アンデッドアンラック 不■の否定者   作:獅羅

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彼女の否定能力が明確に判明する回です。


No.012 Your Function is No Longer Possible(てめえの機能はもう不能だ)

 

 

「今どういう状況だ!」

「否定者はこっちで確保した。今はヤツらの動きを止めてもらっている!」

「その人は一体どこに……あっ、空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)!」

 

 

 俺が現状報告をし、風子は空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)に乗る少年を発見する。

 アンディと風子が合流して来た事でこちらは少年を含めて四人、タチアナが合流すれば数は並ぶ。

 だが相手の否定能力は不治(アンリペア)不能(アンファンクション)は確定として、他の三人は依然としてわかっていない。

 加えて不動(アンムーブ)の少年は発動条件からして長時間の使用は出来ない。今はこうして四人を止めているがそれも時間の問題だ。

 

 

「その少年の否定能力は恐らく不動(アンムーブ)。彼のおかげでどうにかこの女以外を抑えられている! あまり長くは保たないだろうが……何としてでも二人で彼を守ってくれ!」

「あいよ!」

「わかりました!」

 

 

 どうにか二人に少年を託せた。問題は能力解除後、後ろの四人をどうするかだが……一部はタチアナに任せよう。

 

 

「タチアナ、今の話は聞いてたな? 俺の後ろにいる否定者狩り達を分断してくれ」

『わかった。今近くまで来てるからすぐやるわ』

「ご、ごめんなさい! もう限界です!」

 

 

 もう限界だったようで少年が大声を出し、強く目を瞑る。目からは大粒の涙が流れており、発動条件が『じっとしながら目を開き続ける事』だと予測出来た。唐突だったろうに、よくやってくれた。

 そしてタイミング良くその直後に壁が破壊され、鉄の拳が軍人風の男とフードを被った格闘家と思われる男の二人を掴み、逆側へ連れて行く。

 

 

「クリード、ファン!!」

「遅くなってゴメン! こっちの二人は私が受け持つ! アンタらは残りの三人を!!」

「ああ!」

「任せろ!」

 

 

 これで人数は三人。後はこの女を俺が分断すればどうにか対処出来るはずだ。

 リップ(アンリペア)はアンディに任せるとして、この推定不能(アンファンクション)を持つ女は俺がどうにかしなければマズい。最悪全滅すら有り得る能力の持ち主だ。

 

 

「次から次へと……古代遺物(アーティファクト)を捜す暇すらありゃしねえ」

「悪いがそんな暇は与えん。お前を野放しにすれば他のメンバーに危害が及びかねんからな」

「そのお前ってやめろ! オレにはリリィっつー名前があんだよ」

「そうか、悪かった……なっ!!」

 

 

 予め溜めた気をさっきより大きい気弾として放出し、女―――リリィにぶつける。

 

 

「う゛っ……!?」

「リリィ!!」

 

 

 予想に反して気弾はリリィに直撃し、そのまま壁を突き抜け向こうまで吹っ飛ぶ。

 さっきの攻撃は効かず、今の攻撃は問題なく通った……って事は、ジーナと同じタイプか? しかしそう判断するにはまだ材料が足りないな。

 

 

「二人とも、ソイツらはお前らに任せる!!」

 

 

 二人の返事を待たず、俺は予め準備していた無形霊魂(かたちなきたましい)を発動し、リリィが飛んだ先へと飛ぶ。

 今のである程度は引き離せたはず。これでやっと一対一へと持ち込める!

 破壊された壁の向こうを越えると、煙が舞いあまり視認出来ない。少し強く飛ばし過ぎたか……?

 

 

あーもううざってえ……とっとと起きやがれ―――不触籠手(ガントレット・アンカネクティド)不触足甲(アンクル・アンカネクティド)!!

 

 

 煙の中からリリィの声が響く。その声と共に煙が吹き飛び、視界がクリアになる。

 そうして目の前に現れたリリィは俺が吹き飛ばした事で、ドレスがボロボロになっていた。だがそれ以上に目立つのは、彼女の手足に付いているより一回り大きい幾何学模様の走るガントレットとクリーヴのような古代遺物(アーティファクト)と思われるモノだった。

 隠し持っていたというよりは、手足に同化するタイプと見るべきか……珍しい古代遺物(アーティファクト)を持っているな。

 

 

「……待たせたな大男。少し本気を出してやるよ」

「奇遇だな。俺も手加減するつもりはない」

 

 

 リリィの情報は依然として少ないが、古代遺物(アーティファクト)に関しては不触(アンカネクティド)と言っていた事から何となく予測は出来る。

 恐らくアイツの否定能力の基本条件は風子と同じ肌に直接接触する事。しかも解釈の拡張で接触した物質にも崩壊しない程度の不能を意図的に付与出来るようにもなっていると予測される。その証拠としてリリィは掌が露出するタイプの手袋を身に付けていた。露出部分に気を付ければ対処出来ない事もないだろうが……今のヤツにそれをさせてくれる余裕はなさそうだ。

 

 

魂貫(ブレイカブルソウル)自律魂(ソウルリモート)

「炎を遠隔操作するってか? ならこっちも同じ手で行くまでだ!」

 

 

 自律魂(ソウルリモート)を発動した俺を見て、リリィが不触籠手(ガントレット・アンカネクティド)が強く輝かせ、その輝きは次々と分裂していく。

 やがて複数のガントレットを俺と同じように周りに浮かせ、俺に向けて発射する。

 

 

付与(エンチャント)機能不全(マルファンクション) 3Second()!!」

自律魂(ソウルリモート)機関拳(カドリングフィスト)!!」

 

 

 それに対抗して俺も炎の拳を機関銃のように連続で撃ち出した事で衝突が起こる。機関拳(カドリングフィスト)に拮抗するとは思った以上の威力だな……本気と言うのもあながち嘘ではないようだ。

 炎拳とガントレットの激しい応酬が続く中、俺とリリィはほぼ同じタイミングで突撃する。

 

 

「疾ッ!」

「オラァ!」

 

 

 お互いの拳と蹴りがぶつかり合い、間髪入れずに拳と蹴りの応酬が始まる。

 少々粗削りだが武術の心得があるようで、的確に急所を狙って来ている。加えて古代遺物(アーティファクト)によってブーストされている事もあってかその威力は中々に重い。能力の解釈次第では古代遺物(アーティファクト)越しと言えどコイツと接触する事そのものがマズいが、幸い今の所は身体に支障ない。

 流星群拳(インパクト・ミーティア)を出せさえすれば距離を離せる上接触を減らせるが、流石に仲間がいる状態で船の中で出す訳にもいかない。まず屋外へ誘導する必要がある。

 そのためには周りにあるガントレットが邪魔だな……自立魂の出力を上げるか。

 

 

自律魂(ソウルリモート)増幅(ブースト)

 

 

 俺の言葉と同時に自律行動していた炎弾が更に勢いを増し、ガントレットにヒビを入れ、粉砕する。

 面倒なガントレットはコレで一旦潰した。後は―――コイツをもう一度吹っ飛ばして距離を取る。

 

 

「はっ、複製とは言えコイツを砕くかよ! とんでもねえ古代遺物(アーティファクト)だなあオイ!」

「まだ序の口だ。ガードでもしておくんだな」

「は?」

 

 

 予め警告を入れ僅かな隙を作ったと同時に踏み込みを入れ、リリィの懐に入る。何をしようとしているか察したようだがもう遅い。

 魂炎と気の硬化を纏わせた右足の回し蹴りでリリィをふっ飛ばす。

 

 

「がはっ……!」

 

 

 直前に後ろに飛ぶ事で直撃は避けたか……しかしノーダメージとも行かなかったようだ。

 コレで距離は稼げた。今のうちに船の外へ行かなければ。

 俺は左足も気で硬化し炎を纏い、そのまま噴射。そのままの勢いで天井へ向かって蹴りを叩きこむ。

 

 

「ふっ、はあっ、らあっ!」

 

 

 蹴りで天井を突き破り、体を回転させながら逆の足でまた更に上の天井を破る。それを何回か繰り返し見えるのは星の瞬く夜空、外に到達する。

 

 

「待ちやがれこの野郎!」

 

 

 一方でリリィも不触足甲(アンクル・アンカネクティド)の形状を変化させ、俺の後を追って来ている。飛行能力もあるとはあっちも大概応用性の高い古代遺物(アーティファクト)を持ってるな……

 ひとまず屋外に出る事は出来た。後はアイツをどうやって倒すかだが……分離した方はともかく、大本の古代遺物(アーティファクト)がかなり頑丈で厄介だ。硬化+魂炎を乗せた攻撃でもビクともしないとは……アレをどうにかしない事には大ダメージを与えるのは難しい。

 何よりアイツの否定能力の影響か、少しずつだが倦怠感を感じるようになって来ている。疲れを感じるなんてもう何年振りだろうか……

 しかし機能不全(マルファンクション)……警備員を消し去った時はきちんと聞き取れなかったが、さっき言ったリリィの言葉通りなら、アイツが不能(アンファンクション)なのは間違いない。あまり長引かせるとこっちが不利になりかねない。

 

 

「これでも食らいな! 不能十字(クロス・アンファンクション)!!」

 

 

 リリィがクリーヴを刃状に変形させ、目にも止まらぬ速さで二度宙を切った直後、十字状の刃となってこちらへ飛んでくる。

 流石にコイツを避けるのは難しいな……相殺するしかない。

 

 

魂貫(ブレイカブルソウル)天翔脚刃(レッグブレイド・ソア)!!」

 

 

 すかさず俺も同じようにより強く気で足を硬化。炎を鋭利にし、炎の刃を作り飛ばす。十字の刃と炎の刃は空中で衝突。少しの間拮抗し、その直後に爆発が起きる。

 爆発により視界が遮られお互いの姿が見えなくなった所で、再び(エンブレム)に通信が入る。

 

 

『レイ、タチアナ! 聞こえるか!』

「ああ、聞こえている」

『何よゾンビ!』

 

 

 今度の通信はアンディか……何かあったのか?

 

 

『いいか、落ち着いて聞け! 風子が負傷した、不治(アンリペア)にだ……!』

「何だって……!?」

『それって……』

 

 

 リップが不治(アンリペア)だった事は消去法で予想出来ていた、しかし厄介な事に風子は不動(アンムーブ)の少年を庇うためソイツの攻撃を受けてしまったらしい。

 これはかなりマズい事になってしまった。通信越しからも分かるアンディの焦りからして、不治(アンリペア)の解除方法がリップを殺す事なのだろう。出来る事なら加勢に行きたい所だがリリィを倒さない事には余計状況が拗れるだけだ。一刻も早くリリィを倒さなければ―――そんな僅かな、一瞬の動揺が命取りだった。

 

 

「――――不能刺突(スカルペル・アンファンクション)

 

 

 煙に紛れ、一本のメスが俺の胸元に飛んで来る事に気付くのが遅れてしまった。

 ギリギリで気付き硬化をした上で避けるも、メスが右肩に深く刺さる。

 

 

「ぐっ……!?」

 

 

 直後、肩に鋭い痛み(・・)が走りすぐにメスを抜き投げ捨て、刺された部分を抉り取るも、いつもならすぐ巻き戻る傷がなかなか戻らない。それどころか少しずつ壊死のような黒ずみが浸食して来ている。

 明らかに再生が阻害されている。

 

 

「やっと油断してくれたな。何に動揺したかは知らねえが好都合だ」

 

 

 否定者になって以来久しく感じた事のないの痛みを感じる中、リリィが煙を抜けて出て来る。

 

 

「にしても普通なら消滅するレベルの不能を付与した筈なんだがな……てめえの否定能力によるものか?」

「さあ、どうだろうな……?」

「しらばっくれるならそれも構わねえさ。どっちにしろ直撃した以上、くたばるのも時間の問題だ」

 

 

 

 リリィの否定能力はあらゆる人や物体の機能を否定する。

 接触により少しずつ相手の持つ機能を弱らせ不能状態にし、最終的には崩壊による死を齎す。

 触れる物全てを崩壊に導くしか出来なかった彼女はその柔軟な思考による解釈拡張によりその崩壊に指向性を持たせられるように至った。

 その気になれば彼女はどんなモノも不能に出来るし、モノに不能を乗せる事も出来る。

 

 

 

「諦めな。てめえの機能はもう不能(おわり)

 

 

 

UNFUNCTIONー不能(アンファンクション)




定期更新はここまでとなります。
続きは出来次第更新します。

歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)

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