転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#38

その日、レオポルトの部屋にはいつものメンバーが揃っていた。

目的はレオポルトから古代魔法についての特別講座を受けるためだった。

父親が国内でも有数の古代魔法の研究者である彼の講義をタダで受けられるのだから参加しないはずがなかった……と言うか元々アニが二人にぽろっと溢したせいで『うちらにも教えろ』とせがんで来たのだ。

 

「それで、何の課題魔法の分野を学びたいかい?」

 

レオポルトがはじめにそう聞くと、ヴァージニアが言った。

 

「はい!」

「はいジニー」

「そもそも古代魔法がどう言うのが何なのかの解説から頼みます」

「よかろう、では講義を始める」

 

そこで彼はアニ達の持ち込んだタブレットにデータを送信する。

 

「え、なにこれ……」

「無料で公開出来る情報だ。少なくとも、学校の教科書よりは詳しく書いてある」

「うわっ、本当ですね。凄い……」

 

魔法史学ゼミに所属している彼女がそう言うくらいだから、それはいい資料なんだろうとヴァージニア達も納得する。

 

「いいのか?こんなに貰って」

「ああ、俺が知っている限りではその五倍の資料がある」

「うわっ」

「すげぇな、古代魔法って」

 

思わずその資料の多さにジャクソンも感心した様子を見せる。

 

「ではまず古代魔法の定義についてだが、これは主に旧歴時代までに発展してきた魔法の事全般を指す。これには瑞穂国の陰陽師や大朝帝国なんかの錬丹術もその一派だ」

 

そしてレオポルトは資料を見せながら解説を始める。

 

「旧世界歴は二千年以上続いた由緒ある歴史だ。そして古代魔法は更にその昔から記録が存在している」

 

歴史上、魔法というのは遥か昔から存在が確認されていた。それこそ数千年単位の歴史でだ、主にエルフの書いた歴史書は長寿の種族というのも相まって信頼性が高く、重宝されていた。

 

「古代魔法には系統と呼ばれる種類に分けられており、簡単なもので言うと火・水・土・光・闇などがある」

 

最近話題を呼んでいる古代魔法はその闇系統の魔法だ。主に重力などを操り、空間そのものに変化を加える系統の古代魔法だ。

 

「他にも様々な系統を持つ古代魔法だが、なぜ今になってその古代魔法が注目されているのか」

 

そしてレオポルトはその訳を話す。

 

「旧大陸を二分した大戦争の二百年戦争後、その古代魔法は失われた技術となって僅かな資料しか残っていない」

「ねぇ、何でわずかしか残っていないの?その古代魔法」

 

そこでヴァージニアがレオポルトに聞く。それを聞かれた彼はある仮説を答える。

 

「一説によれば、二百年戦争終結後の大陸同時革命の混乱で失われたそうだ」

「ふーん……それ考えると勇者や魔王ってかなりやばい事をしたんだな」

 

ジャクソンがそう呟くと、ヴァージニアやアニが首を傾げた。

 

「いやぁさ、二百年戦争があったとしてもさ。その後と事とか考えていなかったのかな?」

「ああ、確かに。それぞれの国の王様だもんね勇者と魔王って」

 

そこでヴァージニアも納得した様子で相槌を打った。

 

「王様が任務ほっぽって死んじゃったようなものでしょう?」

「そもそも何で勇者と魔王は戦争をしていたんでしょう」

「そこら辺の記録も大部分が消失しちゃっているもんな……」

 

古代魔法の話そっちのけで二百年戦争の話に盛り上がる三人、その話を聞いてレオポルトは思わず考え込んでしまっていた。

 

 

 

 

 

あの時の自分は何を考えていたのか……いや、何も考えていなかったからヘルムート城に転移魔法で特攻をしたのだ。

あれで戦争が終わるかもしれない。魔法妨害の結界が貼られた帝城周辺に飛んで、そのまま城に突入した部隊はその殆どが壊滅した。

 

「今思えばゾッとする話だ。よくもまあ着いてきてくれたもんだ」

 

死ぬとわかっていて尚、彼らは俺に着いてきた。一部は逃げ延びたそうだが、それでもわずかな人数しか帰る事はなかった。

 

「厄介な事だな……」

 

そして帰還した兵士は口々に自分が妹と相打ちとなって死んだ話を伝え、その後両家は滅びの時を迎えた。

 

「後のことは考えたこともなかったな……」

 

王国軍の司令官として、王族の人間として戦地に赴いていた前世の自分は戦の時以外は考えたことがなかった。政は義弟に任せていたので、正直に言うともう疲れたと言う印象があった。

 

「歴史とは、本人が思った方向とは違う考えになるのだな……」

 

何事も思い通りにはいかないと言う事を身に染みて感じていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、朝早めに登校したレオポルトはジムに入る。

週二程の感覚で訪れている彼はよくジャクソンやヴァージニアと出くわすことが多いのだが、今日は珍しく朝にジムに来ている人は居なかった。

 

「珍しいな」

 

大体体育会系の生徒がいる事が多いのだが、今日は静かなジムが広がっていた。あまりに静かなものだからランニングマシンに乗って音楽をかけながら走り出す。

体力をつける事を目的にはしているが、この体は基本的に体力が無い。持久走なんてできないレベルにまで体力が減っているので前世の感覚で走って学校でゲロったこともあった。

なのでどちらかと言うとこれ以上体力を落とさないようにするために運動していると言った方が正しいかもしれない。

 

その代わりと言っては何だが、今の体は非常に魔法を使うことに長けていた。それこそ、古代魔法の中でも高度な技術を要する傀儡魔法の多数同時展開すら可能だ。

通常、傀儡魔法は魔力を馬鹿ほど消費する代わりに生み出した魔物を自動的に敵に特攻させるのだが、その特性上普通は一人一体から二体までが限界だ。だから前世では節約術で森に住んでいた動物なんかに魔法を当てて擬似的に傀儡魔法を使用していた。

 

だがこの体では百匹を出しても問題ないくらいに魔力と魔力適正値が高い。おかげで魔導レーダーなる魔法発動の感応波を感じ取るレーダーにもほとんど反応せずに魔法を使うことができる。ただ若干魔導適正値が低いので魔法を使う時には逆位相に調整した魔導具の必要があったが……。

 

「(しかし時代も進化したもんだよな……)」

 

前世では魔法発動の痕跡を探知系の得意な魔術師が感じ取って咄嗟に障壁魔法を展開する。これが通常だった。

しかし今は魔導レーダーと呼ばれる代物が誕生し、魔法発動を常時監視できる体制が整っていた。最近では性能が上がって魔法発動のみ探知できるシステムがあるそうで、俗に適性値欠乏症と呼ばれる魔導適正値が低い人物がわざわざ逆位相魔導具を常備する必要は無いそうだ。ただあまりにも酷いと適正値を直せない難病でもあり、魔石病を引き起こす厄介な病でもあった。

ちなみに魔力欠乏症という病もあり、そちらも難病の一種と見なされており、こっちに関しては魔石を持っていれば補完ができた。

 

そんなことを考えながら無心で走っていると、横の台を誰かが使った。

やっとお客かと一瞬だけ横を見ると、そこでほんの一瞬驚いてしまった。

 

「やあ、こうして直接話すのは初めてかな?レオポルト・ウリヤノフくん」

 

そこには今年度の首席ロバート・E・スコット、その一人が顔を見せていた。

 

 

 

 

 

「ヤッベェ……」

 

朝のジム、そこでヴァージニアは髪も大して解かずにジムに訪れていた。どうせ汗を流した後にシャワーを浴びるからと適当になっていたのだ。

 

「寝坊したなぁ……」

 

夜中まで起きていたツケが回ってきて彼女はやや眠たそうにしていた。正直な所、単位に関しては問題ないのだが、サボると後々面倒なのだ。

基本的にこの学校は一年生の内に一通りの高校課程の基礎教育を叩き込まれるので、少しでも勉強が遅れると留年になる可能性が高かった。ただし、二年生から勉学に関してだいぶ楽になるので後数ヶ月の辛抱と言った所だった。

 

「(今日は来ているのかなぁ〜)」

 

最近は部活の持っているトレーニングセンターに行くことが多いが、たまにこっちの公共のジムにも訪れていた。目的は友人と話すためだ。

学校に入ってから初めての同級生、それでいて内ら四人の中では一番優秀な生徒のレオポルト。彼はジャクソンとは違う意味で、話していて楽しい相手だった。

 

「あれ?」

 

そしてジムに入ると、そこではレオポルトが居たのだが。誰かと話しているようだった。

 

「(誰と話してんだろ)」

 

基本的に私と同じで四人以外と滅多に話す事の少ないレオポルトはジムにて誰かと話していた。しかし彼女はその声を聞いた瞬間に誰と話しているのかすぐに分かった。

 

「んで、古代魔法の研究をしているのかい?」

「ええ、俺は昔から古代魔法一本で生きている身でね」

「なるほど、君の父親の血を継いでいるわけだ」

「そういう首席様は、親の後を継がないんで?」

 

話している相手を知ったヴァージニアは驚愕した。

 

「(なんでここに彼がいるのよ?!)」

 

普段は一人か、取り巻きが居る彼はレオポルトと談笑をしていたのだ。その事実に驚いていると、さらにロバートは驚いた話をレオポルトにしていた。

 

「ああ僕は研究がしたいんだ、現代魔法の追求をね。()()()()

「ははっ、言葉がお上手な様子で。生徒会の権限でも使いました?」

「察しがいいね。流石だ」

 

彼の言葉を軽く受け流していたレオポルトに影からこっそり見ていたヴァージニアは思わず驚いてしまった。

 

「(えっ!レオって次席だったの!?)」

 

入学式の時に名前が出てわかるのは挨拶をする主席だけだ。二番手は出る事はない、いつだって二番手は影が薄いが。それが知り合いともなると話は別だった。

 

「で、現代魔法の何を研究するんで?」

「それは言えないな、まだ理論の段階だ」

 

しかしそんなヴァージニアが聞き耳を立てているのに気づいていないのか、二人は小難しい話をしていた。

 

「君は何かしているのかい?」

「ええ、あなたと同じようにまだ理論段階なので言えませんがね」

「ほほ、じゃあお相子と言うところか」

「言っておくと古代魔法関連の研究ですがね」

 

レオポルトはあくまでも専攻は古代魔法だと言うのを言うと、ロバートはまるで反対にいると言った後に溢す。

 

「僕はそれほど古代魔法に詳しくないからな……」

「私も、そこまで現代魔法は得意じゃありませんよ」

 

そう答えると、レオポルトはランニングマシンを降りてタオルを肩にかけた。

 

「ではお先に」

 

そう答えると彼はジムを後にして行った。




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