IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン-   作:諸葛ナイト

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一角獣と双璧

 ISの整備係の女子生徒たちと逃げていた簪はその足を止めた。

 1人の女子生徒がそれに気がついて振り向く。

 

「ど、どうしたの? 更識さん」

 

「……み、みんなは先に行って。私は翼を助ける」

 

「む、無茶だよ! 岸原くんも逃げろって言ってたじゃない!」

 

「そうだよ! あんな声を荒げてる岸原くん見たことなかった。

 たぶん私たちが考えてるよりもずっとまずいんだよ」

 

「でも、私は──」

 

「いや、お前たちは早く逃げろ」

 

 彼女たちの会話に割って入ってきたのは織斑 千冬だった。

 表情はいつも見る冷たく鋭い目付きだったが、纏う雰囲気があまりにも違う。

 

 死地に赴く武士。

 実際に彼女たちはそんな存在を見たことがなかったが今の千冬を例える言葉はそれしかなかった。

 千冬の放つそれに全員が目を見開き、口を紡ぐ中で彼女は続ける。

 

「更識妹」

 

「は、はい!」

 

「ピットにある打鉄にブレードはあるな?」

 

「は、はい……基本的な装備は全てあります」

 

「ならいい」

 

 千冬はそれ以上の詳しい情報を彼女たちに伝えることなくその場から走り去った。

 向かうのは簪たちが出てきたピットだろうことは彼女の走る方向と聞いてきた内容から大まかに察せられるがすぐに別の疑問、不安が浮かぶ。

 

 あの織斑 千冬が戦うことを想定した相手が今アリーナにいる。

 

 事態がまったく好転していない。それどころか悪い方向に進んでいることを理解した簪は千冬の後を追うようにピットへと走り出した。

 

(翼……!)

 

 彼女を止める生徒たちの声はもう簪の耳に届いていなかった。

 

◇◇◇

 

 上半身だけになった侵入者によってピットに押し込まれたユニコーンがそこから勢いよく飛び出してきたかと思えばアリーナのグラウンドで侵入者の胸部に手刀を突っ込んでいた。

 

 アリーナのグラウンド、その中央に立つユニコーンは突き刺していた手刀をゆっくりと引き抜く。

 侵入者は重力に従って地面に落ちた。

 

「「「……」」」

 

 今度こそ終わった、はずだ。

 現に侵入者はもはや鉄屑と言ってもいいほどの有様になって地面に転がっている。

 

(なんだ……この感覚)

 

(終わった、はずなのに……)

 

(なんで力が抜けないの?)

 

 本能が警戒をし続けている。臨戦態勢を崩すなと訴えている。

 目の前のそれ、友人のISであるユニコーンを“敵”と判断していた。

 

 瞬間、非活性状態で灰色になっていたユニコーンのA.E.Bが赤く光り始めた。それは次第に色を青に変え、緑に変わり、そして金色に一瞬で変わった。

 

 まずい、そう一夏が思ったのと同時腹部に衝撃が走り後ろに吹き飛ばされた。

 

「一夏さん!」

 

「ッ! 翼、あんた何やって──」

 

 声をかけた鈴音へとユニコーンはグンッという勢いで頭を向けるとブースターを噴かせた。

 一息に近付いたユニコーンは膝蹴りを繰り出した。

 

 ──ガンッ!!

 

 瞬間加速並みの速度が乗ったその一撃を鈴音は双天牙月で受け止める。

 

「ッ!?」

 

 たしかに反射的に出た動きで完璧ではなかったことは自覚している。

 不完全な防御で衝撃が殺し切れないのも理解できるが、それでもあまりにも重すぎる一撃に鈴音は歯を食いしばった。

 

(な、に……? これ)

 

 双天牙月を蹴り飛ばして高く飛び上がったユニコーンはそのまま1回転、右足を突き出して鈴音へと急降下。

 向かってくるその一撃を一瞬受け止めようとしたがすぐに体はそれを拒否。勢いよく後ろに下がった。

 すんでのところで鈴音を捉えられなかった強烈なキックは地面に突き刺さり大きなクレーターを作り上げた。

 

「凰さん! 下がってください!」

 

「ッ、ダメ! 今攻撃したら──」

 

 鈴音の静止を聞かずセシリアの狙撃がユニコーンに飛ぶ。

 ユニコーンはそれを回避することもなく左手を突き出して受け止めた。

 

「なっ!? まさか、AB(アンチ・バリア)フィールド?」

 

「いや違う。純粋なバリアフィールドよ。

 通常の数十倍の強度で展開してるだけのね……!」

 

「まさか!? ありえません! バリアフィールドを自在に操れるなんて」

 

 ユニコーンが右手のひらをセシリアに向ける。

 その手のひらの中央が一瞬光った。かと思えばブルー・ティアーズの左アンロックユニットが何かに撃ち抜かれた。

 

「なっ、に……が、きゃっ!」

 

 左アンロックユニットが爆発、その爆風に飛ばされたセシリアは態勢を立て直した。

 

(まさか、バリアフィールドを攻撃に転用した!? なんの装置もなしに)

 

 セシリアがビットを飛ばすのに合わせて一夏と鈴音がスラスターを吹かせた。

 状況はわからない。だが彼らの中には確信がある。

 

(早くユニコーンを止めないと──)

 

(翼さんが──)

 

(まずい!)

 

 左右それぞれそして斜め上から攻撃が向けられる。

 ビットの攻撃を身を逸らすことで交わしたユニコーンは鈴音に蹴りを繰り出した。

 

「くっ!」

 

 鈴音は向けられた足を双天牙月で受け止めた。

 自分の攻撃は受け止められたがかわりに一夏の攻撃は確実にユニコーンを捉えられるだろう。

 しかしすぐに自身の見込みが甘かったことを知る。

 

 ユニコーンの足裏にあるクローが双天牙月を掴むと鈴音の手から奪い取った。

 足裏のクローで掴み取った双天牙月を軽く放り上げ、右手で掴むと一夏が振った雪片を受け止めた。

 

「ッ! まだだ!」

 

 一夏は雪片を縦に、横に、左右に斜めにと振るうがその全てがユニコーンが持つ双天牙月に弾かれ、防がれている。

 本来の装備ではないはずなのにもかかわらずユニコーンはまるで自分の武器のように使いこなしていた。

 

「生意気ね。それは私のよ!」

 

 鈴音が残ったもう1本の双天牙月を振り下ろした。

 一夏と比べて速さには劣るがそれでも鋭く重い一撃は容赦なくそれを振り回す。

 鈴音が振り下ろした双天牙月はユニコーンに弾かれ、弾かれた反動を生かして振り直したそれを後ろに下がってかわしたユニコーンに一夏が雪片を振り下ろした。

 

 それをビームトンファーで受け止め、開いた腹に双天牙月を叩き込んで吹き飛ばす。

 さらに追撃に向かおうとしたところで鈴音が龍砲を放った。

 

 それを飛び上がり回避、体を捻って着地と同時に双天牙月をブーメランのように鈴音に投げ飛ばした。

 向かってきたそれを叩き落とした鈴音へとユニコーンの踵が落とされる。

 

 その一撃をもろに受けた鈴音は地面に叩きつけられた。

 うつ伏せになった鈴音の背中にユニコーンの足が落とされ、足裏のクローが彼女を掴み、地面に押し付ける。

 

「ッ! 女を踏みつけるなんて……最低、ね! ッ!?」

 

 ユニコーンは鈴音を足裏のクローで掴んだまま軽く上げるとそのまままた地面に押しつけた。

 一度、二度、三度。金属が地面に叩きつけるガギン、ともガツンとも取れる音が響く。

 

(まずい、もうエネルギーが、龍砲が撃てない……!)

 

 歯噛みする鈴音を助けるためにセシリアがブレードを展開してスラスターを吹かせた。

 

 セシリアが突き出したブレードをユニコーンは右手のひらで受け止めた。

 シールドエネルギーを手のひらにピンポイントで集中展開することで生まれた不可視の壁。それを10層も重ねたものをただのブレードが貫けるはずもなく、彼女の体はピタリと止まる。

 

「ッ!?」

 

「セシリア、離れろ!」

 

 一夏の声が響くと同時、ユニコーンはセシリアのブレードを左手で掴み砕いた。

 歯噛みしつつ下がろうとしたセシリアの腕を掴んだユニコーンはそのまま一夏の方へと振り飛ばす。

 飛んできたそれを受け止めた一夏は衝撃で地面を滑った。

 

 まだ体勢を立て直せていない2人にユニコーンは右手のひらを向ける。

 

「「「ッ!!?」」」

 

 その中央が光り、放たれる。その直前、ユニコーンは鈴音から足を離して大きく下がった。

 直後にユニコーンがいた場所をブレードが切り裂く。

 

 彼らの窮地を救ったのは織斑 千冬だった。いつも着ているスーツの上から打鉄を纏ってこの戦場に割り込んできたのだ。

 そのあまりの事態に一夏たちは言葉を無くす。

 彼女がこの行動に出た理由、出なければならないほどの事態だと彼らはようやく実感できたのだ。

 

「千冬姉……」

 

 ユニコーンに対してブレードを振り下ろした千冬は鋭い目を向けたまま一夏たちに言葉を投げる。

 

「お前たちは下がれ。どうせもう戦うだけのエネルギーはないだろう」

 

「で、でもそれじゃ千冬姉が1人に!」

 

「問題ない。あいつを閉じ込めるためにアリーナの警戒レベルは落とせんが、生徒会長を呼んでいる」

 

「生徒会長……?」

 

 疑問符を浮かべる一夏に鈴音がありえない物でも見るかのように目を見開いて声を上げた。

 

「あんた知らないの!? 生徒会長って言えばあの更識 楯無よ!?

 このIS学園で最強って謳われるほどの実力者!」

 

「ま、待ってください!

 それはつまり、織斑先生と更識生徒会長でなければどうにもできない相手、ということなのですか!?」

 

 セシリアの言葉に千冬は頷いて答える。

 

「ああ、やつは強い。少なくとも奴と1対1でやりあって勝てる奴はこの世界にはいない」

 

 あの織斑 千冬が断言した。

 ISの戦闘に関して公式戦無敗、地上最強(ブリュンヒルデ)の異名すら持つ彼女がそれでもなお「勝てない」と言い切っている。

 それに最も大きな動揺を表したのは一夏だった。

 

「な、なんだよそれ! 千冬姉が勝てないって……」

 

「あれはそういうものだ。

 世界にある“全てのIS”に対するカウンター。それがユニコーン、いやSシステムだ。

 まぁしかし今は未完成でしかも暴走状態。まだやりようはある」

 

「お待たせしました。織斑先生!」

 

 そう言葉を投げかけつつ近づいて来たのはISミステリアス・レイディを纏う更識 楯無だ。

 水色をメインカラーとISにしても装甲が少ないそれを纏う彼女の顔は千冬同様に真剣なものだったが一夏たちに言葉を向ける直前にそれを柔らかくさせる。

 

「大丈夫、とは言い切れないけどみんな今は逃げなさい」

 

「ッ! で、でも!」

 

「一夏! ……やめなさい」

 

 食い下がろうとした一夏の手を鈴音が取って止めた。

 縋るように彼はセシリアの方を見たが彼女もまた悔しげな顔で首を横に振った。

 

「一夏さん。今の私たちにユニコーンを止める術は、ありません」

 

「くっ……!」

 

 一夏が歯を食いしばって拳を作った。

 今のユニコーンは明らかに正常ではない。その中の搭乗者もまたまともな状態でないのも明らかだ。

 大切な友人が危機に瀕している。目の前で苦しんでいる。

 

 世界最強と信じて疑っていない姉が「勝てない」と言いい、IS学園最強と謳われる生徒会長にも表情に余裕がない。

 

 だからわかる。自分に今できることはない。

 友人を助けることができない。

 

 一夏の心境はわかりやすくその表情に出ていた。

 だから楯無は優しく微笑んだ。

 

「悔しいでしょうけど岸原くんもあなたたちが自分のせいで怪我をしたって知ったらすごく悲しむと思うわ。

 彼を想うのなら今は引きなさい」

 

「……ッ、はい」

 

 一夏が唇を噛み締めながら頷いたのとほぼ同時、千冬が声を張り上げる。

 

「更識、来るぞ!」

 

 鈴音から奪った双天牙月を持ったユニコーンは一直線に千冬に向かっては振り下ろした。

 それを千冬はブレードで受け止めた瞬間、衝撃が辺りに広がる。

 

(重い。性能ではない、ISコアの差はこれほどの……!)

 

 千冬は打鉄のスラスターを吹かせてユニコーンを押し返して双天牙月を左足で蹴り上げると続けて右足で蹴り飛ばして大きく距離を取った。

 よろけるユニコーンへと千冬は一息に近付いてブレードを振り下ろす。

 

 千冬が振る攻撃速度は異常と言うしかなかった。

 現に千冬が持つブレードとユニコーンが持つ双天牙月がぶつかる音はほぼ2つ同時に響いていた。

 出力の差は圧倒的に劣っているはずの打鉄だが、それでも連続で全く同じ場所を正確に攻撃することでユニコーンをわずかだが押していた。

 

「すごい……」

 

 セシリアがポツリと溢す中でも千冬は攻撃の手を一切緩めない。

 二撃入れればユニコーンを押すことができるのはわかった。あと一撃、あと一撃繰り出すことができればユニコーンにダメージを与えることができるはずだ。

 

 だができない。

 

(くっ、量産型ではここが限界か……)

 

 一夏たちと比べれば戦えているがそれでもあと一撃を入れるには打鉄はあまりにも鈍く、重く、遅い。

 

 目にも止まらぬ速さで放たれた二撃目が双天牙月で受け止められた。

 千冬がブレードを引こうとしたところでユニコーンは双天牙月を捨てその手を彼女が持つブレードに伸ばして掴む。

 

「チッ!」

 

 舌打ちと共に千冬がブレードを手放した瞬間、ユニコーンは掴んだそれを握り砕いた。

 ユニコーンが武器を失った千冬へと迫ろうとしたが楯無の文字通りの横槍が入る。

 

「織斑先生、さすがにその動きには合わせられませんよ」

 

「合わせろ」

 

「ッ、可能な限り!」

 

 千冬は新たなブレードを展開、楯無は大型ランス蒼流旋(そうりゅうせん)を構えた。

 

 1体の一角獣とIS学園の双璧の戦いは加速する。

 居並ぶ千冬と楯無を見たユニコーンは両腰からビームブーメランを取り出し、ブレードモードで刃を展開した。

 そして腰をグッと落とすと地面を蹴り飛ばし、楯無へと向かう。

 ブースターは火を噴いていないが彼女に一瞬で近付くにはA.E.Bが生む推力だけで十分だ。

 

 ユニコーンは楯無の目前まで来ると右手に持つブレードを振り下ろす。

 対する楯無はそれを難なく蒼流旋(そうりゅうせん)で弾き、さらに続けて振られた一撃は受け止めた。

 彼女の防御は万全だった。しかしそれでも体はわずかに沈み込む。

 

「ッ!?」

 

「更識! そいつの攻撃をまともに受け止めるな!」

 

 言いながら千冬が2機の間に割って入るようにブレードを振り下ろしながら落下。

 ユニコーンは大きく後退してかわすと左手のビームブーメランを投擲した。

 

 向かってくるそれを千冬が弾くのと同時、ユニコーンは足裏のクローを展開して地面を掴んで後ろに向かっていた体を急停止、前傾するや否や瞬間加速(イグニッションブースト)で距離を詰める。

 

 もはや突進と言っていい勢いのそれを千冬は左に、楯無は右に移動することで回避。

 だが、千冬の回避は完璧ではなく、ユニコーンが通り抜ける時に振り抜いたビームブレードに切りつけられた。

 

「ッ!」

 

 2人の横を通り抜けたユニコーンは地面に右足をつけると足裏のクローを展開して地面を掴む。

 一瞬で速度を殺したそれは展開していたクローを収納、そのまま蹴り飛ばしてぐるんと体を捻ることで千冬と楯無を再び正面に捉えた。

 

「早い!」

 

 楯無が目を見開くのと同時、ユニコーンは左足で着地と同時にその足で地面を蹴った。

 向かう先は千冬。彼女との距離を詰めると右手に持つビームブレードを振り下ろす。

 

 千冬はブレードを巧みに動かすことで振るわれたビームブレードを受け流した。

 そんな彼女へとさらに攻撃を繰り出そうとしたユニコーンへと楯無は蛇腹剣、ラスティー・ネイルを振り防御行動を取らせることで防ぐ。

 ユニコーンがビームトンファーでラスティー・ネイルを受け止めている間に千冬は後退。そんな彼女と入れ替わるように距離を詰めた楯無は蒼流旋を突き出した。

 

 繰り出したその一撃はユニコーンはビームブレードで弾かれたが、その反動を生かして楯無は後退。蒼流旋を構え直す。

 

(強い。教範的な手堅い動きじゃない、膨大な出力とそれに頼った変則的な動き。

 なるほどね。これはちょーっと手強いかも)

 

 千冬はブレードを両手で握り直して歯を食いしばる。

 

(あれが、翼の本当の動き、か……)

 

 翼の実力はすでに各国の代表候補生と比類、わずかに優れていると言えるがまだ戦闘経験が足りないゆえの危うさがある。

 それは単純に彼はまだ自分の行動に自信を持てないからだ。

 

 自分が動いた場合の相手の動き、わざと隙を見せた時に相手が乗ってくるかどうか。

 思考ばかりが先行しているせいで動き迷いが生まれてぎこちなさが残っている。

 しかし、今のユニコーンは翼が持っていたそのためらいが消え去った状態。本来の翼が想定した動きに最も近いものと言える。

 

「織斑先生。ミストルテインの槍を使います。

 少しの間ユニコーンの動きを止めていただけますか?」

 

「……やめておけ。不確定要素が多過ぎる」

 

「ですが! これ以上長引けば私たちがすり潰されます!」

 

「ああ、だろうな。だがその場合、先に潰れるのはユニコーンの方だ」

 

 千冬が言わんとしていることを察した楯無は目を見開いて信じられないものを見るかのように彼女の顔を見た。

 

「なっ、ん。織斑先生は、彼を見捨てるつもりなんですか?」

 

「いくら男性操縦者とはいえ1人と1,000人。そしてその1,000人は複数の国家、企業、研究機関が絡んでいる要人だ。どちらを取らなければならないのか、お前もわからんわけではないだろう」

 

「……くっ!」

 

 楯無は千冬になにも言い返すことはなくただ歯を食いしばって蒼流旋を構えた。

 そのタイミングでユニコーンが右足を一歩踏み出す。

 

 瞬間、地面に着いたその足の外装が弾け飛び、A.E.Bにヒビが走った。

 そしてそのヒビからは金色の光が噴水のように吹き出し始めた。

 

「な、なに?」

 

 驚愕している楯無同様に千冬もまた目の前の状況に戸惑っていたが即座に脳裏に今までの戦闘が脳裏をよぎる。

 そうしてその結論に辿り着くと楯無へと声を飛ばした。

 

「更識! 左足を狙え!」

 

「ッ!? はい!」

 

 楯無は蒼流旋に付いているガトリングガンを放った。

 ユニコーンは向かってくる銃弾をかわそうとしたが右足の損傷のせいで上手く動かず、左足に攻撃を受けた。

 すると右足同様に左足の外装が砕ける。

 

 それを見た千冬は打鉄のスラスターを吹かせると地面スレスレの低空を飛ぶ。

 

(あいつはISであるのにも関わらず“足”を多用していた。通常であればなんてことはないが、あれは違う。

 2つのISコアが生む膨大なエネルギーが断続的に足に集中した結果、外装が物理的な限界を迎えた)

 

 千冬が狙うのは白い外装が剥がれ、金色の光を放つA.E.Bだ。

 ユニコーンの外装はA.E.Bの形成維持にも使われるもの。つまり、それ単体ではさして高い防御力はない。

 

「ッ!」

 

 千冬が通り抜きざまにユニコーンの左足を切りつけた。

 右足同様に赤い光が溢れ出てその体がぐらつく。

 

「更識!」

 

「はい!」

 

 千冬は急旋回、楯無はそのままスラスターを吹かせてユニコーンに近付いて千冬はブレードを振り下ろし、楯無は蒼流旋を突き出した。

 前後から攻撃を受けたユニコーンは楯無の頭を掴もうと手を伸ばしたが、それが届く直前アイカメラから光が消える。

 それに続くようにA.E.Bが放っていた金色の光も消えて非活性状態を表す灰色となった。

 

 それを見た千冬はユニコーンの肩を掴むと迷うことなくその頭部装甲を掴んで力任せに引きちぎった。

 

「ッ! ……ふぅ」

 

 安心したように笑みを浮かべて小さく息を吐いた千冬だったがすぐさま楯無に指示を出す。

 

「救護班を呼べ。精密検査の準備もだ」

 

「はい、すぐに」

 

 こうして波乱に満ちたクラス対抗戦は終わりを迎えた。

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