IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン-   作:諸葛ナイト

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こそばゆい2日目

 入学式翌日の朝8時。

 一年生寮食堂は朝食を食べにきた学生たちによって大いに賑わっている。

 

 席はどうにか空いており、そこに座って翼は一夏、箒と共に朝食を食べていた。

 ご飯を咀嚼しつつ翼は横に並んで座っている一夏と箒を見る。

 2人の間に険悪な雰囲気はなく、昨日の騒動は無事に収まっていることが窺い知れた。

 

「一夏、勉強の方は大丈夫そうか?」

 

「ん? ああ! 箒が教えてくれるからな!」

 

「お、幼馴染なのだから当然だ。部屋も同じことだしな」

 

 照れが残っているのかそう言う箒の顔は少し赤らんでいる。

 雰囲気としてはまだ少しぎこちないところがあるがそれはこれからの時間が解決してくれることだろう。

 

(よかった。結構順調みたいだな)

 

「頑張れよ」

 

 翼の言葉が誰に向けられているのかを理解した箒は一瞬目を見開き、何もわかっていない一夏がはっきりと答える。

 

「ああ!」

 

「いや、別に一夏に言ったんじゃないんだけどな」

 

 一夏は翼が何を言ったのか聞こえなかったようで首をかしげる。

 

「いや、なんでもない」

 

 3人で話しているときのことだった。

 

「き、岸原くん、隣いいかなっ?」

 

「ん?」

 

 翼は声がかけられた方を見る。

 そこには朝食のトレーを持った女子が3人立っていた。緊張しているようでその顔は少し強張っていた。

 

「ああ、俺はいいけど。一夏と箒は?」

 

 聞かれた2人は顔を見合わせると頷いた。

 その反応を見て声をかけてきた女子は安堵のため息をもらして、残りの2人は小さくガッツポーズをしていた。

 

 それと同時に周りからから声が上がる。

 

「ああ~っ、私も早く声をかけておけば……」

 

「大丈夫、まだ2日目。まだ焦る段階じゃないわ」

 

「でも昨日のうちに部屋に押しかけた子もいるって話だよ」

 

「「「なんですって!?」」」

 

 ちなみにそれは本当のことで翼の方には1年生が7人、2年が16人、3年が23人自己紹介に来ており、翼はその対応に少し追われて大変だった。

 

(まぁ、そりゃ好奇心が出てくるよなぁ……見慣れない異性は)

 

 その時のことを翼が思い浮かべているうちに話しかけて来た3人はスムーズに席に着いた。

 席は6人掛けのテーブルで窓側に一夏、箒、一夏の向かい側に翼。その残りの席が全て埋まった。

 

「うわっ、織斑くんも岸原くんも朝すっごい食べるんだー」

 

「お、男の子だねっ」

 

「朝はしっかりとらなきゃ頭が良く回らないからな」

 

 翼の答えに同意するように頷き、それに続くように一夏が言う。

 

「っていうか、女子って朝それだけしか食べないで平気なのか?」

 

 2人が見るトレーにはパンやサラダが少量、といった内容の朝食しか見えない。

 男子2人からすれば明らかに少なすぎる。

 

「私達は、ねぇ?」

 

「う、うん。平気かなっ?」

 

「お菓子良く食べるし」

 

 雑談しながら少しゆっくりで食べていると––––

 

「いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻したらグラウンド10周させるぞ!」

 

 千冬の声が食堂内に響き渡った。

 鶴の一声とはまさにこのこと。食堂にいた翼たちも含めた全員が慌てて朝食の処理の続きに戻った。

 

◇◇◇

 

 時間は進み現在は授業3時間目、一夏は早くもグロッキー状態、翼は相変わらず授業よりも先の教科書の内容を読んでいた。

 

「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアで包んでいます。

 また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。

 これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどがあげられ––––」

 

「先生、それって大丈夫なんですか?なんか、体の中をいじられてるみたいでちょっと怖いんですけど……」

 

 クラスの1人がやや不安げな面持ちで尋ねた。

 

 不安を持つのは当然と言えるだろう。

 なにせ安定した状態を保つためとはいえ体に調整が入るのに変わりはないのだ。

 もしかしたら日常生活に影響があるのでは、と考えている者もいる。世間にもそれを訴える者も少なくない。

 

「そんなに難しく考えることはありませんよ。

 そうですね、例えばみなさんはブラジャーをしていますよね。

 あれはサポートこそすれ、それで人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。

 もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと、形崩れしてしまいますが––––」

 

 と説明しているときにふと向けた真耶の視線と翼、一夏との視線が合った。

 そして先ほどまで自分が意気揚々と話していた内容を思い出し、一気に顔が赤くさせる。

 

「えっと、いや、その、織斑くんも岸原くんもしていませんよね。わ、わからないですよね、この例え。あは、あはは……」

 

 その真耶のごまかしの笑いは教室中になんとも微妙な雰囲気を漂わせた。

 この妙に気まずい雰囲気と脱線しそうだった流れを「んんっ」という咳払いで収めた千冬はそのまま真耶に言葉を向ける。

 

「山田先生、授業の続きを」

 

「は、はいっ」

 

 千冬に急かされ、真耶は教科書を落としそうになりながらも話の続きに戻る。

 

「そ、それともう1つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話。

 つまり、一緒に過ごした時間で分かり合うというか、えっと、操縦時間に比例して、IS側も操縦者の特性を理解しようとします。

 それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。

 ISは道具ではなく、あくまでもパートナーとして認識してください」

 

 それにすかさず女子が挙手して言う。その口調は純粋な質問、というよりはふざけているような感じだ。

 

「先生、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

 

「そっ、それは、その、どうなんでしょう? 私には経験がないのでわかりませんが……」

 

 真耶は赤面しながら俯く、それに対しクラスの女子はきゃいきゃいと男女交際の雑談が始まった。

 

「なぁ、一夏この変にこそばゆい空気どうにかならないか?」

 

「翼、それは俺も言いたい」

 

「「……」」

 

 翼と一夏は少し顔を見合わせ。

 

「「はぁ~」」

 

 とため息をついた。

 そのとき、授業終了のチャイムが鳴った。そのチャイムで現実に戻ってきた真耶は告げる。

 

「あっ、えっと次の授業は空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 

 真耶はそう言い、千冬と共に教室を出た。

 

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