IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン- 作:諸葛ナイト
クラス代表決定戦が終わった夕方。
翼、一夏、箒、そしてセシリアの4人は翼の部屋に集まっていた。
翼とセシリアが椅子に、彼らに向かう合うように一夏と箒がそれぞれベッドに座っている。
それぞれの飲み物とお菓子が広げられている簡易的な円テーブルを中心とした話は翼が切り出した。
「さて、じゃあちょうどいい機会だし反省会といこう」
「反省会って言っても何をどう反省すればいいのか……」
腕を組みつつ首を傾ける一夏。
そんな彼に箒が今日の戦闘を思い出しつつ言う。
「まぁ、一夏に関しては全てだろうな」
「それはそうですわね。翼さんと比べて何もかも足りない印象は得られましたわ」
箒に加えてセシリアから出された辛辣な言葉に一夏は心を軽く抉られた。
彼をフォローする気も少しあった翼は正直な感想を伝える。
「そうか? 最初にしては良く動けてた方じゃないか?
白式は来たし、訓練はこれから始まるしな。今焦るほどじゃないと思うけど」
「つ、翼……! やっぱり持つべきものは同性の友達だな!」
目を輝かせた一夏を見たセシリアは翼へと少しジト目で責めるように言う。
「翼さんは一夏さんに対して少し甘いようですわね?」
「んー、そうか?」
翼は言葉と視線で箒に問いかけたが彼女はすぐさま首を縦に振った。
彼女としては一夏を悪いように扱っていない辺りから強く言い出せないだけで一夏を取られているような、ちょっとした嫉妬心のようなものはある。
そんな彼女の視線から逃れるように翼は苦笑を浮かべてセシリアへと逃げた。
「せ、セシリアは今回の戦闘どうだった? なにか反省点とか疑問とかそういうのあるか?」
「私は……そうですわね。反省としては概ね翼さんに指摘されたとおりですわね。あとは立ち回りもいくつか……」
セシリアは今回の戦闘を思い出していたが、そこで疑問に行き着いて翼に問いかける。
「そういえば翼さんのIS、ユニコーンはなぜ
それと途中で機体が変身? したようですけどあれは一体なんでしょう」
その質問を受けて翼はどういう順番で話すか思案を始めたが、すぐにまとめて問いを一夏に投げかける。
「一夏、問題だ。
ISは基本的には部分的にしか装甲を形成しないが、その理由はわかるか?」
質問を受けて一夏は頭の中にある知識を探り始めた。
その内容が直近の授業であった範囲だったため、答えはすぐに出せた。
「必要ないから、だろ?
防御は基本、シールドエネルギーでしてるから見た目の装甲はいらないし、そもそもあっても整備とか可動範囲に制限がかかる場合が多いんだ」
「正解だ。ちゃんと授業聞いてたな。
そう、基本的に全身装甲に利点はない。それでもユニコーンがそうなっているのには理由がある。
あの機体の能力
翼が言った瞬間、場が静まり返ってしんとした空気が部屋に広がった。
特に大きな疑問符を浮かべた一夏は箒とセシリアの顔を交互に見ながら問いかける。
「なぁ、翼がなに言ってるのか全然理解できなかったんだけど2人はわかるのか?」
「いいや……最初のSシステムがなんらかの能力、ということはわかったが」
「ええ、A.E.Bには聞き覚えがありませんわね」
3人の視線が翼に向けられると彼は頷いて説明を始めた。
「A.E.Bは平たくいうと万能な特殊装甲だ。
ユニコーンの白い外装の下、というより骨格フレームは全部それで構成されてる。まぁ、試作品だから機動力とか反応速度、防御力の上昇が限界なんだけど」
「完成品はどんな感じのやつになるんだ?」
一夏から出た素朴な疑問を受けた翼はチラッとセシリアを見た。
その視線に気がついたセシリアが小首を傾げるのと同時、翼が答える。
「たぶん攻撃能力を持つようになる。ブレードとかの展開から射撃兵装としても扱えるようになるんだ。
今は空論だが、即時万能対応機ってやつだな」
それを聞いたセシリアは反射的に勢いよく立ち上がった。
彼女の表情には強い動揺が表れており、それは彼女の声にも表れている。
「それってつまり第4世代ISってことではありませんか!」
「そう、父さんたちはいろんな国や機関が第3世代IS開発にまごついている間にそれを作ってる。
っていってもユニコーンは第4世代としてじゃなくてSシステムのために使ってるだけなんだけど」
2つのISコアの処理パターンなどのプログラム的に既に共有されているような部分はもちろん、波長シグナルや特性、クセなどの固有部分含めほぼ全ての機能を同調させるシステムである。
完全に同調したコア出力は通常ISの4倍を超えるほどのものになる。
しかしシステムには問題があった。
発生する余剰エネルギーが機体内で循環すると機体がその負荷に耐えきれずに破損するだけでなく、搭乗者もその余波を受けるのだ。
その事態を避けるために搭載されたのがA.E.Bである。
超常的な量のエネルギーを全身につけたA.E.Bから常に放出、消費することで余剰エネルギーの問題を無理やり解決している。
翼の語った内容を理解できたのはセシリアだけだ。
「なるほど……さすがはISコア開発者、普通ではまず実現できない機体を作り出しましたわね」
「俺もそう思うよ。ISコアのブラックボックス部分を知っていなきゃたぶん作れない。
正直どう実装しているのかまるで見当が付かないし」
「ですが、4倍というのは本当ですの?
私の体感では2倍と少し程度に感じましたけど」
「コアの同調が上手くいってなくてシステムの稼働率が低いんだよ。
今日使った時も25%前後をうろうろしてたし、そのせいで稼働時間も短い。完成はいつになるのか……そもそも完成するのかすらわからん」
「でも、言い換えれば未完成の状態でも普通のISの2倍ぐらいの性能になるんだろ?
十分すごくないか?」
一夏の感想に翼は「そうだな」と挟んで返す。
「一夏の白式もかなり特異な機体だぞ?
ちょっとデータ見たけど
雪片弐型ぐらいしかまともに使えない完全近接戦闘仕様の機体だ。
まぁかわりにすでに
「うーん。それって実際のところどうなんだ? 強いのか?」
「強いぞ」
翼は一夏の疑問に即答した。
それも励ますようなものでも取り繕うようなものでもない。心の底から出ている言葉だ。
彼はその口調のままそれを伝える。
「この機体構成は千冬さんの暮桜とまったく同じだ。
雪片は当たれば一撃で大ダメージを与えられる最強の矛。扱うやつが機体の性能をきちんと把握して動かせればどのISよりも強い」
「そ、そうなのか……なんかそれ聞いて安心したよ」
「そう気楽に言えるか?
負けるのは機体性能のせいにできないってことだぞ?」
「なら、なおさら気楽に言える。俺が強くなればいいだけの話だからな」
「言いますわね」
その言葉をセシリアは聞き逃さなかった。
彼女は同じ専用機持ちのIS操縦者として一夏の言葉をある種の挑戦状と受け取ったのだ。
彼女の言葉の受け取り方、認識が間違ってないことを示すように一夏は頷く。
「ああ、今日は翼に負けた。たぶん今セシリアと戦ってもいいようにされるだけだ。
でもいつか2人に勝てるぐらいには強くなってやる」
「ははっ、そりゃ楽しみだな。
俺も追いつかれないように頑張るとするよ」
翼はにこやかな笑みを浮かべてセシリアと同じように一夏の挑戦状を受け取った。