第十回 書いてみたいけどなかなか書きだせないお話を短編で書いてみたステークス   作:雅媛

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寂しがり屋だからエアグルーヴの胸に飛び込んで安心したいサイレンススズカと完全に保護者と化したエアグルーヴin弥生賞

寂しがり屋だからエアグルーヴの胸に飛び込んで安心したいサイレンススズカと完全に保護者と化したエアグルーヴin弥生賞

 

第1話:パドック‐今思えばあれが全ての始まりだったのかもしれない、とエアグルーヴは思っている。

 

 弥生賞、それは皐月賞へのステップレースとして知られるURAが開催している重賞レースの一つ。G2に格付けられているレースであり、過去にはシンボリルドルフやミスターシービー、サクラチヨノオー、ウイニングチケット、フジキセキなどのG1ウマ娘を数多く輩出してきたこの名レースに、あるウマ娘が挑戦しようとしていた。それは

 

「お客さんがいっぱい……大丈夫かな……」

 

 緑のメンコ型カチューシャに黄色と緑のワタリがチャームポイントのウマ娘、チーム・リギルに所属するサイレンススズカである。不安なのか、きょろきょろとパドック内を見渡している。

 スズカが困惑するのも無理はない。実はスズカ、このレースが2戦目なのだ。スズカは1か月前の3月に京都競馬場のメイクデビューに出走し、勝利したばかりだったのだ。このレースに出走するウマ娘はみんな最低でも4レース以上は出走している。例えば、ランニングゲイルにおいてはこのレースが10戦目である。

経験しているレース数において、スズカは圧倒的に少ない。そのため、スズカは完全に委縮してしまっていた。

この状況を見ているウマ娘が一人いた。

 

「スズカ、やはり大丈夫ではなかったか。」

 

 スズカと同じチームに所属するエアグルーヴだ。スズカより2歳年上で、同じチームの先輩として、よくスズカの面倒を見ている。スズカは人見知りなところがあり、人が多い所では委縮してしまうのではないか、とエアグルーヴは予想していたのだが、エアグルーヴが思う通りの結果となってしまったようだ。

 

「あ、エアグルーヴ!」

 

 その時、スズカがスタンドにいるエアグルーヴに気づいて、手を振ってきた。

 

「スズカ……」

 

 スズカの元気さに、エアグルーヴの緊張していた表情も自然と綻ぶ。

 

「エアグルーヴ!!」

 

 そして、スズカはエアグルーヴの目の前まで走ってきた。

 

「スズカ、調子はどうだ」

 

「スズカ、とっても寂しい。お客さんもこんなにいるし、メイクデビューの時とは全く違うから、どうすればいいんだろう……って思ったの。」

 

 スズカはエアグルーヴの予想通り、かなり寂しかったようだ。今はエアグルーヴと一緒にいるため、ある程度元気さが戻ってきたが、まだ寂しいことに変わりはないようで、耳と尻尾も気持ちしなびている。

 

「エアグルーヴ。スズカ、どうすればいいの?お客さんも多いし、何故かスズカが一番人気だし……」

 

 スズカがエアグルーヴに質問してきた。やはり寂しいのと、経験しているレースの数が少ないためであろう。本当に寂しい様子であるようだ。

 

「スズカ、大丈夫だ。いつも通りのレースをすれば、おのずと結果はついてくる。」

 

「エアグルーヴ……」

 

 エアグルーヴのアドバイスに、スズカも少し元気を取り戻したのか、耳が少し起き上がってきた。

 

「大丈夫だ。臆することはない。日頃の成果を見せてくるんだ。」

 

「うんっ!スズカ、頑張ってくる!!エアグルーヴ、ありがとう!!!」

 

 エアグルーヴのアドバイスにスズカは元気が戻ったのか、耳もピンと立ち、尻尾もぶんぶんと左右に振れている。

 

「スズカ、そろそろ時間だ。」

 

「スズカ、行ってくるっ!」

 

 その時、パドックを出て本場馬入場をする時が来た。既に一部のウマ娘は誘導ウマ娘の後について地下馬道に入って行っている。スズカも彼女たちに続いて、元気に走っていった。

 

『スズカ、頑張るんだぞ。』

 

 エアグルーヴは、スズカのことを心の中で応援していた。

 しかし、この時のエアグルーヴは知る由もなかった。この後、スズカがとんでもない、URA史上稀に見る大事件を起こすということに。

 

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