IS/UC -インフィニット・ストラトス/ユニコーン-   作:諸葛ナイト

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【注意】
 前話の後半に描写を追加しております。
 本日(2024/02/07)までに前話を読んだ方は前話後半を読んでいただけますと幸いです。


純白の一角獣

 翌週の月曜日。クラス代表者を決める、いや、翼とセシリアの決闘の日を迎えた。

 アリーナの観戦席にはクラスメイトはもちろん。数十名の生徒が集まっている。

 野次馬もいるがそのほとんどはISコア開発者が製造したISの性能、そして男性IS操縦者の実力をこの目で見極めようとしている者たちだ。

 

 そんな注目の試合への好奇心と緊張感が張り詰めるアリーナのピットに翼たちはいた。

 

 翼はすでにISスーツを着ていたが、そのスーツは通常のものとはかなり毛色の違うものだ。

 通常のISスーツは上下が一体型になった水着に近いものなのだが、彼が着ているものは首、手首や足首から先以外のほぼ全身を包んでいる。

 加えて、肩や胸から背中、太ももに当たる部分にはアタッチメントのような機械的なパーツが装着されていた。

 全体の色は白を基調としており、アクセントとしてグレーのラインが入っている。

 

 軽いストレッチをして体をほぐしていた翼へと一夏は声をかける。

 

「なぁ、翼」

 

「なんだ、一夏」

 

「気のせいかもしれないんだが」

 

「そうか、気のせいだろ」

 

 次に答えたのは箒。その顔にはわずかに冷や汗が浮かんでいる。

 そう、一夏には問題がひとつあった。

 

 それは––––

 

「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」

 

 2人はISに関することを“何1つとして一夏に教えていない”ということだ。

 

「「……」」

 

「目 を そ ら す な」

 

 剣道場での一件から6日間、一夏は特に箒から剣道の稽古をみっちりつけられた。

 だが、一番の問題はそれしかしていなかった、というところだ。

 

「ま、まぁ、しょうがないだろ。俺と違ってお前のISまだなかったんだから」

 

 光明見つけたり、と箒がうんうんと同意するように頷く。

 

「確かにそうだけど、でも、基本的なこととか教えられるとこあっただろ!」

 

「……」

 

 箒は目をそらしたが、腕を組んでいた翼はふと気がついて答える。

 

「いや、まぁ、なんとかなるだろ」

 

「はぁ? その自信はどっから来るんだよ」

 

「一夏はたぶん感覚で掴むタイプだ。誰かから説明を受けても、例えば俺の戦闘を見ても実際動かなきゃ身にできない。

 戦いながら自分の戦い方を知っていけ」

 

 そういう無茶なことを平然と言い切れるあたりはやはり、あのISコア開発者の子供、ということなのだが翼本人がそれを自覚することは一生ないことである。

 

 一夏が「無茶だ」と言うのと同時にスピーカーが鳴った。

 

「岸原、準備しろ」

 

 千冬の声がアリーナピットに響いた。

 

「了解」

 

 そう答えた翼の思考はすでに戦闘する時のものへと変わっていた。

 一夏と箒が見たこともない真剣なものへと顔を変えた翼はISを展開させる。

 彼の体が光に包まれたがその光は1秒にも満たない一瞬で消えた。

 

 光が消えた後に現れたそれを見て一夏が目を見開きながら呟く。

 

「それが、翼のISか……」

 

「ああ、そういえば見せたことなかったな。これが俺のIS、ユニコーンだ」

 

 翼がそう言うとそれに同意するかのようにユニコーンの2つのセンサーアイが光る。

 

 ユニコーンの最大の特徴はその特異な形と色だろう。

 展開されたユニコーンを箒は興味深そうに呟く。

 

全身装甲(フル・スキン)か。珍しいな」

 

 箒が呟いたようにユニコーンの外装は翼の全身を覆っている。

 装甲色はそのほとんどが白であり、一部の関節などの可動部はグレーだった。

 頭部にはその名の通り、一角獣のような角が生えている。

 

 一夏はほとんど見ないISに興味津々という感じだったが箒は違和感を覚えていた。

 

(妙だな……ISにしてはパネルラインが多い)

 

 現在ISは兵器として開発されているがそれでも見栄えを良くするためか各部パネルラインは丁寧に隠されており、そうだと知っていなければまずわからないものが多い。

 しかしユニコーンは見せつけるようにそれがある。

 加えて各部パーツのデザインも角張っており、兵器然としていた。

 

 箒が違和感を覚える中、ユニコーンはその両足でピットに設置されている射出カタパルトへと歩く。

 そしてその目前にたどり着くと頭だけ一夏の方を向いて声が飛ばされる。

 

「一夏、きちんと準備しとけよ。俺の次の相手はお前なんだからな」

 

 この試合に勝った者が一夏と戦うことになっているため、翼の言葉は誰にでもわかる明確な勝利宣言だ。

 それを受けた一夏は一瞬、驚いたような顔を浮かべたがすぐに力強く頷いて答える。

 

「ああ!」

 

 はっきりとした答えに軽く手を挙げたユニコーンを両足をカタパルトに接続、前方に視線を向ける。

 翼が各システムを確認したところで千冬から通信が入った。

 

『翼』

 

「ッ!? は、はい」

 

 千冬は通信ウィンドウに表示される翼の顔を真剣な顔で見つめると「ふっ」と鼻で笑って告げる。

 

『天狗になったあいつの鼻を思っ切りへし折って来い。いいな?』

 

「……了解です」

 

 翼の返事を聞いて千冬は通信を切った。

 先ほどまでその通信ウィンドウが開かれた場所を見つめたまま翼は思う。

 

(千冬さん。気付いていなかったみたいだけどさっき俺を名前で呼んでたよな)

 

 そして小さく口元を緩めて視線をカタパルトの先へと向けた。

 

(俺のことも心配してくれるのか……)

 

 ユニコーンの基本武装であるビームマグナムを右手に装備、シールドを左腕に装着展開させ中腰の姿勢に移行。

 

「本当、俺は周りの人達に感謝しないとな」

 

 小声でそう言うと同時にランプが点灯、3つの赤のランプが1つずつ緑のランプへと変わっていき、それが残り1つになったところで翼は息を吐いた。

 

「岸原 翼、ユニコーン––––」

 

 大きな警告音と同時に最後の赤のランプが全て緑のランプに変わり、そして白のランプが3つ点灯した。

 

「––––出ます!!」

 

 純白の一角獣はカタパルトの射出の勢いに乗って空へと飛び出した。

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