セスティアの提案を受け、まずはオルガ・イツカとその仲間たちへの合流をすることになった一同。アーゼナル・ガンダムが先導し、数機のプルーマがそれに随伴するように突き進む。幸いなことに、プルーマが展開した磁場により此方が探知されることはない。安心して進むことが出来る。
【CGS─────火星近辺の民間警備会社。しかし我々が確認した記録データの照合の結果、傭兵組織としての見方が強い。何より、会社の資金の動きを見るに─────明らかな汚職、悪行への加担が見られる】
『…………悪いとこ、なのか』
「そうですね………ですけど、皆が悪いわけではないんですよ。悪いことを考える人が一部いるんだけだったりしますから」
プルーマに意識を投影したアザゼルの説明を受け、そう感想を吐露するエイル。アーゼナル・ガンダムの中でそう呟いた彼に、プルーマに乗ったセスティアは優しく説明する。「ん、成程」とエイルはセスティアの話に納得する姿勢を見せる。
同じくプルーマの上に乗った、というよりも張り付いた少女たち二人が口を開いた。
「エイルだっけか、セスティアに懐いてるな。見た目は私達とそっくりなのに、子供のようだぜ」
「………子供にしては、学習能力が高い」
「そりゃそうだな。ま、セスティアを慕う私たちが言っても、って話か」
『ん、そう言えば………』
粗雑な態度が目立つ男前な少女 ミクと無口で寡黙な少女 リントの語らいの中、思い出したようにエイルが疑問を吐露した。
『セスティアが言ってた、オルガって誰?………どんな人?』
「………ヒューマンデブリであった頃に、知り合った人なんです。私に色々と世話をしてくれて、約束をしていたんです。偉そうなって成り上がったら、互いを助け合おうって」
─────ヒューマンデブリされたばかりで、まだお嬢様としての自覚が拭えきれなかった彼女は、両親を喪ったばかりもあって塞ぎ込んでいた。何より、まだ穢れてすらいない彼女を慰みものにしようと、何人が手を出そうとしたことか。
『………よぉ、アンタ。大丈夫、だよな』
そんな彼女を救ったのが、オルガ・イツカという青年であった。元お嬢様であった彼女へ偏見もなく、彼はCGSに一時期だけいたセスティアを庇ってくれた。その内、別の会社に売り飛ばされることになった直前に、彼女は短い間だが仲良くなった彼と約束したのだ。
─────必ず、お互いを助け合おうと。だから諦めずに、必死で生きていこうと。
「ああ、セスティアの好きな相手だろ?そんな約束するなんて、ホント両想いだよな!」
「っ!違います!オルガさんとはそういう関係では─────ミク!」
顔を真っ赤にして羞恥心を顕にしたセスティアが、ミクへ怒る。怖い怖い、とカラカラと笑う少女たちの様子を尻目に見ていたエイルは心の底からの笑みを零した─────直後、彼の視界が、アーゼナル・ガンダムのセンサーが、何かを捉えた。
『………セスティア、CGSって……この先?』
「?えぇ、そうですけど………」
『─────煙、見える。戦ってる、みたい』
「ッ!本当ですか!?」
慌てたようにセスティアが声を上げると、彼女の乗っていたプルーマーが装甲を開き、ゴーグルを展開する。「ありがとうございます……」と律儀に頭を下げたセスティアがゴーグルを覗くと、戦闘の様子が見えた。
息を呑んだ彼女に、アザゼルから冷徹の報告が告げられる。
【─────情報の精査、完了。ギャラルホルンの襲撃であると確認。目的に関する情報は収集中………死傷者が数名発生している模様】
「っ!そんな………!」
悲しそうに、顔を歪めるセスティア。そんな彼女の様子を目にしたエイルの意思は、即座に決まった。
『─────助けに、行く。どうすればいい?』
【我が主よ。その機体、アーゼナル・ガンダムには変形機構が搭載しています。操縦に関しては、貴方の意思で可能かと】
『変、形…………』
アザゼルはエイルの決断を肯定するように、淡々と言葉を紡ぐ。自身の従者たる機械の言葉に、エイルはふとモニターへ両指を添えた。
背中に連結した複数のケーブルにより、機体の操作は楽である。だからこそ、意識すれば、望めばいいのだ。急いで、一刻も早くあの戦場へと向かえる形を。
【─────変形・ストライダー】
ガシャン!ガシャガシャガシャッ!!、とアーゼナル・ガンダムの躯体が折り畳まれていく。ヒト型の姿を失い、モビルスーツはモビルアーマーへと─────真紅の装甲を有した戦闘機へと変形を終えた。
翼を大きく展開した戦闘機は、凄まじいほどの音を響かせ─────飛び上がる。飛翔、というよりも、射出されたように、音速となって遠くの戦場へと向かっていくのだった。
「─────なぁ、セスティア。あれ、本当にモビルスーツなのかよ?」
「………………さぁ。ただ一つだけ、彼が味方であることは事実です」
「私が言いたいのはそうことじゃなくてな………まぁ、いいか。それで?私達はどうするよ?」
【─────敵は、エイル様がお相手なさる。我々はCGSとの合流をするべき─────通信を繋ぎ、彼等との連絡を】
◇◆◇
─────CGSの前、戦場となっていたその場所に、静寂があった。モビルワーカーを蹂躙するほどの大暴れしていたグレイズを撃破したのは、地面を破って現れた─────白いモビルスーツ。
ガンダムフレームと呼ばれるその一機は、メイスによってグレイズを容赦なく叩き潰していた。残骸と化した僚機を、二機のグレイズが見続けることしか出来なかった。
新兵のアインが先走るのを抑える、クランク。ギャラルホルンの一員でありながら、今回の作戦に乗り気ではなかった彼は目の前の敵を無力化するべきかと、動こうとした─────その時、白いガンダムが咄嗟に飛び退いた、その場所を爆発が襲った。
『ミカ!平気か!?』
『うん………大丈夫。今のは………援軍か』
静かに顔を上げたガンダムの視界の先には、複数の機影があった。神々しい装飾を有したグレイズの一群が、統率を取った動きで此方に向かってきていた。恐らく、砲撃を行ったのも彼らであろう。
『そこの機体………!何者だ!所属を名乗れ!』
『─────貴様は、ギャラルホルンか。我々はレガリア神聖教団所属、
『ッ!?レガリア神聖教団だと!?』
通信越しに呼び掛けたクランクは、返答として返ってきた言葉に驚くしかなかった。一方で、白いガンダムと通信を取っていたオルガは、近くにいた軽薄そうな青年─────同じCGS所属の一人、睦美・スカイウェイブが冷や汗を滲ませていたことに気づく。
『あの装飾………神聖教団の騎士隊か。ヤベーのが出たなぁ』
『………知ってんのか?睦美?』
『外では有名な奴等だよ。分かりやすい話、武力を持った宗教団体さ。あのギャラルホルンが手を焼いて見逃したって言う、規格外の連中』
『ッ!そんな奴等がなんで今になって襲ってきやがるんだ!?』
『さぁ…………連中の目を引くナニカが、ここにあったのかもねー』
レガリア神聖教団。
数十年も前から突然発生した宗教団体。唯一神の存在を掲げ、慈愛の聖女と呼ばれたジブリエール・H・クレイシアを女皇とした、一大勢力である。『神の名において、人は不平等に在らず』という理論を掲げており、彼女の教えは宇宙に広がるほどの勢いである。
何より問題なのは、あのギャラルホルンが対処に困っているということ。武力を有した教団を弾圧しようと軍が編成されたが、教団の率いる勢力に返り討ちに遭い、死傷者は数人という異常なまでの事態であった。
捕虜を無傷で返還し、慈しみの心で迎え入れた女皇の慈悲深さに多くの民が心を打たれ、ギャラルホルンはレガリア神聖教団の独立を容認するしかなかった。それ故に、彼等はある程度の自由を許されているし、ギャラルホルンは強く口出しも出来ない。
『騎士隊が一体ここに何の用だ!?』
『邪魔などとんでもない。我々は貴様達の救援として向かわれされたのだ。これはコンラッド支部長からの、正式な承認を得ている』
『馬鹿な!そんな話は聞いていません!』
『御託は不要!我々の使命はあくまでも任務を遂行すること!貴様もギャラルホルンの一員であるのならば、黙って我々の協力を受け入れよ!』
反発するアインであったが、騎士隊は高圧的に押し返す。大人しく従うしかなかったクランクたちを尻目に、騎士隊はそのまま標的を白いガンダムへと定めた。
『ガンダムフレーム、見れば恐ろしい形相よ。女皇猊下の言う通り、正しく世を乱す悪魔よ』
『故にこそ、我々が討ち取るのですね?隊長』
『可能であれば、拿捕せよ。悪魔を調べる有力な機会だ。最も、難しいのであれば、破壊が最優先であるがな』
『あのガンダムの守る付近に人間がいます。巻き込む可能性がありますが、如何しますか?』
『─────必要な犠牲だ。悪魔の征伐において、犠牲になるのは致し方なし。それこそ、彼等のような無辜の魂が天に送られることこそ、主の望むことよ』
此方に向かってくる騎士隊のモビルスーツ群に、CGSの空気は絶望に近いものとなっていた。何故なら、モビルワーカーでは到底相手にならないモビルスーツ、グレイズが十機もいるのだ。いくらこちらのガンダムが─────バルバトスがあったとしても、流石に厳しいだろう。
バルバトスのパイロットであるミカという少年も、厄介そうな顔をしていた。恐らく、あのギャラルホルンの一団よりも手強い相手だとも、本能的に察していた。
『それでは!総員、攻撃開─────』
騎士隊のグレイズが砲撃を始めようとしたその瞬間、空から伸びた光線が、グレイズの展開した砲身を消し飛ばした。「何!?」と慌てた騎士隊と、困惑するCGSの一同。ふと、一部のメンバーが『ソレ』に気付いた。
「っ!やべぇぞ!なんか飛んでくる!」
「─────睦美!レーダーで捉えられるか!?」
「捉えてる!けど、なんだこれ!?速度が尋常じゃない!バカでかいナニカが、突っ込んでくる!!」
すぐに、彼等の視界にもそれが見えた。
─────地上のギリギリを飛翔する、鋼鉄の戦闘機。真紅の装甲に覆われた『ソレ』は爆音を響かせて飛翔していく。砂煙を撒き散らしながら飛来したソレは先端部の装甲を開き、激しい光を放つ。
直後に────放射された光線が、グレイズ群を狙った。一掃するように放たれた高出力のビーム砲は、複数のグレイズの脚を焼き尽くし、無力化した。
「び、ビーム兵器!?ナノラミネートアーマーを一瞬で焼き尽くすとか!無茶苦茶だぁ!」
「っ!アレはなんだ!?知ってんのか!?」
「大昔に存在したっていう兵器だよ!今はラミネート装甲のお陰で無力化されたって話だったのに!あんな紙屑みたいに破るなんて、化け物じゃないの!?」
CGSの中でも数少ない教育を受けたことのある子供であり、歴史など知識欲が多い青年、睦美が信じられないと言わんばかりの悲鳴を上げる。
彼ほどマトモな教育を受けられていないオルガだが、その様子から全てを察した。目の前のアレは、モビルスーツよりも異常な存在であると。
「………オルガ、どう見る?」
「なんだ、ユージン。何が言いてぇ?」
「アレが敵かって話だ。連中と一緒にやるべきじゃねぇか?」
「────バルバトスを、ミカを行かせて勝てる相手に見えるか」
反発心の高いユージンは、オルガの意見を受けて押し黙った。彼とて分かっているはずだ。あの存在が敵ではなく、味方である可能性が高いことを。だが、それを証明できるだけの確証がない。下手に判断して、敵だった場合、犠牲になるのは自分だけではなく、仲間なのだ。
判断しかねていたオルガの握っていた無線機が、突如ノイズを走らせる。回線に無理矢理介入してきたその声は、彼のよく知る相手のものだった。
『────聞こえますか!?CGS!オルガさん!聞こえていたら返事をしてください!』
「っ!この声────セスティアか!?」
『私達は今CGSへ向かっています!約束を、果たしに来ました!』
「……ってことは、あのデカいのは………!」
『私の味方です!「彼」に任せてください!私たちを、信じて!』
少女の張り詰めた言葉に、オルガは拳を握り締める。悔しさや恥ずかしさ、などではない。彼の顔には、確かな笑顔があった。信じて良かった、という純粋な喜びに満ちた笑みが。
「────聞こえるか!ミカ!あの赤い奴は味方だ!協力して戦え!」
「オルガ!?正気か!?誰だか知らないが、信じられんのか!?」
「信じろ!────アイツは、大丈夫だ」
『分かった、オルガ。赤いのが味方、それ以外が敵か』
納得しかねた様子のユージンを他所に、ミカと呼ばれた少年はすぐに納得した。そのまま空中に飛び上がった戦闘機、アーゼナル・ストライダーへとコンタクトを取り、オルガは連絡を求めた。
「赤い機体のアンタ!聞こえるか!CGSのオルガだ!」
『オルガ………セスティアの、好きな人。どうしたの?』
「はっ、はぁ?…………いや、それより。アンタの機体、何処までやれる?あのモビルスーツの部隊、やれるか?」
『────勿論』
「そうか、ならそいつらを任せる!ミカはギャラルホルンのモビルスーツとモビルワーカーを何とかしてくれ!それが終わったら、赤い奴の援護を頼む!」
『ん、了解。任せたよ、赤い鳥の人』
『分かった………赤い鳥の人って、俺のこと?』
首を傾げたエイルだが、すぐに意識を戻す。地上では騎士隊のグレイズが砲撃を続けて此方を墜とそうと躍起になっている。ストライダーでは数的不利な状況も厳しい、そう判断したエイルは即座に元の形態へと変形した。戦闘機の姿から変化したアーゼナル・ガンダムが降り立った瞬間、全ての勢力が目を取られた。
『なッ!?ガンダムだと!?』
『馬鹿な……!あの白いモビルスーツの同型機か!?』
『おぉ、バルバトスと似てるな。同じタイプみたいだ』
狼狽する騎士隊とギャラルホルン。ミカはそんな相手の機体の変化というよりも、自身の乗る機体と似た姿なことに興味が惹かれたようであった。まあ、すぐにギャラルホルンへの追撃に戻ったが。
『う、撃て!撃て!ガンダムフレームが増えようと関係ない!まとめて撃破しろぉ!!』
『────!』
グレイズの銃砲の雨が、一斉にアーゼナルへと降り注ぐ。エイルは機体を操作し、再び変形を遂げた。ヒト型とはかけ離れた、四足獣の形へと。
『隊長!また姿が────!』
『ええい!怯むな!姿が変わった程度で、我々騎士隊の敵では────なッ!?』
砲撃を再開した彼等の前に、四足獣と化したアーゼナルが迫る。そのまま奪還したアーゼナルは、背中や頭部から展開した刃で、グレイズの下半身を辻斬りで破砕する。
慌て始める騎士隊を尻目に、エイルは静かに対処を考えていた。あくまでも機体を無力化するだけで、殺しは極力避ける。そうするのは、セスティアから言葉を教わっていた時の話が理由であった。
────エイル君、貴方はこれから戦うことになると思いますが、相手を殺すことは極力避けて下さい
────………殺す?って、何?
────我が主よ、殺すとは対象の排除………物理的な存在の抹消。生命体の持つ生命を奪い、生命活動を停止させるということである。人類全体でも悪と定義されやすい、方から外れた行為である
────悪、つまり悪いこと、なのか………?
────………悪、と呼ばれる行為ではあります。同時に、そうしなければ生きていけない人達もいるんです。やりたくなくても、やらなきゃいけない。自分達が殺されてしまうから、殺しを受け入れなければならない人達が…………私達も、そうです
────だから、君は無闇に殺しはしないでくださいね。君はきっと、誰かを守れる────優しい人なんですから。
『────彼等は悪かもしれない。だが、ソレは命を奪っていい理由では、殺しをしていい理由にはならない』
エイルは思い出しながら、グレイズの一群を蹴散らす。武装ごと腕を破壊し、下半身を潰す。決してコクピットを狙わない。手を汚さないでほしい、とそう願われたからには。
産まれ落ちたばかりで純粋な彼は、それが正しいことだと信じている。だって、命を奪わないことが、悪いことだとは思えないから。彼女がそう願ったことが、間違いだとは思えないから。
『ば、馬鹿な………!我が、騎士隊が………』
『隊長………我々は、どうすれば………』
『…………女皇猊下にこの事をお伝えする。貴様らは、すべきことを理解しているな?』
『────は、全ては女皇猊下の為に』
その瞬間、残っていたグレイズの一機が背を向けて撤退を始めた。戦場から離脱しようとするグレイズに気付いたオルガが通信越しに叫んだ。
『敵が逃げるぞ!止めろ!』
『────了解』
大方のグレイズを無力化したアーゼナルは、ガンダムへと変形して右腕のキャノン砲を展開する。高出力のビーム砲で下半身を消し飛ばそうと、射角を逸して撃ち放った────直後だった。
『おおおおおおおっ!!主の為に!女皇の為にぃいいいいい!』
ナノラミネートアーマーを貫通するビームを、もう一機のグレイズが受け止めた。いや、実際にはその威力により焼かれ、コクピットは消し飛ばされた。思わずエイルは混乱する。命を奪ってしまったことよりも、別の事実に意識が取られたのだ。
『自滅、した?』
直後に、爆音が周囲から響く。無力化したはずのグレイズのコクピットが爆発、いや自爆したのだ。聞こえてくる断末魔は、先のパイロットと同じような、狂信の声。
────自分から命を絶った、と理解した彼はその理由も分からず戸惑うしかなかった。
◇◆◇
ギャラルホルンのモビルワーカーは殆どが撤退、グレイズ二機が降伏し、CGSでの戦闘は幕を下ろした。だが、何も問題が終わったわけではない。集まったオルガ達は、後に現れたブルーマと共に姿を現したセスティアたちと対面した。
「────お久しぶりです、オルガさん」
「………セスティアか。まさかお前に助けられるなんてな」
「恩を返せたようで、何よりです」
オルガと語らい合うセスティア。穏やかな笑みを浮かべる彼女に、オルガは困ったように目を逸していたが、すぐに観念したように頭を下げた。
「ホントに男ばっかだな。ここの連中」
「………それに、あの背中のやつ。なんだろ」
【────推測の結果、阿頼耶識システムと判断。モビルスーツ、もといガンダムフレームの操縦機能の一つとして開発された技術。本来のよりも技術低下した結果、安全性が欠如していると考察】
少女たち、ミクとリントの疑問の声にアザゼルが淡々と答える。少年兵達の背中のピアス、阿頼耶識の痕跡にアザゼルの反応は無機質ながら、複雑そうな感情を秘めていた。
「女の子だけか………三人でよく無事だったな」
「三人っていうか、他にもいるだろ…………人じゃないみたいだが」
「モビルワーカー、じゃねぇよな?なんだあれ、すげーな。なんか知ってっか?睦美」
「知らなーい。もっとちゃんとした文献とかありゃ分かるかもしれんけどさー」
一方で、CGSの少年達も一行に対して興味深げな反応を見せていた。少女たちのことも目に惹かれるが、一番気になるのは人が乗っていないのに稼働しているプルーマたち。彼等の様子が気になる少年兵達は近付こうとして、『ビー!』と反応したことで逆に驚かされていた。
「…………なぁセスティア。あのモビルワーカー?みたいなのは、仲間ってことでいいんだよな?」
「はい、私たちに協力してくれる仲間です。それがどうかしましたか?」
「────俺は、俺達はCGSを乗っ取るつもりだ。可能なら、お前らにも着いてきてもらいたい。どうだ?」
「私はやミク、リントは賛成です。ですが、彼等の方は意見を聞いてから………」
「そこのアンタは、どうするつもりだ?セスティアを助けてくれたらしいじゃねぇか。仲間として受け入れたいが、アンタ達の判断に任せる」
【────我々の判断で決めることは不可能。我々の行動を決めるのは、我が主のみ】
「────オレは、いいと思う」
そう言って、エイルはアーゼナルから降りた。彼の姿を見たオルガや少年兵達も驚愕したように立ち尽くした。感情の欠如したような少年は、自分達と同じ見た目であるが────中身は人間よりも無機質な、純粋な存在である。
何より、異常なのは────背中から伸びたケーブル。シュルル、と音を立てて戻ったソレは、オルガ達の身体に刻まれた阿頼耶識とは全く別物であると、そう実感できた。
「セスティアが、信じられる相手なら………良い人、オレ、信じる」
【貴方が臨むのならば、我等は従います────オルガ・イツカ。我々は君達に協力する。だが、我々の主はエイル様であることは理解してもらおう】
「ああ、分かってる。助けてくれた相手の意向を聞かねぇなんて、筋の通らねぇ真似はするつもりなんざねぇ」
アーゼナルから降りて、地面に着地したエイルにオルガは向き直る。彼はセスティアの人柄をよく知ってる。彼女がここまで言うとなれば、彼等は信じるに値するのだろう。そう確信したオルガは快く受け入れる為にも、手を差し出した。
「アンタがコイツらのリーダーか。俺はオルガ・イツカ、これからはよろしく頼む」
「……………?」
「エイル君………!それは握手って言う、人間の挨拶なんですよ!?」
「挨拶………ん、分かった。よろしく、お願いします?」
困ったように、手を握り返すエイル。表情を変えない少年の様子にオルガは苦笑いをこぼしながらも、懐かしい感覚を味わっていた。自分が誰よりも信頼の置ける、相棒とも呼べる少年のことを思い出し、笑った。
「なんというか、不思議な感じだな………ミカに似てるようで似てないっていうか、他の奴等よりも子供みたいに見えるんだが………」
「ミカって…………あの機体に乗ってた人?」
「あぁ、そうだ。ミカは今は休んでるから、起きた時に挨拶してやってくれ」
エイルとオルガが話している間、アザゼルの意思が投影されたプルーマだけが鎮座するバルバトスを凝視していた。無機質なアイセンサーを向けたプルーマから聞こえた声は、誰にも聞こえなかった。
【────まさか、今見合うことになるとはな。バルバトスよ】
レガリア神聖教団
地球圏内で発足された宗教団体。神の子と呼ばれる聖女 ジブリエールを教祖として大きく勢力を拡大させていった。ついには複数の組織とコネを持つほどになり、軍事会社と提携してモビルスーツの開発すら実行できるほどの力を有していた。
その事へ脅威を覚えたギャラルホルンから様々な手段で排除を画策されるが失敗、最終的に派遣された大部隊が返り討ちになったこと、その際のジブリエールの演説により多くの支持を集めることになった。
その結果、ギャラルホルンはレガリア神聖教団と講和を結び、彼等を一勢力として認めることになった。教祖であったはずの彼女は女皇と呼ばれるようになり、教団は一つの国家の中核となるほどに発展した。