転生勇者と転生魔王の未来目録   作:Aa_おにぎり

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かつて二百年戦争を経て独立を行なったアルメリア合州国は、その新大陸での暮らしを旧大陸の国々から脅かされる日々を送っていた。

大陸を二分した超大国同士の戦争が集結し、その後の革命と分裂によって旧大陸は多数の国家に生まれ変わった。

 

その国家単位は民族や種族で大きく分けられ、そのことがナショナリズムの発芽となって多数の王国が生まれた。

多くの血が流れ、種族自決の意識はそれ以前の戦争による圧迫という影響も相まって日に日に強くなっていった。

 

古来より、魔法というのは一部の血筋を受けついた種族による特権的な代物であった。

現在、この世界には多くの種族が確認されている。それは発行されている種族大百科を見れば分かる通りだ。

その中でも魔法の扱い方に特に長けているとされる種族は主にエルフ族、コボルト族が著名である。

ただしオーガ族やドワーフ族のような魔法が種族全体で使えないという種族もいる。

 

鍛治、治金技術であればドワーフと呼ばれるように、この世界に住む住民にも特性というものがあったりしている。

その中で人間族というのは最も種族としての数が多く、なんでもできる器用貧乏な種族というのがここ最近の認識であった。

 

前世の頃、勇者の血筋が生きていた時代の人間というのは神にお目通しを受けた種族であるというふうに言われていた。少なくとも勇者シャターンはそのように幼き頃より教育を受けていた。

 

「大砲用意!!」

 

男性の大声が聞こえると、一斉に色とりどりの服を纏う兵士達はその手に模様の施された鉄球を持って砲口に持っていって中に転がしていく。その後、槊杖を使って砲弾が押し込まれる。

周囲では多くの同様の腹当てや陣笠を被る足軽や、派手な色合いの服を纏う戦列歩兵が長槍やマスケット銃を握って展開しており、瑞穂国の国旗と合州国の国旗を掲げていた。

 

Fire(撃て)!」

 

そこで合州国側の砲兵隊長が指示を出すと、一斉に砲撃が開始される。撃ったのは人間族で、大砲はドワーフ族が製作したカルバリン砲だ。

直後にさらに大きな砲声が白煙とともに発射される。オーガ砲とも言われた80ポンド(約36キロ)カノン砲の砲撃だ。

 

「流石にスゲェや」

 

その様子を見ていたレオポルトは思わずそんな感想を呟く。空砲とはいえ、砲撃陣地から噴き出す白煙は壮観な眺めだった。すると隣でマスケット銃を傾けていたドーラが呆れていた。

 

「そりゃそうでしょうよ。なにせ再現しているのは<第三次大陸遠征軍>よ?」

「五度あった大陸遠征の中でも一番でっかい戦いだもんな…」

「特に<ロス・エンジェルの戦い>はその後の<東方快進撃>のきっかけになったわけだしね」

 

そこで彼女は話すと、直後に瑞穂国から派遣された幕府軍の攻撃が始まる。

 

「構ぇえ!火蓋切れぇ!」

 

火縄銃を構えた鉄砲隊が隊列を組んで火縄銃を構えると、火皿を開けて準備を終える。

 

「放てぇえっ!」

 

そして瑞穂国から駆けつけたり、元々この地域に住んでいた瑞穂系住民が引き金を引いて一斉に火縄銃を放った。その銃弾は反対にいた色とりどりの戦列歩兵に向けられる。

 

今日行われているのはリエナクト。かつての戦争を再現したイベントで、さまざまな時代を再現して戦争の真似事をする問いことで昔から人気のある娯楽である。今回は映画撮影もかねたリエナクトで、数多く再現できるリエナクトの中でも特に人気にある<ロス・エンジェルの戦い>である。

 

今から三〇〇年ほど前、過去最大級の兵力を率いて大陸遠征を開始したフランク・アンサルド・ゲルマン・エスパーニャの四カ国同盟軍は、その圧倒的な兵力で当時の合州国軍を撃滅させると、あっという間に大陸を占領し、合州国軍は西方へ潰走した。

その後も敗走を重ねて西方のロス・エンジェル近郊まで逃げ込んだ合州国軍は、当時全国統一を成したばかりであった瑞穂国の幕府の増援を受けてこのロス・エンジェル近郊で大陸遠征軍約三二万名と対峙した。

その際、全国統一を成す前の戦国時代で多数の実践経験豊富であった幕府軍は、戦列歩兵を組んでいた四カ国同盟軍に対し精密な射撃が可能な火縄銃や大砲を用いてこれを撃滅したとされている。

 

「放てぇえっ!」

 

塹壕の中に隠れて、早合を用いて装填を行う。早合とは火薬・弾丸を細い竹などの筒状の容器に入れたものであり、後に紙製薬莢などに発展する代物であった。

 

「っ!!」

 

そこで密集陣形を組んでいた戦列歩兵はその攻撃で一斉に倒されていく。これも史実通りの動きである。

 

「防ぎ矢を放て!」

 

一発撃ってから弓兵の弓矢が放たれる。

戦列歩兵の密集陣形に対し塹壕を掘って待ち構えて撃滅し、次々と密集陣形を組んだ集団は瑞穂・合州国軍の前に倒れていく。

 

「礫を放て!」

 

そこで後方から布できた投石器を回して石を投げる仕草をする。するとその投石が接近してきた部隊に命中していく。

 

「騎馬隊を突撃させよ!」

 

直後に合州国軍の残存していた騎馬隊が森の中から飛び出し、側面から馬上筒を使って竜騎兵による攻撃が開始される。

 

「撃て!」

 

そこで砲兵の攻撃が行われ、直後に爆発が発生する。無論、これはあらかじめ地面に埋め込まれていた火薬の爆発だ。

しかし史実では、魔術師による砲撃で起爆した砲弾が敵を薙ぎ倒している。これは百年以上の戦乱の世であった瑞穂国が発明に成功した<巴玉>。後年の<魔術榴弾>である。

 

当時、爆発する砲弾に関する研究が行われていなかった四カ国同盟はこの起爆した砲弾の雨によって密集陣形を丸ごと吹き飛ばされた。

元来、大砲は攻城兵器として運用されることの多かった四カ国同盟のある極西国家は、この起爆する極東生まれの砲弾の洗礼を受けた。

 

砲撃を受け、困惑する将軍や将校、戸惑う兵士。

太鼓を鳴らし、バグパイプを吹き、隊列を組んで行進を行っていた彼らは一度の砲撃で無惨に引き裂かれていくのだ。

 

「て、撤退!撤退せよ!!」

 

そこでサーベルを振って退散させる将軍。そこに竜騎兵が突撃を仕掛けていく。

 

「進めぇえ!」

 

そして鉄砲を持った足軽が塹壕から梯子を使って一斉に飛び出していくと、竹束を備えた足軽も一斉に塹壕を出て走り始める。

当時、極東の瑞穂国はとある探検家の記した東方見聞録以外の情報がほぼなかったような時代。海を超えた遥か西の大地で彼らは極東の国の洗礼を受けたのだ。

 

「私たちの時って、こんな大量に銃火器なんて使ったことなかったわよね?」

「阿呆、あんときゃアーキバスの時代だ。まあ、帝城決戦の時に東の帝国からキャラバンが売り込みに来ていた」

「使ったの?」

「少なくとも俺は使った。あの時も一部の兵士に持たせていた」

「あ、そうなんだ」

 

そこでその当時を生きた者同士の奇妙な会話がなされていると、後ろで話しかけられる。

 

「ちょっと、何サボってんねん」

 

そこでは私服姿のヴァージニアが立っていた。彼女もエキストラの一人として参加しており、これから仕事が待っていた。

 

「いやぁ、俺の仕事終わったし。そろそろ良いって思ってたんだけど…」

「阿呆、焙烙火矢投げなさいよ」

「あれ、俺擲弾兵だったっけ?」

「違うわよ。擲弾兵役は私よ」

 

そんなことを言いながら鉄砲隊の発砲音や砲兵隊の砲撃を聞いていた。

 

「しかし、流石に派手ね」

「エキストラで出て正解だったろ?」

「そりゃあね」

 

そこでアルバイト感覚で参加した同級生達を見る。

 

「今回は特に国家予算も出るくらいだし、よっぽどだよな」

「ね、まさかこの時代になって国策映画作るとは思ってなかったけど…」

 

そんな事を話していると、撮影班の一人が声をかけた。

 

「そろそろこっちも動きまーす!」

 

その呼びかけで待機していた当時の合州国軍の制服である紺色の制服を纏っていた兵士役の生徒達は一斉に休憩状態から顔を上げる。

 

「じゃあ、気をつけてね」

「はぁ、今頃砲兵で苦労してるジャックが羨ましい…」

「それはそれでどうなのよ…」

 

学校の生徒の中でも種族ごとにエキストラは分けられており、今回の映画撮影に協力していた。

少なくとも今からレオポルトが参加する第12連隊は、当時は魔人で構成された連隊であった。

 

「よっしゃぁ…行きますか」

「頑張って〜」

 

そこで全くもって心のこもっていない応援をドーラからされて半眼気味に彼は歩く。

 

「しかし初手の合州国砲兵隊のミスって撃ったのもやるんだな」

「じゃなきゃ史実再現の意味ないでしょ?」

「そりゃそうだけど…」

 

そこで砲声と銃声が轟き、突撃を成功させたモノホンの役者達の演技が殺烈していると、当時の合州国の装備品であった<スプリングエリアM184>を持って移動を始める。

 

「すげぇ…」

「税金かかってるだけあるぜ」

 

その大規模な撮影状況を見ながら周りにいる同級生達も同じような感想を漏らす。

そして密集陣形を崩していく敵役の四カ国同盟軍を見る。

 

「レオ、頼むぜ」

「おう、任されてよ」

 

史実では、この連隊は潰走した敵部隊の追撃を担当したと言われている。

 

「構ぇえっ!」

 

そこで太鼓と音に合わせて全員が銃を持って行進を始めると、一斉にエキストラ達は小銃を持って横隊で前進を開始していく。

 

「撃てぇ!」

 

そして指示に合わせて引き金を引くと、そこですぐに全員のマスケット銃の銃口に魔法を展開させて本物の銃声に聞こえるように音を増幅させる。

元々安全上の問題で火薬の量は減らされており、撮影の際には部隊の中の一人が拡声魔法を使って音をおきくするように指示があり、この部隊はレオポルトがその役に選ばれていた。

 

「装填せよ!」

 

そこで指示を受けて火薬だけ入った早合を使って槊杖を使って奥に押し込み、燧発式の火打石を持ち上げて火薬を流していく。

 

「放てぇえっ!」

 

再度発砲を行うと、本物さながらの銃声が響いた。

 

「すげえ」

「映画できたらみんなで見ようぜ」

 

そんな事を言いながら彼らはカットと叫ばれるまで小銃を発射し続ける。

史実では、この後この地で瑞穂国の増援を受けた合州国軍は四カ国同盟軍の主力部隊を打ち破ったことで、その後半年でこの大陸から旧大陸の遠征軍を追い出したと言われている。




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