転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#16

アニと話しながら帰った翌日。結局学校に一泊する事になったレオポルトはそのままジムに行って汗をかいた後にシャワーを軽く浴びて登校する。生徒用ロッカーに必要な物は殆ど置いてあるし授業を受ける事自体は特に問題はなかった。

 

 

 

 

 

地下のサーバールームに続く警備室の中。そこでは金属を叩く音が断続的に続いていた。

 

「そんな手作業じゃなくて刻印機を使えば良いのに……」

 

警備室でイヤホンを付けながらやや愚痴るように言う。

 

「自分を無理やり引っ張って来たのは何処の何奴ですか?」

「あぁ、悪かったよ…とほほ……」

 

やや涙目になるエイブラハム先輩。そう、本当は刻印機を使って刻印魔法を昨日作ったマチェテに施したかったのに、この阿呆面先輩と来れば駄々を捏ねて作業中の自分を工場から引っ張り出してきやがったのだ。これくらいの我慢はしてもらおう。

ややゲス顔になりながらポンチの上をハンマーで叩く。今日は警備室でのモニタリングで一夜を迎える事になる。此処はサーバールームに入れる唯一の通路だから、警備するにはうってつけの場所だ。プログラミング設計局の常駐要員はこの先のサーバー管理室で惰眠を貪っているだろう。

 

 

 

例のサーバー侵入事件より一ヶ月近くが経つが、特に変化もないので間も無くこの警備も終わりを迎える。結局侵入者が誰何なもその目的もわからぬままこの事件は終息しそうだ。

 

「結局何が目的だったんだろうねぇ〜」

「さぁ、自分にも分かりかねますが……」

 

刻印作業中、暇すぎてそんな話をし始める。何もせずにただ打刻音が聞こえるよりはマシかも知れないと思った為にレオポルトも答える。

 

「と言うかこう言うのって警備会社に任せなくて良いんですか?」

「うーん、前はそうだったらしいんだけどね……その警備会社が裏でお金貰ってサーバー室にスパイを送り込もうとしたんだってさ」

「うわぁ……」

 

警備会社が汚職に塗れているのかと内心ゲンナリとなる。

 

「それで、何かサーバー室で問題が起こった時はこうやって風紀委員会が駆り出される始末だよ」

「警察の方は?機密情報なら動いてくれそうですが……」

「此処はよくうちの生徒が通るんだよ?その度に警察の監視をされてたらどう思う?」

「あぁ……」

 

あんまり近寄りたくないな。だって警察っているだけで怖いし。

 

「まっ、よっぽどでかい事件でも起こんない限り警察は学校に常駐する事はないよ」

「機密情報を狙うスパイとかが騒動を起こすって聞きましたけど?」

 

そう聞くと、エイブラハムはリクライニングをしてゆったりとした格好になって答える。

 

「うーん、僕が此処に入る前までは結構あったらしいんだけどね。最近はあんまりそう言うでっかい事は起こさないなぁ」

「そうなんですか」

「でも、武器を手放したりはしない方がいいよ。学園都市には一種の治外法権みないなのが働いているけど、その分警察が手を出しにくい部分ってのも結構あるからね」

「此処の警察が常日頃から短機関銃を装備している時点で察せますよ」

 

そう答え、レオポルトは警備室の卓上で刻印魔法を打刻しながら時が過ぎるのを待っていた。

すると、エイブラハムが覗き込んでレオポルトが刻印するマチェテを見ると聞いてきた。

 

「何作っているの?」

「新しい警棒です」

「どう見てもマチェテじゃないの?」

「切れませんから」

 

そう言いレオポルトは刻印途中のマチェテの刃の部分を手に置いて手前に引くも、切れた様子はなかった。

 

「でも刻印魔法をしているのはなんで?」

「先輩が前に持っていた電磁警棒をモチーフにしています。当たったら痛いですよ」

「痛いどころか骨折しそうなんだけど?」

「まぁ、そのとこは運が悪かったと言う事で」

 

そう言い、ヒヒイロカネで出来た刃の部分に再び刻印を続けるレオポルト。そのマチェテを構成する素材を見て苦笑する。

 

「すごいね、オリハルコンとヒヒイロカネを使っているマチェテなんて……」

「オリジナルの自慢のワンオフ品ですよ」

「でも、そう言う警棒とかの打撲系武器に刻印魔法は良いアイデアだね」

 

やはり刻印機を使いたいところではあるが、誰か身代わりになってくれるような友人を風紀委員会内で作っている訳ではないし、エイブラハムは大変自分のことをえらく気に入っているようで離れられない理由が出来上がってしまっていた。

 

「今度レオ君にはそう言う風紀委員会向けの装備を作ってもらおうかな?」

「嫌ですよ。面倒臭い」

「まぁ、そうなるよなぁ……まぁ、君の勉学に支障をきたすだろうから流石にしないけどね」

 

こう言う点では憎めない。人の事をこの先輩は意外にも考えているのだ。だから風紀委員会の副委員長の立場でも誰からも文句を言われない。

 

「なんか君、失礼な事を考えていなかった?」

「いえ?そんな事ありませんよ」

 

こう言う鋭い所もおそらく風紀委員会に入れる理由の一つなのだろう。でなければあのシュライク委員長がわざわざこの人を副委員長にさせないな。

 

「ふぅ〜……」

 

打刻が終わり、刃の部分の両面に刻印を終える。

 

「お疲れ〜」

「はぁ……先輩が工場から連れ出さなければこんな時間はかからなかったんですがね」

 

そう言いレオポルトはジト目でエイブラハムを眺める。

 

「悪かったって。今度ジュースくらい奢るから」

「じゃあ、ルートビアを一箱買って送ってください」

「えぇ、それは多すぎじゃない?」

「妥当な取引です」

 

ポンチと金槌を置き、目元を軽く指で揉むと次の工程を考える。

 

「この後は打刻した箇所に魔導はんだを流し込んで、表面をコーティングして……」

「うわぁ、工程数エグいね……」

「それくらいした方が長持ちしますから」

「ただ殴るだけで、頑丈なオリハルコンも使っているのに?」

「良いんですよ。好きで作っているんですから」

「好き…ねぇ……」

 

そう言い、赤い刀身を見せるマチェテを見る。打刻されている魔法は細かすぎる上に専門外なのであまり詳しくは分からないが、話から察するに電撃系の魔法なのだろう。この前魔導具設計局がオリハルコンとヒヒイロカネを仕入れた話は有名だ。新入部員にもお金を徴収してその代わりに購入したオリハルコンやヒヒイロカネの一部資材を渡したと言う事も既に把握済みだ。

 

「(物作りはあまり得意じゃないからなぁ……)」

 

少なくとも自分はレオポルトの様に物を作りたいと言う意欲は無いと思っていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

打刻を終え、一夜を警備室で明かしたレオポルトは二日ぶりに寮の自室に入る。

 

「はぁ、疲れたなぁ……」

 

扉を開け、疲労を口にしながら部屋に入るとそこで異変を感じた。

 

「(……誰かが入った?)」

 

部屋に置かれた荷物の配置が少しずれているのを察し、反射的に地面に手を置いて魔力反応を確認する。

 

「……」

 

魔力反応に応答なし。部屋には今のところ誰もいない。窓が割れている雰囲気も無いので、この電子錠をハッキングして開けたと推測するべきだろう。

手にMP9-Nを持って部屋に無音で入る。いくつかの部屋を目視で確認して行き、扉を開けると同時に銃を向ける。魔力反応はないが、上手く隠している場合がある。

 

「……居ないか」

 

借りている寮は1DKの、寮の中では比較的家賃のお高い部屋だ。来年妹が入学すると決まったわけでも無いのに……おそらくはドーラのための寝室を最後に軽くため息をつく。

 

「盗られた荷物は……」

 

元々ミニマリストレベルに荷物を少なくして持ってきたのでリビングに置かれた荷物を確認する。

 

「盗られた物はないか……」

 

念の為、持ち込んだパソコンを開いて確認する。

 

「テータは……」

 

複製された形跡などを確認するもそういった形跡も無し。

 

「(盗聴器の類も無いか……)」

 

不審な電波も確認されず、魔力波も確認できない。泥棒が入ったにしては不自然な気もする。そう思いながら、レオポルトはこの時、風紀委員に入っていて良かったと感じた。

 

「あ、もしもし」

『はいはーい。僕ですよ〜』

「すみませんが、至急自分に部屋に来れますか?」

『お?珍しいけど、どうしたの?』

「自分の部屋に何者かが侵入した形跡がありました。電子錠をハッキングしていたので、少し怪しいと思いまして……」

 

そう言うと、明らかに電話の向こうの人物の雰囲気が変わった。電子錠をハックして中に入るなんて何か後ろめたいことしかない奴しか居ないからだ。

 

『……分かった。すぐに行こう』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一時間後

 

「何か盗まれたかい?」

「いえ、データも確認しましたが盗まれた形跡はありませんでした」

 

部屋に上がり込んだエイブラハム先輩は俺に確認をする。

 

「盗聴器の類もないな。魔力波検知にも引っかからない」

 

そう言い、空き部屋から出てきたのはシュライク先輩だ。いや、風紀委員会委員長が出てきて大丈夫なんすか?

 

「委員長は此処に居ても良いんですか?」

「問題ない。電子錠をハックして中に入った時点で碌なやつじゃないのは確定しているしな」

 

そう言い、あまり事を大きくしない事を条件にこの泥棒の話はこの三人で終わらせる事にした。

 

「今度泥棒が入ったら警察に話そう」

「そうだね」

「分かりました」

 

風紀委員のお偉いさん二人がいる時点でだいぶ大所帯だと感じながらレオポルトはそのまま二人を見送る。

 

「やれやれ、こっちは二日も家に帰れていなかったってのに……」

 

内心愚痴りながらレオポルトは家の中に入っていく。卓上には緋色のマチェテが置かれ、まだ魔導はんだすら流し込めていない状況だ。

 

「……とりあえず寝よ」

 

今日は週末だ。いくら寝たところで学校に影響してくる訳ではない。

流れる様にソファーに寝転び、疲れていたのか一瞬で眠りにつく。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その日、目が覚める。

 

体を起こすと野営のテントでそれはとても古い設計だった。

 

『閣下』

 

外から聞こえてくるのは数多くいる部下のうちの一人だ。

 

『伝令です。魔王主力軍は囮部隊に誘引されました』

「そうか……」

『ご準備を。間も無く出陣にあります』

「あぁ…了解した」

 

返事をし、いつも通り重い甲冑を従者達に付けてもらい、最後に兜と大剣を持って外に出る。

外では開発されたばかりのマスケット銃を装備する銃士部隊や、騎兵部隊。槍を持つ歩兵部隊や魔法兵部隊が整列をし、自分の御言葉を待っていた。

 

 

 

 

 

あぁ、なんて悪い夢だ。

 

 

 

 

 




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