると、壁をすり抜けてモモが現れた。

 

『白君!』

「うわっ!?」

『へ? ちょわぁぁぁぁぁ!?』

 

 結構なスピードで突っ込んできたせいか、モモはそのまま僕の体を通り抜けて派手にすっ転んだ。

 

「モモ、大丈夫――■〇×▲◇●っ!?」

 

 そして、転倒したモモは大変なことになっていた。

 幽霊だからこそなる床を貫通しての犬神家状態。スカートで、それも下着を着けていない状態でそうなったら場合、どうなるか。

 

『白君、大変なの!』

「大変なのは君の状態だ! 大変というかもう変態だよ!」

 

 下半身丸出しのこの女。僕の好きな子の未来の姿なんだよなぁ……。

 

『そんなことはどうでもいいのよ!』

「いいわけあるか!」

『いいから!』

 

 何とか床から抜け出すと、モモは必死の形相で叫ぶ。

 

『白君、今日お父さんから仕事の話されなかった!?』

「されたけど……」

『ああ、どうしよう! リラと正治さんの方ばっかり気にして大事なことが疎かになってた! あたしのせいで一さんが……!』

 

 頭を抱えるとモモの表情は絶望一色に染まっていた。

 憑りついている英さんからどれだけ離れられるかわからないが、おそらく家から慌ててここまで駆け付けたのだろう。

 頭を抱えるとモモの表情は絶望一色に染まっていた。

 憑りついている英さんからどれだけ離れられるかわからないが、おそらく家から慌ててここまで駆け付けたのだろう。

 

 やっぱりモモは英さんだ。

 どんなに未来で落ちぶれていたとしても、こうして誰かのために必死になれる性根の優しさは紛れもなく彼女のものだ。

 

「もしかして事故のこと? だったら大丈夫だよ」

『へ?』

「ちゃんと自分の気持ちは伝えたから、さ」

 

 モモがここにいるということは父さんの事故のきっかけは配置転換がきっかけなのだろう。

 完全に防げたという保証はない。安心はできないかもしれない。

 それでも、自分の気持ちを伝えられるときに伝えることが大切なのだと気づけた。

 

 これで良かったんだよな、クロ。

 

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