前世軍人記憶持ち系元正実のシャーレ所属万事屋生徒がサオリと色彩をぶん殴る話   作:拳正義実現委員会

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時系列は本編開始の2年前です。
おなしゃす。


0.平穏は終わりらしい

 

 

突然になるが、俺は幼女に憑依した。

まて、警察は止めろ。別に俺も望んでなった訳じゃない。

 

まぁ俗に言う、異世界憑依ってヤツ。

 

俺はとある国で軍人をやっていたのだが、いつものように大隊長として大隊を率いて敵国と戦っていた所、まさかの名前付き(ネームド)との連戦となった末、最後に相打ちとなり二階級特進した(死んだ)

で、気が付いたら赤ちゃんだった。俺が赤ちゃんになった訳じゃない、きっちりと人格を所持した赤ちゃんに憑依したのだ。

つまり俺は副人格で、赤ちゃんは実質二重人格になってしまったという。

 

やっちまったぜ☆

 

しかもその世界は学園都市キヴォトスとかいう生徒達が治めている所で、日常的に爆発とか銃撃戦が起きる。ヤベェ。

頭にヘイローと呼ばれる輪っかを浮かべたキヴォトス人は完全に人間の上位互換であり、銃で撃たれても何ともないという化け物っぷり。

 

軍から離れても銃を見ることになるたァ驚いたね。

 

「うみゅ……」

 

──はいはい大丈夫だから寝なさいねー。

 

やっべ起こすとこだった。無駄に喋らすんじゃねぇよ!起きちゃうだろが!!!

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

それから月日が経つにつれて元赤ちゃんこと月見里(やまなし)コウは、俺のことをお兄ちゃんと呼ぶようになったり、俺に"レン"と名付けてきたり、トリニティとかいうヤベーイ学校に行ったり。

あとは正義実現委員会とかいう治安維持組織になったりと紆余曲折、色々あった末、俺はコウの頼れる相棒と化した。

 

しかし、このイカれた世界は少女が銃を持ってるのが普通とかいう世紀末世界なので、どうしても前世でよく見た少年兵の姿がチラつく訳だ。

んで、俺は少年兵というのが嫌いなのよ。あんな洗脳紛いの刷り込みをして戦意を煽るなんて人の所業じゃないよね。

コウが正義実現委員会になったのにあたり、様々な戦闘術を教えていた時に委員長から「人を確実に殺す動きをしているね」と言われて、自ら少女兵を作り出していた事に気付いた時は頭を抱える思いだったぜ。

 

なので、俺はコウの正義実現委員会としての活動は極力関与しなかった。

代わりに、それ以外のサポートには尽力したが。(コウが俺の事をお兄ちゃんと呼び慕うのはこの辺りが原因だと思う。)

 

 

──だがそれも、今日までの話。

 

今日、コウが友人と談笑しているのを眺めていた時、外で爆発音が響いた。

それだけならば、別に日常の一部。みんなして「あぁまたか...」と言わんばかりに準備を始める。

だが今回は違った。舞い込んできた情報によると、"キヴォトス中のオートマタが暴走を始めた"と。

 

内から、外からオートマタが攻め込む。

キヴォトス全体がパニックに陥り、崩壊していく。

 

自身の学園を護るため、命令を受け一斉に外へ駆け出す。

.....さて、もう呑気に語っている場合じゃない。切り替えよう。

 

そうして、現実に目を向ける──

 

 

☆☆☆

 

 

硝煙が立ち上り、あちこちで銃声や爆発音が響く。

 

建造物が並んでいたハズの街並みはもはや更地同然であり、瓦礫がそこらじゅうに転がっている。

 

───どーなってんだ!?

 

「わかんない!でも、キヴォトス中のオートマタが暴走してるなら、ウチの自治区はあそこに1番集中してるはず!」

 

黒いセーラー服──正義実現委員会の制服のスカートを翻し、戦場を駆ける。

大きく開かれた紅く輝く眼の中の黒い十字の瞳孔を忙しなく動かし、黒い、所々赤いメッシュの入ったロングヘアをたなびかせて一際銃声の大きい所へ向かいながら、オートマタをARで鎮圧していく。

その時。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

大きなオートマタがトリニティの学生に向けて拳を振り上げていた。

 

考えるよりも早く、グッと足に力を込め無理やり方向を転換させ、一際大きなオートマタ目掛けて突っ込んでいく。

並のキヴォトス人にはとてもじゃないが真似出来ない挙動。いつもなら俺が育てたと鼻を高くするところだが……

 

──コウ!止めろ戻れ!そいつ...ヤバい!

 

実力を考えれば、あのオートマタは格下だ。だがそれでも俺は嫌な予感を感じ取り、コウを静止する。

もちろん、その感覚はコウにも伝達されていた。

しかし。

 

「ダメ、引けない!引かない!私の正義の為にも!」

 

そう言い、こちらを向いたオートマタに向かって身体を廻る力──神秘を集中させ、ARを構えて───

 

『gggggh.....』

 

「!?」

 

ガチャリ、とオートマタの胸の装甲が開き、中から爆弾が射出される。

 

───コウ!!

 

避けきれず、爆発に巻き込まれるコウ。

 

──ッ!

 

研ぎ澄まされた軍人の勘が、けたたましく警笛を鳴らす。

 

──(自爆!コウに敵わないと察したか...だが、普通の爆発と違う...!今のは.....)

 

「うぅ.....ゲホッ」

 

ビチャビチャ、と大量の液体が地面に零れ落ちる音がする。

軍人である俺にとっては、聞き馴染みのある、否、あり過ぎる音。

もう一生、聞くことは無いと思っていた音。

 

「だい……丈夫?」

 

くる、と襲われていた生徒に向き直りそう聞くが。

 

「ひ、ヒイィィィィイ!!!」

 

何か恐ろしいものでも見たかのような叫び声をあげ、どこかへ逃げていった。

 

「あれ...見えない.....腕、動かない.....」

 

───.........コウ。

 

立ち上る煙で、目の前は視界が塞がっている。あの逃げた奴は見えたようだが……。

しかし、何が起きたのか、起こってしまったのか。俺は、全てを察した。

 

煙が晴れる頃に、コウも現状を知る。

 

「左.....暗い.....?力が入らない.....」

 

ドチャリ、と何かが落ちる音。音のした方を見やると──

 

「.....うで?」

 

未だビクビクと痙攣を起こしている、左の腕。

それが、赤黒い液体を撒き散らしながら地面に落ちていた。

 

左腕が肩から離れ、骨、並びに肉が剥き出しに。

加えて、眼窩が剥き出しとなった左眼からも、壊れた蛇口の如く黒い液体が混じった血がボタボタと垂れ流されていた。

 

「いたい.....いたい!いたいイタイ痛い痛いいたい!!」

 

瞬間、脳が身体中の神経が訴える痛みを受け取る。

 

───(.....クソッ。)

 

自分もまた、懐かしい痛みを遠くに感じながら、現状を整理する。

 

───(敵オートマタ...ザッと数えて100機以上。コウの身体は.....左眼、左腕、欠損.....やっぱ狂ってやがるよ.....この世界。)

 

───コウ。

 

「いたい..!見えない、動かない.....!!」

 

───コウ、聞こえるか。

 

「.....お兄ちゃん.....わたし、わたし...!」

 

───代わるぞ、コウ。

 

「...なんで.....?」

 

コウが驚くのも当然、俺は基本的に正実の活動に協力的では無かったから。

だから、正実としてここにいる以上、俺はコウと代わることは無い。そう思っている。

 

しかし。これ以上は。これ以上は"大人"として見過ごす訳にはいかない。ここからは俺の番だ。

 

───なんでじゃない。説教は後だ、代われ。

 

「.....うん。」

 

徐々に身体の制御権が俺に移る。それと比例して、遠くにあった痛みも鋭く、より鮮明になっていく。

 

「──よし、じゃあ後は任せて寝てな。」

 

───大丈夫...?ごめんなさい、わたしのせいで....。

 

「大丈夫。ただ、終わったら説教だ。」

 

───うん。

 

そうして、コウの意識が落ちたのを確認するやいなや、服の裾を破って右腕と口を使って傷口を縛り、止血をする。

 

「.....やっぱり強い娘だな。こんな痛みを受けて尚、痛がるのは一瞬だけとは...。」

 

そう呟きながら、グルグルと強く布を巻く。

 

「腕はOK。左眼の血が止まんねぇ.....流石に血を流し過ぎだ、いくらキヴォトス人でも───ダメだ、頭回んねぇ。このままじゃ.....。あ、そうだ。そういやいつぞやのあの衛生兵が言ってたな.....」

 

前世の記憶を探り、よく世話になっていた金髪の衛生兵の言葉を思い出す。

 

ポケットから少し血を含んでしまったティッシュを取り出し、おもむろに眼窩に詰める。その上に、乱雑に布を巻く。

 

「うし、これでいいだろ。その場止血の裏ワザ、医者がブチギレるシリーズ...だったか。あいつの言うことも役に立つもんだ。ま、キヴォトス人ならこれでも治んだろ。───さて。」

 

硝煙の匂い。鉄臭い匂い。

様々な匂いが鼻腔を掠める。

 

それら全ての匂いを取り込むように、深呼吸。

 

もう、いいだろう。建前は。

 

「懐かしい...匂いがする....。死の匂い.....戦の匂い.....戦争の匂いだ.....!」

 

今までずっと堪えてきた。コウの手前、大人として気分を高揚させることは出来なかった。

急にキャラが変わってすまない。騙して悪いが…こっちが俺の素だ。

 

やはり俺は...どうしようもなく、戦いに魅せられている。

 

どれだけ人格者であろうと、どれだけ頼れる者を演じようとも俺は結局、本当にどうしようも無い……どうしようもならない殺人鬼で、戦闘狂で、根っからの軍人なのだ!!

 

夥しい数のオートマタの軍勢に向かい立ち、叫ぶ。

 

「さぁ、俺はここだ!まだ片腕がちぎれて、片眼が潰れただけだぜ!?他の奴らを襲うのはやめにして、さっさとかかってこい!!ブッ壊してやるからよォ!!!さぁ早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)!!早く(ハリー)!!!!」

 

そうして、レンは駆け出す。味方の助太刀の為、コウの正義の為、コウの好きなこの学園の為。

そんな美しい建前に隠れた、ドス黒い、目も当てられないほど醜い、永くお預けにされていた戦いへの渇望を潤す為に。この戦争の為、次の戦争の為、次の次の戦争を駆ける為に。

 

 

 

 

 

 

それから後は早かった。銃や体術を駆使し、あっという間にオートマタを殲滅したのだ。

 

「ま、統率の取れてない壊れたキカイなんざこんなもんか。それでも、久々の戦いだし楽しかったよ。」

 

弾の切れたARが手からするりと落ちる。

同時に、俺も支えを失ったように瓦礫の山へ倒れ込む。

 

「あ゙ーちくしょう.....血流し過ぎた.....。ま、寝りゃ治んだろ。キヴォトス人頑丈だし。」

 

辺りを見回す。

 

「ボロボロだな.....これどうやって直すんだよ。」

 

破壊の限りを尽くされ、荒廃したトリニティ自治区。

これも1週間もすれば元に戻るのだから、驚きだ。

 

「コウ.....?」

 

身体に、2人分の影が落ちる。

 

「──ハスミに.....ツルギ.....無事?」

 

コウの数多くいる友人の中の2人。剣先ツルギと羽川ハスミだったか。

精一杯、口調をコウに似せて喋る。

 

「はい、私達は.....って、そんな事はどうでもいいでしょう!コウ...!腕が.....」

 

「.....うん、ちょっとドジっちゃって。左腕と左眼かな?を無くしちゃった。」

 

「...ッ!ごめんなさい...ごめんなさい!私の到着が遅れたばっかりに!援護出来なかったばっかりに!!」

 

「気負わないで、ハスミ.....」

 

コウ(レン)の服にしがみついて震えるハスミ。

 

「ハスミ、落ち着け。.....コウ、報告を。」

 

ツルギがそう、冷静な口調で聞く。

 

(落ちる前に情報を聞き出そうとするか...。この娘、出来るな。まぁウチの娘のが出来るけどなー!!!)

 

「全隊に通達を。『キヴォトス人にも甚大なダメージを与える爆弾を所持したオートマタがいる。』...と。」

 

「...腕と眼は、その爆弾に?」

 

「うん。恥ずかしながら。」

 

ブビュ、と嫌な音と共に、布越しに目から血が吹き出る。

 

「...ヒュッ」

 

呼応するように、ハスミの動きが止まる。

 

(クソ、止血出来てねーじゃねぇか。あ゙ーでも一時的な物って言ってたか.....)

 

「.....コウ...ヘイローが。」

 

「.........」

 

頭に浮かぶヘイローには亀裂が入り、ノイズのようなものがその存在をかき消そうとしていた。

 

(.....待て、ヘイローが、なんだって?)

 

「コウ...待って!コウ!ダメです!戻ってきて、しっかりして!!」

 

「.....ッ!」

 

(え?何この雰囲気?まるで俺が死ぬみたいな.....)

 

その瞬間、戦いによってハイになっていた脳味噌が徐々に現状を理解していく。

 

 

.....死?

 

 

ヘイローの消失。それ即ち、キヴォトス人の死を意味する。

 

サァッと、全身から血の気が失せるのを感じる。いや、もはやそんな血液は残っていないが。

 

(.....冗談じゃねーぞ!?俺はいいさ、どうせ拾った命だ。だが、コウは違う!)

 

レンは、タカをくくっていた。キヴォトス人の強度に胡座をかいて、これでも死ぬ事は無いと思っていた。

 

「早く!救護騎士団を!」

 

(そ、そうだ!救護騎士団(アイツら)なら!あの救助ガチ勢なら!)

 

淡い期待も、ツルギがゆっくりと首を振ることで打ち砕かれる。

 

グルグルと、思考が廻る。

その末に、出した結論。

 

「.....行って。」

 

「.....え?」

 

「さ、早く。救護騎士団でも助からないなら、もう私は死人と同じ。死人と喋ってる暇は無いはずだよ。」

 

助からないならせめて、コウの好きなこの学園を護る。

そうした方がきっと、コウは喜ぶだろう。.....いや、コウは無駄に動いた俺が殺したようなものだ、きっと恨んでいるだろうが。

 

「コウ!あなたという人は...ッ!!」

 

「...あぁ、そうだな。」

 

「ッ!ツルギ!!」

 

何か言いたげに振り向いたハスミを掴んで無理矢理歩き始めるツルギ。

 

(いいね、聞き分けがいいのは優秀な証拠だ。)

 

「.....幸運を。死にゆく者から敬礼を。.....なんて。」

 

「.....ッ!──あぁ。」

 

「ツルギッ!離して下さい!離して!コウッ!コウ!!!」

 

そんな声も、次第に聞こえなくなる。

 

(あークソ、この身体を廻ってる不可思議な力の扱い方、終ぞ習得出来なかったな.....コウは出来てたけど。)

 

最後の足掻きのつもりで、身体を廻る絞りカス程度の量の神秘を繰り出そうと腹に力を込める。

 

「う.....おおぉ.....おおお?」

 

悪戦苦闘、という時間も特にかからず、あまりにもあっさりと...拍子抜けしそうなほど簡単に操るのに成功した。

 

「.....は?巫山戯てんのか?俺が今までどんだけ苦労したと.....!あ゙ぁ゙クソ...」

 

ゆっくりと、瞼が降りる。眼から光が失われていく。

だが、最後まで身体に残った神秘は色濃く輝いていた。だからだろうか。

彼は...彼女は.....

 

 

 

 

色彩に、触れた。

 

 

 

 

☆☆☆

 

「……ふむ。」

 

薄暗い部屋の中、淡々と作業をしていた黒い異形頭の手が止まる。

 

「どうした?黒服。」

 

急に手を止めた事が気になったのか、タキシードを着たマネキンのような姿をしたナニカが聞く。

 

「……キヴォトスに"色彩"が入ったようです。」

 

「なんだと?ゴルゴンダのシナリオではまだ……」

 

「ご安心を。どうやら今回は別に目的があるようです。」

 

「別の?」

 

ギギギ、ときしんだ音を立てる。

 

「恐らく…色彩は未だキヴォトスを認識していません。ただ光に集う虫のように、そこに来ただけ。と言ったところでしょうか。」

 

「ふむ……それで、その目的とは?」

 

「今は分かりません。…ククッ、少し調査をします。ここは頼みましたよ……」

 

 

 

 

 




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