転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#51

港湾地区でのボヤ騒ぎは、エリカを誘拐した犯罪組織が火を放ったと言うことで決着がついた。

あの倉庫では、自分たちが銃撃をしたことで数名の犯人が拘束され、同時に不法移民の流入ルート解明の捜査は拘束した面々からの証言で大きく進展した。

 

レオポルト達は警察署でひたすらに酷い目に遭った後に魔学院に帰ると、そこで次に待っていたのは風紀委員会からの追問だった。

特に風紀委員であったレオポルトは引退したはずのシュライク先輩と、現役の風紀委員長のモーリス・ダイムラーと共にエリカに関する事件の詳細を言えと言われた。内容は、もー禿げそうだったとだけ記録しておく。

 

警察によって保護をされたエリカは、その後病院に入り入念な検査が行われた。

元よりFSSによって釣り餌として使われた不法移民の彼女。不法移民を勝手に釣り餌にして移民ルートを解明したことにより、彼女の扱いにFSSと入国管理局の間では一悶着があったそうだ。

 

「はぁ〜、やれやれ疲れる」

 

魔学院の教室で、なんか久しぶりにまともな授業を受けた気がするレオポルトは食堂で思わずそう溢すと、正面に座ったヴァージニアは頷きながら特大盛りのペペロンチーノを食べる。

普通の人間なら食べることすら顔真っ青にするレベルの量だが、彼女はそれをしゃべりながら瞬く間に胃袋に消えていく。

 

「全くよね、風紀委員会に呼び出しを受けるとは思わなかったわ」

「なんか、魔導具設計局の方で大騒ぎだって聞いたんだが?」

 

そこでジャクソンが聞いてくると、レオポルトはその時の騒動を思い返しながらゲンナリする。

なにせ新型の核融合炉の実験が一時中断され、同時に制御棒の総取替となったので、生徒全員が駆り出されての一大作業となって徹夜となってしまったのだ。

 

「ああ全くだよ…グラハムに発注した魔力制御棒に魔石爆弾が仕込まれてて、小父経由で通報が入って、それでもうてんてこ舞いだ」

「うわぁ、お疲れ」

「それは…散々でしたね」

 

アニも同情をしてくれると、ここ数日の激務と騒動に巻き込まれたレオポルトは珍しく牛乳の入った紙パックを取り出す。

 

「ん?珍しいな、お前が牛乳とは」

「まぁな、普段は弱いからあまり飲まねえんだけどよ…」

 

魔族と吸血鬼の血が濃く出ているレオポルトはそこで牛乳を吸う。

吸血鬼の代替血液として飲む乳は、慣れていないと鼻血を吹き出してしまうので注意をする必要があった。

 

「ここ最近の激務で、これ飲まないとやってらんないの」

「わぁ、そりゃあ大変ね」

 

吸血鬼にとって血液というのは、好物であり力の根源である。

純血の吸血鬼は、血液銀行から輸血パックを購入すると聞いているが、そんなものを飲んだらたちまち顔を真っ赤かにしてぶっ倒れるに違いなかった。

 

「大丈夫なんですか?」

「なんかね〜、妙に慣れたよね」

 

チューっと牛乳を飲むレオポルトは答える。あの倉庫で派手に古代魔法を使ってぶっ倒れた後からというもの、前までは少し飲むだけで倒れかけていた牛乳が小さめの紙パック程度なら飲めるようになったのだ。

 

「前まで大さじ飲んだらぶっ倒れてたのにさ」

「えぇ…それ何かの不調とかじゃなくて?」

 

そこで白い皿が見えるパスタ皿を前に手をあわせるヴァージニアが少々訝しむように聞く。はえーよ食べ終えるの。

 

「仕事が終わったら、病院に行って検査でもしてもらおうかね…」

「絶対行ったほうがいいだろ。それ」

「直ぐにでも行かれたほうが良いのでは?」

 

アニまで心配をしてくれるが、生憎風紀委員と魔導具設計局の仕事に追われているので後三日は無理やろな…。

 

「よっ、だいぶお疲れみたいだね」

「あっ、ボーイング先輩」

 

するとそこでエイブラハムが後ろからレオポルトに話しかけてきた。

風紀委員会を引退し、あとは卒業を待つのみである彼だが、先の事件でレオポルトが絡んでいるとどこかで仕入れたのか、呼び出しを食らったらしい。

突然の先輩の訪問に三人はやや驚きつつも、少し前まで当たり前の光景であったので、慣れた様子でスルーをしていた。

 

「また呼び出しですか?」

「そうだね」

「はぁ…」

 

またかよという表情を浮かべ、明らかに肩を落とすレオポルトに励ますようにエイブラハムは言う。

 

「大丈夫大丈夫。今日は聞き取りじゃないよ」

「…もうあの場所に行きたくないんですけど」

「まぁまぁ、今日で終わるから許して?」

 

放課後ね〜、と言い残してエイブラハムは去っていくと、そこでちょうど昼を終えたジャクソンが一言。

 

「ご苦労なこった」

「テメェ…後で覚えてやがれ…!!」

 

彼の一言に激しい怒りを覚えながら、レオポルトは空になった紙パックを握りつぶした。

 

 

 

そして午後の授業も終え、レオポルトは授業を終えていつも開いている自作パソコンを片付けると、

 

「レオくん」

「?」

 

チョンチョンと腕を軽く突かれ、レオポルトは突いたアニを見ると、彼女は少し耳に近づけて囁いた。

 

「あの、部長がまたレオくんの勧誘をと…」

「はぁ…またか」

 

アニの所属する魔法史学ゼミは魔法史、つまり古代魔法の研究や発掘作業などを行うゼミである。

そして古代魔法ということは当然、親父が古代魔法研究の第一線に立つ人間であることはゼミ生のよく知るところであった。

どこから漏れたのか、カール・ウリヤノフの息子であることを聞きつけたゼミ長に散々勧誘を受けていたのだ。

 

「懲りない人だねぇ」

「まあ、ゼミ長はそういう人ですから…」

 

そしてクラスメイトであるアニに対し、再三に渡って引き連れて欲しいと言っているそうな。

 

「すまんね」

「いえいえ、ゼミ長を言いくるめればいいだけですので」

 

それが一番面倒じゃないのか?と思ってしまったが、アニ曰く『ゼミ長は短略的だから扱いやすい』そうだ。

 

「じゃあ、俺は行ってくるよ」

「うん、頑張って」

 

鞄を下げて教室を後にするレオポルトをアニは小さく手を振って見送ると、そのままエレベーターに乗り込んだ。

 

「はぁ…気が重くなるよ全く…」

 

今は自前の武器がベリザーナしかないので、後で武器屋に行って新しい武器でも買わないとと考えながらセンタービルの七〇階に到着する。

 

「ご苦労様」

「どうも、先輩」

 

そこでエイブラハムが陽気な笑顔で出迎えると、少々腹が立ったのを抑え込みながら委員会本部を歩く。

 

「シュライク前風紀委員長が君をお呼びでね」

「…ちょっと、胃潰瘍になりそうなんですが」

 

一応、まだ風紀委員会に所属しているレオポルトはキリキリしてきた胃を摩ると、エイブラハムは知った事かという様子で委員会本部を歩く。

 

「この先でお待ちだ」

 

そこで来賓室に通されると、レオポルトは胃痛をかき消しながら扉を三階ノックする。

 

「レオポルト・ウリヤノフです」

『入りたまえ』

 

すぐに返事があり、来賓室の扉を開けると、そこでは部屋でシュライクと現風紀委員会委員長のモーリス・ダイムラーが座っていた。

 

「まあかけてくれ。君も疲れているだろう?」

「はっ、では…」

 

見てわかる目のクマがくっきりと浮かび上がるレオポルトを一瞥すると、シュライクは用意された茶を飲む。

そして直ぐにでも帰りたいであろうレオポルトのために早速要件を伝える。

 

「ここ数日はすまないな。なにせ警察の方でもかなり混乱した騒ぎだったもので」

「いえ…もう終わった事ですので」

 

少なくともシュライクとエイブラハムに関してはエリカの事を知っており、詳しい事情を知りたかったのだろう。

 

「数日前の港湾地区でもボヤ騒ぎの後、お前達四人が警察署に連れて行かれたというのを聞いてな」

「はい…」

 

警察署で説教をされ一泊し、翌朝に事情聴取を終えた後でのダブルパンチでもう死にかけています。

ついでにレオポルトはそこに魔導具設計局の騒動が加わったので、ここで倒れても文句は言われないだろう。

 

「ついでに知り合いから、お前達が少女を救い出したということも聞いた」

「はい…」

 

半分うつらうつらと生返事で答えるレオポルトに見かねたシュライク達は言った。

 

「まあ、そう言うことだ」

 

すると直立不動で立っていたモーリスはそこで側からプラスチックケースを机に置くと、レオポルトに渡した。

 

「これは?」

「私とシュライク前風紀委員会委員長からの褒美だ。受け取りたまえ」

 

そこで促されるがままにケースを開くと、そこにはタクティカルな様相の新品の短機関銃(ST Kinetics CPW)が入っていた。

使う弾薬は5.7×28mm弾、ボディーアーマーを貫く目的で開発された弾薬を使用可能だった。

 

「レオポルト委員。此度の活躍、大変ご苦労だった」

「直ぐに戻るといい。用事はそれだけだ」

「はっ…ありがとうございます」

 

シュライク元委員長の事だ。直ぐに自分が銃を持っていなくて数日経っている事実に気がついたのだろう。

真意を深く理解しようとは思わないが、有り難く新品の銃を受け取ると、部屋を後にした。

そしてレオポルトが帰ったのを確認すると、そこでようやくモーリスはシュライクに問いかけた。

 

「引き留めなくてよろしいのですか?」

「ああ」

 

話していたのは、風紀委員を辞めようとするレオポルトについてだった。

 

「優秀だが、彼が問題を起こす可能性は低かろう?」

「…それはそうですが」

 

この一年近く、風紀委員として活躍をしていた彼の実力は指折り。特に魔法戦闘に関しては文字通り『最強』というべき戦闘力だった。

 

「失うには惜しいか?」

「…ええ、もったいなく思います」

「ふっ、私もさ」

 

モーリスの意見にシュライクも賛同すると、同時につぶやく。

 

「だが、その才能は研究にこそ注ぎ込んでほしい。…彼一人分くらいの代替はできるだろう?」

「ええ、巡回人数を以前よりも増やして行わせましょう」

 

モーリスはそこで、来年度までに行われる風紀委員会の兵器更新の予定表を思い返す。

旧式軽戦車(M41)新型戦車(M60A3)に交換し、魔学院内で勃発する諸問題に対応する予定だった。

 

「全く、どうして戦車が必要になるのやら…」

「たまに魔物研究所がやらかすからだろう?」

 

飼育しているはずの魔物が脱走して犠牲になった建物がいくつあるやら。

改めて思うと、治安が一番学園都市の中では悪いのでは?と今さならことをモーリスは内心思っていた。




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