それから数時間、俺達は時短方法を使った上で作業をフルに進行していた。
風子はタチアナの教えもあってアームをある程度使いこなせるようになり、まだ粗さはあるもののかなりのスピードで描き上げている。
俺は俺でかなり慣れて来て開始時より早いスピードでペン入れを進めている。
だが人間である以上疲れは避けられない問題。適度、いや全然過剰だが……栄養ドリンクやエナジードリンクを接種する事で描き進めていたメンバー達も次々とダウン。ちなみにチカラも応援には来たが限界が来たようで地面に突っ伏している。さながら殺人事件の被害者のようだ……
そういう事もあって、不労である俺、アンディや風子を除いて完全に眠りについているのが現状だ。
「こんな時に疲れを感じないってのは便利だな……結構慣れてきたし、限界だったら寝てもいいんだぞ、風子」
「いえ、まだまだ行けます……!」
そういう風子の目には少しだが隈が出来ている。少し無理をしてそうだが大丈夫そうだな……俺の担当するページのペン入れが終わった段階でジュイスが応援に来た。
「手伝おう」
「助かる」
「ありがたいがお前も忙しいだろう。大丈夫なのか?」
「キミ達よりは忙しくないさ。少しでも手伝いたくてね」
ビリーの件の事後処理で相当手間取っている筈なんだが……正直休息が取れているか心配になる。
「それにしてもまさか
「ははは、流石に初めてじゃないと困るがな。これはこれでコントロールのいい練習になってる」
描き上げたページを
ページはアンディによって問題ないかどうかチェックが入り、OKが出れば仕上げの段階に入る事が出来る。
「…………いいね、最高だ! 趣味で絵描いてるとは言え上達が早いじゃねぇか。おかげで予想より早く終われそうだぜ」
「そうか、結構貢献出来てるようで良かった。次のページのペン入れに取り掛かる」
そう言って次の担当ページのペン入れを開始する。大変ではあるがたまにはこういうのもいいな……
少しして風子が描きながらある疑問を話し始めた。
「……話を聞いてから、改めて『君伝』を読み返してみたんですけど……ないんですよ。ビリーさんの謀反や、今回の
「ああ確かに……というか連載している時から疑問だったんだが、妙に話が飛んでた気がするんだよな。違和感より面白さのほうが先行してたから気にしていなかったが」
「そうなんですよ! なんていうかクライマックスに近づくにつれて展開が飛び飛びで……リアルタイムで読んでであれ? 読み飛ばしたっけ? ってなりましたもん」
当時の俺はローカライズされたモノを読んでいたが、否定能力の発現が切っ掛けで一時追いかけるのをやめていた。ユニオンに加入してから改めて追いかけ直すついでに最初から見直していると、物語が終盤に差し掛かった辺りからなんかおかしいな? と違和感を抱くような展開が多くなっていったのだ。
当時は長期連載にはよくある事だと思ったし、話自体が面白いので完全にスルーしていたが……話を黙って聞いていたジュイスが口を開いた。
「つまり……作者が意図的に描かなかった?」
「多分……」
「そう考えるのが自然だろうな……知られるとマズい何かがあったのかもしれない」
おそらくだが作者が隠したエピソードには重要な何かがあって、それを隠すために没にして現在の形に変えた。いや、それだけじゃないな……まさか、
少し思考していると風子が凍り付いたかのような表情をしていた。疑問に思い、視線の先を見てみると―――
「ジュイスお前……上手いな。描いてた経験なんてあったか?」
とても経験がないとはとても思えない程綺麗に描かれたジュイスが担当したページがあった。
いや冗談抜きで上手いぞ。過去では描いているような記憶はなかった筈だが……
「長く生きてればこれくらいは描ける。むしろキミのが上手いじゃないか」
「趣味で描いてればな。現在進行形で上達していると思ってはいるが」
人より時間があるから描けるに過ぎない。発現以前は教科書に描くような落書きレベル程度のモノしか描いてなかったから、これでも上達するのに時間が掛かった方だ。
「いやいや、お二人とも上手過ぎますよ……」
凍り付きながらも風子はそう言うのだった。
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それから更に数時間が経過。
ジュイスが協力してくれた事もあり、どうにか一日以内で完成にまで漕ぎ着ける事が出来た。
アンディの最終確認も通り、それと同時に風子は安心からかそのまま眠りにつく。そして俺は完成した作品を改めて読み進める。
「……粗削りだが、最初の作品として見れば上等な話だ。俺も描いた事を考えると感慨もひとしおだな」
「だろうな。俺も少しかじって描いてた頃を思い出したぜ」
「漫画を製作するのは初めてだったが……確かに完成した時の達成感は凄いな。レイの言う事もわかるよ」
流石にアンディとジュイスも少し疲れが見えるが、それよりも達成感が強いのか清々しい表情をしている。
不労である事がこれほどプラスになった事なんてあっただろうか……いや、ほぼないな。
「まあアンディと風子の出会いをベースにしていれば、面白いのも当然か……ほぼノンフィクションなんだからな」
「設定を見た時はまんまだなと思ったんだが、それ以上に風子の熱意を感じてな。そのままで行く事にした」
「変に弄っても話がおかしくなるだけだし妥当だろ。何よりこんな話、実話だって信じる奴は普通いないさ」
「ハッ、それもそうだな」
アンディと談笑しながら作品を読み進め、最後の1ページを見終わる。
実話だが変に現実離れしている話のおかげでほどほどにパンチのあるフィクションに仕上がっている。これなら編集の目にも止まりそうだ。生原稿に近づける可能性は高い。
「タイトルは
「風子曰く、プラスは読まないらしい。タイトルの響きを良くするとかなんとか」
「語感を良くするならその方がいいだろうな。仮に俺が編集だったら表記からも外した方がいいまである」
今回はあくまで生原稿に近づくためだけ描いた作品だから有り得ない事だが、十分連載を狙えると思うんだよな……上手く行けば安野雲が目を付ける可能性もあるかもしれない。
俺は完成した原稿を封筒にしまい、アンディに渡す。
「じゃ、俺はそろそろ他のメンバーの様子でも見て来る。ジュイスはどうする?」
「私は少し休んでから仕事に戻る。アンディ、持ち込みは明日にして今日はゆっくり休むといい」
「そうだな……そうさせてもらうぜ」
そう言って俺とジュイスは部屋から離れる。
ジュイスとは途中まで同じルートだったので他愛のない話をした後、別れて他メンバーの元へ向かう。
シェンは願掛けのつもりか不眠不休で俺の筋トレメニューを忠実にこなしていたようで、俺が様子を見に来た頃には疲労困憊の状態になっていた。俺が作業は終わったと伝えると糸が切れたように倒れ、グースカと眠り始めた。
ニコとフィルは『君伝』を培養槽に入れるという端から見ればトンチキな行動を取っていた。フィルのために
トップと一心は先程の二人とは違い、普通に『君伝』を一気読みしていたようで、周辺に本が散乱していた。トップの方は疲れたのか完全に寝落ちし、一心は余程ハマったのか集中して読んでたようで、俺が声を掛けたら素っ頓狂な声を上げていた。
全員の様子を確認した後、俺は漫画を描いた事により絵のモチベーションも上がり、久しぶりに絵を描くのだった。
そして次の日。俺はアンディと風子を見送り、一足早く大まかながら所在を掴めたUMAサマーの討伐メンバーとして現地へ飛ぶ準備をしていた。
しかし、その予定を変えざるを得ない連絡がジュイスから伝えられる―――「安野雲がキミを呼んでいる」と。
名前だけですがようやく安野雲が登場です
オータム編に関してはここから違う展開になる想定で書いているので投稿期間が空く可能性が高いと思います
歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)
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見たい
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見たくない