転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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#58

その後、魔物研究所の人間と風紀委員の戦車隊が到着をして脱走をしたキメラに砲口を向けていた。

 

「ではお名前をお聞きしても?」

「ドーラ・ウリヤノフ。一年生です」

 

ドーラは脱走したキメラの近くで駆けつけた風紀委員による事情聴取を受けていた。

脱走したキメラに二発の擲弾攻撃を行い、メドゥーサ族の少女の邪視魔法でキメラを止めた技術は魔物研究所からも一目置かれていた。

 

「馬鹿者ぉ!学内のキメラの開発と飼育は規則違反だろうが!!」

 

そして気絶をしたキメラを鎖で拘束をしながら風紀委員が魔物研究所の生徒達を怒鳴りつける。魔物研究所から脱走をしたキメラについて詰問をしていた。

 

「ウリヤノフ…あっ、もしかして君」

 

そして事情聴取をした風紀委員は苗字とドーラの目つきから兄妹かと思った。

 

「レオポルトの妹さんだったりするのかい?」

「ああ、レオポルトでしたら私の兄ですが…」

 

するとその風紀委員は言う。

 

「ああやっぱり?いやぁ、君のお兄さんには色々と助けられてたんだ」

 

魔法戦闘と拘束においてまず右に出る者がいない状態で、故に風紀委員を辞めたことが悔やまれるとひとしきり言った後に彼は提案してきた。

 

「どうだね?こんな時にアレだが、風紀委員会に…」

「あーでも、私は兄ほど魔法に卓越しているわけではないので…」

「あぁ、そうか〜。残念だなぁ」

 

早速勧誘をしてレオポルトの代替といった感じであったが、そもそもドーラはレオポルトのいる魔導具設計局に入部予定だったので丁重にお断りを入れた。言っていることは正しいので風紀委員も違和感無く残念がっていた。…実際、自分は兄より魔法は得意ではないし。

 

「んじゃあ、後はこっちでやるから。ああ、レオポルトにも宜しく言っといてくれ」

「分かりました」

 

戦車を持ち出してキメラを監視する風紀委員会に後を任せると、ドーラはアシュリアの元に戻る。

 

「悪いね。世話任せて」

 

彼女は外でアシュリアの隣で呆然とドーラを見上げる少年を見た後に言うと、アシュリアは答える。

 

「全然良いよ。むしろ対応してくれて助かったから」

 

アシュリアはそこで風化委員への対応を全部任せたことに逆に感謝をすると、ドーラは軽くホッとため息を吐いてアシュリアの隣に座る男児を見る。

 

「んで、大丈夫?坊や」

「ぼ、坊やって…ドーラさん…」

 

隣に座っている同級生を坊や呼びしたドーラに軽く呆れるアシュリア。

 

「あっ、だ、大丈夫です…」

 

その男児はドーラを前に少しオドオドとしながら頷く。

 

「まぁ怪我はなさそうで良かった」

「た、助けてくださって…ありがとうございます…で、では」

 

そこでその男児はベンチから立ちあがろうとした。

 

「お待ち」

 

すかさずドーラは彼の腕を握ると、そのままベンチに座らせる。

 

「な、何ですか?」

「貴方、人に助けてもらったのに名前も教えずに去るの?」

「そ、それは…」

 

完全にドーラを前にどう対応していいか戸惑っている男児に彼女は遠慮なく聞く。

 

「君、名前は?」

「ジャ、ジャン・A・ロックフーラー…です」

「ほーん…」

 

名前を聞き、ドーラはジャンを見てその掴んだ手首を引っ張る。

 

「よろしく。ジャン」

「え?あ、ちょっと…友達の所に戻らないと…」

 

彼はそう言ってドーラのつかむ手を離そうとしたが、

 

「友達?あれが?」

「…そう」

「話に間が開いている。というか、あんなグループの一番後ろで、キメラに襲われた時に置いてく奴らなんて友達じゃ無いわよ」

「うっ…」

 

ズカズカとドーラに言われ、それが事実であるが故にジャンは言葉に詰まる。

 

「どうせロックフーラーの名前に寄って集ってきた馬鹿共でしょう?」

「っ!知っているの…?!」

 

家名の事を言われジャンは一瞬驚いたが、ドーラは当たり前だろうと言った視線を送る。

 

「むしろロックフーラーの名を知らない人がこの国にいると思う?」

「そ、それは…そうだけど…」

 

ジャンも自分の家のことを知らないわけではないので、ドーラの言うことにそれもそうかと納得する。

 

「ほら、君面白そうだし、女を守ってくれる男がちょうど必要だったのよね〜。だから付き合ってよ」

 

そこでジャンはドーラに思わず言う。

 

「え?き、君の方が強そう…」

「あ?」

 

その瞬間、ドーラはジャンを少し睨みつけて見てしまい、それを見たジャンは大慌てで弁明を図る。

 

「ああいや!そういう意味じゃなくて…その…」

「何かしら?」

「…何でもない。気にしないで…」

 

ジャンはドーラに弁明をすることを諦めると、彼女はジャンとアシュリアと共に歩き出す。

 

「さーて、次は何処に行く?」

「え、あ、えっと…」

 

この後行こうと思っていた魔物研究所は、今起こった脱走騒ぎで一時封鎖がされており、三人は次の行き先に迷っていた。

学内には多くの施設があり、一年生は学校案内のために自由に散策することができた。

 

「残っているのは図書館と学内工場がありますね」

「学内工場は兄貴がいるのよね〜」

 

ドーラはそこで学内工場に今もいるレオポルトのことを言うと、彼女はジャンに聞く。

 

「ねぇ、ジャンならどっちに行きたい?」

「え?ぼ、僕に聞くの?」

 

成り行きとはいえ、今さっき出会ったばかりのドーラに聞かれ、ジャンは彼女を前に少し震えた様子で聞き返す。

 

「そりゃそうよ。アシュリアの行きたがってた魔物研究所が閉まっちゃったもの。次の行き先考えないとだし〜」

 

少し自由人気質のある様子でドーラは言うと、ジャンは聞かれた質問に答えた。

 

「じゃ、じゃあ…図書館の方かな…魔学院の情報が詰まっているし…」

 

魔導書や資料本に関する情報はベンソン図書学校に収蔵されているものが国内最大級であるが、魔学院内にある図書館も最新技術の資料をまとめた論文が多く収蔵されていた。

 

「じゃあそっちの方に行って見ましょうか」

 

ドーラはそう言いジャンの提案に乗ると三人は図書館の方に歩き出して行った。

 

 

 

 

 

「よっ!」

「ほっ!」

 

その頃、学内工場では鍛治台の上で二人の男がハンマーを叩いていた。

 

「あっちぃ」

「そりゃあこんな火の前だからな」

 

汗を拭うジャクソンにレオポルトが言うと、二人は目の前のサーベルを見る。

 

「しかし、ミスリルを使うとは贅沢なやつだ」

「いいだろう?わざわざ仕入れたんだ」

 

ミスリルのインゴッドを溶かして作っているサーベルは、今度のドーラの誕生日に合わせて製造しているモノであった。

 

「しかし、刻印魔法入りの魔法剣の製造と聞いちゃあ。俺も腕がなるぜ」

「へへへっ、だろう?」

 

男として一度は憧れる魔道具の中でも特別な人気がある魔法剣。刀身に刻まれた魔導はんだを介して魔法を放ちながら放たれる剣戟は、誰もが憧れる代物であった。

 

「しっかり頑丈に作って、ドーラの蛮用にも耐えれる最強のサーベルを作ってやるさ」

 

レオポルトはそう言うと、そこで再び刀身を炉心に入れて空気を送って加熱を行う。

 

「こいつは芯にアダマンタイトを使っている。かつて、こいつで作られた鎌でメドゥーサの首を刎ねたと言う伝承が残っている金属だ」

「はははっ、よくそんな板金を手に入れたな?」

「たまたまな」

 

彼はそこで少し笑みを浮かべて制作途中のサーベルを見る。

 

「ミスリルは鮮やかでそれ自体が魔導はんだ以上に魔法伝導性が高い。だが加工しやすいくらい柔らかいのが欠点だ」

「だから昔からミスリルには芯金を入れているんだろう?」

「ああ、何せこいつのような魔法金属は、基本的に合金になりにくい性質だからな」

 

基本的にこうした魔法金属は賢者の石を媒質に合金とする必要があり、賢者の石は製造する上で水銀を使うことから現在では使用が制限されていた。

 

「アシュリア、聞いたら震えるのかな?」

「それは無いだろう。あくまでも伝承は伝承だ」

 

アダマンタイトに関する伝説を前にメドゥーサ族である後輩のことを考えたジャクソンに、軽くレオポルトは答えてからそばに置いてあったコップの水を飲む。

 

「はぁ、やれやれ。俺の二本目も作らにゃならんからしばらく大忙しだ」

「にしちゃあ嬉しそうだがな?」

「そうか?」

 

ニヤニヤとしているレオポルトの表情にジャクソンもその気持ちを理解していた。

 

「レオはずっと刀作ってばっかりだよな」

「そうか?」

 

ジャクソンの指摘にレオポルトはこの一年の自分の活動を振り返った。

 

「…そうかもしれん」

 

ベリザーナを始め、今作っているドーラのサーベル。二本目のマチェテ。この後作る予定のも含めると、自分がこの一年で自主的に制作したものは全て刀であった。

 

「たまには他の分野も作ってみるのはどうだ?」

「うむ。それもありだが…コンセプトがなぁ」

 

レオポルトはそこでマチェテの次に作るものを考えていると、ジャクソンが聞いてきた。

 

「そう言やぁレオ、卒業論文の題材。いつ頃から始める予定なんだ?」

 

彼も経口補水液を片手にレオポルトに聞くと、彼はそこでざっくりとした予定をジャクソンに伝える。

 

「そうだな…本格的に始めるのは、ドーラが二年生になってからだ。それまでに俺たちはできれば研究の基礎段階を完了させておきたい」

「OK。しかし二年単位の時間がかかるか…」

「ああ、正直大学まで行っても終わるかどうかだがな」

「何、望むところよ」

 

すでにレオポルトの実験に協力する約束をしているジャクソン達。事情を説明したところ、アニ達も喜んで参加してくれる事となっていた。

 

「しかしなぁ、古代魔法の授業を受けてからじゃねえと説明もないのかよ」

「はははっ、悪いな。これだけはどうしても譲れねぇんだ」

 

ジャクソンはそこでレオポルトの言う卒論の議題を言う条件を前に少々その日を楽しみにしていた。

そもそもが古代魔法のエキスパートでもあるレオポルトが、数年がかりで完成する()()しれない研究である。彼のことをよく知っている人ならばこれだけでどれだけ未知のことあるか理解ができ、同時に息を呑むほどの興奮で身が焦がれて燃えそうになる。

ジャクソン達も列記とした魔学院の生徒。彼らもまた全国から選りすぐられたエリート達であり、同時に国の未来を背負う研究者でもある。

 

「まあいいさ。その時になったら俺たちを唖然とさせる説明を頼むぜ?」

「ああ、せいぜい期待していると良い」

 

レオポルトはニヤリと笑ってジャクソンを見る。




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