アンデッドアンラック 不■の否定者   作:獅羅

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主人公が技名を言いまくっていますがキチンと理由があります。
その辺りの設定は順調に進めば追々語る事になると思います。


No.006 大きい不運

 

 

 風子の突然の行動に全員が驚き、俺自身も驚愕する。

 このままでは風子達に突っ込みかねない為、再び足の炎の噴射方向を変える事で風子達の付近へ着地する。

 

 

「これで本当にどうにかなんのかよ、風子!」

 

 

 風子を連れてきたであろうトップがそう聞くと、

 

 

「うん! 多分!!」

「多分かよ!!」

 

 

 非常に曖昧な返事が返って来る。あまりに唐突な状況にジュイスですら困惑している。

 しかし何の考えもなしに戻って来た訳でもないようで、風子が言うには自分がヴィクトルと接触し続けていれば好感度が無いに等しくとも不運を呼ぶ事が出来る。それで弱ったところにカードを刺せればと考えたらしい。

 方法としては悪くないかもしれないが……いくら何でも容赦なく殺そうとしてくる相手に好感度が関係して来る不運が通用するまで接触を続けるなど途方もない時間が掛かるのは容易に想像出来る。

 何よりヴィクトルがそんな暇を与える訳がない。流石に非効率な方法と言わざるを得ない。

 そんな俺と同じ考えに至ったのか、少し考えたジュイスが代案を持ち出す。

 

 

「一瞬でいい、アンディの人格を呼び戻すんだ。その瞬間、不運を付与すればあるいは……」

「呼び戻す……」

 

 

 確かにそれが一番妥当な方法だろう。ただどうすればいいのか全くわからない状況な上、確実にヴィクトルが妨害して来る筈……ならばやる事は一つ。

 

 

「戻す? 阿呆が……俺が元だ! 随分と中で足掻いてはいるが、アイツの番はもう来な」

「させんと言ったはずだぜ!」

 

 

 俺達で分身達から風子を全力で守る。それしか方法はない。

 俺が近くの分身の攻撃を防ぐのを皮切りに、他のメンバーも分身(ヴィクトル)達と再び戦い始める。

 

 

「何故庇う! バーンを倒し、席は一つ増えた! 不運(コイツ)が死ねば更に空く! より強い否定者を俺が見繕って……」

 

 

 そう言いかけたヴィクトルに対しジュイスが攻撃し、言葉を切る。

 

 

「正義も大志もない者に―――人は動かせないよ、ヴィクトル」

「……半端者どもが」

 

 

 ジュイスの言葉に何か複雑な思いがあるのか、ヴィクトルは少し間を置いて言葉を返す。

 先程から二人の掛け合いを見る限り、浅からぬ因縁がありそうだが……今はそれを気にしている時ではない。何があっても風子は絶対に守らねばならないのだから。

 

 

「各々風子を守りつつ、コピーを撃滅せよ!」

『了解!!』

 

 

 ジュイスの命令に対し、俺含めたメンバー全員が返答する。

 殆どの分身をメンバー達が相手する中、俺とトップは風子に攻撃しようとする分身を連携して捌き、どうにか風子に攻撃が行かないようにしているが、先程より分身の動きが洗練され、少しずつだが強くなっている。

 そのため俺はともかくトップの方は移動を先読みされ、少しずつダメージを負ってしまっている。このままではトップがやられるのも時間の問題だ。

 

 

「トップ、お前は風子に直接攻撃しようとする奴だけに集中しろ! お前を攻撃しようとする奴は俺が叩き潰す!」

「わかった! 風子は任せてくれ!」

 

 

 トップの否定能力なら妨害さえどうにかすれば風子に危害を加える事はほぼ出来なくなる。後は俺がトップに攻撃する奴を捌き切れば更なる隠し玉でもない限り、対処出来る筈だ。

 

 

「…… 不運(アンラック)をメンバーに入れて何の得がある! 足手纏いになるだけだぞ!」

「それはお前がそう思っているだけだ! 否定能力はその解釈次第でいくらでも可能性が生まれる! 少なくとも俺は風子に可能性を見た!」

 

 

 戦闘面なら教え、鍛えさえすれば誰でも強くなる事が出来る。俺やシェン等がそうであるように。

 だが否定能力は違う。強く自分を保ち、柔軟な思考を持って解釈を拡げていく必要がある。

 同じ否定能力でも解釈によって大小なりとも能力の扱いは変わるし、俺も現在の解釈にまで持っていくのにはそれなりの時間を掛けた。

 だが風子はこの短期間で自分なりに模索し、無自覚ながらその解釈を拡げようとしている。今はまだ条件が限定的ではあり未熟ではあるものの、それさえどうにか出来れば、きっとあの(クソヤロー)に届く能力に成り得る。

 だからこそ、こんなところで死なせる訳には行かない!

 

 

「それは不変を失ってでも得るべきものだったとでも言うのか!?」

「……ジーナは死に場所を探していた! クエストをそつなくこなしちゃいたが、心を擦り減らし、死を考えるようになっていた……アイツ等との戦いで、ようやくその死に場所を見つけられたんだ」

 

 

 俺は数年前にユニオンに加入したが、その時点で既に彼女は精神的にかなり参っている状態だった。

 しかしユニオンの中でも飛び抜けて強力かつ応用の効く否定能力を持ち、豊富な戦闘経験もあったため投げ出す訳にも行かず、何よりその性格故に自分を殺し、表向きは気丈に振る舞い続けていた。

 しかしアンディと風子によってようやくその苦しみから解き放たれ、二人はジーナの死を悲しんでくれた。

 

 

「……ジーナの意志はアイツ等が継いでいる。それをお前に潰させはしない」

 

 

 俺がそう言った直後、風子が何か方法を見つけたのか懐から銃を取り出す。

 そしてそれでヴィクトルの頭を打ち抜いた。

 

 

「このキズは……分身にはない! ここに閉じ込めてるんでしょ……!アンディを……返せ!!」

「そうか……(そこ)を突いて一時的に戻すつもりか……!」

 

 

 よくよく見れば、確かに分身には本体にある顔の傷が全くない。

 だとすればその傷に何かあると考えるのは必然と言える。後はアンディが風子の呼びかけに応じれば―――

 

 

アンディ頑張って!こんな人格(ヤツ)に負けないで! 一瞬でいい、私に触れて! そしたら今までで、 一番!! 大きい不運をあげるから!!

 

 

 風子の懸命な呼び掛けが効いたのか、ヴィクトルの黒い髪が僅かだが白く変化していく。そして―――

 

 

そいつは……楽しみだ

 

 

 ―――一時的にアンディが表に現れる。どうやら狙いは成功したようだ。

 

 

「アンデ」

「時間がねえ、もらうぜ」

「へ?」

 

 

 風子の疑問も束の間、次の瞬間アンディが風子にキスする。若いメンバーはそれを見て顔を赤らめ、同時に分身が消滅していく。

 随分大胆な事をする……ヴィクトルを抑えるだけの不運を起こすには、これくらいが手っ取り早いのだろうが。

 一方でキスされた当の本人は苺のように顔を真っ赤にし、それを誤魔化すかのようにアンディから離れる。

 

 

「な、何してんですかみなさん! 来ますよ不運が!! 逃げて、早く!!」

「全員退避!!」

『了解!!』

 

 

 照れ隠しか風子が避難勧告を出し、それを聞いたジュイスが退避命令を出しメンバー全員がそれぞれロンギングから退避する。

 そして再び主導権を取り戻したヴィクトルが分身を飛ばそうと構えるが、途中でその動きが止まる。

 これは不真実(アントゥルース)……シェンか! アイツも大分ダメージ受けてるだろうに、よくやってくれた。これでヴィクトルもまともに動けまい。

 シェンがが作った隙のお陰で、俺を含むメンバー全員が何事もなく町の外へ出る事が出来た。そしてそれと同時に隕石の嵐がロンギングを襲い、町はみるみるうちにその形を失っていく。

 

 

「条件を満たせばここまで強力な現象を起こせるのか……凄まじいな、不運って奴は」

 

 

 情報として知ってはいるが、実際見てみると風子が惚れっぽい性格なのを考慮しても町一つ消し飛ばすだけの不運はかなりのものだ。俺でもここまで広範囲の地形変化を起こす事は不可能だからな……

 今でこれなら、解釈を拡げたらどうなる事か……それこそ神に届くかもしれない。

 隕石の嵐が収まり煙が薄くなると、そこには町があったと一切思えない大きいクレーターのみが残されていた。

 そしてそのクレーターを急いで降りる人影が一人いた。風子だ。

 風子はクレーターの中心地まで走り、かろうじて原型が残っているヴィクトルにカードを再び差し込む。

 その直後、クレーターに雪崩れ込む海水によって二人は飲み込まれるが、直前に表に戻って来たアンディが風子を庇うのが一瞬見えた。

 それから少ししてアンディが風子と一緒に海面に顔を出す。

 

 

「少しは助けてくれても良かったんじゃねえか?」

「カードを刺した時点でキミが戻るだろうと踏んでの事だ。事実戻っただろう?」

「そりゃそうだが……礼を言う。助かった」

 

 

 どうやら無事にアンディに戻れたようだな。正直あれ以上ヴィクトルと戦い続けていたらメンバーの欠員どころか全滅する可能性すらあった。

 俺は疲れないからまだしも、他のメンバーは大分疲弊が見えているしな……欠員が出なくて助かった。

 風子の方は……気を失っているだけか。ついこの間まで引きこもりだった少女があれだけ動いて海水に飲まれれば、そりゃ気絶もするか。むしろよく頑張った方だ。

 

 

「コレでスポイルの事後処理も終わりだな……全く持って疲れ……てはいないが厄介な相手だったな」

「レイ兄が今回一番活躍したんじゃね? オレ達の中で一番アイツの相手してたじゃん」

「あれはヤツが手加減してくれていたからな……本気だったらこうは行かなかった」

 

 

 トップの言葉に俺は素直に肯定は出来なかった。

 俺にだけは他のメンバーより力を使っていたようだが……死道(デッドロード)とやらを俺は見切れなかった。しかもあれでも本気の出力ではなかった。

 さっきは隠し玉がなければと言ったが、あの調子じゃ確実にまだ出していない技もあっただろう。本気を出されていたらあっという間に全滅も有り得た。

 正直、またヤツ(ヴィクトル)になる時が来ない事を祈りたい所だ……

 

 

「全員欠ける事なく終える事が出来たな。これも皆のおかげだ、感謝する」

「どちらにしろ全員でやらなければ困難だったんだ、気にするな」

「フッ、そう言って貰えると嬉しいな……全く、ヴィクトルへの物言いと言いキミはいつまで経っても変わらないな

「ん、なんか言ったか?」

「いや、何でもない。ムーブ、我々をユニオンに戻してくれ」

 

 

 ジュイスが何を言ったのか問い正そうとしたがそれとなくはぐらかされ、ムーブによって俺達はユニオンへ戻る。

 町は消え、代わりに残ったのは波打つ海の音だけだった。

歴代不労を見たい?(先代は確定で出します)

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