「っ……!?」
右足を膝下からバッサリ切り落された事で体のバランスを崩す。だが完全に倒れる前に切り落とされた足を拾い、残った片足に力を入れ高く跳躍。少し離れた建物の屋上に後退する。
(何だ、何が起きた?)
少し混乱しそうになるところで
足もすぐに繋ぎ直しウェザリングの方を向き直すとヤツが体を丸め、繭のような形に変化していく。
チッ、マズい事になったな……まさか会った時点でもうフェーズ移行する寸前だったとは。かと言って攻撃しなければコアを取り除く事も出来なかったし……どの道フェーズ2は避けられなかったか。
足のダメージを否定し、元に戻る頃にはウェザリングが繭を破り立ち上がり、フェーズの移行が完了する。フェーズ2になったウェザリングはフェーズ1よりもより大きく、それでいて実体を持たない砂塵舞う暴風の如く存在へと変貌していた。
コイツは面倒だな……実体を持っていたフェーズ1と違い、このフェーズ2は実体を持っていない。物理攻撃ではヤツを倒すどころかダメージを与えるすら難しくなってしまった。
「仕方ねえ、
『再生ではなく巻き戻し……少なくとも
フェーズ移行した事によってウェザリングがより流暢な女の声で喋る。
UMAは基本フェーズ1の時は基本本能的に行動するため、片言でしか喋る事が出来ないが、条件を満たしフェーズ2になる事でその人格はより明確に、且つ悪辣に確立される。分かりやすく言えば頭が良くなるのだ。稀にムーブのような例外もいるが……
ひとまず今はコイツを倒す事には変わりない。倒すのに少し手間を掛ける必要が出ただけだ。
「お前に教える義理はないといったはずだ。UMAに教えて何になる?」
『それもそうだな……では死ね』
ウェザリングがこちらへと突っ込んでくる。図体に見合わずスピードも上がっているな……!
別の建物に飛び移り回避すると同時に俺が先程までいた建物がヤツの手により風化し塵となった。
「一瞬で風化か……流石にあの攻撃をモロに食らうのは俺でもマズいな……!」
いくら俺が
かと言って俺の
俺はスピードを上げて建物から建物へと飛び移り、その度ヤツの力によって建物と周辺の死体が塵へと変わっていく。そしてその塵はヤツへと吸収されよりその体が巨大になっていき、風化範囲も少しずつ広がっていく。
『すばしっこい鼠が……埒が明かないな……
そう言いウェザリングは塵の塊をいくつか俺の元へと飛ばす。飛ばした塵はその形を変え、刃のように変化する。
さっき俺の足を斬り落としたのはコイツか……! このタイプのジュニアは初めてだ。しかもジュニアの出現で風化範囲の拡大速度まで速くなっている……このままだと捕まるのも時間の問題だ。
そろそろ戻って来てもいい頃だが……呼んでみるか。
「
俺の声に呼応し少しして
すぐさま俺は飛び乗り、次々と生まれるジュニア達の猛攻を回避する。
解釈拡張で自分の持ち物も限定的に否定対象として入ってなければこの方法を使うのは不可能だった。とは言え、このまま回避し続けてもヤツが強化され続ける一方でジリ貧になるだけだ。
こんな時に限って目覚めるのが遅いな……さっさと起きろ、
『ハハハハハハッ!! さっきまでの威勢はどうした!? 私がフェーズ2になった途端逃げるだけか!?』
「物理攻撃が効かねえ相手に挑むだけ無駄ってな! 残念だがお前に対抗する手段はない!」
『ククク、情けない奴だ! そのようなザマでよく私に挑もうと思ったな!』
まったく持ってその通りだから言い返せねえ。無策であんなのと真っ向勝負しろと言う方が無理がある。
だがそれは
そうこうしているうちに生み出されるジュニアの量は更に増えて行き、
完全に物量で殺しに来てるな……
『やっと
「この短時間でもう特定されたか……ここまで来たらもう否定はしないさ。だが殺される気は毛頭ない。それに、やっと準備が出来た」
『……準備だと?』
そう言い俺は蒼い炎の形をしたモノを手から出し、それを
それを取り込んだ俺の体は同じ蒼い炎に覆われ、拳はより強い炎を纏い出す。
「準備完了だ―――
『ちょこまかと逃げていたのはそれを使う時間を稼ぐためか……だがそれがどうしたというのだ!』
ウェザリングのジュニア達が人型へ変化し、俺目掛けてに一斉に殺到してくる。視界を埋め尽くす程の数のジュニアに俺は構えを取り、蒼い炎を更に強くする。
拳が目視出来なくなる程の密度の高い炎はやがて、分離し拳の形となっていく。そして僅か数瞬の後、俺の周りには幾多の形成された拳の炎が揺らめいていた。
「―――――
次の瞬間、全ての炎が弾けるように散らばり、俺の周りにいた全てのジュニアは塵も残さず消滅した。
『なっ……ジュニア達が完全に消された!? なんだ、一体何が起こっている!?』
「起きるまで時間がかかるんで、出来ればお前がフェーズ2になる前にカタを付けたかったんだが……
『ッ、舐めるなあ! 私のジュニアはまだまだいる、更なる物量で消し去ってくれる!!』
ヤツは自身の風化領域に触れた建物を塵とし、再び新たなジュニアとして生み出していく。物質がある限り、ヤツはジュニアを無限に生み出し続けられる。だが今の俺にはそんなモノ有象無象でしかない。
周辺に揺らめく炎の拳は瞬時に大きくなり、それらが上空へ飛び――――
「
隕石の如く一斉に街に降り注ぐ。その攻撃によりジュニア達は叫ぶ間もないまま完全消滅していく。
そして炎拳はジュニアだけでなく町にも降り注いでいく。物体が風化を経てヤツのジュニアになってしまうのなら心苦しい、という感情も消えてしまうが……この一帯の建物や死体を消し、この町そのものを消滅させるしかない。
これで新しくジュニアを作られる事はなくなった。
『(あの
「その反応を見る限り、この
『なら、先に本体であるお前を殺すまでだぁ!』
そう言ってヤツは目にも止まらぬ速さで俺に急接近する。流石の俺もヤツの風化領域の中心地に入ろうものなら体がボロボロになってしまうが……少しの間なら耐えられる。
俺は構えを取り炎を拳に集め、さっきの炎より強く、高い純度の炎を練り上げる。大きく練り上げた炎は右腕全体に広がり、激しく波打ち始める。
ウェザリングはそれを好機と見たのか両腕を塵の刃に変え、俺の腹を貫く。
普通なら十分な致命傷、当然吐血する。
『ハハハハ……! そんな隙の多い攻撃、私が出させる訳がなかろうが! 勝利を前に油断したか!?』
「いいや、これでいいんだ。これでお前を倒す最後のピースが出来た」
『何……?』
「この技はまだ開発途中でな……俺から離れると霧散するんだ。だから一度、お前が懐に入って来るこの状況が必要だった」
そう言いながら、空いている炎を纏った左手で刃を強く掴む。
「まあ俺だから出来る方法だがな……少し手間取ったが、コレで終わりだ」
『き、貴様……!』
肌がかさつき、体内の水分が枯渇しつつあり俺の体が崩れ始めてきているが、準備は完了した。
これからやる事を察したウェザリングがすぐさま自身の腕を自切しようとするが時既に遅し。
波打つ炎は一気に収縮し、右腕そのものが蒼い輝きを持つ。
『ま、待t―――』
「――――
――――次の瞬間、ウェザリングは大きく爆散する。
その衝撃は町のみならず周辺地域にも響き渡り、爆風による煙が辺り一面に舞う。
しばらくして爆発の中心地となった場所には、
「よし……コアを破壊しない程度には手加減出来たみたいだな。ここまでやって失敗なんて洒落にならん」
『ク、クソが……この私が、器程度に……』
レイの能力は自身の疲れそのものを否定する。
条件は何かしらのダメージを受けた瞬間に発動し、自身のダメージと判断したものを否定するため肉体は勿論精神的ダメージすら否定し、それを巻き戻す形で即座に回復する。
負の感情や眠りすら彼は否定してしまう。それ故に彼は不眠不休で鍛錬を続け、短期間で飛び抜けた身体能力を獲得するに至った。
「悪いな、俺は疲れを知らない」
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転がっているウェザリングのコアを拾い、
「対象のコアを入手した。回収後、周辺地域住民の記憶消去を始めとした事後処理を頼む」
『了解しました』
直後、ユニオンによりコアが回収される。
疲れはしないが今回のUMAはかなり厄介だったな……もう少し長引いていたら死にはしなくとも、まともに動けず詰みだった。
俺の否定能力はあらゆる疲れを否定するが、死や他者付与の否定能力によるダメージまでは否定出来ない。死と言っても即死以外なら大抵どうにかなるが、継続ダメージの類によっては行動不能になる可能性もある。死んだ方がマシな状態だと言えるだろう。
それにしてもアイツの言っていた
とりあえず今は深く考える必要はないだろう。クエストを終えた以上、これ以上この場にいる意味もあるまい。あのダイス野郎を呼び出すとしよう。
「オイムーブ、聞こえてるだろ。流石に帰りくらいは迎えに来い」
『終わったか。早いな。
「それはどうも。こちとらお前の見世物として戦ってる訳じゃないからな。せめて見物料くらいの仕事はしてもらうぞ」
『……ああ。次はもう少し楽しませろ』
ムーブのクソ態度にシバきたくなる衝動に駆られるが、
その直後、ムーブの力によって俺はユニオン本部へと帰還するのだった。
UNFATIGUEー
自己対象 強制発動型
自身の疲れに起因するあらゆる要因を否定する否定能力。
肉体的には勿論、精神的なダメージすら否定するため、肉体、精神攻撃に強い耐性を持つ。
解釈の拡張により身に付けている服や持ち物限定で不労の影響を受けるようになっている。
感情も負の感情に関して疲労と判定され否定が発動するため喜怒哀楽のうち怒と哀に関する感情が少なくなっている(全くない訳ではないがその感情が一定以上かつ自覚すると否定される)。
例外として「死」の否定や否定能力(不治等の他者付与型)によるダメージの否定は不可能だが、即死でない限りは即座に否定し全快する。
レイはこの特性を利用し、不眠不休で体の鍛錬を続けた事で短期間で飛び抜けた身体能力を獲得するに至る。
これだけ聞くと不死の下位互換のように聞こえるが、解釈の拡張により痛みや病も疲れの要因として否定しているため痛みを感じず、病に侵されない体となっている。
ユニオン加入以前、世界放浪の中でレイが手に入れた古代遺物の一つ。
明確な物体としての形をもたないが、所有者の意志に応じてあらゆる形に変化する。
無形霊魂の最たる特徴は実体を持たない存在にも攻撃を通す事が可能であり、尚且つ本人の力量次第では物量を増やす事もできる事である。
この性質上、ゴーストなどの物理攻撃の効かないUMAの討伐、捕獲を条件とした課題に起用される事が多い。
レイの場合は主に拳当に変化させており、武器として使用しているだけでなく相手に応じて腕そのものを作りだし、手数も増やせるようになっている。
ひとまず一斉投下はここまで。
4話以降は定期的に上げます。
歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)
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見たい
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見たくない