IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン-   作:諸葛ナイト

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2つの白

 ユニコーンがアリーナのピットに着地。

 次々表示されるウィンドウを流し見した翼は辺りを見回す。

 

「一夏は……もう移動したか」

 

 専用機搬入の都合上、一夏はセシリアが出てきたピットから出撃することになっている。

 それなのに翼が出撃するまでこのピットにいたのはセシリアとの気まずさもあったが、純粋に彼を見送りたかったからというのは想像に難くない。

 

(たぶんまだ一夏のISは最適化処理(フィッティング)中のはず……。

 それが終わるまで軽く整備と補給を終えないと)

 

 そう考えていた翼に声がかけられる。

 

「翼! こっちだ!」

 

 声がした方向に視線をつけるとそこには手を振っている箒がいた。

 彼女の斜め後ろには展開中のISのエネルギー補給と整備が行えるハンガーが設置されている。

 

 翼はユニコーンの両足で歩きながら問いかけた。

 

「一夏の方に行かなくていいのか?」

 

「いや、私も行こうとしたんだが、一夏に『翼を労って欲しい』と言われてな。

 私もあいつと同じ気持ちだったから残ったんだ」

 

「なるほど」

 

 翼は答えながらユニコーンとハンガーを固定。そのままコンソールウィンドウを操作し始めた翼に箒は続ける。

 

「それと、伝言だ。

 『すっきりした。お前に勝てるように足掻いてみる』とのことだ」

 

 それを聞いて翼は笑みをこぼして開いていたコンソールを閉じた。

 少し調整し直さなければならない箇所はあるが損傷レベルはそこまで高くない。

 その辺りの調整を行なっている間にエネルギーの補給は終わるだろう。

 

(よかった。あとの作業は1人でも十分だな)

 

 それを確認してユニコーンから降りた翼は箒に言う。

 

「箒は一夏の方に行ってくれ」

 

「え? いや、しかし整備の方はどうする。

 少しくらいなら私も手伝えるはずだ」

 

「こっちは1人で大丈夫だ。

 それよりも一夏の心配をしてやれ。もしかしたら緊張でガチガチになってるかもしれないからな」

 

 冗談混じりの言葉に箒は食い下がろうと言葉を発しようとしたがそれを封じるように翼が続ける。

 

「それに誰かからの応援っていうのは心強いもんだ。

 あいつの友達としての頼みだ。支えてやってほしい」

 

「……わかった。では、また後で」

 

「ああ、またな」

 

 箒は渋々といった様子で翼があるピットから出ていった。

 彼女が去った扉を見て肩の力を抜いた彼はハンガーに固定されたユニコーンへと向かって整備を始める。

 

 それから約15分。

 純白の一角獣は再びカタパルトでピットから射出された。

 

◇◇◇

 

 翼は再びアリーナのグラウンドの上空にいた。

 目の前にいるのは純白のIS【白式】を纏う一夏だ。

 滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的なそれの右手には1本のブレードを装備している。

 

「それ、雪片か?」

 

「ああ、正確には雪片弐型っていうらしいけど」

 

 雪片。

 それはかつて織斑 千冬が駆っていたIS【暮桜】の唯一にして最強の武装。

 自身のシールドエネルギーを消費して強力な攻撃を行う能力を持っており、直撃すれば最低でも7割近いエネルギー減らされるだろう。

 

 白式が持っているものは名前からしてそれの発展型。持っている能力も同じと考えていい。

 

(近接戦闘はやめた方がいい。でも、ビームマグナムやバルカンだけでどうにかなるとも思えない。

 ビームブーメランで牽制しつつ距離を詰めて俺のペースに乗せる)

 

 頭の中で戦闘プランを考えていると一夏が雪片弐型を構えながら言う。

 

「セシリアに謝られた。国を、俺を侮辱してすまないって」

 

「そうか。お前はそれを許したのか?」

 

「当たり前だろ? あんな丁寧な謝られ方したらさ」

 

 翼が再び「そうか」と言ったのを聞いて一夏は続ける。

 

「最初は……いや、今でもこれからどうなるんだって思ってるけどさ。

 なんとなく俺はここでやっていけるような気がしてきた。お前のおかげだ。翼」

 

「ああ、俺もだよ。一夏」

 

 言いながらユニコーンはビームマグナムを背中に装備、左スカートアーマーからビームブーメランを取り出し、それをブレードモードにさせ刃を展開させた。

 

「いくぞ、一夏」

 

「ああ! 来い!」

 

 2つの白が互いの得物を振る。

 雪片弐型とビーム刃がぶつかり合う音がアリーナに響き、衝撃波が広がった。

 

 2機は鍔迫り合いを数秒続けるとどちらが言うでもなく少し間合いを開けた。

 そして数瞬、相手の出方を窺っていたかと思うとほぼ同時のタイミングで前進、再び武器を重ねる。

 

 翼は真剣な様子で雪片弐型を払う一夏の顔を見た。

 

(ISの基本動作は出来てそうだな。

 よし、これならもう少し動き回ってもいいな)

 

 訓練をしている気になっている翼に対して一夏はピットでの会話を思い出す。

 

◇◇◇

 

 セシリアからの謝罪を受けてそれを許し、白式の最適化処理を行なっていた時、セシリアが切り出した。

 

「一夏さん、アドバイスというかわたくしが翼さんと戦った際の感想、聞きますか?」

 

 翼に勝てるとは思っていない。

 しかしそれでも善戦はしたい。そう思っていた一夏は二つ返事で頷いた。

 

「ッ! ああ、ぜひ聞かせてくれ!」

 

 食い気味の一夏に少し驚いて目を見開いたセシリアは数度瞬きをすると「では」と挟んで語りだした。

 

「翼さんにはおそらく苦手な距離はありませんわ」

 

「ふむふむ……?

 えっと、つまり?」

 

「一夏さんの得意な距離で戦うことをお勧めしますわ。

 そしてその距離に翼さんを捉えたらそれを維持し続けること。下手に離れるとペースを握られますわ。

 おそらく今の一夏さんは一度翼さんにペースを握られると一生抜け出せませんから」

 

「なるほどな……ようは攻撃を続けて翼に行動させないようにすればいいのか」

 

「まぁ、簡単に行ってしまえばそうですわね」

 

 頷いたセシリアの顔には苦笑いが浮かんでいる。

 その理由は一夏自身も強く感じていた。

 

「……無理じゃないか?」

 

 翼とセシリアの戦闘を見れば2人の操縦技術が高いことは嫌と言うほどにわかった。

 それを繰り広げていたものにズブの素人が距離を一定に保ちつつ、攻撃させる隙を与えないという芸当などできるわけがない。

 

「無理でもそれを押し通して、いや、押し通そうとしてこその男だ」

 

 唐突に会話に入ってきたのはいつの間にかピットに入ってきていた箒だった。

 彼女の顔を見て驚いた様子の一夏は問いかける。

 

「あれ? 箒、もう来たのか?」

 

「ああ、翼に行けと言われてな。

 安心しろ。伝言は伝えた」

 

 それに安心したような表情を浮かべた一夏はピットの出口を見つめた。

 

(無理でも押し通せ、か……たしかに、無理だからって諦めてたらどうにもならないもんな)

 

 一夏は息を吐くと小さく呟いた。

 

「頼むぜ、白式!」

 

 それに答えるように白式は最適化処理を終え、一夏の専用ISとなった。

 

◇◇◇

 

 一夏は雪片弐型を持つ両手に力を込める。

 

(距離を離さないように! 詰めて、攻撃!)

 

 力技で翼を押し込んだ一夏は距離を即座に詰めて雪片弐型を振る。

 縦に、横に、斜めに振り下ろし、斜めに、横に、縦に切り上げた。

 

 ISを動かした経験はほとんどない。

 しかし、距離の詰め方と武器の振るい方はわかる。

 箒から特に叩き込まれていたそれが今、遺憾なく発揮されていた。

 

 対する翼は迫り来る刃をビームブレードで受け、シールドで防ぐ。

 

(なるほど。俺に攻撃の隙を与えないわけか……だが!)

 

 一夏が雪片弐型を真上に構えた隙を逃さず、翼はシールドバッシュを繰り出した。

 

「くッ!?」

 

 その衝撃で一夏はバランスを崩しつつ後ろに下がる。

 それと同じタイミングで翼も大きく後退した。

 

 一夏は焦りを浮かべて開いた距離を詰めようとしたが、それを邪魔するようにビームブーメランが投擲される。

 それを雪片弐型で弾き落としたところで急接近していた翼が左腕からシールドを外して一夏に叩きつけた。

 

 吹き飛ばされる一夏へと右スカートアーマーからビームブーメランを左手に取り出し、ブレードモードでビーム刃を展開。ブースターを吹かせ、一夏に近付いて切りつける。

 

「ッ! まだ!」

 

 直撃を受けた一夏はその距離を維持するように近付いて雪片弐型を横に薙いだ。

 しかしそれは右手に雑に持たれていたシールドによって防がれ、実体剣とシールドがぶつかり合う金属音が辺りに響く。

 

 シールドは攻撃の勢いを全て吸収できていないが、一瞬でも大きな隙を作ることはできた。

 一夏が敗北を悟るのと同時、翼が持っていたビームブレードが振るわれる。

 

 直撃したそれはただでさえバリア無効化攻撃をしていたことで減っていた白式のシールドエネルギーを完全に削り飛ばした。

 

 瞬間、アリーナにブザーが鳴り響き、翼の勝利を告げるアナウンスが流れた。

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