「うぅん……今、は……」
時計を見る。深夜二時。
なんとなく、また寝る気にはならなくて、起き上がる。
「なにか……ふぁ、あったかしら……」
立つ気力があるわけでもない。ごろーん、とベッドからずり落ちて。床下収納まで、ずりずりと這って行き、その戸を開き……
「……パックごはん、か」
ひとつ考える。『カトウのご飯』……レンチンパックごはんだ。
きゅるり、と腹が鳴る……今日はご飯も食べず、疲れすぎて寝てしまったのを思い出した。
料理をするほどの余力もなく、ゲヘナのコンビニはいつも通り略奪の憂き目に合っていたから夕飯を買えず。
やっとそこで、冷蔵庫の一番下に手をかけてずりずりと立ち上がって、1番上を開ける。
「なにかおかず…………思った以上になにもないわね……」
苦笑する。すっかり癖になった家での独り言にも、空っぽの冷蔵庫にも。
唯一あったものを、手元まで引きずり出した。
「バターチューブ、ね。これなら……」
ご飯を電子レンジに叩き込み、加熱を開始。その間に、鰹節のパックを取り出し、インスタントの玄武商会謹製たまごスープのフタを取り、お湯を入れる……ここで、箸すら割っていないことに気付いてしまった。
「……仕方ない、わよね」
割っていない箸で、ぐるんぐるんとかき回す。そのまま箸を引き上げて、惰性に身を任せてぐるぐる回り続けるスープの具をぼーっと眺める。
「あ、できた」
ちーん、と音が鳴った。電子レンジでの、ごはんの加熱が終わり、ほかほかのご飯が出来ているのを確認して、箸を割る。
「これを、こうして……」
ご飯を軽くかき混ぜて空気を含ませた後、バターチューブから米の上に直接バターを絞り出し、醤油をかけて……
「できた……!」
これは、バター醤油ごはん。深夜における禁忌。幸せそのもの。
「いただき、ます……!」
食す。勢いに任せて、かきこむ。一応パックには大盛りと書いてあったはずのごはんは、一気に1/3ほど減ってしまった。
「ここで、これね!」
顔が綻ぶ……鰹節のパックの口を切り、それを掛けて踊る鰹節を見るだけで幸せだったから。
でも、食べなきゃ幸せにはなれない。
「おいひぃ……あぁ、本当に、美味しいわね……」
カロリーというものを感じる。やはり、カロリー量とは美味さなのだ。私は改めてそう確信した……美味しい。悪魔的に。
「さいっこう……!」
ふと、思い立った。この美味は、この悪魔の誘惑は、共有すべきだと。
『先生、こんな時間にごめんなさい』2:23 既読
『どうしたの? ヒナ』2:23 既読
『とても美味しいご飯が出来たの(添付される食べかけのバター醤油ごはんの写真)』2:24 既読
『……大丈夫? 色々と』2:24 既読
『……? えぇ。私は大丈夫よ! まあ……その、それだけなのだけれど。明日はシャーレの当番だからもう寝るわ! ありがとう、明日はよろしく、先生』2:25 既読
『本当に、大丈夫……?』2:25
もう寝るわ! まで打ち込んで、スマホを閉じて枕元へ投げる。
そのままガッと、食事に幕引きを告げるために割り箸を忙しなく動かして、バター醤油ごはんを食べ、たまごスープを箸休めとして、ほう、と食べ尽くしたあとに幸せのため息をひとつ。
「……寝ないと……明日も、めんどくさぁい……」
ぱたりぱたり……どさっ。なんて音を共連れに、ベフラフラと歩んで、ベッドにうつ伏せに倒れ、瞳を閉じる。
あぁ、後片付けしてないな、と思う。でも、明日の朝でいいかな……なんて思ってる自分が確かにいる。なら、それでいいのだと自分に言い聞かせる必要もなく、私の意識は闇に落ちていった。
翌日、シャーレで会った先生にとても心配された。戻ったらチナツとアコとイオリにも心配された。なんでだろう……?
気分で更新するタイプの作品になります。
みなさんの要望があればそのうち続きが生えるとかそういう感じですね!
よろしくお願いします!!