アンデッドアンラック 不■の否定者   作:獅羅

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俺が死ぬまで治らない
No.005 戦勝の神(ヴィクトール)


 

 

『もう一つ……『俺に勝て』は悔しいけど、皆に任せます』

 

 

 (エンブレム)を通して俺含むメンバーにシェンの言葉が流れる。同時にムーブの能力によって足元にヒビが入り、俺達をロンギングへと導く。

 空中から自由落下で落ちる中で確認出来るのは満身創痍となったシェンと無傷の風子、そして戦勝の神(ヴィクトール)と化したアンディ。完全にとは言えないが、なんとか間に合ったみたいだな。

 

 

「全く、世話が焼ける新人(ルーキー)だ」

「全部で11か(・・)……お手並拝見と行こう」

 

 

 ジュイスが3人の無事を確認し、戦勝の神(ヴィクトール)は笑みを浮かべながらも俺達を値踏みするように見定めている。

 

 

部位弾(パーツバレット) 指連(フィンガーズ)!」

 

 

 シェンによって空中に飛ばされた戦勝の神(ヴィクトール)が指を全て弾丸のように俺含むメンバー達に撃ち出す。しかしそれはタチアナが展開した盾によって全て防がれ、不発に終わる。

 

 

「阿呆が! 守るな攻めろ! 能力者同士の戦闘で後手に回ってどうする!!」

 

 

 全て防がれた戦勝の神(ヴィクトール)は唐突に予想外の言葉を放つ。

 敵に向かってアドバイスだと……? シェンを半殺しにした上風子を殺そうしておきながら、一体どういうつもりだ……ヤツの真意が掴めない。

 その言葉に誰も返す事はなく、ビリーがタチアナの盾を利用し、不可信(アンビリーバブル)を利用した跳弾で戦勝の神(ヴィクトール)を攻める。

 銃弾は次々と命中し、ヤツの体に次々と穴が空く。だがそれを物ともせず、部位弾(パーツバレット)で盾を弾き飛ばしていき、空いた穴も再生によってすぐ治る。

 

 

「とんでもない再生速度だな……トップ、今のうちにシェンと風子をロンギングの外へ逃がせ!」

「了解、レイ兄!」

 

 

 俺はすぐにトップに逃がすよう伝え、トップが不停止(アンストッパブル) によってシェンと風子を連れて走り出す。

 だがそれを戦勝の神(ヴィクトール)が見逃すはずもなく、すぐに指をトップ達に向ける。

 

 

「逃がすk」

「悪いがさせねえよ、戦勝の神(ヴィクトール)!」

 

 

 踏み込みを入れて一瞬で戦勝の神(ヴィクトール)の目の前に入り込み、その体を手刀で真っ二つにする。

 すぐに再生しようとしたが再生が進みづらい事に気付いた。

 

 

「不死の情報は事前に見させて貰った。切断面を焼けば再生が遅くなるのは知ってるんだ」

「成程、魂の炎で俺の断面を焼いたか……だが俺は再生先を選べる。体が駄目なら―――腕に移ろう」

 

 

 魂の炎だと? コイツ、何故俺の古代遺物(アーティファクト)を―――

 そう疑問に思った次の瞬間、俺の視界に移るのは赤一色。そして少し遅れてやって来る腹部への衝撃。

 その段階になって初めて自分が腹を殴られたと理解した。

 

 

「がはっ……!」

「レイ!」

 

 

 ジュイスの叫ぶ声が聞こえるがそれはすぐ遠くなり、資料にない技によって俺は建物に吹っ飛ばされ、そのまま民家に突っ込む。

 痛みはないが、流石に今の衝撃は相当強かった……腹にまだ拳の痕が残る程には。即座に否定しきれないダメージを食らった証拠だ。

 資料を見る限り、アンディはこんな技使っていなかった……意図的に使わなかったとも考えられるがそもそも隠す理由がない。従ってアンディ自体は知らないと考えるのが自然だ。

 これまでの出来事を思い返し、改めて確信した。やはりアイツは……アンディとは違う別人格の存在だ。

 腹のダメージを否定しているうち戦勝の神(ヴィクトール)は俺の腹に打ち込んた手からあっという間に再生し、俺の前に立つ。

 

 

「……死道(デッドロード)を食らってその程度で済んでるとはな。流石不労(アンファティーグ)の否定者だ」

「今ので俺の否定能力を……いや、知っていた(・・・・・)な? どこで知った、 戦勝の神(ヴィクトール)

「それを今の(・・)お前に教える必要はない。それとシェン(あのガキ)にも言ったが、俺は人間(ヴィクトル)だ。(トール)じゃない」

 

 

 ヴィクトル……それがコイツの、アンディの別人格の本当の名前か。

 だが今はそれよりもコイツの言葉には何か違和感を覚える。まるで俺を昔から知っている(・・・・・・・・)かのような物言いだ。

 ここでまたあの違和感が頭を過ぎる。そしてその違和感が形になる、『俺もコイツを知っている』と。

 

 

「お前は及第点(合格)だ。これから他のメンバーを見定める」

「待て! まだ話は終わってな―――」

 

 

 そう言ってヴィクトルは建物の外へ出て行き、然程経たないうちに戦闘が再開される。ヤツは言葉通りその力を見定める為にメンバーと戦っているのだろう。

 ヤツが風子以外のメンバーを殺す気はないのは分かった。なら何故風子だけは殺そうとしているのか。

 考えられるのは一つ。おそらくヴィクトルは体の主導権を完全に奪うために風子を狙っている。

 報告書を見る限り、アンディがユニオンに入る切っ掛けになったのは風子との出会い。つまりは自分が完全に解放されるためにはアンディの支えとなっている風子が邪魔なのだ。

 風子はついこの間まで引きこもっていたため、ハッキリ言って一般人として見ても弱いとしか言いようがないが、その代わり精神面には光るモノを感じた。

 何より不運(アンラック)という否定能力にはまだ粗はあるが、解釈次第では極めて強力な能力に化ける可能性を秘めていると端末越しにアンディに強く呼びかける彼女を見て確信した。こんなところで彼女を失う訳には行かない。

 俺は少しよろけるがそれも否定され、しっかりと立ち上がり、民家の外へ出る。

 

 

――――少し本腰を入れるとしよう。

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 外へ出ると、ヴィクトルがスポイルの時に使った分身を各メンバーに差し向け、それぞれを相手取っていた。

 一見それなりに善戦しているように見えるが、俺に使った死道(デッドロード)とやらを分身の誰一人として使っていない。

 この時点で相当手加減しているのが分かるが、その上でこの人数の否定者とここまで応戦出来るとは……仮にも戦勝の神(ヴィクトール)と呼ばれるだけの事はある。

 一方で本体は少し離れた場所で審査員のようにメンバーを一人一人見定めている。だがそれに割って入る奴が一人いた―――ジュイスだ。

 俺はジュイスの加勢に入ろうとするが、ヴィクトルの分身に妨害される。他の奴には1、2体で相手する中、俺には4体……意地でもジュイスの元へ行かせない気だな。

 

 

「お前の審査はもう終わっている。邪魔をするな」

「この状況でそう言われて聞く訳ねえ……だろ! 魂貫(ブレイカブルソウル)自律魂(ソウルリモート)!!」

 

 

 無形霊魂(かたちなきたましい)で拳の炎を複数作り、分身達の相手をするようそれぞれに自律設定する。

 コイツは特殊な炎を具現化したもの。本来はウェザリング等のような実体を持たないタイプの敵と戦うためのモノだが、当然実体のある奴にも普通に使える。ヴィクトルがどのくらい俺の事を知っているかはわからないが、本体ならまだしも分身がコレを捌くのは手こずる筈だ。

 

 

「(無形霊魂(かたちなきたましい)による分体か。既に自律行動出来るレベルにまで練度が練り上げられているとはな……記憶がなくとも魂が(・・)覚えているという事か)」

「悪いがさっきのような油断はもうしない。使える手は全て使わせてもらうぞ」

「…………お前も変わらないな」

 

 

 懐かしむようなヴィクトルの言葉に少し引っかかるものを感じながらも、俺は炎の純度を高めヴィクトルに攻撃を仕掛ける。

 俺の炎拳に対してヴィクトルは骨の剣ではなく血を凝固させた刃を使って対抗する。少しは本気を出してくれてるってか。こんな状況でもなければ嬉しい事だが……硬いな! こっちは気を使った硬化もしているんだぞ!?

 不壊(アンブレイカブル)以外なら大抵は破壊出来るこの拳を以てしてもヒビどころか刃こぼれすらしない!

 

 

「壊れない事を気にしているか? 安心しろ、死刃(デッドブレイド)と打ち合えるだけ大したものだ」

「お褒めに預かり光栄だが、素直に受け取れねえ……な!」

 

 

 拳と血で戦っているとはおおよそ思えない、金属音を伴った熾烈な攻防を続けているが有効打に欠ける。自律魂(ソウルリモート)が相手している分身より明らかに強いなこの分身(ヴィクトル)

 近接戦じゃ埒が明かないな。少し周りを巻き込みかねないが、アレをブチかますか。

 

 

「今からアレを使う。ジュイス以外は各自避けろ!」

「一心も避けろって事はアレが来やがるな……お前ら、急いで分身を捌いちまえ! 巻き込まれるぞ!」

 

 

 俺の意図をニコがすぐに察し、ヴィクトルの分身に聞かれないよう(エンブレム)を通して伝える。

 この攻撃で本体を倒すのは不可能だろう。だが分身ならコレで一時的だが消滅させられる筈。だからジュイスと戦っている本体以外を狙う。

 俺は戦いながら強く踏み込みを入れ、高く飛び立つ。あの時(ウェザリング)と同じく複数の炎を巨大化し、それを一気に分身達に向けて放つ。

 

 

魂貫(ブレイカブルソウル)流星群拳(インパクト・ミーティア)!」

 

 

 前回のように散り散りにではなくある程度指向性を持たせ、分身達がいる場所へ集中砲火を浴びせる。大半の分身はそれで消し飛ぶが、何体かはそれを掻い潜り、俺の元へ突撃してくる。

 

 

「やっぱりそうなるよな……! ならこれはどうだ!」

 

 

 俺は足を気で硬化、更に炎を纏いそれを極限まで研ぎ澄ます。

 

 

魂貫(ブレイカブルソウル)天翔脚刃(レッグブレイド・ソア)!!」

 

 

 その足が空を切ると同時に斬撃のように鋭い衝撃波を分身に向け何発か放つ。分身達はすぐに血の刃で対抗するが、炎の刃はそれを弾き、相手を切り裂く。

 刃を壊せないなら弾いてしまえばいいってな。

 その隙に落下の勢いを利用し瞬間的に足の炎を溜め強く噴射。どうにかジュイスとヴィクトルの本体が戦っている場所へと割り込もうとする―――が。

 

 

「あ゛?」

 

 

 目に飛び込んできたのは、俺より一足先に着いたトップとヴィクトルに肌を密着させる―――風子だった。

 

歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)

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