アンデッドアンラック 不■の否定者   作:獅羅

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今回から過去編もとい異質な二人編に入ります(章タイトル変わる可能性あり)
今週は原作もアニメも凄かったですね……アニメ2期来ると信じたい
大分間が空き申し訳ない……切り所が分かりづらかったのでいつもより長くなっています
タイトルは毎回考えるのも手間なのでこの形にしました


異質な二人(ゼノ・デュオ)
No.029 Ray Fang Teague(レイ=F=ティーグ)


 

 

  記憶空間 2005年 インド ムンバイ

 

 

「っつ……」

 

 

 ふと目を開く。最初に入って来たのは、薄暗い路地裏。気付けばオレはそこに立っていた。

 確かオレは、安野雲の互換追憶(ノスタルジー・チェンジリング)不労(アンファティーグ)の記憶の中に……ここがアイツの記憶の中なのか?

 そう思考している中で俺の考えを妨げて来るモノがあった。

 

 

「……臭っせえな」

 

 

 ここで目覚めてからずっと鼻を突く吐き気を催す悪臭を感じる。少なくとも普通の環境ならあまり嗅ぐ事のない類の臭いだ。

 加えて周辺にはデケえハエがブンプン飛んでおり、かなり鬱陶しい。

 ひとまずその辺に落ちていた空き缶に触れてみると、少ししてそれは灰となって崩壊する。否定能力自体は残っているようだな……今は古代遺物(アーティファクト)がねえし、あまり接触は控えた方が良さそうだ。

 

 

「ここにいても仕方ねえ。少しマシな場所に移動するか」

 

 

 少なくともこんな悪臭のする場所よりかはマシな筈だ。今は移動し、記憶の中にいる不労(アンファティーグ)を見つける事を優先しよう。

 移動しながらオレはここがどこなのかを分析し、調べていた。途中オレに絡むクソ共がいたが、全員シバき倒してやった―――接触は控えめでな。あんな程度の小物に不能(アンファンクション)なんざ使うまでもねえ。下手に殺せば不労(アンファティーグ)との接触が難しくなるだろうし……好きで殺しがしてえ訳じゃねえ。

 大まかに見てみたが、どう考えても普通の街じゃねえな……異常な密度の高さ、ボロボロの家屋、劣悪な衛生環境、あちこちに散見される物乞いや物売り……間違いなくスラム街の類だろう。

 すれ違う連中の話している言葉を聞く限り、言語はインド語。おそらくここはダラヴィ、インドで最大規模のスラム街と思われる。

 オレは比較的治安のいいエリアの方へ進み、そこに捨てられていた新聞を覗き見る。

 

 

「新聞を見る限り、今は2005年の7月31日……クソ暑いわけだ」

 

 

 日数がズレている可能性もあるが、数日程度の誤差だろう。現在(2020年)から15年半近く前……という事は、まだヤツが子供の頃の時代か……

 あんなスカした奴の少年時代なんて想像出来ねえな。ここに降り立った以上、この時代の不労(アンファティーグ)は間違いなくこの辺りにいる。

 だが手掛かりが少な過ぎる。シバいた奴らから話を聞いたところ、やけに強いガキがいるという情報を得られたが、名前までは聞けなかった。この辺りの出身ならこの時代ではまだ全うな名前を持っていないと考えれば辻妻は合うが……良く出没するという場所へ行ってみるか。

 

 

 

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  ダラヴィのゴミ山

 

 

「うっ……この悪臭、比喩じゃねえレベルで鼻が曲がりそうだ」

 

 

 オレがやって来たのは大小様々なゴミが積み重なって出来たゴミ山。ここでヤツは少しでも使えるモノを探して生計を立てているらしい。この悪臭のせいか人もあまりいねえ。

 さっさと見つけねえと……ここに長時間いるのは流石にキツい。手で口を押え、マスク替わりにして安定しない足場をどうにかゴミ山を歩く。

 そうして歩みを進めていると、ゴミ山を物色している連中の中で一際目立つ髪の色をしたガキが目に入って来る。その髪色は淡い紅色。オレの知る男と全く同じ髪の色だった。

 オレの視線に気づいたのか動きを止め、オレの方に顔を向ける。

 

 

「……なんだよ、この髪が珍しいか?」

 

 

 そう言ったガキの顔はオレの知る男と比べて幾分か幼いものの、整った顔立ちに透き通った碧眼。ゴミで汚れているが間違いない、この時代の不労(アンファティーグ)だ。

 

 

「いいや、お前と似た髪の色をした男を思い出してな。ソイツも綺麗な紅髪の男だった」

「アンタこの辺りの人間じゃないな? そんな綺麗な恰好した奴はこの辺に来ない」

 

 

 ……物言いは現在とあまり変わらねえな。性格もそこまで違いはなさそうだ。

 

 

「まあな。オレは外からやって来た。ある目的のためにな」

「目的? こんな汚いゴミ山にか? よくここまで誰にも絡まれなかったな」

「あんなチンピラ程度大した事ねえよ……全員シバき倒した」

「へえ……見かけによらず、結構出来るんだな」

 

 

 そう言う不労(アンファティーグ)は言葉とは裏腹に興味津々に目を輝かせていた。こういう所は年齢相応みてえだな……

 とりあえずこの時代の不労(アンファティーグ)と出会う事は出来た。問題はどうやってコイツと親しくなるかだが……過去の存在とは言え、あれだけ敵対していた相手とどう接するべきか? そう迷っていると、不労(アンファティーグ)が話掛けて来る。

 

 

「それで目的ってのは? 場合によっちゃアンタに協力出来るかもしれない」

「……強いガキがここにいるって話を聞いてな。興味を持って来た」

 

 

 嘘は言ってねえ。かといって全部本当の事を言ってもそう簡単に信じられねえだろう。なら時間を掛けて信用を得る。

 幸いここは記憶の中。安野雲の話じゃ現実世界と時間の流れが違うといった口振りだった。信用を得る時間はいくらでもある筈だ。

 

 

「あーその噂、外にまで広がってるのか。ここでその話はしづらいな……せっかくだし、俺の家に来るか? 俺と同じ子供が多いし、飯も用意出来るのはビリヤニくらいだけど」

「飯まで用意してくれるなんてむしろありがたいくらいだ。案内してくれ」

 

 

 ビリヤニか……インドの庶民料理だな。昔インドに来た時に食った事があったが、それなりにイケる料理だった記憶がある。久しぶりに食うのも悪くない。

 

 

「今日のノルマはこなしたし、コイツを売りに行ったら案内するよ。そういえばアンタの名前聞いてなかったな、聞いても大丈夫か?」

「ああ、問題ねえ。オレはリリィ・ネセサリーだ」

「俺はレイ、孤児だからファミリーネームはない」

 

 

 目覚めた場所がスラムだった時点で予想はしていたが……やっぱりあの名前は後から付けたものか。

 ミドルネームまで付けている奴は多国籍なアンダーでもいねえからな。ボスからユニオンの連中の情報を聞いた時珍しいとは思ってた……名付けた理由も見続けていれば、後々分かるんだろうな。

 おっと、コイツに重要な事を伝えねえとマズいな。

 

 

「一応前持って言っとくが、迂闊にオレに触るんじゃねえぞ?」

「そんなのわかってるって。流石に異性にベタベタと触るほどガキじゃない」

「そういう事を言ってるんじゃねえ……話すと長くなるから簡潔に話すが、オレは直接触れると感染する即効性の病気を持ってんだよ。オレ自身は抗体を持つおかげでなんともねえが少し触れる程度でも危ねえし、最悪死ぬぞ」

 

 

 これも嘘は言ってねえ。不能(アンファンクション)は接触時間によって相手に様々な不能状態に陥らせる。服越しであれば影響はないが……古代遺物(アーティファクト)がねえ以上、記憶の中とは言え不労(アンファティーグ)に危害を加える訳にも行かねえからな。流石に引かれるだろうが、こればかりは事前に言っておいた方がいい。

 

 

「それにしては結構露出してるような……」

「そもそも触れさせねえようにしてるからな。今回はお前やガキ達が万が一にも接触しねえように事前に教えたんだ。気を付けろよ」

 

 

 この服装も直接接触による不能発動を逆手に取って敢えて露出の多い服にしている。以前の戦いの時はあまり生かされなかったがな……

 

 

「わかった、気を付けるように言っとく」

 

 

 そう言う不労(アンファティーグ)は特に恐れるような事もなく、素直にオレの言葉を受け入れていた。

 今までこう打ち明けて引かれなかった事などなかったから、その反応は全く予想していなかった。

 

 

「……随分とあっさり受け入れるんだな。引かれるのも覚悟してたんだが」

「そんな事で引く程、俺は器が小さい男じゃない。触れなければ問題ないならまだマシな方だしね。じゃあ行こうか」

 

 

 そう言って不労(アンファティーグ)―――レイは袋を背負い、スラムの方へと向かう。それにオレは付いて行く。

 まさかあんな事をあっさり口にするなんてな……お人好しなのも昔からか。

 とりあえず、これでようやくこの悪臭ともおさらば出来るな……正直これ以上いたら吐きそうだ。

 

 

 

 

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  レイ達の家

 

 

 レイがゴミ山から取ってきた再利用出来るモノを売った後、オレはレイ達が作った家に案内された。

 子供達は全てレイと同じ孤児であり、レイは子供達のリーダーとして統率をしていた。12歳になる前でここまでのリーダーシップを発揮しているとは、大したモンだ……

 法律的に抵触しそうな所はあるものの、子供達が建てたにしては立派な家を一通り案内され、ビリヤニをご馳走になった後、レイから噂に関する話をされる。

 レイ曰く、家にあるブラウン管テレビで放送されるアニメや映画の技を真似し、ある老人にレクチャーを受けている中で現在の戦い方を作り上げたのだという。

 そして仲間に危害を加えるチンピラどもを撃退するうちに噂が広まったらしい。

 その老人の教えが上手いのもあんだろうが、アニメとかの技を真似するってのはどこの国でも同じなんだな……オレが同じ年の頃はそんな事する暇なんてなかったが。

 そして、レイからあるお願いを申し込まれた。

 

 

「オレと戦いたい? お前さっきの話聞いてた筈だろ?」

「それは分かってる。けどその身のこなし、何らかの武術の心得があるだろ? 一回でいいから戦ってみたいんだ!」

「確かにあるっちゃあるが……」

 

 

 ファンやテラー、クリードにしごかれたおかげで最低限の武術は身に付けている。だがオレの武術ってのはそれを元に作り上げた我流のモノだ。チンピラ程度なら簡単に倒せるが、ハッキリ言って教えられる程の技量はねえ。

 何より不能状態にならないように出来る保証もねえ。どうするか……少しアレを試してみるか。

 

 

「……ちょっと待ってろ。露出のねえ服に着替えて来る」

「いいのか!?」

「ちょっと試したい事もあるしな……数分時間をくれ」

 

 

 そう言ってオレは人気のない場所へ移動する。着の身着のままやって来ているから、当然まともな服なんてこれ以外ない。だがここは記憶の世界。確証はないが強くイメージをすれば着慣れた服くらい作れる筈だ。

 目を瞑り、イメージするのはアンダーに入る以前の露出が少なく、動きやすさを重視した服。下手な接触を避けるため、肌をほぼ出さず、髪を帽子に隠していた頃の服を強くイメージする。

 少しして目を開くと、オレの服はイメージした通りのモノに変化していた。少しコツがいるが、上手く扱えれば服以外のイメージも出来そうだ。

 ひとまず着替えは出来たのでオレはレイの元へと戻る。

 

 

「着替えて来たぞ。これなら迂闊な接触は避けられるだろ」

「確かに接触はしないだろうけど……そんな服どこから手に入れて来たんだ?」

「細けえ事は気にすんな。かじった程度の武術でいいなら相手してやる」

「ありがとう! 家の裏に鍛錬するスペースがあるからそこに行こう」

 

 

 満面の笑みを見せながら、レイは裏にある鍛錬スペースへと走っていく。

 マセてるが、年相応な部分も見受けられる。いい意味で子供と言った感じだ。オレ自身まだ17歳だから人の事は言えねえがな……さっさと行くか。

 ―――その後、オレはレイと体術勝負をした。結論から言えば勝負はオレの圧勝で終わった。しかしこの段階で現在のレイに通じるスタイルを形成しつつあり、確かにこの年でこれなら強いガキと言われるのも納得の実力を持ちつつあった。

 戦いが終わるとレイに不定期でもいいから稽古を付けてくれと頼まれ、悩みはしたもののこれからレイと共に行動する口実を得られると考えそれを承諾した。

 そうしてオレはこの時代のレイと出会う事が出来た。だがこの時は甘く見ていた。レイが如何に最悪な悲劇を経て、不労(アンファティーグ)の発現に至ったのかを。




リリィ視点によるレイの過去編一話目でした
二人の過去を書くに辺り、どうしても今までの平均じゃ書き切れないんですよね……なので少なくとも過去編はかなり長くなると思います。
レイの過去は出来れば3、4話で終わらせたいと思っています

歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)

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