アンデッドアンラック 不■の否定者   作:獅羅

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No.002 WEATHERING

 

 8月7日

 

 

 俺は古代遺物(アーティファクト) 空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)に乗り、目的地に向けて全速力で飛ばしていた。

 何故ムーブを使わないのかって? あの野郎が乗り気じゃないとか抜かして能力を使わなかったからだ。ジュイス経由で頼む事も考えたがかなり忙しいようで、ラチがあかないので空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)で目的地へ向かう事にした。

 多用しなければ問題ないと言えども、古代遺物(アーティファクト)使うのもノーリスクって訳じゃねえんだぞあのダイス野郎が……

 ただコイツに乗っても目的地まで2、3時間は掛かる距離であるため、ウェザリングが何らかの行動を起こしてもおかしくない。

 そのまま待っているのも退屈だったので到着するまでの間、改めて確認も兼ねてウェザリングに関する資料に目を通す。

 

 

 UMA風化(ウェザリング) 

 風化を司るUMA。

 ウェザリングは■■■■で発見されたつむじ風の中に多数の空洞が空いた球体を持つUMAである。

 目撃情報(目撃者の記憶は消去済み)を元に過去に2度捕獲を兼ねた調査をしようとしたが凄まじい風化作用により調査員十数人が犠牲になり、近づく事すら出来ず断念。

 ウェザリング自体から攻撃を仕掛ける事はないため、課題(クエスト)に出るまでの間は放置且つ一般人を巻き込まないよう周辺を認識阻害を兼ねたバリケードで覆う事で対処する。

 

 

 ……最後の調査は7年前、俺がまだユニオンに入る以前か。風化は本来長い年月を掛けて生じる現象の事を指すが、コイツの場合その風化作用を短時間で発生させる事が出来るUMAのようだ。残された映像には調査員がどんどんミイラのように干からびていき、最終的に塵となり消える場面が映っていた。

 短時間で風化を起こすという点では、先程俺にも送られてきたスポイルの情報と似た物があるが……自分から動かないUMAってのは珍しいな。奴らは基本人に危害をなす存在である事が多く、まず最初はコア状態から始まりジュニアを生み出す。

 そしてある程度成長するとフェーズ1、フェーズ2となり、自身の(ルール)をより強力なモノとする。UMAとの戦いは基本可能であればフェーズ2に到達する前に討伐、もしくは捕獲する事が定石(セオリー)だ。

 まあ基本的は捕獲を優先する事となる。理由としては討伐の場合世界の改変が発生するためで、司る(ルール)次第では厄介な事になる。だから課題(クエスト)の成功条件が討伐でもない限りはUMAを殺すのはNGだ。

 実際俺もユニオンに入る前に一度UMAを殺してしまい、その時の改変が原因でユニオンに目を付けられた事がある。不幸中の幸いとして他の(ルール)でもカバー出来るUMAだったのと、結果としてユニオンに入る切っ掛けになったが……その辺りの話はまた別の機会にしよう。

 改めて見て、やはりこのクエストは俺が適している。不死(アイツ)はまだ入って間もない上、他のメンバーだとそもそもウェザリングに着く前に死ぬ可能性が高い。それこそニコの言うようにメンバーが減るだけだ。

 なら何故ニコはこのクエストに対してやめた方がいいとは言わなかったか。答えは単純、俺の否定能力と古代遺物(アーティファクト)なら十分勝算があるとわかっているからだ。

 

 

「俺じゃないと攻略するのは難しいだろうな……流石にジュイスでも無傷とはいくまい」

 

 

 ジュイスでも十分対処は出来そうだが、クエストだけでなくユニオンのリーダーである立場である以上、正直これ以上の負担は掛けさせたくない。

 情報を数度反復した事でウェザリングに対する対処方を確固たるものとする。そうしてウェザリングのいる付近の町へ到着、空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)から降り立ち辺りを見回す。

 事前にニコから聞いた話だと、この町に調査員を集めたようだが……

 

 

「人の気配がなさ過ぎる……これは嫌な予感しかしないな」

 

 

 この辺りは過去に一度別のUMAの調査で来た事があったが、都市間の中継地の一つだった事もあり、それなりに人の往来があった。

 あれから人口が少なくなった可能性もない訳ではないだろうが、それにしたって人の痕跡が多いしまだ新しい……

 周辺を調べてみると僅かだが生き残りと思われる人の気配を感じる。この状況の説明が聞けるかもしれない。

 UMAのジュニアに注意しながらも気配のする方へ歩いていくと、そこには疲れて眠っている数人の子供達とそれを護っていただろう一人の調査員がいた。

 

 

「ユニオンの調査員だな? 遅くなってすまない」

「レイ様ですか……? 来て下さったのですね」

「一体この町で何があった? 簡潔でいいから説明してくれ」

「わかりました……私も唐突な事だったので完全に説明はできないのですが……」

 

 

 そこから調査員によってここで何が起こったのか説明が始まる。

 俺がクエスト受注を行った後、あらかじめこの地域に配置された調査員達が俺のサポートや市民の避難のためこの町へ集まるよう指令が送られてきた。その指令に従い、調査員達は町に集まりつつあったが突如バリゲートにいた筈のウェザリングが現れ、その猛威を振った。

 結果、町にいた連中はヤツの餌食になり全滅。たまたまアクシデントにより少し遅れ命拾いした調査員と町の外で遊んでいた子供達数人を除いて生き残りはいないらしい。

 移動中ロクに調査員からの連絡がなかった時点で予想してはいたが……やはりこうなったか。ユニオンの調査員になった以上いつか死ぬ覚悟はしてたろうが、遺体すら残らないのは悲惨過ぎる。

 

 

「すまない、すぐ来られなくて……俺がすぐ来ていたらもう少しは救えていたかもしれない」

「いいえ、私達はこれが指令でしたから……覚悟は出来ていました。それよりも子供達が心配です」

「そうだな……事を終えたら保護させる」

 

 

 話からしてヤツはあの町のどこかにいるのは確定だ。フェーズ1で済めばいいが……この規模で全滅となるとフェーズ2に到達している可能性がある。

 場合によってはアレ(・・)を使わないと倒すのは困難だろう。

 

 

空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)、お前は調査員と子供達を連れて別の町まで離れろ。フェーズ2になった場合、町の外にも影響が及ぶ可能性が高いからな」

 

 

 空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)は頷くようにはためかせる。そして視線を調査員の方へ向ける。

 

 

「お前は迎えが来るまで子供を守ってくれ。この付近のユニオンの支部には伝えてあるから、そこまで時間は掛からない筈だ」

「わかりました、子供達は絶対にお守りします。ご武運を」

 

 

 調査員は子供達を空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)に乗せた後自分も乗り、その場から離れる。

 ひとまず一度くらいなら古代遺物(アーティファクト)の影響は出ないだろうし、後は空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)が安全な場所まで送り届けてくれるだろう。

 

 

「さて、と……それじゃヤツを捕獲しに行くか」

 

 

 そして俺はゴーストタウンと化した町の中へ歩みを進める―――

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 町に入ると、風化の領域に入ったのが感覚でわかる。周りにある家はずっと手入れされていないかのように経年劣化を起こしているし、あちこちに倒れている死体はまるでカラカラに渇いたミイラのような状態で、触れれば砂のように崩壊しそうな程だ。

 俺自身は否定能力のおかげでこの領域内でも問題なく行動は出来ているが、常人ではここに来るまでに風化によって確実に死んでいただろう。 

 この状況からしてまだジュニアは生み出されていないようだ。無駄な手間が省けて助かる。

 そして更に進んで行くと建物は崩れ、死体は原型がなくなり人の形をした塵と化している。

 

 

「相当酷い状態だな……よくこんな事をするUMAが今まで大人しくしてたものだ」

 

 

 バリケードを張っていたとは言え、なぜ今になって行動を起こしたのかが全く謎だな……

 ムーブのようなUMA(例外)もいるが、アイツはアイツでクエストに挑む俺達を見て愉しんでいる所がある。まるで俺達がヒーロー映画を見て楽しむのと同じように。

 だから完全にこっち側って訳でもない。正直アイツの能力が便利且つなくなるとマズい(ルール)でなければ俺がブチのめしている所だ。そんな事を考えているうち町の中心地である広場に到着する。

 そこには報告書で見た情報より成長した、灰を纏う人の形をした風のUMAがいた。

 

 

「……お前がウェザリングだな?」

『如何ニモ……私ガウェザリングダ』

 

 

 

WEATHERINGーウェザリングー

 

 

 ウェザリングが言葉を発した瞬間、風化のスピードがより速く強力になる。

 それに応じて俺の肌が少しかさつき出す。

 流石にここまで強くなると俺でも少しは(・・・)風化するか……風化を司るUMAだけの事はある。

 幸いフェーズもまだ1の状態。この状態ならオツムもそこまで良くないから速攻を掛ければ潰せる可能性がある。なら―――

 

 

『……貴様、何故ソコニ立ッテイラレ』

「疾ッ」

 

 

 先手必勝だ!

 俺は一瞬でウェザリングの間合いに入り、拳を叩きつけようとするが避けられる。

 避けるって事は見た目と違って物理攻撃は効くって事か。ギアをもう少し上げれば十分行けそうだ。

 

 

「悪いがそれに答える義理はない。俺が用があるのはお前のコアだからな」

『随分ナ挨拶ヲシテクレル……ドウヤラ課題(クエスト)デ私ノ元ニ来タヨウダナ」

「正解だ。思ったより頭の周るUMAみたいだ、なっ!」

 

 

 少しの言葉を交わし再び俺はウェザリングに攻撃を仕掛ける。

 それもまた外れ、それを数度繰り返すが間髪入れずスピードのギアを上げ、接近。

 拳を気で一時的に硬化し、手刀の構えを取り攻撃に転じる。

 

疾風刀手(ナイフハンド・ストライクゲイル)!」

『グッ……!?』

 

 

 硬化した手刀はウェザリングに直撃し、血の代わりに灰がヤツの体から噴き出す。

 

 

「まだまだ行くぜ。阿修羅嵐拳(フィスト・アスラテンペスト)!」

 

 

 ウェザリングが怯んだ隙に俺は拳を強く握り、拳打の嵐をお見舞いする。

 噴き出す灰は更に多くなり、その灰の体を維持する事も難しくなってくる。

 しかし一見順調に行っているように見えて、拭いきれない違和感もある……

 物理攻撃は効いてはいる筈だが、明確に効いていると感じたのは最初の一撃だけ。しかもヤツ(ウェザリング)は未だ一回も攻撃を仕掛けて来ていない。一度少し離れて様子を見た方が良いか……

 拳の嵐を止めると同時に後ろに大きくジャンプしようとした次の瞬間。

 

 

――――器ノ分際デ調子ニ乗ルナヨ

 

 

 奴の口が三日月のように裂け、俺の右足が何かに切断された。




空飛ぶ絨毯(フライングカーペット)
とある課題の報酬として入手した古代遺物。
名称通り浮遊能力のある絨毯であり、金斗雲や黒斗雲と同等の機動力も持つ。
ある程度縮小する事も可能なため、レイは普段手のひらサイズにまで縮小して持ち歩いている

歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)

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