突如出現したバーン。その手には円卓、そしてビリーが立っている。よく見れば頭の上にはリップと船で一緒にいた女、そしてリリィの姿もある。それによって、ビリーがアンダーのボスである事はより明白となった。
「……どういう事!? ビリーさんが裏切ったって事!?」
「らしいな……」
つい先程まで同じ円卓に座っていた者の唐突な裏切り。風子が混乱するのも無理はない。この場にいるユニオンのメンバー全てが大小なりともそう感じているのだから。
風子がリップに呼び掛けられ、軽い会話―――というにはやや茶番な内容だったが―――をしている間に、警戒を解かず先程の疑問に対し、少し思案に耽る。
俺達の知るビリーの否定能力は
しかしついさっきビリーが使った否定能力は全く違うどころか俺の知る別の否定者―――トップの否定能力を使っていた。ユニオンメンバーとは訓練で闘う事もあり、当然トップともよく戦っていた。
その経験から言わせてもらえば、あれは紛れもなく
とりあえずまずは……足が生まれたての小鹿のようになっているチカラをどうにかした方がいいな。
「あわ、あわわわわ……あのこれ一体どういう状況ですか!? なんですかあのFFの召喚獣みたいな奴!?」
「後で説明するから今は退がった方がいい。流石に今のチカラには荷が重過ぎる」
「いや、でもその……お、落ち着いたら戻ります! すいません!」
「ハハッ、
チカラには悪いが、あんな状態ではとても闘いに参加させるのは難しい。あの時よりは少しマシになったものの、実戦経験が少な過ぎるのが災いしたな……
「ラッキーだね。アイツに以前やられてさー、
「だな。条件さえ満たせば問答無用で動きを止めるアイツがいるのは厄介極まりねえ。まあ
「ああ、約束しよう」
やはりチカラを遠ざけるためにバーンを連れて来たのか、コイツ等。それだけ
「……ボス?」
「だから言ったろタチアナ! どう見たって……裏切りモンだってよ!」
タチアナが呆然としている中、再びトップがビリーへと突撃を図る。しかしさっきと同じようには行かなかった。何故なら―――
「
―――彼も同じ能力で背後を取ってトップを蹴り飛ばしたからだ。
「……かはっ」
「トップくん!」
蹴り飛ばされたトップの元に風子が駆け寄る。幸いダメージは受けてるものの、そこまで重傷ではなさそうだ。
これ以上ビリーの好きにさせるのはマズい。俺は準備の出来た
「だが条件が難儀だな。体の形が大きく変化しないと止まる事が出来ない……だったか」
円卓に立つビリーの足は
「だが、今の俺にはさしたるデメリットではない。感謝するよ……
今の治り方、まさか
この感覚……ユニオンに入る前、一度感じた事のある感覚だ。まさかこの能力まで……
「否定能力の妙だな。人の……心が見える」
一人は護る事
一人は生きて指揮を執る事
一人はより強い敵と闘い、強くなる事
一人は亡き友たちのため、神を倒すまで今を生き抜く事
「正義であり、それを否定する……か。対人戦に有効だな、使い勝手がいい」
今度は
俺の左腕が意思に関係なく勝手に動き出し、俺の頭を握り潰そうとして来る。当然抵抗はするが、強制力が強く動きを鈍らせるので精一杯だ。
「ありがたく頂こう。円卓と共にな……払え、バーン」
ビリーの命令でバーンが俺達四人を払いのけようとする。視界が遮られたおかげで
これで確信した……ビリーの本当の否定能力は他の否定能力のコピー。それも複数の能力をコピー出来る否定能力だ。
なんてデタラメな否定能力なんだとも思ったが、本来否定能力はその当人にとってマイナスとなる能力。従ってコピーするにもマイナスとなる条件が存在する筈だ。でなければ
現状分かるのは使っている否定能力がユニオンメンバーのものである事。それ以外は未だ不明だ。それでも十分厄介である事には変わりないが……
そうしてバーンは払いのけた手をそのままタチアナの目の前に差し出し、ビリーがタチアナに話し掛ける。
「タチアナ……おいで、お前の
そこまで言ったところで言葉は途切れた。少し視線を逸らすと風子がリボルバー銃を構え、ビリーの耳を撃ち抜いていた。
もっとも今のビリーにはその程度のダメージは大したものではなく、直ぐに再生する。
「私にはわかる。一度自分の事をどうでもいいと思った人間が誰かに救われた時……その人が自分にとってどれだけ大切な存在になるか。でも私はわからない。そんな人に裏切られる事が、どれだけ悲しいのか……!!」
風子は涙を流しながら自分の、そしてタチアナの思いを代わりにぶつける。風子自身もまた、アンディによって助けられ、紆余曲折を経てユニオンへやってきた。だからタチアナの思いが痛いほどわかるのだろう。
俺は心が痛んでもすぐに否定されてしまうが、それでも今のタチアナの気持ちは理解出来る。だからこそどんな理由があろうとも、ひとまず一発は殴らないと気が済まない。
「そうか、来ないか……なら、お前も敵だな―――
風子の言葉に対するビリーの返答は、明確な敵対。それと同時に先程と同じ違和感を再び感じ取った。
それが何かは相変わらずわからない。分かるのは何かしら偽っているという事くらいか。
「行くぞ、バーン」
ビリーの言葉とともに、バーンが動き始める。目指す先は上―――ユニオンの外に向かって移動を始めている。
マズいな……このまま逃がしたらそれこそ奪還出来る可能性がゼロになってしまう!
「天井を溶かして逃げる気か……!」
「ジュイス! お前が何を隠しているのかは知らんが、俺は行くぞ!」
「ああ、決して逃がしてはならない! 円卓を奪われれば神に抗う術を失う! どんな手を使ってでも取り戻さなければ……ようやくここまで来たんだ――――ここで決めなければ……後が無いんだ!!」
そう言うジュイスはこれまでの余裕ある表情ではなく、焦燥感に駆られていた。これほど焦りを見せるジュイスは初めて見た。
「聞きてえ事は山ほどあるが……了解だ」
「状況が状況だ。どんな手段を使ってもいいんだな?」
「いいだろう、私が責任を持つ」
「言質取ったからな、行くぞ。アンディ、風子」
「おう。久しぶりに派手なの頼むぜ、風子!」
「了解!」
過去の情報のおかげでビリー以外に対してはある程度対処法がある。だがこの状況を打破出来るのは不確定要素、切り札に成り得るのは風子の不運だ。それに賭ける価値はあるだろう。
だが、まずは一発殴る。
レイの心理描写などで少しでも違いを出そうとしたものの、原作で大きな転機となった出来事だけに言い回しを変えるので精一杯……どう弄るか苦労してます。
とりあえず削れるトコは削って書き足したい所。オータム編は想定している通りの流れになればある程度違いは出る予定です。
やっぱ原作が完成され過ぎてるんだよなあ……でもモチベがある限りは書き続けて行きたい。
歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)
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