真っ先に先制攻撃を行えたのはロバートの方だった。
「早いっ…!」
デバイスを使って魔法式を素早く組み上げた彼は、直後に魔法を放った。
「チッ、流石に現代魔法の速度には敵わねえな…」
交互に手を両腰のマチェテに伸ばして鞘から抜いてから赤と黄の刀身を見せつけると、直後にマチェテをX字に組んで防御を取る。
「おっ、あいつ新しいのこしらえやがった」
「魔導具ですか?」
「ああ、まああの歳で個人制作した魔導具を持つことは珍しくはないですがね…」
その直後、爆発した煙を振り解くようにマチェテを振って白煙から飛び出すと、直後にベリザーナから雷撃が飛翔する。
「甘いね」
その攻撃は障壁魔法で防がれ、その間に間髪入れずにレオポルトは崩壊寸前の魔法式を投げ飛ばすと、その魔法は直後に火球が貫通して空中で爆発し、直後に複数の火焔が何発も叩き込まれる。
「ちょっと、先制攻撃されてるじゃないの」
その様子を見ていたヴァージニアが呟くと、隣でジャクソンが返した。
「古代魔法は現代魔法の構築・伝導・発動と違って構築・創造・伝導・発動って手順に差異があるから、先制攻撃はどうしたって無理だぞ」
「むっ、なんであんたが詳しいのよ」
「そりゃあ、ちょくちょく俺は呼ばれてたからな」
学内工場で魔導具制作の手伝いに駆り出されていたジャクソンは得意げにアニを見下ろした。
「ムカつくわね、そのドヤ顔」
「おおそうかい」
その直後、試合会場のサッカーコートに眩い閃光が迸った。
「まぶしっ!!?」
「目!目!」
その閃光でスタジアムにいた全員が目をつぶされ、咄嗟に魔法を展開して視界を保護せざるを得なくなる。
「何よ今の!!」
「ヤッベ、目チカチカする」
軽く頭を振ってジャックはサッカーコートを見ると、そこでは多数の魔法陣が乱射している光景が映っていた。
「何あれ…」
「現代魔法の多重展開です」
そこでアニが階段状の座席を登って説明をした。ただ彼女は眼鏡のフレームが割れてやや服装も崩れてボロボロになっていた。
「大丈夫?」
「ええ…さっき風紀委員会の皆さんが仲裁してくれたので…」
魔法史学ゼミの方に行っていた彼女がここに戻ってきた時点で、現代魔法学ゼミと喧嘩になって場外乱闘になったのだと理解した彼女達はアニを間に座らせた。
「大丈夫なの?」
「はい…なんとか」
そこで彼女は疲れた様子で座ってから改めて安心して試合を見ると、そこで解説をしてくれる。
「現代魔法の強みは複数の魔法式を複合化させることで多種多様な攻撃ができることです」
「扱いやすいんだろう?」
「はい」
そこでコートを走って攻撃を避け、直後に水流が龍のように波打って発射されるコートを見る。
「今のレオくんのは古代魔法の水属性の攻撃ですね」
「前に港の倉庫でぶっ放したやつか?」
「そうですそうです。古代魔法は展開が遅い上に慣れが必要ですが、威力は現代魔法の二乗倍の威力はあると言われています」
ジャクソンの問いに彼女は大いに頷くと、ロバートが直後に魔法を展開して氷柱が。
「あれは現代魔法の冷却と水生成ですね」
「すげっ、あんな大きさを一瞬で作れるのか?」
そこで複数の氷柱が槍のように落下していくのが伺えると、その氷柱は直前にレオポルトのマチェテの一撫で全て粉砕された。
「今のは衝撃波を出す魔法ですね。先ほどの氷柱には、魔法がかかっていませんでしたのでこれでは回避不可能です」
「よく全部わかるわな」
「絶対解説席座った方がいいって」
その直後、レオポルトは飛び上がり、自分の身長の何倍もの高さまで飛翔する。
「あれは重力相殺魔法です」
そして空に上がって魔法陣から複数の火球が飛翔する。
「上からの火球!?あれはすごいですね、上から先ほどの氷柱以上に広範囲に降り注ぎますよ」
横で無数に火球がコートに着弾していくも、地上で障壁魔法を展開しながらロバートは細い線のように水を展開し、冷却し、釘状に変形してから上空に飛ばす。
「おっと」
その攻撃を避けると、直後に彼は魔法陣を展開して走って槍の攻撃を避けていく。
「あれを避けるのかよ!?」
「すげぇ」
「ねえどっちが優性なの?」
「分かんなーい」
この一連の試合を見て生徒達は困惑と興奮の間を行き来して見ていた。
「あ、いたいた。おーい、先輩方〜!」
すると後ろで爆発音や振動がスタジアムを襲う中、ドーラ達が手を振って座席に近寄った。
「前失礼してもいいですか?」
「いいわよ」
「おう、好きにしとけ」
そこでゾロゾロと三人が座ると、彼らは激戦の目の前の試合を見る。
「しっかし、流石に兄さんと主席の試合はすげえな」
「でしょうね」
ドーラはわかりきっていた様子で売店で購入したのであろう飲み物を飲んでいく。
「何買ったの?」
「林檎サイダー」
「えっ、美味しいやつやん」
「趙美味しい」
そこで見ていた他の二人もそれぞれポテトとナゲット、イカ焼きを買って祭りを楽しんでいた。
「まあ、少なくとも古代魔法において私は兄貴以上に上手い奴は見たことないですよ?」
「へえ」
「やっぱり上手なんだね」
アシュリアとアニが感心した様子で反応をするが、ドーラは内心で思っていた。
「(まあ帝国式の古代魔法全部知ってんだからそりゃ強いでしょうよ)」
直後、雷撃の着弾による地震のような振動がスタジアム全体を襲いかかる。
「ええ…」
「何この戦闘?」
「あーあー…」
そこですっかり燃え上がってしまったサッカーコートの上で行われている激戦に全員が引き気味に見ていた。
その激戦を間近で見ていたカール達、教師は爆笑していた。
「はっはっはっ、コイツはすげえ」
「ええ、面白いくらいに拮抗していますね」
ハーキュリーも感心した様子で
「やはり接近戦は禁止して正解でしたね」
「なぜだ?」
頬杖を突いてつまらなさそうにしているカールに対し、ハーキュリーは呆れた様子で短く嘆息する。
「こんな状況では、確実に怪我して帰ってきてしますよ」
「その方が場が映えると思うんだがなあ…」
「映えることが教育につながると思いますか?」
「でも授業中のやる気は増えると思うんだ」
「…」
それを聞いて、ハーキュリーはどうして教頭や校長がこの男に一瞬身構えていたのかがわかった。
「(なるほど、かつて不良生徒だったと言われるわけです)」
少なくとも息子が入学後の成績や生活を見て『鳶が鷹を産んだか!!?』と老練の教師達がざわついていたことを思い出す。
まあそれでなくともこの目の前で模擬戦を行っている二人が優秀であることは知っていた。
元々そういう家庭で生まれたというのが大きいだろうが、主席であるロバートは国内のデバイス生産のシェア一位を誇る企業のCEOを務めている男の息子。次席のレオポルトはこの隣に座る古代魔法研究の第一人者と名高い男の息子。
双方に幼少の頃から魔法について十分以上に学べる環境であったことは容易に想像ができた。正直羨ましい生まれであり、親の才能を子が惹きつくという父親冥利に尽きない素晴らしい成長をしていると思っていた。
「おおっ、あいつレーザー撃ちやがった」
ロバートの放った魔法で発煙して視界不良で、接近禁止のレーザーがチンダル現象で視界にも捉えられるようになった直後に眩い光線が貫通していく。
「流石は古代魔法。発動が遅いですが、威力は折り紙付きですね」
「代わりに連射と合成できる現代魔法だ。まあ、今のままじゃあ若干負けるかな」
魔法戦闘に限定した戦闘をさせているので、基本的に鍔迫り合いや取っ組み合いのような接近戦は望めない。しかしそれでも十分見応えのある絵ができているようにも見受けられた。
「っ!くそっ、やっぱ距離が遠いな!」
煙の蔓延する中、周囲の煙を手を振って退けて左右を警戒すると、直後に煙が晴れるように多量の水が流れていく。
「うおっと!」
その直後に煙の中を突き抜けて何かが向かうと、反射的に障壁魔法が展開されてその攻撃を弾き返す。
「っ!水の弾丸ね…」
すぐにその正体を理解すると、彼は軽くため息をつく。
「あのねえ、だからって距離取らせるのはすぐに終わらないんじゃないんですか、ねっ!」
直後、とんできた水の弾丸を簡単んいマチェテでは聞くと、風を展開して煙を反対に一気に押し込める。
「っ!」
そして双方のマチェテの先端に魔法を展開し、それを重ね合わせた。
「チッ、ホーミング機能ごと破壊したのか!!」
ロバートはそこで発射した水の弾丸が一瞬で破壊されたことに、爆発音一つなかったことに驚いていた。
「魔法式の瞬時の逆算?いや、相殺したか?」
直後、強い風が吹きつけて一気に視界の煙が濃くなる。
「チッ、来るか!」
咄嗟に攻撃が来ると判断して彼は雷撃魔法を展開する。一度古代魔法は放てば再発動に間ができ、その間に反撃を叩き込もうとした。
「えっ…」
しかし直後に彼は目の前に魔力の奔流を感じ取った。
「うっそ…」
彼は思わず驚いた言葉をつぶやいてしまうと、彼はその光に呑まれて護符に仕込まれた相殺魔法が発動して魔法は霧散した。
『そこまで!』
すぐにハーキュリーが布告すると、結界も解除されて煙が晴れていく。
『勝者、レオポルト・ウリヤノフ』
「「「おお…!!」」」
試合結果を受けて観客席に座っていた生徒達は驚きと歓声の声を漏らしていた。
「はぁ…」
そこで終わってマチェテを鞘にしまうと、レオポルトは軽く息をして無事な護符を取り出して魔法をかけると、指で弾いて護符が実況席に座っていたカールに吹っ飛んでいった。
「ふんっ、俺への当てつけか?」
指で摘んで自分の額に激突する勢いだった護符を回収してレオポルトを見つめた。
「お疲れさん、主席様」
「ふっ、なかなか余裕がありそうだね」
ロバートはそこで汗をかいている様子すら見せていないレオポルトにやや畏敬の目で見上げていた。
「昔は決闘をしても、王たる者は汗をかいてはならなかったそうです」
「そうなのか?」
「ええ、王たる存在、常に平静を装う必要があるとかいうくだらない理由があったんですよ」
そこで仁王立ちをしている彼の姿は、近くで見ていたロバートにはどこか貴族のような高貴な香りを感じ取っていた。
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