第十回 書いてみたいけどなかなか書きだせないお話を短編で書いてみたステークス   作:雅媛

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いつもの作風からちょっとだけはっちゃけてみました。この文章、せっかく思い付いたは良いですが、拙作『大地を駆ける一筋の流れ星』本編で使えそうになかったので、この場をお借りして披露させていただきます。


金船障害2.0

 年末押し迫るとある冬の日、ここはトレセン学園。冬休み突入前のイベントとして、とあるレースが行われようとしていた。

 特設実況席に座っているのは、ウオッカ。その隣に、「機材調整係」として呼ばれたライスシャワーが待機している。

 

「さあ、お待たせしました! 本日のレースイベント、『金船障害2.0』! 4人のウマ娘たちが挑みます!

実況はこの俺、ウオッカ! 解説は、本レースを企画したゴールドシップでお送りするぜ! ゴールドシップさん、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします」

 

 張り切った様子のウオッカに対し、ゴールドシップはあくまで落ち着いている。

 

「さて、出走ウマ娘の紹介だ!

1番ダイワスカーレット! 2番カワカミプリンセス! 3番ナイスネイチャ! そして4番シルヴァーブレイズだ!」

「中距離レースを得意とするウマ娘たちを集めたぜ。どんな熱い戦いを見せてくれるのか、期待大なのぜ!」

 

 どうやらゴールドシップのエンターテイナー魂にも火が着いたらしい。

 

「さあ、各ウマ娘ゲートイン完了!」

 

ガタン!

 

「スタートだ! 4人揃って綺麗なスタートを切りました!」

「誰が先頭に出るんだろうな」

「ダイワスカーレット、内枠を利用してハナを奪いに行った! そこへ外からシルヴァーブレイズも突っ込む! カワカミプリンセスとナイスネイチャは後方からだ!

第3コーナー回って、第4コーナーを抜けたところで最初の障害が登場! 最初の障害は…?」

 

 ウオッカの実況と共に、観衆の目が向けられた先にあったのは、緑色の壁のようなものだった。

 

「ステップジャンプゥ! 3段飛び〜」

 

 ゴールドシップが解説を入れる。

 

「意外と障害らしい障害きた!?」

 

 金船障害といえば、あのやりたい放題っぷりで有名である。そのレースにこんな常識的な障害が登場するのは、ウオッカにとっても意外だった。

 

「先頭ダイワスカーレット踏み切ってジャンプ!」

バッシャーン!!

 

 ダイワスカーレットが生垣のような障害を飛び越えた直後、その足元から大量の水飛沫が飛び散った。

 それはただの生垣障害ではなかった。水濠障害だったのである。ハメられたと気付いたダイワスカーレットの顔が、一瞬だけ歪んだ。

 

「あーっと水濠に転落、派手な水飛沫! ナイスネイチャも嵌まっているぞ! シルヴァーブレイズ上手い、飛沫は上がらない! カワカミプリンセスも飛び越えた!」

 

 カワカミが「どっせい!」みたいな感じで飛び越えていたのは言うまでもない。

 「3段飛び」の名の通り、このゾーンには短間隔で3つの障害がある。水濠障害の次は普通の生垣障害。そして最後が、中山大障害などでおなじみの竹柵障害だ。

 何とか全員飛越を終えたのだが、全員着ていたジャージのズボンが悲惨なことになっている。そのまま第1コーナーに入ると、コーナーの真ん中に2番目の障害があった。テーブルクロスをかけたテーブルが用意されており、そこにラーメンが4つ置いてある。

 

「綺麗食い競争〜」

「早食いじゃなくて!?」

 

 綺麗食い、ということでテーブルマナー判定員としてファインモーションとメジロマックイーンが抜擢されている。ファインは楽しそうだが、マックイーンは寒そうにしていた。

 各選手、できる限り速く、そしてテーブルマナーに注意してラーメンを食していく。この障害を真っ先に抜け出したのはダスカ、続いてネイチャ。豪快…の裏返しで細かいテーブルマナーは得意とはいえないカワカミと、麺料理苦手なブレイズが、出遅れる形となった。

 

「向こう正面に入った! 次なる障害は……?」

 

 視線を転じたウオッカ、その先に見えたのは、入り口にカーテンがかかった4つの箱のようなもの。

 

「コスプレ早着替え~」

 

 そう、ゴールドシップの解説通り、以前開催された「金船障害」と同じであった。

 

「もはや何でもありじゃないですか!」

 

 ツッコミを入れた後、ウオッカは実況に戻る。

 

「現在先頭はダイワスカーレット、すぐ後ろにナイスネイチャ! 2人ほぼ同時に着替えボックスに飛び込んだ!」

 

 さらに少し遅れてカワカミとブレイズが着替えボックスに入る。と、1番と4番の着替えボックスから「何よこれー!?」「あり得ませんわー!!」と何やら叫ぶ声が聞こえた。いったい何事だろうか。

 

「さあ、各選手ほぼ横並びで飛び出した! ダイワスカーレットは……何だこれ、スイープトウショウの……勝負服……?」

 

 ウオッカの実況はやや困惑気味である。

 そう、ダスカの格好はスイープトウショウの勝負服そのものだった。いったい何故こんなチョイスになったのか、意味不明である。

 

「ちょっと借りた」

 

 あっさりしたコメントを残すゴルシだが……ダスカにしてみれば堪ったものではない。

 そもそもスイープトウショウの勝負服は、サイズが合っていないのだ。そのため、あっちこっちキツキツである。

 

「ゴルシさぁーん……!」

 

 ダスカが赤面しながら怒ると同時に、観客席にて「ちょっと、何勝手に持ってってるのよ!」と怒声が響いた。もちろん声の主はスイープトウショウである。

 

「続いて2番カワカミプリンセス、金の王冠と桃色のドレスで本物のお姫様になっちまった! というかゴールドシップさん、この格好どこかで……」

 

 首を傾げたウオッカに、ゴールドシップがウインクしながらドヤ顔で答えた。

 

「お姫様は焼肉屋に連れてかれるばっかじゃない! たまには燃やしに行くもんだぜ!」

「意味が分からないんですが!」

 

 カワカミのコスプレは、トゲトゲしい亀一族に拐われてばっかりの某王国のお姫様である。拐われる度に赤か緑の配管工が助けに来るのは、もはや様式である。

 

「3番ナイスネイチャ、これはますます訳が分からない! 何だこの藁でできたコートと帽子は!? しかも帽子は何かの動物の顔になってるし!」

「三女神様がアタシにビビっと伝えてきたイメージに従ったら、これができたのぜ」

 

 ネイチャが身に付けていたのは、藁でできたコートのような何かと、同じく藁製のとんがり帽子だ。帽子には明らかに目玉が描かれており、何かの動物の顔と思われる。

 ……そう、これが本当の「ハリボテネイチャー」ならぬ「ハリボテネイチャ」である。なんでこれができたのかは、ゴルシのみぞ知る。

 

「そして最後、4番シルヴァーブレイズは……っ!?」

 

 その瞬間、実況が止まった。レース中にあるまじき失態であるが、まあ、これを見せられては止まってしまうのも道理だろう。

 ブレイズの格好は「裸」だったのだ。いや、よく見るとボディースーツだ。ただし、ブレイズの肌色そっくりに作られている代物である。パッと見では裸と見間違えても無理のない、やたらハイクオリティの代物だった。当然、ブレイズの顔は、完熟リンゴか茹で蛸さながらに真っ赤になっている。

 

「「「「「おおおおおおお!!!」」」」」

 

 観客席から大きな歓声が響く。その最中、突然実況のマイクに「ぶはっ!」という声が入ったかと思うと、ドタン! と大きな音が響いた。そしてゴルシの声。

 

「おい、実況が鼻血噴いて昇天しちまったぞ! 仕方ない、ライス! 実況替われ!」

「ええーっ! そんな……ううっ、分かりまひた!

えー、ウオッカさんが失神しちゃったので、ここからはライスが実況に入るね…! ゴールドシップさん、あのブレイズさんの格好は……」

「名付けて『裸の女王様』だ! アタシの渾身の力作だぜ!」

 

 実況が入れ替わる間に、観衆の興奮は頂点に達しつつある。また、このレースを見ていたアグネスデジタルは、観客席にて尊死して保健室に担ぎ込まれた。そして当たり前であるが、

 

「ゴールドシップさぁぁん……」

 

 ブレイズは激怒した。必ず、かの傍迷惑な黄金船(ゴールドシップ)を締め上げねばならぬと決意した。

 そして最後は借り物競走。想像できていたと思うが、借り物の中身は…

 

《ゴルシちゃん》

《ゴルシ様》

《その名はゴールドシップ》

《やっぱりゴルシ》

 

「このアタシを、お探しかい?」

「ええっ、ゴルシさんいつの間に!? ってこれ、ライス1人で実況しないといけないの…?」

「ゴルシさぁーん!」

「お待ちやがれですわ! 死兆星の輝きをご覧なさい!」

「スイーピーの勝負服返しなさいよ!!」

 

 案の定という展開である。さらに観客席からスイープが乱入して余計にカオスになっている。

 ただ…この時、もし仮にシルヴァーブレイズのステータス画面を見ることができたなら、スキルの発動風景がこんな風に見えていたことだろう。

 

『∴You lose Q.E.D. Lv13』

『独占力』

『迫る影』

『全身全霊』

『ハヤテ一文字』

『ブルーローズチェイサー Lv1』

『地獄への片道切符を、貴方に。 Lv13』

『汝、死兆星の輝きを見よ Lv13』

 

 お前いつの間にそれ継承&改変した、というツッコミは無しである。そして最終的に…

 

「ゴール! 1着はナイスネイチャさん! 見事な走りで、栄冠を勝ち取りました!

2着にはカワカミプリンセスさん、3着は……えーっと、3着以下はありません!」

 

 少々困惑した様子のライスシャワーの声が、スピーカーから流れてきた。どうしたのかというと、

 

「ぎゃああああああ!! 折れるもげる焦げるぅぅ!!」

「何着せてくれるんですかゴールドシップさん!」

「勝手にあたしの勝負服を持っていったから、身長縮みの呪いをかけてあげるわ! えいっ!」

「許しませんわよゴールドシップさん! 汝、死兆星の輝きを見よ!」

 

 ゴールドシップは、ガチギレで追いかけてきたシルヴァーブレイズに捕まってしまい、そこにダイワスカーレットとスイープトウショウも加勢して、壮絶な報復に遭っていたのである。

 

 




こんなの本編で出せる訳ないだろ!いい加減にしろ! ということで、こちらの場をお借りしました。雅媛様ありがとうございました。
なお、私の執筆スタイル通り、今回もネタ多めです。そもそも金船障害自体うまよんネタですし、話タイトルの『金船障害2.0』はハリボテエレジー2.0を意識しています。それにハリボテネイチャーもいましたね。その他あちこちに史実ネタ(実況含む)、他の作品ネタ多数がちりばめられています。探してみても面白いかもしれませんよ。

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