転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#35

ふと目が覚めると、見えたのは痛くなるほどの白々しとた天井だ。

 

ゆっくりと顔を動かそうとすると何故か動かない。

 

「起きたようだな」

「っ!!」

 

いきなり声をかけられ、少女は非常に怯えた表情で声をかけた女性にひどく怯えた様子を見せる。吊り目をしたその女性は椅子に座った状態で魔学院の制服の上に紫色の百舌鳥の柄が織られた羽織を身につけたその女生徒は、椅子に座った状態で部屋のガンラックに四式自動小銃を立てかけていた。

 

「落ち着きなさい。貴方に害を与える者はいない」

「あ、お…く…来るな!!」

 

少女はベットから慌てて離れると威嚇するように睨みつけつが、

 

「グッ……」

 

激痛の走った腹を抑えて少女は倒れてしまう。

 

「君の体内組織は損傷している。無理に動くと痛むぞ」

「……」

 

あまりにも痛すぎるのか蹲っている少女は答えることなく悶絶していた。医師の診察によると彼女は体内組織に魔法による意図的な損傷があったと言う。

そしてその魔法は現代魔法とはかけ離れたものであると言う。つまりは古代魔法と言うことだ。

 

「一応名乗っておくと、私はシュライク・アリサカと言う」

「……」

 

シュライクはそう名乗るも、少女自体は痛みが激しすぎてそれどころでは無かった。

 

「はぁ……」

 

シュライクは軽くため息をつきながらその少女を抱えると、そのままベットに寝かしつけた。

 

「全く、何故私がこんな事を……」

「そりゃあ、委員長はすでに進学が決まっているからですよ」

 

そこで割って入るように一人の人物が割り込んできた。

 

「エイブラハムか」

「やだなあ、そろそろエイブって呼んでくださいよ」

「愛称で呼ぶと、貴様は調子に乗る」

「相変わらず冷たいお人だ」

 

片手に見舞い用のほうじ茶のペットボトルを持って部屋に来た彼はそのままベットに寝かしつけた少女を見ていた。

 

「名前は?」

「聞く前にこれだ」

「あーあ、可哀想にね……」

 

エイブラハムはそう言いながら見舞いの品をシュライクに手渡すと、彼女は聞く。

 

「お前こそ、論文は書き終わっていないんじゃないのか?」

「いやぁ、これが思っている以上に大変でね」

「進学できるのか?」

 

シュライクが問うと、エイブラハムはいつもの飄々とした様子で答える。

 

「うーん、僕は委員長と違って知り合いの伝手で教授に話はしているから。なんとかなりそうだよ」

「嫌味か貴様」

 

シュライクは睨み返すと、エイブラハムは打って変わって真面目な表情を見せる。

 

「でも、使えるコネを臆する事なく使う事がお国柄でもあるけどね」

「……私の祖国との国民性の違いだな」

 

シュライクは苦くそう答えると医者を呼び出していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「へぇ、目が覚めたんだあの子」

「委員長から聞いたら昼頃に目覚めたらしいぞ」

 

食堂でヴァージニアがレオポルトに聞くと、一応の当事者の彼は先ほど聞いた話に頷きながら答える。

 

「ふーん」

「何であんたが興味なさげなのよ」

 

しかし一番初めに違和感に気づいたジャクソン自身はそれほど興味がないと言った様子で食事を摂っていた。

 

「正直あまり興味ないんだよな。助けて無事だったかどうかさえ知れば」

「その後の様子とかは?」

「いやぁ、あんまりだな」

「薄情な奴」

「まあ、分からんでもないが……」

 

レオポルトが賛同していることにヴァージニアは驚いた様子を見せながら思わず溢す。

 

「何なの?男って雑な奴多くない?」

「思春期になって親の目も緩いとこうなる」

「そうですね……ウチなんて弟がもうすでにそんな感じです」

 

弟がいるからなのか、知っている雰囲気でとこか遠い目をするアニ。そんな彼女を見て味方がいなかった事にやや驚いていた。

 

「あれ?みんなそうなの?」

 

そう驚いていると、ジャクソンは頷きながらそう答えた訳を言う。

 

「俺は昔からダダくさな姉貴がいるから」

「え?ジャック姉がいるの?」

「あれ?言わなかったか?」

 

思わずレオポルトも初の情報に驚いてしまった。

 

「二つ上でもう就職しているがな」

「じゃあ高卒なんだ」

「ああ、大学にもともと行く気がなかったからな」

「全体で見ても大学の進学率は低いですしね」

 

四人はそんな昼食をしていると、レオポルトの携帯が震えた。

 

「悪い、ちょっと外す。片付けといてくれるか?」

「ん、了解〜」

「じゃあ午後の授業ですね」

「ああ、また後でな」

 

レオポルトはそう言って席を外すとそのまま携帯をかけ直していた。

 

「もしもし?」

『レオポルト、厄介な事になりそうだ』

「?」

 

思わずレオポルトは首を傾げていると、カムチャルは仕事場のハーヴァービルディングで顔を顰めてレオポルトに言う。

 

『何があったんです?』

「この前、お前が仕留めた違法魔道具を製作していた魔導技師なんだが……」

『ハイラッド・スターロンですか?』

「ああそうだ。その男なんだが……

 

 

 

 

先日、獄中で殺された」

『……!!』

 

予想外の情報に驚いていると、カムチャルは上がってきた報告書を淡々と読み上げる。

彼を捉えた時、偽警官二人組が追いかけていたという報告をレオポルト自身から聞いていたが為に変な予感がしたのだ。

 

「昨日の真夜中。収監中だった牢獄でナイフで刺されて即死だ。犯人はカメラから看守に化けた二人組。魔法による妨害も確認済み。……気を付けろ、こいつは相当な手慣れだ」

『……分かった。連絡ありがとう』

 

カムチャルは昔から何かと事件に巻き込まれやすい死神体質なレオポルトに注意を入れていた。刑事としての今までの勘はこの一件然り、数日前の獣人の少女からも感じ取っていた。

 

「やれやれ、俺の周りにはどうしてこうも危ねえ奴らが集まるんだ……」

 

電話を切り、カムチャルは思わずそう溢してしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、レオポルトは風紀委員の仕事で備品のS&W M686の整備をしていた。

 

「うわっ、もう埃かぶってんな」

「今時リボルバーなんて使う奴居るのか?」

 

一年生に命じられた小間仕事の一つのこのリボルバーの整備。今の主装備はH&K UMP短機関銃だ。それに比べると弾数も連射速度も圧倒的に違う。だが、信頼性の面と弾単体のストッピングパワーに関しては遥かに優れている。

 

「だが、相手が高度なアーマーをしていた際に奴に立つ」

「「っ!」」

 

文句をこぼしながら整備をしていたところにエイブラハムが現れる。

 

「事実、最近の強化プラスチック製の振動装甲は軽量な癖して強力な防御力があるからね。バックアップにマグナム魔法弾は必要だよ」

「先輩、どうしてここに?」

 

エイブラハムやシュライクは三年生で、この前引退したばかりだった。二年生に引き継ぎをした後もたまに訪れてはいたが、受験で忙しいはずだ。

事実、俺もエイブラハムが引退したから風紀委員をやめようと考えていた頃だった。

 

「いやぁ、皆んなが頑張っているかどうかの激励をね」

「なるほど……でも良いんですか?論文の調子は良くないと聞きましたが」

「大丈夫大丈夫、大学の教授に提出して興味を持ってもらえたから」

 

エイブラハムはそう言い、無問題と言った様子で答えるとそのまま俺が銃の整備が終わったの見るや否やエイブラハムは俺の肩を叩いた。

 

「レオくん、ちょっと来てもらおうか?」

「は?うおっ!?」

 

そして有無を言わさず彼はレオポルトの腕を掴むとそのまま何処かに走り去って行った。

残った他の同級生も散々彼に振り回されていたレオポルトに終わったと思っていたいつもの光景に唖然となっていた。

 

 

 

 

 

そしてそのまま外に連れ出されたレオポルトはエレベーターを使って駐車場に向かうと、彼に聞いた。

 

「車の鍵はある?」

「ええ…一応此処に」

 

レオポルトは腰のベルトに下げている車のキーを触った。

 

「じゃあそのまま病院までよろしく頼むよ」

「……はいはい、分かりましたよ」

 

引退後になってもこんなパシリをされるかと内心疲れながら二人は車に乗り込むと、そのまま学校を出る。

 

「それで、病院に行く理由は何ですか?」

「ん?朝にあの女の子が起きた話はしたでしょう?」

「ええ、委員…シュライク先輩から聞きました」

 

個人的にエイブラハムの監査の定時報告のために個人的な番号を教えて貰っていたレオポルトはそう答えると、エイブラハムは珍しく真面目な表情で彼に言った。

 

「その件でちょっと面倒なことがあってね」

「?」

「まあ、簡単に言うと彼女の身元が判明したのと同時に病院に侵入者が現れた」

「……」

 

エイブラハムの要約された話にレオポルトの目も鋭くなる。

 

「個人保護の観点から警察から名前すら教えてもらっていないけど、彼女は不法移民だと聞いた」

「不法移民ですか……」

「まあ、この国じゃあ珍しくはないんだけどね」

 

不法移民は旧大陸から多く訪れており、まあ特に最近は旧大陸の砂漠地帯の国群で内戦が起こっており、そこから大量の難民が合州国に押し寄せていた。

 

「不法移民には強制送還か、若しくは何らかの収容施設への収監が決まっており、その移送準備をする為に僕達は病院を追い出された。

だがその日の夜。病院内のカメラが動かなくなり、異変に気づいた看護師が少女の病室に入ると、彼女は体内に毒を打ち込まれていた」

「……生きているんですか?」

 

その問いにエイブラハムは頷く。

 

「ああ、幸いにも処置が早かった事で一命は取り留めた。犯人は二人組、何も警察官の格好をしていたそうだ」

「警察官……」

 

そこで思い出すのは数日前にカムチャルから聞いたあの報告だ。

するとエイブラハムはそんなレオポルトを見て鋭く聞いてきた。

 

「何か違和感でも?」

「……実はですね」

 

そこでレオポルトはカムチャルから聞いた獄中殺害されたあの魔導技師の話をした。

 

「なんてこった…そんな事があったのか……」

「その時も同じく警官に扮した二人組が殺していたそうです」

「ふむ…犯人の共通点が多いな」

「ですので…もしかすると……」

「その可能性もなきにしもあらずだね」

 

そう話していると車は例の少女のいる病院に到着するも、少し空気が重々しかった。

 

「うわ、警官が多いな……」

「ちょっとこれは予想外だったなぁ……」

 

そこにはかなりのパトカーと警官が常駐していた。本当はこのまま少女のいる病室に行こうとしていたらしい。

 

「ちょっとヘルプ入れてもらおうかな……」

 

レオポルトは小さく呟くと携帯を取り出していた。




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