IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン-   作:諸葛ナイト

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3人目の少年

 月曜日の朝。少し憂鬱な気分の者も少なくないそんな普通の日。

 翼と一夏が談笑しつつ教室に入った時にはすでにクラスは大きな賑わいを見せていた。

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

 

「え? そう? ハヅキってデザインだけって感じしない?」

 

「そのデザインがいいの!」

 

「私は性能的にミューレイかなぁ。特にスムーズモデル」

 

「あー、あれかー。確かにモノはいいけど、すっごい高いじゃん」

 

 嬉々として、何人かは眉間に皺を作りつつ話し合っている彼女たちの机や手にはISスーツのカタログがあった。

 今月から本格的に始まるIS実機を用いた授業のためにそれぞれ着用することになるとても重要な選定なのだが、カタログそのものはさながらファッション雑誌のような様相を呈している。

 

 翼と一夏はそれらを横目にしつつ自分の席に座った。それと同時に近くにいた1人の女子生徒が話しかける。

 

「あ、そういえば織斑君と岸原君のISスーツってどこの? 見たことないけど」

 

 翼より先に授業の準備を終えた一夏が先に答えた。

 

「えっと、確か特注品なんだって聞いたな。

 どっかのラボが作った、らしい。もとはイングリッド社のストレートモデルらしいぞ」

 

 翼も準備を終えそれに続くように質問に答える。

 

「俺のは完全新規だ。ユニコーンっていうよりシンクロシステム用のISスーツだよ」

 

 ちなみにISスーツは元々女性専用であるため見た目はワンピース水着やレオタードに近く、一部には機能度外視にしてまで華やかなデザインにしたものまであるほど多様である。

 一方で翼と一夏のISスーツはデータ収集のためにスキューバダイビング用の全身水着のようになっている。

 

 また、専用機持ちはパーソナライズを行うとIS展開と同時にスーツも展開される。

 しかしこれはエネルギーを消費するため、緊急時以外は使用せず事前にスーツを着てISを展開するのが常である。

 

 女子生徒が広げるカタログをチラッと見た一夏はふと湧いた疑問を口にする。

 

「でもさ、ISってスーツが無くても動かせるんだろ? なんでわざわざ着る必要があるんだ?」

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検知することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達、ISはそこで必要な動きを行います。

 また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。

 しかし衝撃は消えませんのであしからず」

 

 一夏の疑問に教科書にあるような説明をしっかりとしながら真耶が教室に入ってきた。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから。って、や、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。

 ちゃんと予習してきてあるんです。えへん。……って、や、山ぴー?」

 

 入学から約2ヶ月経過した現在では翼が知る限り真耶には8つほど愛称がついていた。

 距離が近いような気もするがしかし、その様な接し方をされるというのは慕われているとういう証拠でもあるのだろう、と翼が考えている間にも女子生徒と真耶の雑談は続く。

 

「あのー、教師をあだ名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃんいいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「ま、まーやんって……」

 

「あれ? マヤマヤの方が良かった? マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと……」

 

「もー、じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!」

 

 そこまで嫌なのか珍しく語尾を強くした真耶は拒絶の意思を示して「ゴホンッ」と咳払いをすることで続きそうだった雑談を切る。

 

「と、とにかくですね。ちゃんと先生とつけてください。

 わかりましたか? わかりましたね?」

 

 念押しするような言葉に対して「はーい」とクラス中から返事がされたが、ほぼ全員が言っているだけなのは間違いない。

 これからも真耶のあだ名は間違いなく増えていくことだろう。

 

「諸君、おはよう」

 

 対して入ってきたのは少なくとも愛嬌のあるあだ名など付けられることはないだろう教師、翼たち一組の担任である織斑千冬だ。

 とある弟曰く立てば軍人、座れば侍、歩く姿は装甲戦車。

 そんな人物を見てしまえばざわざわとしていた教室は一瞬で静まり返り、挨拶が返される。

 

「「「おはようございます!」」」

 

 席を立っていた女子生徒たちがいそいそと席に着いたのを見て千冬は口を開く。

 

「では、今日からは本格的な実機訓練を開始する。

 訓練機だがISを使用しての授業になるため各人気を引き締めるように。

 また、各人のISスーツが届くまでの間は学校指定のものを使用するので忘れないようにな。

 忘れた場合は水着、それもないものは、まぁ……下着で問題ないだろう」

 

 問題しかない発言した千冬は真耶に視線を向けた。

 

「では山田先生、ホームルームを」

 

 メガネを拭いていた真耶は少し慌てながら眼鏡をかけ直して千冬と入れ替わりで教壇に立つ。

 

「ええっとですね。今日はなんと転入生を紹介します!

 しかも2名です!」

 

「え……」

 

 その言葉に女子が固まるが、それも一瞬のことだった。

 

「「「えええええっ!?」」」

 

 真耶のいきなりの転入生紹介でクラス中が決壊したダムのような勢いでざわつき始めた。

 しかしそれもそうだろう。噂好きである彼女たちのその情報網をかいくぐっていきなり転校生が現れたのだ。

 

 翼も驚いたがそれと同時に疑念も湧いていた。

 

(鈴は2組だったのに、2人は1組? 専用機持ちがいない3組じゃなくて?)

 

 たしかに護衛や監視対象を1クラスにまとめた方が管理上は楽だ。

 しかしIS学園は襲撃されたことを考慮してか専用機持ちは可能な限り均等にクラスに分けている。

 今回はその考慮がなされていないというのは少し違和感がある。

 

(例外は俺たちだとして……なら中国はなんで無理をしてでもねじ込まなかった?)

 

 翼は仮説を立てながら転入生が入ってくるであろう入り口に視線を向ける。

 

「失礼します」

 

「……」

 

 教室に入ってきた2人の転入生を見て、ざわめきが冷水をかけたかのようにピタリと止まった。

 

(な、なに……?)

 

 2人は明らかに日本人ではなかったが、そんなことを気にするような者はこの学園にはいない。

 彼らが驚いているのは転入生の1人が翼たちと同じ男子用の制服を着ていたからだ。

 

 驚愕の表情を全員が浮かべる中、2人の転入生は真耶の隣に並び立つ。

 まず口を開いたのは視線が集まる男子生徒の方だった。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。

 この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

 シャルルと名乗った彼はにこやかな顔と流暢な日本語でそう言った。

 そこまで至ってようやく理解が追いついてきたのか誰かが確認するかのようにしかし呟くように口を開く。

 

「お、男……?」

 

 その言葉を聞き取ったシャルルは肯定すると再びにこやかな顔で答える。

 

「はい、こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入を––––」

 

 シャルルという少年を例えるならば貴公子だ。

 翼は歌舞伎の女形ができそうな綺麗な顔立ちに対して彼は愛らしい子どもっぽさがある中性的な顔立ちだ。

 髪も手入れが行き届いているのがよくわかるほどに綺麗な濃い金髪でそれを首の後ろで丁寧に束ねている。

 体は華奢だがしゅっと伸びている足が顔も相まって印象の良さを覚える。

 

「きゃ……」

 

「はい?」

 

 様々な疑問を頭に浮かべていた翼だったが漏れた声を聞くと即座に耳を塞いだ。

 

「翼、どうし––––」

 

「「「きゃあああああっ!!」」」

 

 一夏の言葉をかき消すように女子の黄色い悲鳴が教室に響き渡る。

 

「男子! 3人目の男子!」

 

「しかもうちのクラス」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 

「地球に生まれて良かった~~!」

 

 口々に女子たちは言う。

 第1波を凌いだ翼は息をついて改めてシャルルを見た。

 

(3人目の男性操縦者……しかもフランスでデュノアって言ったらデュノア社絡み)

 

 3人目の男性IS操縦者などというあまりにも衝撃的すぎる情報がここ現在に至るまで噂話すらなかった、というのはどうにも違和感がある。

 

 翼が操縦できることが発表されたのは一夏の存在が公にされた翌日のこと。その日まで隠すことができていたのは岸原夫妻という存在があったからでしかない。

 シャルルに関してもIS開発企業であるデュノア社が全力で隠したと考えられなくもないが、企業が広告塔の機能を十分に果たすその存在を隠す理由がわからない。

 

(それに、アベール・デュノアに子どもがいるなんて話しあったか?)

 

 アベール・デュノアとはデュノア社の現社長である男性だ。

 IS学園に入学する前後であらかたの有名企業の情報は調べたはずだが、翼にはそのような記憶がない。

 彼の記憶の中で印象があるのは1つ。

 

 アベールの妻ロゼンダには不妊症の疑いがある、ということだ。

 後継者決めが大変そうだなと思った記憶が薄っすらと残っていた。

 

(情報を見落としたのか?

 ……いや、それよりももう1人の方か)

 

 翼は思考を断ち切って疑問ではなく、一目見て警戒を始めた方を見た。

 そのタイミングでまだ騒いでいる少女達を真耶が止める。

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介が終わってませんから~!」

 

 翼が見つめる少女は銀髪で長さは腰近くまである。ただ、それは伸ばしっぱなしという感じだ。

 顔立ちこそどこか可愛らしいがキリッとした鋭い赤い右目と左目の明らかに医療用のものではない黒い眼帯。

 

 一目で見た印象は––––

 

(あいつ、軍人か……)

 

 その佇まいや雰囲気から翼はそう感じ取れた。

 

「……」

 

 当の本人は口を開かず、教室の女子たちをどこかつまらなさそうに見ている。

 いや、見下ろしていた。

 

「挨拶をしろ、ラウラ」

 

「はい、教官」

 

 その返事と千冬の方を向き同時に敬礼する。それに千冬は面倒くさそうにして言う。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」

 

「了解しました」

 

 両手は体の横、足をかかとで合わせて背筋を伸ばす。

 

(ドイツか……)

 

 ある事件で織斑千冬は1年ほどドイツで軍隊教官として働いていた。

 その後1年程度の空白期間を経て現在のIS学園教師になったようだ。

 

(そういや、間の1年間誰も教えてくれないよな)

 

 おそらく岸原夫妻ならばその辺のことも知っているだろうがどうせはぐらかされて終わる。容易く出た予測に翼はさして疑問を抱かない。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

「「「……」」」

 

 シャルルの時とは逆の沈黙。続く言葉を待っているのだが、口を開く様子が感じられない。

 そんな様子のラウラに真耶は恐る恐るといった感じで声をかける。

 

「あ、あの、以上……ですか?」

 

「以上だ」

 

 無慈悲な即答が返された。

 それに気圧された真耶を気にする様子もなかったラウラだったが、その人物を見つけると初めて人間らしい表情を表に出す。

 

「ッ! 貴様が––––」

 

 つかつかと一夏に近づいて行き流れるように右手で平手打ちをするために振り下ろした。

 

「ッ!? ……え?」

 

 反射的に目を閉じた一夏だったがいつまで経っても構えていた衝撃が来ることがなく、ゆっくりと目を開けて状況を知る。

 

「……」

 

「貴様、なんの真似だ」

 

 翼が振り下ろされたラウラの手首を掴んで止めていたのだ。

 明らかな嫌悪感と不快感を示して睨みつける彼女の目を翼は静かに受け止めている。

 

「それはこっちのセリフだ。

 ドイツ軍人は男を見れば手を上げるような野蛮な奴しかいないのか?」

 

「男だから手を上げるのではない。こいつがこいつだからだ」

 

 その言葉には恨みが見えた。

 翼は一夏の方を見て視線で問いかけたが、一夏は「知らない」と言うように首を横に振った。

 

「……君たちの関係は知らない。

 でもそれはこういう形で解決できるものでもないはずだ、違うか?」

 

「貴様には関係ない話だ。それと、手を離せ」

 

 突き放すようなラウラの言葉に従って翼は手を離した。

 彼女は掴まれていた手首をさすりながらあらかじめ指示されていたのか空いている席に迷いなく進むと椅子に座った。

 

 シャルルの時の騒ぎはどこへやら、気まずい雰囲気を手を叩いた千冬が打ち破る。

 

「あー、ゴホン! ではHRを終わる。

 各人は着替えて第二グラウンドに集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。以上、解散!」

 

 朝から出来事が多すぎたがそれでも彼女たちは行動を始める。

 それに紛れるように千冬も教室から出ようとしたがふと思い出したように翼たちの方を向いて言う。

 

「ああ、そうだ。織斑、岸原。デュノアの面倒を見てやれ。男子同士だろう」

 

 そうして千冬は教室から出て行った。

 多少戸惑いながらもシャルルは翼たちの近くに立った。

 

「えっと、改めまして、僕は––––」

 

「ああ、悪い。まずは移動だ。ここは女子が着替えで使うから。

 一夏、思うことはあるだろうけど今は移動だ」

 

「……ああ、そうだな」

 

 翼はシャルルを引っ張り、一夏はそれに続いて教室を出た。

 そして移動をしつつ翼が説明を始める。

 

「とりあえず男子は空いているアリーナ更衣室で着替え。

 何かしらの実習のたびにこれだから早めに慣れた方がいい。まぁ、大変だろうけどこればっかりは仕方ない」

 

「う、うん」

 

 返事こそされたがどこかうわの空といった感じのシャルルに翼は顔を覗き込みながら問いかけた。

 

「どうしたんだ? トイレか?」

 

「トイ……っ、違うよ!」

 

「そうか? それは何より」

 

「ッ、翼!! 急がないとそろそろ──」

 

 ハッとそのことに気がついた一夏の警告はしかし遅かった。

 

「ああっ! 転入生発見!」

 

「しかも岸原君と織斑君も一緒!」

 

 もうすでにSHRは終わっている。

 そのため各学年各クラスから転入生の情報収集のための生徒が駆け出しているのだ。

 

「まずいぞ、あの人数に捕まったら……!」

 

 翼には一夏の言いたいことがよく分かる。

 もし捕まったが最後、質問攻めにあい授業に遅刻となり担任鬼教師が特別キャリクラムというプレゼントと共に冷や汗が浮かぶ笑みを向けてくることだろう。

 

「ああ、分かっている! ちょっと急ぐぞ」

 

 翼はシャルルを引っ張りながら一夏と共に駆け出す。

 

「いたっ! こっちよ!」

 

「者ども出会え出会え!」

 

「ここはいつから武家屋敷になったんだよ」

 

「さぁな。でも、今にもホラ貝とかが出てきそうな雰囲気––––」

 

 ──ボォォオオオオオッ!

 

 一夏の言葉を遮ったのはホラ貝を吹く音だった。

 それに答えるように女子たちがまた増える。

 

「「本当に出てきた!?」」

 

 一夏と翼が同時に驚きの声を上げた時シャルルが2人が話しかける。

 

「ね、ねぇ。なんでみんなこんなに騒いでいるの?」

 

「そりゃ男子が俺たちしかいないからだろ」

 

「?」

 

 当然のように言った一夏の言葉にシャルルは「意味が分からない」っと言っているような表情をして首をかしげた。

 

「いや、普通珍しいだろ。ISを操縦できる男って」

 

「あっ! ああ、うん。そうだね」

 

 翼の言葉にシャルルは何かを思い出したような返事をする。

 妙な違和感を覚えつつ翼はふと口に出す。

 

「にしても不思議なんだよな」

 

「どうして?」

 

「いや、男性IS操縦者なんてかなり珍しいのにどこの組織もそういった情報を出してないんだ。

 こんな情報を掴みきれなかったなんて、にわかには信じられない」

 

 翼の言葉にシャルルは目を見開いて視線をそらした。

 周りを警戒しつつ走っていた翼は特に返答が返ってこなかったのに疑問を感じて問いかける。

 

「ん? どうした」

 

「い、いや、な、なんでもないよ。はははっ」

 

「まぁ、いいんじゃないか? 男がまた1人増えるのは」

 

「たしかにな。もう1人の男子はまだ心許ないもんなぁ~」

 

 翼は明らかにそう思っていない揶揄うようにニヤニヤしながら一夏を見た。

 

「うっ!」

 

「まぁ、何にしてもよろしくな。俺は岸原翼。翼でいい」

 

「あっ、俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん。よろしく翼、一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「わかった、シャルル」

 

◇◇◇

 

 3人が自己紹介を終えたつつさらに駆けて校舎を出るとアリーナの更衣室に転がり込んだ。

 その時点で時間はギリギリの時刻を指していた。

 

 いそいそと翼と一夏は言いながら制服のボタンを一気に外しそれをベンチに投げて一呼吸でTシャツを脱ぐ。

 

「わぁ!?」

 

 その時、急にシャルルが声を上げた。

 

「どうした!? もしかして忘れ物か?」

 

「いや、今はそれより早く着替えないと本当に間に合わなくなるぞ」

 

「う、うんっ? き、着替えるよ? でも、その、2人ともあっち向いてて……ね?」

 

「まぁ、別にいいが……」

 

「でも、シャルルはジロジロ見てるな」

 

「み、見てない! 見てないよ!?」

 

 シャルルは両手を突き出し、慌てて顔を床に向ける。

 

「「……?」」

 

 シャルルの行動に疑問を抱きながらも翼と一夏は後ろを向きまた着替え始める。

 だが––––

 

「「………」」

 

 ──背中に感じる熱心な視線を2人は感じていた。

 

「「シャルル?」」

 

「な、何かな!?」

 

 2人は気になり後ろを向くと、シャルルは向けていたであろう顔を壁の方に向けてISのジッパーをあげた。

 

「うわ、着替えるの超早いな」

 

「ああ、すごい早業だ。なにコツでもあるのか?」

 

「い、いや、別に……って翼も一夏もまだ着てないの?」

 

 翼と一夏はズボンを脱ぎISスーツを腰まで通したところで止まっている。

 

「着るときに裸になるのがな。仕方がないこととは言えな」

 

「ああ、分かる。着にくいんだよなぁ」

 

「「引っかかって」」

 

 あえてどこかは2人とも言わない。

 

「ひ、引っかかって?」

 

「ああ」

 

「おう」

 

 2人の気のせいかシャルルの顔が一気に赤くなった。

 

 そんな会話を挟みつつ着替えを終えた彼らは更衣室から出てグラウンドに向かっていた。

 

「そう言えばデュノアってあのデュノアか? IS開発企業の」

 

 翼の質問に対してシャルルは少し複雑な表情を浮かべつつ頷いた。

 

「うん、そうだよ。父がね、社長をしてるんだ」

 

「へぇ! すごいな!」

 

 一夏の素直な称賛に対してシャルルはポツリと呟く。

 

「すごい、か……。全然、そんなことないよ」

 

 その言葉を2人は拾うことはなかった。

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