前世軍人記憶持ち系元正実のシャーレ所属万事屋生徒がサオリと色彩をぶん殴る話   作:拳正義実現委員会

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癖詰め込んでます。


1.あの人はわたしになったらしい

 

暴走したオートマタの残党狩りが終わり、キヴォトス中のオートマタのプログラムの再構築がミレニアム主導で行われ始めた頃。

未だ硝煙の臭いが残るトリニティの自治区の一角。

とある瓦礫に遺された大量の血痕に、1つの影が落ちる。

 

「……コウさん。」

 

純白の制服に身を包んだ、青髪の生徒がポツリと言葉を漏らす。

 

「他にかかり切りだったとはいえ、最も救護が必要な方に適切な救護が行えなかったなんて……!」

 

いや、行えなかったのではない。そもそも、間に合わなかったのである。スタートラインにすら、立てなかったのである。

 

「あまつさえ、遺体すら無いだなんて……」

 

オートマタの大群を前に大立ち回りを演じ、絶望的な戦局を覆した、正義実現委員会1年、月見里コウ。その遺体が消失していた。

これだけの出血だ。仮に起き上がり移動したとしても、必ず血痕が遺る筈。血痕は、この瓦礫にしか無い。それは、そこに倒れ伏した者が死亡していたという確かな証拠だ。

なのにも関わらず、遺体はそこには無い。

 

彼女がこの現場に足を運ぶのはこれで4回目。最初に駆けつけた際は決して遅かった訳では無く、むしろ速い方だったと言える。しかし、既にそこにあるはずのものは無かった。

自然に消滅でもしたのか、誰かに持ち去られたのか。それを知るよしは無いが……「救護の必要な場に救護を」を信条とし、その上大切な人に必要だった筈の救護を行えなかった彼女──救護騎士団の一員、蒼森ミネの心に深い傷跡を遺したのは言うまでもないだろう。

 

「一体、何処へ……。」

 

やがてその血痕が遺された瓦礫は撤去され、元通りにそこにあった校舎が再建された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。いや、夢と言うにはあまりにもリアル過ぎる──まるで本当に体験しているかのような、夢とも言えない、夢。

まるで、誰かの人生をリプレイしているかのような。その"誰か"の視点で、その時"誰か"が考えていた事と同じ事を考えて、"誰か"と同じ行動をする。

 

産まれてから、死ぬまで、およそ30年は優に超える時間。人の生涯としては短いかもしれないが、産まれて15、6年程しか生きていなかったわたしには永い、永遠とも錯覚する時間だった。

 

慣れ親しんだキヴォトスでは無い、聞いたことも見たことも無い世界──そこで生きた、1人の人間の記憶。

銃で撃たれれば簡単に致命傷を負ってしまうような、そんな世界で生きた人間の記憶。

とある国に産まれ、軍学校に通い幼いながらも頭角を示し、軍に入ってからも目まぐるしい活躍を挙げ、後に陸軍最強とまで呼ばれる事になる1個大隊を率いる大隊長として生き、そして激戦の末亡くなった、人間の記憶。

戦うのが大好きで、まさしく戦闘狂と呼べる人間の記憶。

人を殺すのが快感で、人を殺すのが苦痛な、板挟みの感情で精神が崩壊しイカれてしまった人間の記憶。

 

あまりにも酷く、お話として観るにはあまりにも耐え難い。何かの映像作品であるならば、スタッフロールまではなんとか乗り切れても、二度とは観たくない。そんなような、辛く暗い人生。

 

しかしわたしは、誰に言われるのでも無く──ただ極めて自然に、そんな人生を送った人間が"もう1人のわたし(お兄ちゃん)"であるという事を漠然と理解した。

 

そんな記憶が、見終わる傍から自分の記憶の中に這入っていく。まるで、わたしがその人生を送った本人であるかのようになっていく。

 

銃の重さも、敵の命乞いの声も、引き金を引く感覚も、断末魔も、飛び散り頬に跳ねた血液の生暖かさも。その瞬間、自身に生じた感情も。より鮮明に脳に焼き付いていく。

これまでの、何も知らなかった純粋な自分を塗り替えていく様に。

 

 

 

 

☆★☆★

 

 

「──ッ!!!」

 

「……おや、起きましたか。」

 

勢いよく飛び起きる。辺りを見回すと、そこは謎の薄暗いオフィス。わたしは黒いソファベッドの上に、裾の長いダウンコートを掛けられ寝かされていた。左手でどかそうとするが、ダウンコートは全く動かない。どころか、掴んだ感触すらない。

不審に思い、確認しようと首を傾けるが……そこで、目を開いている筈なのに、左が全く見えない事に気付いた。

 

「クク、覚えていないのですか?ソレは既に失っています……月見里(やまなし)コウ。」

 

声の主を確認すると、それは丁度部屋に入ってきた所だったのかマグカップを片手に持ったまま、開いたドアの前に立っていた。

人の姿はしているものの、主に頭部がおよそ人間とは呼べない異形の頭をしている、真っ黒なスーツを着こなした、恐らく…男。

 

「私は……私?わたし?お、俺?……あれ、あれ?」

 

唐突に、思考が纏まらなくなり、言葉が上手く出なくなる。

 

「ほう?やはり融合が……クク、落ち着いて下さい。今は膨大な情報を流し込まれ、混乱しているだけでしょう。ゆっくり呼吸を。」

 

異形頭がそう言ったのを聞き取り、何とか呼吸を整えて思考を雑に纏める。

何度も何度も口の中で言葉を反芻して文を構築し、絞り出す。

 

「トリニティの、保健室じゃない……。ここは?」

 

「キヴォトス内であるという事は保証しましょう。キヴォトスの医療では到底治療は不可能でしたので、私の管理しているオフィスへ移動させ治療を行いました。」

 

そつ怪しげに言い、マグカップをデスクに置いて椅子に座り、こちらを白い亀裂の広がった多分目なのであろう穴から、自分を見る。

 

「そう、なの?それはありがとうだけども…なんで助けたのかよく分からないけども。…とりあえず、あなたは……?トリニティはどうなったの?」

 

「私は……そうですね、黒服とでも呼んでください。助けた理由は追追説明致します。そしてトリニティ、いえキヴォトス全体は既に回復し、通常通りに戻りました。」

 

「あれだけの損害を受けたのに?……ッ黒服!わたしはどれだけ寝てたの!?」

 

頭痛と目眩で覚束無い足で黒服のデスクまで向かい、バンと手を叩きつける。やはり、右手と共に動かした筈の左手はいない。

 

「そうですね……」

 

この位でしょうか、と三本の指を立てる。

 

「み、3日?」

 

「いいえ。」

 

「……3週間?」

 

「いいえ。」

 

「……さん、ヶ月?」

 

「はい。貴方は3ヶ月程眠っておりました。」

 

「……」

 

絶句。

勿論、他にも色々と聞きたいことは山ほどある。しかし、3ヶ月。3ヶ月も寝続けていたと言う事実に、ただえさえ纏まらない思考が更に混乱していく。

 

「まずは現状を。貴方は現在トリニティにおいて停学という扱いになっています。1度は死亡により除籍と言う扱いになりましたが、現場に死体が無かった事を口実とした正義実現委員会の希望などにより、行方不明による停学に落ち着きました。」

 

「じゃあ早く戻らないと──」

 

「そうはいきません。貴方は既に"色彩"に覚えられてしまっています。今回は事なきを得ましたが、次はタダでは済まないでしょう。……当然、周りも。」

 

「……?色彩って何?どういうこと?」

 

「色彩は……そうですね。神秘を反転させ、キヴォトスに終焉をもたらす……生徒を喰らい、この世界を滅ぼす意思無き光です。貴方は運悪く、アレに触れてしまったのです。」

 

神秘?反転?……意味が分から無さすぎる。追求するのも面倒だ、そういうものがあるのだと一旦納得しよう。

 

「それが、どうしたの。」

 

「色彩は未だキヴォトスを認識していない……しかし、貴方は違う。今回は完全には反転しなかったので取り込まれはされなかった様ですが……」

 

そこで言葉を区切り、マグカップの中身を口のような亀裂の中へ流し入れる。

 

「1度接触した事により、色彩にマーキングされてしまったようです。今は完全に取り込むための準備をしている……といった所でしょうか?」

 

……不味い、全くもって意味がわからない。

 

「つまり、その色彩とか言うのが準備を整えてわたしにまた接触してきたら、その時周りにいた人も巻き添えを喰うってこと?」

 

「ええ。そういう事になります。」

 

「取り込まれたら、どうなるの?」

 

「"反転"が起こり、生徒の持つ神秘(mystery)恐怖(terror)となります。」

 

『あんた、さては説明とか苦手なタイプだろ?』

 

「……ふむ?」

 

バッ、と口元を抑える。

今のはなんだ?わたしはそんな事……ちょっと思ったけど……口に出そうとはしなかった。それに、口調だって違う。

 

「クククッ、なるほど。これは代償……いえ、副産物でしょうか……?」

 

くつくつと笑いながら、何やら呟いている黒服。

 

『ブツブツ何独り言してんだ気持ち悪ィな。』

 

また口を塞ぐ。

 

「え、えっと……今のは違くて……」

 

「あぁ、お気になさらず。分かっております。」

 

「そう、です?じゃあ、えっと……テラーって、何なの?」

 

恐怖(terror)……それを語るには、今はあまりにもサンプルが足りません。我々も現在進行形で、探っている最中なのです。ただ、現時点で断言出来るのは……それは必ず、宿している者に悲劇を与えるという事です。」

 

"我々"という点に引っ掛かるが、それに突っ込む前に黒服がしかし、と続ける。

 

「貴方次第で、その質問にキチンとお答えできるでしょう。」

 

「……?どういうこと?」

 

「何故、貴方が色彩に触れたのにも関わず大した被害が無いのか。そもそも何故、取り込まれなかったのか。……貴方は非常に"不可解"な存在であり、それと同時に貴重なサンプルなのです。」

 

「何を言って……」

 

「一瞬触れただけでも器は崩壊しかねない……回避するには、それ相応の代償が必要です。……なにか、"違和感"はありませんか?」

 

「……ッ!」

 

ある。

とてもとても、ある。

ずっと目を逸らしていたけれど。ずっと無視していたけれど。

 

「……お兄ちゃんが……いない……。」

 

おはようからおやすみまで共にいた、レンが、自身が最も敬愛するお兄ちゃんがいない。

"いる"という気配すら、まるで存在しない。

 

月見里(やまなし)レン……彼女──いえ、彼もまた不可解な存在です。キヴォトスの外から魂として流れ着き、自分の身体というものを持たず、図らずも憑依した1人の生徒の第二人格として共生の道を選んだ存在……。」

 

なぜ、自分以外知り得ない筈のあの人のことを知っているのか。

聞こうと思ったが……話してまだ数分だと言うのに、この男にはそんな事を聞いても無駄だという謎の確信を持っていたため、聞かない。

 

「代償は、自我の喪失といった所でしょうか?」

 

「……は?」

 

「"レン"が代償によって消滅した事で、内包されていた記憶、経験の全てが貴方の脳内へ移動したのでしょう。先程の貴方の口から発せられた言葉も、未だ2つの人格のすり合わせが終わっていないが故の物かと。」

 

「……」

 

瞬間、ツンと鼻の奥に様々な臭いが掠める。

鉄臭い血の臭い、腐敗しきった死臭、黒い硝煙の臭い。

死の臭い。戦争の臭い。

下卑た笑い、絶叫、その他諸々の聞くに絶えない音が鼓膜を揺らす。

MG(マシンガン)が人々を容赦無く薙ぎ倒していく音。SR(スナイパーライフル)で人の頭部が吹き飛ばされる音。

死の音。戦争の音。

 

それら全てに湧き上がる、悦びと嘆きの感情。

 

何か喉元に込み上げるものを感じ、咄嗟に口を抑える。

 

「……彼が"外"でどのような生涯を送ったのかは分かりませんが、あまり誇れる物では無いようですね。私が言えた話では無いですが……」

 

ともかく、と続ける。

 

「完全に恐怖を防げた訳ではありませんが……彼の献身により、貴方は命拾いをした訳です。それにより、彼は消滅し、貴方と融合した。」

 

「……融合?」

 

「この場合は吸収と定義したほうがいいかもしれません。つまり、レンの送った生涯は貴方の過去……前世となりました。今の貴方は"レン"として生きた後、"コウ"としてこのキヴォトスで生活しているのです。」

 

「……は?」

 

話が、飛躍しすぎている。

でも、でも。先に観た夢。およそ30年以上の人生を送った夢。

 

それは夢と呼ぶにはあまりにもリアル過ぎて……まるで本当にわたしが送ってきた人生を追憶しているようで……。

 

でも、わたしはコウで、お兄ちゃんはお兄ちゃんで……。

つまり、わたしはお兄ちゃんの全てを、()()()()()()()

 

少し前に読んだ事がある、ライトノベル。

その内容は確か……異世界転生モノ。本来なら、お兄ちゃんもこんな形で、このキヴォトスに産まれる筈だったのかもしれない。なのに、選ばれた()の中には既にわたしという()がいて……!

 

彼のやり直しの機会を。彼が国のため捧げた青春を取り戻す機会を。他でもないこのわたしが奪い、あまつさえ彼が積み重ねてきた経験も、技術もわたしが奪ってしまった……?

 

「貴方自身の話をしましょう。現在はレンさんの尽力により完全な反転は防げましたが、完全に元に戻すことは叶いませんでした。」

 

そんな黒服の声で、ぐるぐると廻る思考のループから一旦抜け出す。

 

「……どう、いう?」

 

「結論から言いますと、神秘と恐怖。そのどちらもが貴方の身体の中で共生しています。それは見た目にも顕著に現れています。」

 

……この部屋には鏡という物が無い。今自分の見た目はどうなっているのだろうか?

 

「それに加え、レンさんが今際の際で会得した神秘の意識的な操作。我々にとっても貴方は重要な存在なのです。」

 

「モルモット……って事でしょ」

 

「人聞きが悪いですね。ただ少し協力して頂きたいだけです。協力の暁には、我々──ゲマトリア謹製、義眼及び義肢を提供させて頂きます。」

 

……この口ぶりからして、やはりわたしは左腕と左眼を失っているようだ。あの時、素直に引いていればと一抹の後悔が脳裏を過ぎるが、プルプルと頭を振って払い除ける。

ゲマトリアは……この男が所属している組織かなんかだろう。どうせろくな物では無い。

 

「……わたしを助けたのは、それが狙い?……協力って、何をすればいいの?」

 

「クククッ……何も貴方の身体を切り裂いたりなどをする訳ではありません。ただ少々戦闘データ等が欲しいだけです。」

 

「……それだけ?」

 

もっとマッドな事をしてくるかもしれないと身を構えたが、拍子抜けだ。

 

「えぇ、後は自由にして頂いて結構です。あぁでも、お友達の事を想うのなら、復学は避けた方が賢明かと。」

 

「……。」

 

「断って頂いても構いません。ですがどちらにせよ、もう貴方は元の"月見里コウ"としては生きる事は出来ないという事は、ゆめゆめお忘れ無きよう……。」

 

わたしの15年+30〜年モノの知恵を稼働させても、この提案は受けた方がいいと判断される。

しかし、見ただけでわかる。コイツは、こういったどう考えてもこちらのプラスになるような甘言で誑かして子供を食い物にする……"悪い大人"であると。

 

分かっている。この大人を上手いこと利用する為にはわたしも……いつまでも子供ではいられないという事だ。

 

「分かったよ。乗った。」

 

「クククッ、分かりました。ではこちらの契約書にサインを……」

 

大丈夫。この手は()()で腐るほど見てきた。

心配しないで、お兄ちゃん。()()()があなたの全てを奪ってしまったのなら……なんの気休めにもならないけどせめて、全てを奪ってしまった()が、あなたに成ってみせるから。

 

「『──御託はいい。そんな紙切れ如きで私を動かせると思うな、早くしろ。』」

 

「……!ククッ、()()()()()……案外速かったですね。──ならば、"大人"でも"子供"でもない不可解な存在よ。ゲマトリアを代表し、この私"黒服"が貴方との協力を依頼させて頂きます。衣食住、その他諸々の支援をする代わりに、貴方は我々の協力をする……よろしいですね?」

 

「『五月蝿い。さっさとしろ。』」

 

「クククッ……ではそのように。期待していますよ、死と生の神(シヴァ)よ。」

 

ゆっくりと席を立ち、「少々お待ちを」と言い部屋を後にする黒服。

 

「──大切な存在を守るために自分を犠牲にした結果、大切な存在が自分に喰われてしまうとは……皮肉なものですね。」

 

去り際に呟かれた言葉は、彼女()の耳には届かなかった。

 

「『……気持ち悪ィ。』」

 

黒服のデスクに置かれたマグカップの中身は、すっかり冷めきってしまっているようだった。

 

 

 

 




黒服好きだよちゅっちゅ!でも君回りくどい喋り方するから読み物にとことん向いてないね♡
そもそも作者がこう言う文書くの向いてないね。

月見里コウの元ネタはヒンドゥーの神、シヴァ神です。破壊と創造の神とされていますが、私の拡大解釈で黒服には死と生の神と言わせました。
破壊=死=恐怖
創造=生=神秘
恐怖と神秘って訳です。

コウのヘイローは「ダンシングシヴァ」って調べたら出てくる像の後ろにある輪っかみたいな感じ。たぶん。あやふやでごめん。質問あったら聞いてね。
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