転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#15

十月十二日

学院内工場

 

入部して一ヶ月以上が経ち、魔導具設計局の雰囲気にもだいぶ馴染めた頃。レオポルトや他の新人部員らはそれぞれ作業をしていた。

 

「あっつぅ……」

 

ブロワーで火を炊き、熱せられた金属をハンマーで叩く。今叩いているのは魔導具設計局の部員全員に一定量だけ配られたオリハルコンである。ヒヒイロカネも渡されており、その金属板も横に置いてあった。

 

今では合金としてかなりお手頃価格で手に入れられるオリハルコン。ヒヒイロカネの方が値段は高く、分配された量もヒヒイロカネの方が少なかった。部費の四割を使って大量に仕入れたと言うが、これでマリーナ先輩達は何をするのだろうか。

 

「まぁ、卒業の準備をしているんだろうなぁ……」

 

大学に行く為にはある程度の論文を書けば受験をある程度有利な立ち位置で迎えられる。画期的な論文であれば受験せずとも進学が可能だ。此処のキャンパスには大学も存在しており、学内でも講義を聞きに来た大学生とすれ違うことも多い。

 

かく言う自分も卒業に向けて色々と準備を始めてている段階だ。まだ理論でしか完成していないので、実験をしてみたい所であるが……

 

「人数も資材も足りていない状況だからな……」

 

今度、先輩にプレゼンをして協力を仰ごうかとも考えながらオリハルコンで形を作り終えると、次にU字に薄く伸ばして熱したヒヒイロカネと合わせる。

そして、二種類の金属を合わせた後。レオポルトは作ったその金属棒の片方を持って言う。

 

「悪いな、手伝ってくれて」

「良いってもんよ」

 

そう言い、視線を向けた先には片手にハンマーを持つジャクソンの姿があった。

 

今やっているのは東方の瑞穂国と言う国特有のカタナと呼ばれる刃物の作り方を真似て作っている。あっているかは定かではないが、少しお高い合金で刃物を作っているのだからジャクソンも少し苦笑しながらハンマーで金属棒を叩く。

 

「どんぐらいの長さだ?」

「こんぐらいだな」

 

そう言い、一メートル程に両手を広げるとジャクソンも頷いてハンマーを振る。

 

「ほい!」

「あいっ!」

 

テンポよく叩き、合わせた刀身を伸ばす。そして何十回か叩いた後、まだ熱が残る刀身に冷却魔法をかける。

 

「基本的に温度差で割れる事はないから良いが……」

 

そう呟き、どんどん熱した明るさから緋色と赤銅色のツートンカラーに変わっていく。

 

「完成か?」

「そうだな」

 

そう言い、刃渡りが一メートル程あるマチェテを見ながら答える。するとジャクソンは大きく息を吐いた。

 

「ふぅ……此処って結構暑いのな」

「そうだな。……いきなり呼んですまないな」

「良いんだよ、こっちも今日は部活も休みだったしな」

 

そう言い、至る所から音が聞こえる工場を見回すとジャクソンは言う。

 

「しっかし、此処って工具が色々あるんだな」

「基本的に工作機械の殆どは置いてあるな」

 

そう言い、片手にサンダー持つとジャクソンが聞いてくる。

 

「ハンマー投げの鉄球も作ってくれるのか?」

「それは鋳物の分野だから分校に連絡してくれ。此処に鋳物の設備はないからな」

「うわ〜マジか〜」

「どっちかって言うとナイフ製作とか軽い金属加工しか出来ないな」

 

そう言い、レオポルトはサンダーを使って軽く刃の部分を削る。

 

「切れるようにするのか?」

「いや、切れるようにはしない」

「?それじゃあただの薄い棍棒じゃねえか?」

「まぁ、一般的に見ればな」

 

今やっているのは工作に近い物だ。前世で大剣を振り回してゴブリンやらを切り倒していた身からすればやはり刀剣類は少し恋しく思う。だからと言って今の体で大剣を振り回す事はできない。だから、今の体格に合う刃物もどきを作ろうと考えたのだ。それが今作っているマチェテだ。

 

「ただ、そこに一手間加えれば立派な刀になるのさ」

「?」

「まっ、完成して試し切りをすればわかる話さ」

「ふーん。じゃあ完成したら呼んでくれや」

 

そう言い、ハンマーを片付けながらジャクソンは工場を出て行く。その様子を見届けながらレオポルトは形を整えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

設計局などの部活動が徹夜をする事はよくある話だ。真夜中まで工場の灯りはついたままだし、大体誰かが工場で機械を動かしている場合が多いので、オーバーホールの時以外はほぼ工場は稼働していた。そして今日も工場には何人かの生徒が機械を動かしていた。

 

研磨を終え、今日の分の作業を終えたレオポルトは帰路に着く。この前仮免を取得し、二週間もすれば免許取得ができる為。後少しの辛抱と思いながら校舎を出る。学校のソファーで寝ても構わないのだが、なんとなく気分的な問題で外を歩いていた。

 

制服の内ポケットから棒ビスケット菓子を取り出して口にする。明日は風紀委員のシフトがある。どうせする事はないし、刻印魔法を打ちながら時間が過ぎるのを待とうと考えていると、ある人物が歩いてきていた。

 

「あ、レオくん?」

「アニ……?」

 

曲がり角から顔を覗かせたのは魔法史学ゼミに通う同級生だ。こんな時間まで勉強していたのかと思う。

 

「ゼミの帰り?」

「いえ、ゼミは終わって図書館からの帰りです」

「おぉ、そうか」

 

少々はしたないが口に菓子を咥えて答える。時間も遅い、こう言う時間はかなり変な人物も出てくるわけで。特に自衛能力とかを持たないアニは危険かと思いながら校門まで歩く。

 

「どうだ?古代魔法の研究の方は」

「ぼちぼちって所ですね。何せ私たちが見られる資料も少ないですから」

「そうなのか……」

 

古代魔法の研究は今の魔法界の最前線だ。残された資料が少ない分、新たな古代魔法の復元は世界をリードできるものであった。

おまけに新大陸にある我が祖国は古代魔法の痕跡が少ない分、他国よりも古代魔法の研究は遅れていた。その為、古代魔法の復元は国家予算を投じて行われていた。正直あの魔法にそこまでの価値はあるのかとも思ってしまうが、レオポルトはそんな疑問を他所にアニの話を聞いていた。

 

「はい、まだ私たちは古代魔法の初歩みたいな所しか学べていませんから」

「ほーん」

「古代魔法の情報を見れるサバールームにも一度しか入っていませんしね」

 

そう話すと、二人は校門の前に到着する。

 

「今日の夕飯、どうしようかなぁ」

「もうこんな時間ですしね……と言うか食べていないんですか?」

 

そう言い、午後十一時を回る腕時計を見ながらアニはレオポルトを見る。

 

「今日は忙しかったんだ」

「何をしていたんです?」

「ん?ちょっとした工作。先輩から資材をもらったから自分が考えた武器みたいなものをな……」

「武器って……レオくんは既に短機関銃を持っているじゃないですか」

「趣味だから良いんだよ。警棒みたいなもんだし。……と言うか、アニはなんか武器を持っているのか?」

 

そう言えばジャックやジニーの持っている武器も聞いていないと感じながらアニに聞くと、彼女は当たり前と言わんばかりに腰に巻いているホルスターから一丁の拳銃を取り出した。

 

「はい、先輩から教わって……中古品ですけどね」

「ほぅ、M1911ね……」

 

そう答え、レオポルトはアニの持つ拳銃を見てそう口にした。M1911は傑作と名高い拳銃だ。元々は軍用拳銃で民生品でも人気であり、バリエーションも豊富で大量生産されているので中古品ともなれば激安だったのだろう。

 

「まぁ、スプリングとか格安で買ったのでちょっと錆びついてたりしましたし、あんまり整備も得意ではないので置物ですけどね」

 

そう言い、スライド部分が満足に動いていない上に弾倉に弾薬も入っていない拳銃を見せながら言う。

 

「良いのか?こんな物で」

「良いんですよ。何かあれば叫べば良いですし……最悪この拳銃を投げつければ良いですし」

「おぉ…そう言う使い方ね……」

 

結構物騒なこと言うじゃないのこの子。そう言えば前にもあったなそんなこと。

 

「そう言えば前にも叫んでいたな」

「はい、あの時もレオくんには助けられました」

「こういう時女性は強いよなぁ」

 

後頭部に手を回しながら口にすると、アニも少し笑う。

 

「でも、そうでもしないと自分の身も守れませんから……」

 

それはどこか自傷するようにも聞こえるような言い草だった。

 

 

 

「ましてや自分すら守れない人が、家族を守るなんて……」

 

 

 

小さく呟いたその一言にレオポルトは一瞬反応する。反射的にアニを見ると、彼女はハッとなった様子でレオポルトに言う。

 

「あっ、もしかして聞こえちゃいました?」

 

そう聞くアニに少し間を置いてレオポルトは答える。

 

「……いや、俺も少し考えちゃってな」

「え?」

「何、もう終わったことだがな」

 

そう答えるとレオポルトはどこか遠い目をする。その瞳の奥には憎悪が宿っているように見えた。初めて見たレオポルトの顔にアニは少しだけ驚く。普段はあまり表情を大きく変えない上に、こんな憎悪が見えるような顔をするのが珍しかったのだ。

 

「ま、あんまり人には言いたくないが……」

「言わなくても構いませんよ。一つや二つくらい、人に言えないことなんてありますから」

「……ありがとう」

 

少しだけ深掘りしてくれないことに感謝すると、アニは少しだけ縋るように聞いてくる。

 

「でも…自分や家族を守る為にはどうすれば良いのか……私には分かりませんね」

「そうか?意外と簡単だぞ?」

「え?」

 

そんなアニの問いにレオポルトは簡単に答える。

 

「信頼できる人を持つ事だな。人ってのは個人では生きていけない。だから必ず家族や他人を頼ることが必要だ。自分や家族を守りたいって思うなら自分から強くならなくちゃな」

「……例えばどんな?」

「此処だよ」

 

そう言い、レオポルトは自分の心臓部分を軽く叩く。

 

「世の中図太い神経を持っていないとやっていけないんだ。出なきゃ疲れちまっていずれはボロが出る」

 

そう言い、レオポルトは前世での息苦しい生活を思い返す。

王族として生まれ、勇者としての素質を数多くいる後継者の中から見出され、幼い頃から厳しい教育を受けさせられ、そんな狭苦しい生活から逃げ出したいと思って様々な試行錯誤を繰り返した事を……。

 

「逃げたい時は逃げれば良い。但し、事前に入念な計画を練って時と場合を考えてな。そうしないとバレた時、後々が面倒な事になる」

 

その答えにアニは一瞬、レオポルトの顔を見た。

 

「(逃げたい時は逃げれば良い……)」

 

そしてレオポルトの言葉にアニは心の中で彼の言葉を復唱していた。

 

 

 

 

 




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