前世軍人記憶持ち系元正実のシャーレ所属万事屋生徒がサオリと色彩をぶん殴る話 作:拳正義実現委員会
カタカタカタ、とキーボードを打ち込む音が室内に響く。
その音を鳴らしているのは、円形で4箇所に炎のような突起物、円内部には星が円周にズラリと並び、その内側にも2つの円という暗赤色で少し欠けた特徴的なヘイローを浮かべる黒い制服を着た生徒。
顔の左側の前髪は目にかかるくらいの長さがあり、右は後ろへ流しているというアシンメトリー。後頭部で簡単に髪を纏めており、髪型的にはポニーテールの部類に入る。
露出した左耳には耳輪上部及び横部に黒いクリップ状のイヤリング、耳垂付近にリングピアス、そして耳垂からぶら下がる逆十字のピアス。彼女が着ている制服の学校の校則から見ればダイナミック校則違反もいい所だが、今の彼女にそれは関係無い。
キリのいい所で作業を止め、大きく伸び。
「……失礼します。」
ガチャリ、と扉が開く。その音に反応し、私は椅子に座ったまま、扉の方へ首を傾ける。
「『──なんの用だ、黒服。』」
「ククッ、そう身構えないで下さい。ただ様子を見に来ただけですよ。」
「『様子、ね。』」
入って来たのは黒服。相も変わらず胡散臭いが服を着て歩いているかのような奴だ。
立ち上がり、カウンターがある方へ向かう。
「『まぁ座れよ。珈琲でいいか?』」
「おや、貴方がそんな事を言うとは……頂きましょう。」
ゆっくりとソファに座るのを確認し、コーヒーメーカーの方へ視線を向ける。
「『意外か?客はもてなすのが最低限のマナーだ。知らんのか。』」
「ククッ、いや全くその通りです。」
ミルクや砂糖はいるかと聞いたら、NOと返答。コーヒーフィルターをコーヒーメーカーの中へ被せ、瓶に入ったコーヒー粉末を掬い入れる。
水を目盛りまで流し、蓋を閉めてスイッチを入れる。
「『で、そのお目当てらしい様子とはなんだ?』」
「……"腕"と"眼"の調子はいかがですか?」
そう言われ、左手を軽く動かす。長袖からチラりと覗く、光を反射している鈍色の腕を見て、目を細めながら言葉を返す。
「『見ての通りだ、問題は無い。この前メンテしたばっかだしな。……しっかしあんたの言葉や思惑とは裏腹に、技術は信頼出来るな。』」
「これは手厳しい。ですが、あえてお褒めの言葉と受け取りましょう。」
「『……ハッ』」
しかし、と指を立てる。
「プログラム及び開発は私も携わりましたが、ソレらを造ったのは私ではありません。作成者は──」
その時、また扉が開く。
「邪魔をする。」
這入ってきたのは……なんだアレは。キイキイときしんだ音を立てる木人形がタキシードを着て歩いている。
「おや、噂をすればなんとやら…ですね。その方が作成者、マエストロです。以前にお話した"ゲマトリア"……その1人です。」
ゲマトリア。名だけで見るのならば言葉を数字に置き変える数秘術の1つ。しかしその実態は"不可解な探求者"と称し、色彩に対抗しうる己の崇高の為研究を行う組織……だったと記憶している。
「黒服か。ならばその者が──あぁ、素晴らしい……!私の傑作を見事に稼働し、馴染ませている……!」
「『なんだコイツ。』」
「マエストロ。彼は自身を芸術家と定義し、そのテクストに沿い自らの発明品を芸術品として──と、このような話はお嫌いでしたね。」
自分について少し理解して来た様子の黒服に心の中で舌打ちをし、完成したコーヒーを来客用のマグカップへ入れて黒服の目の前の長机に置き、壁にもたれかかる。
「素晴らしい……だが、だからこそ解せん!」
「『──で、そんなマエストロサンは一体何の御用で?』」
「ふむ。それを聞くかね?ならば答えよう。」
「『情緒イカれてんのか……?まぁいい。言えよ。』」
「……今そなたが掲げている看板、役職。それが解せぬのだ。"万事屋"……何故、独立傭兵の如き使い走りに身を置いているのだ?」
軋んだ音を立てながらそう問うてくる。
万事屋。そう、今私はそのような看板を掲げている。根城にしているこの事務所も、黒服から貰ったものだ。
黒服と出会ってもう1年の時が経ったか。キヴォトスは1年の周期が長く、何度も四季が巡る。元いた世界でならもっと長い年が経っているのかも知れない。
黒服ないしゲマトリアと結んだ契約で、私が提供する物は自身の戦闘ログ。ならば常に戦いに近い場所へ身を置くのが自然だが、かといって学校の治安組織に与するのは論外だ。それでいいのなら今頃私は正義実現委員会としてトリニティに復学している。
よって私が選択したのはここ、無法地帯で治外法権の掃き溜め。社会のあぶれ物が集うここ、"ブラックマーケット"にてこのような職で住まうのが最適だと判断したのだ。
「『それを聞く為だけに来たのか?……他に道は無い、それだけだ。ちょっと考えりゃ分かんだろ?
「ほう?言うではないか
ふん、と鼻を鳴らす。初対面ではあるが、既にいけ好かない奴である事がひしひしと感じられる。
「そう言えば……過去にそなたが喰らったというあの爆弾……あれも私の作品には及ばぬが、中々良いものであったな。」
「『……ほう?』」
その昔、自分が受けた例の爆弾。自分の根源的何かに触れるような、あの爆弾。かつての
間接的とはいえ、今現在私がこのような状況となった原因の一つ。口ぶりからして、コイツが造った訳では無さそうではあるが……
「生徒を生徒たらしめる要素である神秘。アレはその神秘を破壊する性質を持った爆弾だ。失敗作であったらしい為放置していたのだが……何者かに奪われていた様でな。しかし、実際に今のそなたを見て新たな啓示を得た。戻ったら早速私なりに新規で造ってみるのも悪くない。」
ギシギシと身体を軋ませ、言う。
そんな様子に自然とため息が出る。
「『……アレを造ったのはゲマトリアの仲間だろ?謝罪の意どころか、毛ほども反省してないのな。』」
「反省?何を言うかと思えば……。確かにアレを造ったのはゲマトリアの内の1人だ。しかしそれがどうした?私達は互いに責任を取り合うような仲良しこよしの部活動やサークルなどでは無い……そうだろう?黒服。」
「ククッ、そうですね。私達はあくまで志を同じくする同胞であり、仲間ではありません……。行動により生じる責任は各々で対応すべきでしょう。」
「『協力はしても責任は取らない、と。ふん、お前らがもし私の大隊の一員だったのなら、1日の大半をその性根を叩き直す事に費やしただろうな。』」
「心外だな……それに私は計画や設計を見直す事はあれど、反省する事は無い。反省など、私には不要な物だ。」
「『あーそうかいそうかい。』」
全く……ゲマトリアにはこんな様な奴しかいないのか?私がいた軍の開発部の連中でもまだまともだったぞ。
と、本日何回目かも分からないため息を吐いた時、誰もいないはずの方向から声を掛けられた。
「月見里コウ……。貴下は今までの自分を捨て、前世の自分になりきる事により自己を確立している……。とても興味深い……。」
『そういうこった!!』
「『ッ!?』」
咄嗟にカウンターに置いていた愛銃を手に取り振り返ると、そこには胸辺りに後ろ向きの男の頭部が描かれた額縁を持つ、コートを着込み杖をついた首の無い大男が立っていた。
「『……はぁ。なんだよ次々と。ここ出会い系サイトにでも登録されてんのか?』」
ケッと悪態をつき、ため息を吐く。
「『もう流石に慣れてきた。アンタもゲマトリア、だろ?』」
「不意の状態で背後から声を掛け、そして背を向けた状態での挨拶という度重なるご無礼、どうかお許しくださいませ。これ以外の方法が無いもので……。わたくしはゴルコンダ、こちらはデカルコマニーと申します。お察しの通り、ゲマトリアの者でございます。」
『そういうこった!!』
「……失礼。本日は黒服がそちらへ伺うとの事でしたので、わたくしもご挨拶をと思いまして。」
「『……そうか。』」
色々とツッコミどころが多すぎる奴だが、ひとまず今は飲み込もう。
「月見里よ。奴が例の爆弾を造った本人、ゴルコンダだ。」
とマエストロ。
「『はぁ……。なんであんなけったいなモン作ったのかとか言いたいことは山ほどあるが……アンタが望んで使った訳じゃないんだろ?じゃあいいさ。』」
「……恐縮です。」
黒服、マエストロと癖が強すぎたせいで、こんなデュラハンもどきみたいな奴がマトモに見えるとは……ゲマトリアと言うものがさっぱり分からない。
「ゲマトリアにはもう1人メンバーがいるのですが、彼女は少し忙しいようで……。『いつか貴方の力を借りる時がくるでしょう』と言っておられました。」
彼女……という事は女性か。どの世界でも女性が1番恐ろしいと言うのが世の常だ。前世で何度思い知らされたことやら……。警戒しておくのに越したことはないだろう。
「そう言えば、コウさん。貴方のお陰で1つ成果がありまして。早速ご報告を兼ねて"眼"の改良を……」
と、黒服。
まぁ、戦闘ログの提供を始めて1年程経つのだから成果の1つくらい無いと困る。詳細が気になるところだが……
鍛え抜かれた耳が、事務所の外の階段が軋む音を捉える。
「『詳しく聞きたい所だが……来客だ。』」
コンコン、と扉の音が鳴る。
少し扉の方を見た後、部屋に視線を戻すと……
「『……ゲマトリアは瞬間移動が必須技能なのか?』」
飲んだ気配の無い湯気が立ち上る珈琲を残し、彼らの痕跡の一切合切が消滅していた。
扉まで歩き、表情をつくってから開く。
「『どうぞ。』」
「は、はい!」
おずおずと入ってきた客をソファへ促し、座らせる。
サーバーに残っていた珈琲を自分のマグカップに入れ、水面に映った自分の顔を眺め……黒い珈琲越しでも分かる、淡く青く光を放つ機械的な左眼を見て小さくため息を吐く。
「も、もしかして誰かいました?」
「『いや誰も。そろそろお客さんが来る頃合だと思ってね、珈琲はお好きかな?勝手ながら先に淹れておいたよ。』」
「あ、あはは……」
と長机の上に置きっぱなしだった口の付けていない珈琲を指して適当な事を言い、彼女の目の前にミルクポーション、スティックシュガー、マドラーを置いてから、さて、と対面のソファに座る。
「『まずは自己紹介といこう。私は月見里
「阿慈谷ヒフミ……です。」
差し出した物を珈琲に入れて掻き混ぜ、1口珈琲を飲む。
「あ、美味しい……」と小さな声。
純白の制服から察するに、トリニティの一年生。
うーん、可愛い。一応後輩にあたるからなぁ。加護欲。
しかし、私はそこまで情に厚い奴だったかな…。いや、確かにかつて
トリニティにいたのは約10年になるか。いくら私にコウという記憶が備わっているとはいえ、見ず知らずの後輩に情を湧かせるなんて有り得んのだが。
甘くなったなぁ私。まぁ、いいか……?
いや、全然良くないな。甘さは美点になるが最大の弱点でもある。そういう奴は長生きできん。
そこまで思案したところで状況を思い出し、切り上げる。
幸い、動きの止まった私に彼女は気付いていないようだ。
「『──ヒフミか、よろしくね。見たところトリニティの……それも1学年の生徒さんかな?』」
真っ白な制服を見ながら、そう言う。彼女が抱えるように持っている中々に目がキマっている鳥の鞄はともかく、少し懐かしさを覚えたのだ。
中心区からだいぶ離れており、ブラックマーケットでも比較的治安の良いここでもお嬢様学校のトリニティ生徒は見なかった。
「は、はい。私は……あれ、その制服って──」
目をぱちくりとさせながら言われ、不思議に思い自分の服を見ると……
「『おっと。』」
着心地が良く動きやすいという理由によりなんやかんやで着続けていた制服。この黒い特徴的な制服は紛れも無く……
「正義実現委員会……?」
やっべ。すっかり忘れてた。さーてどう誤魔化したものか……
「黒髪に赤いメッシュ……十字の瞳孔……あれ、どこかで聞いた様な……」
「『あー、すまないね!着心地がいいから、全く関係無い正実の制服を着てるんだ!ほら、ブラックマーケットにはそういう物もあるってのは知ってるだろう?キチンとトリニティの校章も消してある。それに私はトリニティ所属ではなく無所属のしがない不良だ!』」
「そ、そうなんですか?てっきり……」
「『私に似た人がいるのかい?なら他人の空似だね。……雑談はここまでにしよう。トリニティ1学年のヒヨっ子が、何の御用だい?』」
早口で言い訳を捲し立てて押し切り、話題を切って本題へ移る。ふう、乗り切った。
ヒフミも幾ばくか緊張が解けたらしい。アイスブレイクになったのなら良かった。いや良くないが。
「えっと、ブラックマーケットにペロロ様のグッズが売っていると聞きまして……」
「『なるほどな?自分一人では危険だと判断し、私に護衛を頼もうという魂胆か。』」
「は、はい!ダメ、でしたでしょうか……」
ニヤリ、と笑みを浮かべる。
「『とんでもない。私は"パシリから傭兵まで"とキャッチコピーを付けているからね、報酬さえあれば文字通りなんでもやるよ。だから、護衛に私を選んだのはいい判断だよ?他の奴らなんてトリニティの生徒に依頼されたら、仕事する振りをして身柄を拘束…身代金を請求してもおかしくないからね。』」
「そ、そうなんですか……?えと、ここの万事屋の評判はトリニティでも噂されてて……なんでも、"堕天"とか"暴君"とか……あと、一番言われてたのは──」
聞いただけでさぶいぼが立ちそうな小っ恥ずかしい2つ名を言ってくれたヒフミの言葉を遮り、私自身の耳にも届いている異名を言う。
「『──"
「……はい。全てを蹂躙し、叩きのめす地獄の具現化……そう噂されています。」
それは、前世でも敵国から付けられていた通り名。
……慣れ親しんだこの異名がここでも一緒とは、運命としか思えないな。
この仕事を初めて1年、好きに暴れていた結果こんな沢山の2つ名が付けられているらしい。そのせいで相当恐れられているらしく、今ではそこら辺を通るだけで通り道が勝手に開いて行く程だ。
「『OK、依頼内容はヒフミが買い物を済ませてブラックマーケットを出るまでの護衛。承った。今から行くんだろ?ちょっと待ってな。』」
目を通して問題無かったらサインしといてくれ、と契約書とペンを渡し、準備を始める。
クローゼットを開き、流れでそのまま黒服の所から持ってきて使っている黒いダウンコートを羽織り、万事屋を始めた日からの付き合いの愛銃……イクと名付けているM19リボルバーを内ポケットに入れ、特別製の弾薬を服のあちこちに仕込む。
振り返るとヒフミも準備が終わったらしく、リュックを背負ってふんすと扉の前で立っていた。
「『じゃあ行こうか。仕事の時間だ。』」
そして、扉を開いて目的地へと歩み始めた。
黒服以外のゲマトリアメンバー書くのむずかちいよぉ。生徒書くのもむずかちいよぉ。
タイトルにシャーレ所属って書いてあるのに原作開始1年前。もっと展開を早く……!
レン(コウ)のポニーテールの形はスターレイルのカフカって感じです。