「これでも大分気配を殺していたつもりだったんだがな……大したものだ」
「そういうのに長けた奴がこっちにいる。ソイツから盗んだ技術だ」
物陰から出て真正面から直接相対する。先程は見えなかった女の顔は、均整の整った美人と言ってもいい顔貌をしていたが、よく見ると大分濃いメイクをしている。
うっすら目の下に隈がある上、顔の左側はメイクにより違和感は少なくなっているものの、僅かだが火傷のような痕が見える。
何より特徴的なのはその目。金色の瞳は強い恨みからか濁りのようなものを感じる。
年齢は10代後半と言ったところか。その年齢でモノに能力を乗せるなんて相当解釈を拡張しなければ出来ない事だ。地頭が良いだけでなく柔軟な思考も持っていると見ていい。
そう結論付けた所で
『大変だよ、三人とも! 上層に侵入者! 英語以外の言葉喋ってたの!』
通信の内容を概ねまとめるとこうだ。
少し前に推定
目的は競りの目玉である否定者の確保。恐らくこの女も同じ目的だろう。その後ジュイスも通信に入り、否定者狩りと仮称している連中の仕業と推測した。
否定者狩りは端的に言えばもう一つの
ただし方針はこっちとは全く違う。俺達の場合は神殺しを最終目的としているが、否定者狩り達は世界への復讐を目的としている。
加えて否定者の扱いも
「こちらでも否定者狩りと思われる女を見つけた。今倉庫にいるから、すぐこちらに来てくれ」
『了解!』
この女含めて五人か……余程ここにいる否定者が欲しいと見える。その上その五人の中に
全く、ここ最近は嫌な予感しか当たらねえな畜生!
「……てめぇ
「そうは行かない。俺達は新しい仲間を見つけるためにここに来たんだ」
だが
ならやる事は一つ。あの女の攻撃を避けつつここにいる否定者を先に確保する。それしか方法はない。
「だから今はお前と戦っている暇はない。悪いが否定者は俺達が確保する」
俺は踏み込んで倉庫内を駆け始める。
「てめっ……ざっけんな、逃がす訳ねえだろ!」
女はすぐにこちらの後を追って来る。
とにかく
加えて先程の光景を見る限り、触れられたら一発でアウトと考えた方がいい。触れられただけで死ぬのはいくらなんでもヤバ過ぎるだろうが!
「思った以上に数が多いな……どこにいる?」
「クソが……ちょこまかと動きやがって。あの巨体でなんて俊敏さしてんだ……狙いが付けられねえ」
後ろから女の声が聞こえるが意図的に右往左往しているため、今の所攻撃はこっちに来ていない。
見つけさえすればここにある牢屋程度俺の力でブチ壊せる。後は場所だ。
見逃しがないよう走り続けながら牢屋を注意深く確認していくと、ある一つの牢屋を見つける。他とは違い入っているのは一人の少年だけ。だがその少年が否定者である事を示す証拠とも言える。俺はすぐに牢屋の近くへと向かう。
「端にいろ。危ないからな」
俺は相手の返事を待たず牢屋を拳でぶち壊す。そしてすぐにその否定者の少年を脇に抱え、再び走り出す。
少年は急な出来事に混乱しているのがフリーズ状態になっている。まあ唐突にこんな大男が来て牢屋をぶっ壊して抱えられるなんて状況、理解するのに時間掛かるよな……
「生憎だが今追われてる状況でな、迅速に対処しなければいけなかった。許せ」
「えっ、あ、あのっ」
「落ち着け、と言ってもこの状況じゃ難しいか……とりあえず俺はお前を助けに来た。今はそれだけ分かればいい」
「は、はい!」
少し落ち着かせ、少年を見る。やや小柄だが、制服を着ているって事はまだ中高生くらいか……しかしさっきからやたらと貧乏ゆすりが酷いが、もしかして
ひとまず第一目的はこれで達成したが、依然としてあの女は追って来ている状態だ。第二目的は絶対ではないから確保は出来た以上、ここにいる理由はないが……
直後、前方から投げられたメスを避ける。
「あっさり避けるなあ、少しショックだぜ……そいつをよこせ
「そう言われて素直に渡すとでも思ったのか、否定者狩り」
「遅えよてめえ……もうちょい早く来れなかったのか、リップ」
俺の目の前に四人の男女が立ちはだかる。そして後ろには追い付いて来た女。実質挟み撃ちにされている状態だ。
一見すると、リップと呼ばれた眼帯の男の横にいるショートカットの女は戦闘系ではなさそうだが……他の四人は全員手練れだ。特にフードを被った奴……アイツは否定能力抜きでヤバい。
いくら俺でもこの少年を守りながら四人と相手取るのは困難だ。アンディ達が来るまでどうにか時間稼ぎをする必要がある。
そのためにはこの少年にも少し協力してもらう必要があるが……
「オイ少年。お前、何の否定能力を使える?」
「ひ、否定……?」
「特殊な力を使えるだろ? それの事だ」
「ボ、ボクは目を開いている間、視界にいる相手の動きを止められます。じっとしているのが条件ですけど……」
動きを止めるって事は恐らく
「これから俺達の仲間が来る。それまでの間、少しの間でいいからそれをあの五人に使ってくれ」
「えっ!? そんないきなり言われても」
「無理にとは言わない、一瞬でもいいんだ」
「わ、わかりました。やってみます」
「さっきから何コソコソと話してんだ、よっ!」
痺れを切らした女が複数のメスを投げつけて来る。俺は少年を庇いながらメスを次々と避ける。
すかさず懐から手のひらサイズにした
「
「じゅ、絨毯が浮いてる……!」
「へえ……いい
「ひとまず
「あ、ありがとうございます! う、動くな!」
彼の発言と同時に、リップ達四人の動きが止まる。
しかし女だけは発動直前に少年の視覚外に移動し、そのまま俺に向かって更なるメスの投擲を仕掛けて来る。
あの女、一体何本メス持ってんだよ……!
「(拘束型か……欲しいタイプの否定者だ。尚の事
拘束されながらもリップは余裕を崩さず、むしろ値踏みするように少年を見ていた。
ここまで女の動きが速いのは予想外だった。しかしこれで一対五になる事態は避けられた。
先程の光景を見る限り、この女に直接攻撃は危険だ。だから軽く気を練りこんで弾として放つ!
「(あの男、随分変わった攻撃するわね……)」
「まるで漫画みてえな攻撃すんなあ! だが、オレには効かねえ!」
そう言って女は手を前に出し、その気弾を
間接且つ実体のない攻撃でも効かないのか……! これは断言せざるを得ない。間違いなくコイツは今まで出会った中で一番厄介な否定者だ。
コイツを一体どうやって攻略するべきか……そう思った矢先天井が崩落し、俺と少年にとっての救援がやって来る。
「遅かったな。アンディ、風子!!」
「わりぃな、少し手間取った!」
「無事ですか、レイさん!」
未だ明確な攻略法は掴めていないが、コレで他の連中は任せられる。
俺は―――コイツの相手に専念させてもらう!
歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)
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見たい
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見たくない