魔学院では主に技術開発を担うための育成が重点的に行われている。
他にも学園都市には分校や職業学校が多数存在しており、また学校からの発注を請け負ったりしていた。
「じゃあ、頼めるか?」
「了解」
魔法糸で編まれた服を纏ったヴァージニアにレオポルトが聞くと、彼女は頷いてから背中の巨大な翼を目一杯に広げてから足を踏み込んで空高く舞い上がった。その運動場には他にドーラ、アニ、ジャクソンアシュリア、ジャンと言った妹や友人達が集まっていた。
そして空に上がったヴァージニアは少し間を置くと、直後に巨大な影が彼らの目の前に降り立ち、その体格からドシンと轟音を立てて地面にヒビが入りながら着地をしたことで、全員が自然と衝撃で地面と足が離れてしまった。
「馬鹿!もっと丁寧に着地しろよ!」
そこでジャクソンが怒鳴りつけた。すると運動場でヒビが入るほど足跡を付けたヴァージニアは言う。
『あら、もっとやって欲しかったかしら?』
「俺たちが吹っ飛ぶだろうが!!」
そこで彼等はそんな成獣のヴァージニアに近づいて体に纏っていた魔法糸を確認する。
「よし、魔法糸は問題なさそうだな」
『ええ、流石はレオね。着心地も十分よ』
念話を通して共通語を使って彼女はレオポルトを見る。基本的に人間などと会話ができる種族をドラゴン、それ以外はワイバーンと分類されるため、ヴァージニアは相当に高位な血筋であることが窺える。
竜族に言葉を教えたのは人間と言われており、今でも子供が読む童話にその話がある。
「わあ、本当に赤いんですね」
「真っ赤っかだ…」
そんな成獣の火竜を前にアシュリアやジャンは近づいてその巨躯を見上げた。
因みに極東の瑞穂国などに住まう蛇型の龍は、此方の蜥蜴型とも言われる竜と区別されていた。
「触っても良いですか?」
『良いわよ。ただ逆鱗だけはだめよ』
そう言い竜族の敏感な場所でもある顎下の逆鱗を言うと、全員が頷く。『逆鱗に触れる』と言う言葉ある通り竜族も龍族も敏感な鱗があり、かつてここに不用意に触れてドラゴンが猛り狂った故事が多数あることからそんな諺が生まれていた。
「わぁ、ツルツル」
「ドラゴンなんて初めて触りました」
アシュリア達はそう言いながら初めての感覚に舌を巻いていた。本来は座学の授業があるのだが、ドラゴンに触れられると言うことで授業を抜け出していたのだ。無論、教師に許可は取っていた。
「意外と体格は大きいんだな」
『元々身長が大きかったでしょう?』
「まあ、それはそうだが…」
基本的に竜族などが使う変身魔法は本人の体格に合わせて人間の姿の身長も変わる。確かにヴァージニアは身長が高い方であったが、まさか体長が二〇メートルを越える大型獣とは予想外だった。
『で、やっちゃって良いの?』
「学校側の手続きにミスが無かったら、この運動場で使って良いそうだ」
『OK、あとで怒られてもレオの責任ね』
「ざけんな!」
レオポルトはそこで怒鳴って言った。
今日はここでヴァージニアの竜の息吹を使った火力発電の実験を行う為の試験をする予定であった。竜の息吹を最大出力で使う為、このように臨海部の運動場が貸し与えられた。
「元々、竜の息吹は古代魔法の一つだ。竜族の胆石は巨大な魔石になる」
『たまに魔石がデカくなりすぎて詰まるから、竜族ってのは魔法を行使しなきゃならないの』
「「「へぇ〜」」」
『昔はよく人間族も魔族も狩りにきていたから、撃退する時に兎に角魔法を使っていたから問題なかったって言うのは、祖父から聞いたことがあるわね』
「「「へぇ〜」」」
そこでヴァージニアはその後にレオポルトに言う。
『で、今日はこの竜の息吹に純粋な酸素を送り込むんでしょう?』
「ああ、酸素を投入してさらに燃焼したらどうなるか試してみたくないか?」
『正直めっちゃ怖いんだけど』
「でも面白そうだよな」
そこでジャクソンも乗り気な様子でジャクソンはヴァージニアに近づく。
「なあ、背中に乗り込んでも良いか?」
『嫌よ、あんた重いから乗るなら軽いレオとかにして』
彼女はそう言って巨人族のジャクソンを軽くあしらった。するとそこでレオポルトは気になって聞いた。
「何人くらい乗れるんだ?」
『如何かしらね?多分乗るのは三人くらい。吊り下げたら一五〇〇くらいが限界だと思う』
「ざっと中型ヘリコプターくらいか…」
『一応軍だと吊り下げで一〇〇〇キロよ跨乗は二人』
それが個体ごとに差が生まれてしまう竜族が平均して運べるとされた量だ。無論、ヴァージニアのように体格が大きければそれだけ物資は多く運べる。
しかし軍隊においてそのような個々の能力を適応することはあり得ないので、竜族は『総合戦術輸送隊』に配置され、兵員から物資輸送までをそつなくこなせる万能輸送兵として重宝されていた。
師団規模でこの輸送部隊が編成されているのは今の所、合州国だけである。
「よし、そろそろやるか」
『了解』
「うし、一年生は俺達の陰に隠れとけ」
「熱いですからね。とりあえず計測装置が溶けないようにしないと…」
そこで馴染みの二年生達は準備を進めていくと、ドラゴンを見上げていた一年生達は興味深くなっていた。
「先輩!後で乗せてもらっても良いですか?」
『良いわよ』
「「「やったー!!」」」
そこで三人は喜んでいると、ジャクソンが言った。
「モテモテだな」
『子供に好かれやすいのがこの体の利点かもね』
ヴァージニアも満更ではない様子で海を見る。
「所でお前、今の下半身ってマッパなのか?」
『…』
その直後、ヴァージニアはキレて長い尻尾を思い切り振ってジャクソンを吹っ飛ばした。
「ぎゃあぁぁぁあぁっ!!」
すると硬い鱗の尻尾で叩かれた彼はそのまま運河まで吹っ飛んで着水をした。
『ふんっ!失礼な奴め!』
「ジャックーーっ!!」
そこで吹っ飛ばされたジャクソンを追いかけてレオポルト達は走ると、そこではジャクソンは水路の川辺で犬神家をして浮かんでいた。
「あの馬鹿…」
「何やってるんですか…」
そこで叩かれた経緯を振り返ってレオポルトとアニは呆れながら魔法を展開して彼を水路から引っ張り上げた。
その後、気を取り直してヴァージニアはまっすぐ海を見つめる。
「よーし、初めてくれ」
『了解』
胸元に樫の木板を掘って使った護符をぶら下げてヴァージニアはレオポルトに頷くと、直後に彼女は頭を低く下げて尻尾をまでを一直線に伸ばして最も竜の息吹の高火力が行える姿勢になると、口を大きく開けた。
ゴォォォォォォオオオオーーーッ!!
その直後、僅かにヴァージニアの喉の奥に魔法が展開されると、口元から紅蓮の炎が吹き出した。
凄まじい勢いで海面に炎が広がると、竜の息吹はその名に相応しい火力を展開していた。
「よし、火力を上げるぞ」
「了解」
そこでぶら下げていた護符に向かってレオポルトはベリザーナを起動して送風魔法と抽出魔法を展開する。これにより純粋な酸素を竜の息吹に与えることとなり、爆発的な威力を発揮することになると予想していた。
「何ともデッケェガスバーナーだぜ!」
「なら完全燃焼させちまおうぜ?!!」
そこで轟音と共にジャクソンが言うと、その炎で巻き起こる風に煽られながらレオポルトは言った。
「アチチ!」
そこで温度計測をしていたアニが軽く悲鳴を上げて思わず焦げそうになった制服を見て冷却魔法を自身にかける。
「凄い!凄まじい勢いで温度上昇してますよ!!」
「よし!もっと燃やそうぜ!」
「よっしゃあ!!」
そこで二年生組は熱狂しながら火遊びをする子供のようにどんどん純酸素を送り続ける。
「アッチ!!?」
「やばいですって…!!」
「あわわわわ…」
その様子を一年生組は顔面を青くさせて見ていた。既に制服に備え付けの冷却魔法など意味を成しておらず、運動場近辺の温度は急上昇していた。
「マズイって!他の発火点に達しちゃうって!!」
そこでドーラがその熱と光にやられながら叫んだ。すでに運動場の植え込みの木々は炎の熱で乾燥してしまっていた。海面も蒸発を始めており、魚が浮いてきていた。
「あ?何だって!?」
しかし竜の息吹の轟音によってその悲鳴はレオポルトには届かなかった。
すると竜の息吹の赤い炎は次第に青白いモノに変化してきた。
「キタキタキタァ!!」
その変化にレオポルトは興奮気味に送風魔法の出力を上げると、酸素がさらに竜の息吹に送り込まれた。するとその直後、突然竜の息吹が切れた。
「如何した!?」
突然の終了にレオポルトは怒鳴ると、そこでヴァージニアが言った。
『やばい、魔力切れた』
「マジか…」
高出力で竜の息吹を放った彼女だったが、元々彼女の体は体内に胆石のようにある魔石に魔力を溜め込んで魔法を放つ。タンクから全開に水を流して仕舞えばあっという間にすっからかんになってしまった。
「じゃあまた暫くは出来ねぇか」
『ごめん、なんかうまくいきそうだったんだけどなぁ』
「いや、良いさ。データは残ってるからそこから再開すれば良いし…」
彼がそう言った時、ふと鼻に焦げ臭い香りが漂った。
「?」
その匂いが何だろうかと首を傾げると、
「ちょっ、火事火事!」
「火出てる!!」
ドーラ達は大慌てで先ほどの竜の息吹の輻射熱で発火を起こしてしまった運動場の植え込みを見た。
「げっ!?」
「やべっ、やらかした」
「早く消さないと!!」
そこですぐに落ち着いてジャクソン達は魔法を展開して水をかけたり酸素を断ち切って消火を行うと、木炭と化した植え込みを見た。
「ど、如何しよう…」
「完全にやらかしたな…」
その木々を前に彼女達は苦笑していると、レオポルトはそこで燃えてしまった植え込みの葉を見る。
「へぇ、流石にあの温度と規模になるとこの場所でも木って燃えるんだな」
「何呑気な事言ってんだよ!?兄貴!!」
そこでドーラが文句混じりに地団駄を踏んだ。
「危うくこっちまでローストされる所だったんだけど!!」
「大丈夫なんだろう?じゃあOK」
「何処がだ!!」
そこでドーラは文句を言っており、その後ろでアシュリアとジャンは今の竜の息吹を見て、目を輝かせてヴァージニアを見ていた。
お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。