鉄血のオルフェンズ エンゼル・クライシス   作:虚無の魔術師

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出会いと勧誘

「あー!ミカヅキ来たー!」

 

「クーデリアもだ!………あれ、その人誰?もしかして、新しく来た人!?」

 

「うん、俺達の仲間。クーデリアと一緒に手伝ってくれるだって」

 

「初めまして、二人とも!オレはエイル!よろしくね!」

 

 

よろしくー!と元気そうな双子の少女に、エイルは同じように笑顔で応える。彼とクーデリアを農園へと連れてきた三日月は、戸惑うクーデリアに軽く説明すると、農園の主である初老の女性と話していた。

 

 

「あの二人も手伝うのは分かるけど………後ろのものかい?」

 

 

話の最中、初老の女性 サクラがエイル達の後ろを見ながら聞く。視線の先にいたのは、布を被せられたプルーマ。『アザゼル』がエイルの護衛として派遣したプルーマだが、人目につかないように布を被せられて隠されていたのだ。

 

そんなプルーマに、エイルは首を傾げて問い掛けた。

 

 

「…………一緒にやる?」

 

『─────!』

 

「ん、手伝うって」

 

「ふん、なら大仕事でもしてもらおうか。それだけ大きいなら大丈夫だろうね」

 

 

そうして、エイル達の仕事が始まった。やることは単純、ある程度刈られた畑の中に落ちたコーンを拾い集める作業だ。だが、意外にも広く、慣れない作業であるからこそ、厳しいものがある。

 

他の方の仕事に向かった三日月や、重作業中のプルーマを他所に、エイルとクーデリアはせっせと動いていた。無機質かつ、淡々と手際の良くなるエイルと、不慣れではあるがそれでも楽しそうなクーデリア。

 

 

「大変、ですねっ」

 

「………大丈夫?手伝うよ」

 

「いえっ!まだまだ、平気ですから!」

 

 

汗を拭うクーデリアを気にかけたエイルだが、彼女はまだ動けるらしい。大体のコーンを運んでいた所で、クーデリアが俯いたまま呟いた。拾い上げたコーンを見ながら、複雑そうな顔で。

 

 

「…………三日月さんが、言ってました。このコーン10キロで50ギャラーだと」

 

「?それってどのくらいなの?」

 

「あ、えっと………市販のコーンで300ギャラーくらいです。このコーンは食用ではなく、燃料として使われるみたいです」

 

「そうなの?美味しそうなのに」

 

 

心の底から不思議そうに、エイルはそう零した。「そうですよね」とクーデリアも頷く。しかしすぐに表情に陰りが差したクーデリアに、エイルは問い掛けた。

 

 

「…………気にしてるの?あの時のこと」

 

「はい………私が何も考えず、CGSに来たせいで、多くの方が巻き込まれました。そのせいで、亡くなった人もいます。ここの人達がどれだけ大変な思いをしてるかも、私は知りませんでした」

 

「クーデリアさんは、悪い人じゃないよ」

 

 

そう言い切ったエイルに、クーデリアは違うと否定しようとした。だが、それをエイルが制する。淡々と語った少年の言葉に感情は欠落しているが、それでも気遣いの心だけは感じられた。

 

 

「あの時の犠牲者は、クーデリアさんのせいじゃない。彼等を傷付けて命を奪ったのはギャラルホルンの人達で、一番悪いのはああいうことを命令した、偉い人だと思う」

 

「………」

 

「オレにはクーデリアさんみたいに、目標っていうのが分からない。ここに居るのも、セスティア達の力になりたいって思っただけで…………どうしたいかも分からない。だから、クーデリアさんは凄い人だし、良い人だと思う。もしそれでも気になるんだったら、その倍の数の人を助けていこうよ」

 

 

そう言ってくれたエイルに、クーデリアは否定し切ることも出来なかった。ここに来てから自分がどれだけ甘い理想を掲げていたかを理解させられた、だがそれを応援し、肯定してくれるものいる。だからこそ、自分も変わらなければならない。そう決意したクーデリアはエイルに感謝を言おうとして─────何かに反応した彼の変化に気付いた。

 

 

「─────」

 

「あの………エイルさん?」

 

「ごめん、クーデリアさん。ちょっと失礼」

 

言うや否や、エイルはその場から消え去った。いや正確には信じられない膂力で跳んだことには、誰も気付けない。唖然としていたクーデリアは、直後に響き渡った悲鳴と轟音を聞き、我を取り戻した。

 

 

◇◆◇

 

少し前の火星辺境。

 

 

「正に不毛の大地、だな」

 

「…………」

 

「どうした?ヴェスタ、何か気になるところでもあるのか?」

 

 

人気のない荒野の中、車から降りたマクギリスたちが辺りを見渡していた。呆れたようなガエリオの一言を聞いてか顔を曇らせたヴェスタに、彼が不思議に思ったらしく問い掛けた。

 

 

「………火星の資源は豊富と聞いてます。でも、ここの人達は生き辛そうでしたね」

 

「未だ発掘されていないものも含めて、火星の資源は豊富なのは確かだ。だが、地球のように自立できないのは、水や空気の使用量が厳しく定められているからだろうな。何より、その資源の大半を人々に還元せず、私腹を肥やす者がいるからだ」

 

「…………コーラルもその一人というわけか。それで、態々こんな所に降りてきたんだ。探してたのは見つかったか?」

 

「あぁ、見ろ─────砲撃跡だ」

 

 

何一つない荒野に見えるが、所々に砲撃の跡が残っている。普通に見れば気付かないだろうが、軍人であり監査部のマクギリス達だからこそ気付けたものだ。

 

車に乗り込んだマクギリス達。運転はガエリオに任せ、助手席にマクギリス、後方にヴェスタという布陣である。運転中、ガエリオは気になったらしくマクギリスに話を振った。

 

 

「で、砲撃跡がどうだったんだ?アレがお前の探してたものか?」

 

「ああ─────コーラルが出撃させた火星支部の大隊が行方不明になったと聞く。何処に姿を眩ましたかと思っていたが、やはりこの付近で戦ったようだな。そして─────」

 

「全滅した、ということですか」

 

 

淡々と問い掛けたヴェスタに、ガエリオは運転中ながら顔をしかめた。有り得ない、とでも言いたげな親友の顔を見据え、マクギリスは答える。

 

 

「有り得ない話でもない。そうでもなければ、大隊が行方を眩ましたのにも納得がいく。最も、それが本当であればギャラルホルンの正規兵、グレイズをも倒せる戦力がこの火星に存在していることになるがな」

 

「………それこそ有り得ないだろ。グレイズに勝るものなど、大昔の超兵器でもなければありえない。まさか厄祭戦を暴れたっいうモビルアーマーが現れた、とか言い出さないだろうな」

 

「…………………」

 

ガエリオとしては、冗談のつもりだった。しかし押し黙った親友の様子に、ガエリオはえ?と困惑を隠せない。後ろの席のヴェスタもガエリオと同じ様子でマクギリスを見ていた。

 

 

「………先日、アリアンロッドから派遣された部隊が同じく姿を眩ましたようだ。情報によると、彼等を撃退したのは地下で眠っていたはずのモビルアーマーだと言う」

 

「は、はぁっ!??」

 

「ちょっと!パイセン!前、前ッ!」

 

 

同様のあまり視線を離してしまったガエリオ。本来、人気のない荒野を車で走っていた為、事故の心配などなかった─────だが、もう一つの偶然により、最悪な事故になりかけた。

 

視界の隅、トウモロコシ畑から二人の少女が飛び出してきたのだ。慌ててハンドルを切り、ブレーキを踏んだガエリオだが、間に合わない。事態を理解しきれず立ち尽くす双子に車が突っ込んでしまう─────そう思ったガエリオの視線の先、少年が現れた。

 

比喩などではない。赤みがかった黒い長髪の少年が、空から降りてきたのだ。跳躍したように思えた彼は素早い動きで双子を抱き締め、片手を突き出す。それは車を押しのけようとしているようにも見えた。

 

 

「っ!ヴェスタ!離れろ!」

 

「了解!」

 

「え、は!?俺は─────」

 

 

車から飛び降りた二人に意識が取られたガエリオに、強い衝撃が襲った。突然、作動したエアバッグに顔が包まれ、車全体が大きく揺れる。エアバッグに保護されたとは言え、顔面への衝撃が大きかったガエリオは鼻血を流しながら、思い出す。

 

 

「そ、そうだっ!おい!お前達大丈夫か!?」

 

「…………二人は無事。ね、クッキー、クラッカー」

 

「う、うん。どこも怪我してないよ?」

 

「そうか………それは良かった。って、それより!」

 

 

双子の少女たちと少年に怪我がないことに心から安堵したガエリオは、直ぐに車から降りた親友と後輩へと駆け寄る。詰め寄ろうとしたガエリオは、唖然としたように車を見つめる二人に、気概が折られた。

 

 

「マクギリス!ヴェスタ!俺を置いて─────どうした?二人とも」

 

「………ガエリオ、車を見てみろ」

 

「ん?車が何…………うわっ、酷いな。コレ、使い物になるのか?帰りの手段をどうするか………」

 

「そうじゃない。車がここまで壊れるか、という話だ。少年一人に接触しただけで」

 

 

言われたようやく、ガエリオもそれに気付いたらしい。走行中の車の前面は大きくへしゃげており、端から見れば事故に遭ったようにしか見えない。けれど、実際には少年一人に止められただけなのだ。

 

 

「無傷だな………何者なんだ、彼は」

 

「さぁ、私にもサッパリだ。とはいえ、素直に答えてくれるはずもない」

 

「クッキー!クラッカー!─────ッ!」

 

 

直後、トウモロコシ畑から飛び出してきた三日月が目を見張る。クッキーとクラッカーを庇ったような姿勢を見せるエイルに、思わず殺気を抑えきれず視線を向ける三日月。瞬間、殺気に勘付いたヴェスタが腰に手を添えるが、三日月から殺気が消えたことに戸惑った。

 

「…………」

 

 

三日月も、同じく当惑していた。視線の先にある車が見たこともないくらいひしゃげており、明らかな異質さしか感じられない。その状況にある程度冷静になれた三日月は、双子に問い掛けた。

 

 

「………大丈夫?」

 

「うん、エイルが助けてくれたから」

 

「私たちが急に飛び出しちゃって」

 

 

そう言う双子に、三日月は立ち上がって、三人組の方へ駆け寄る。未だ警戒したように腰に手を当てたヴェスタを鎮めたマクギリスたちに、三日月は軽く頭を下げた。、

 

 

「その………すみません」

 

「あ、いや、いいさ。俺の方も不注意だったわけだし…………ん?お前、それは………」

 

「────阿頼耶識」

 

 

上着を聞いていないために、背中に見えた突起に気付いたガエリオが問い掛けると、ヴェスタが驚いたように呟く。阿頼耶識!?と声を荒らげるガエリオの隣で、マクギリスが目を細めた。

 

 

「やはり、阿頼耶識か。火星の一部では使われていると聞いていたからな、本当だったか」

 

「………人体に機械を埋め込むなんて────だッ!?な、何をするんだ!?」

 

「失礼ですよ、パイセン」

 

 

青ざめたガエリオの足を踏みつけ、厳しい顔をしたヴェスタは三日月が目の前にいることを示す。失礼なことを言ったと自覚したのか、「すまない」と頭を下げたガエリオだが、真っ青な顔のまま車の陰へと離れていった。

 

「………全く」と呆れた様子のヴェスタはマクギリスと共に頭を下げた。

 

 

「怖い思いをさせてすまない。こんなものしかなくて申し訳ないが、受け取って欲しい」

 

「上官の非礼を詫びます………特務三佐はあのような話は苦手ですので」

 

 

クッキーとクラッカーにお菓子を手渡すマクギリス、その横でヴェスタは三日月やエイルに深々と頭を下げた。「いいよ、別に」と告げる三日月だが、その目は剣呑さを失ってはいない。互いに睨み合う二人にエイルは声をかけようと思ったが、その瞬間ビスケットやアトラが遅れて駆けつけた。

 

妹たちが無事であることに安堵するビスケット。そんな彼と話していた三日月をジッと見つめていたヴェスタは、ふと口を開いた。

 

 

「あ、そうだ。貴方達に尋ねたいことがあります─────この付近で戦闘が起きたりしませんでしたか?」

 

「………えっと」

 

「あ!そういえば何日か前、ドカドカうるさかったんですよ!夜中に大騒ぎだなって思って………近所に警備会社があって、よく訓練してるのを聞くので、てっきりそれだと…………何か、戦闘があったんですか?」

 

「すみません。その件につきましては我々も調査中でして………何か分かったことがあればギャラルホルンの火星支部へ連絡をお願いします。此方が対応いたしますので」

 

 

そう言って、ヴェスタは引き下がった。それ以上口を開くつもりのないヴェスタに一先ずはと安堵したビスケットであったが、突然マクギリスが口を開いた。

 

 

「────ここの付近で、何か掘り当てられたものに心当たりはないかい?」

 

「?掘り当てられたもの?」

 

「例えるなら、モビルスーツに匹敵するような大昔の兵器だ。火星の辺境にはそういう危険なものが眠っていると聞く。そういうことを知っているなら、教えて欲しい」

 

「────いえ、僕達は心当たりはありませんよ。そういうモビルスーツが合ったとしても、どうするかも分からないので」

 

「………そうか、邪魔をしてすまない。行くぞ、ガエリオ、ヴェスタ」

 

「了解です、マクギリス先輩………ほら、行きますよパイセン」

 

 

吐いたばかりで気分が悪そうなガエリオに肩を貸すヴェスタはマクギリスと共に一礼して、連絡をし始めた。どうやら車が壊れたので、移動手段を呼ぶことにしたようだ。畑の中へと戻っていく中、ビスケットは冷や汗を滲ませて急いだようにその場を離れるのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「────初めまして。私はセスティアと言います、この組織『CGS』改め、『鉄華団』の副団長を任されている者です。お二人の名前を、お聞かせくださいますか」

 

「………クランク・ゼント二尉だ」

 

「アイン・ダルトン、三尉です」

 

 

個室の中、捕虜にされたクランクとアインは両手に手錠をかけられた上で、セスティアと面談していた。か弱い少女一人しかいない、と侮るつもりはない。部屋の片隅には見たこともない無人機が此方への警戒を隠しておらず、部屋の外では何人もの少年兵が警備を続けていた。下手な真似をしたら、即座に鎮圧できるように。

 

────だが、クランクとアインの二人に抵抗する気力はなかった。作戦当初から民間人を巻き込む作戦に乗り気ではなかったクランクは目の前の少女を力ずくで制圧するという考えはなく、アインも自分の尊敬する上官が動かないことを理解して、押し黙っているのだ。

 

 

「お二人に、尋ねたいことがあります。お二人は今回のCGSの襲撃を、クーデリア・藍那・バーンスタインの保護と聞いていたのですね?」

 

「………ああ、そう聞いていた。可能であれば、ここを戦場にしたくはなかった。すまない」

 

「────貴方は、優しい人なのですね」

 

「今からでも遅くはない。彼女を引き渡して欲しい。このまま反発していても、ギャラルホルンは、コーラルは一切手を緩めないだろう。戦力を増やして攻めてきた場合、多くの犠牲者を増やしてしまう」

 

 

この話をしたのが、元CGSの少年兵達相手だったら怒り狂っていただろう。そのまま手を出した人間もいかねない。仲間を殺された彼等の無念や怒りは当たり前のものだ、それを侮辱するように思っても仕方ない。

 

だが、この組織で一番理知的で穏やかなセスティアだからこそ、クランクの純粋な善意を理解できた。しかし、彼女はその申し出に応えない、応えられないのだ。

 

 

「貴方達に、少し残酷な話をしなければなりません」

 

「…………残酷な、話?」

 

「引き渡しても無駄だと思います。彼等の目的は、クーデリアさんの殺害だと思われるからです。これに関しては、証拠もあります」

 

 

切り出された事実に言葉を失う二人に、セスティアはその証拠を淡々と指摘していった。火星独立を支援する武器商人ノブリス・ゴルドンとギャラルホルン火星支部支部長 コーラルの癒着。火星独立の代表とも呼べるクーデリアがギャラルホルンに殺されることで、火星と地球の反発が増し、大きな戦争が引き起こされる可能性を、セスティアは語った。

 

有り得ない、と切り捨てられないほどの信憑性があったからこそ、二人は目に見えて戸惑うしかなかったのだ。

 

 

「そ、そんな!?それだけの理由で、この作戦を!?」

 

「………作戦の内容自体、可笑しかったはずです。本来であれば、彼女を保護するのが目的ならば、CGSへの攻撃を行う必要はないでしょう。むしろ、愚策です。下手な砲撃で、護衛対象を死なせる可能性が高いのですから」

 

「信じられない………コーラルが、ギャラルホルンがそんなことをするなど…………」

 

「────言い切れますか?ギャラルホルンがそんな悪事を企まない、清廉潔白な組織であると」

 

「……………いや、無理だな」

 

 

目を見据えたセスティアの問いに、クランクは諦めたように吐き出した。自分達の所属する組織内がどれだけ腐っているかは、深く理解している。少しでも組織を変えたいと感じていたクランクであったが、今まで何もできなかった。

 

 

「お二人の人柄を見込んで、頼みがあります」

 

「………頼み、とは」

 

「私達に力を貸していただきたい………言い換えれば、仲間として加わって欲しいのです」

 

 

その言葉に、クランクは黙って目を見開き、アインの方が声を荒らげた。というより、驚きのあまり声が漏れたと言うべきか。唖然とするアインを尻目に、クランクは感情を無闇に出せず、問い掛けた。

 

 

「そ、それはつまり………我々に、ギャラルホルンを裏切れと?」

 

「卑怯な言い方をするなら、私達を助けて欲しいのです。今の鉄華団にこそ、貴方達のような人が在るべきと思っています」

 

「…………一つだけ、聞きたい。君達にとって私達は、敵であるギャラルホルンの人間だ。その私を受け入れるほどの理由なのか」

 

「………『鉄華団』には大人がいません。子供しかいないのです」

 

 

その言葉に二人は明らかな動揺を見せた。アインよりも、クランクの方が顕著だったのかもしれない。セスティアはそんな二人から目を離さず、向き合うように言葉を紡ぐ。

 

 

「だからこそ、子供特有の信頼や結束がある────と言えば聞こえがいいですが、それはつまり大人との交流が無いということです。そうなった場合、私達は暴走した際に止まることが出来なくなります。そうなのるのを防ぐ為にも、大人である貴方達の力をお借りしたいのです────お願いします」

 

 

あくまでも、お願いであるとセスティアは語った。そのつもりがないのなら、止めるつもりはないし、ギャラルホルンへの帰還も手伝うと。真摯的に語った少女に、アインは迷いを見せていた。

 

二人きりとなった個室の中で、上官を見た。意を決したようなクランクの姿に息を呑んだアインに、彼がようやく口を開いた。

 

 

「…………アイン」

 

「く、クランク二尉………どうしましたか?」

 

「俺は、彼女の願いに応えようと思う────鉄華団の一人として、彼等を支えようと思っている」

 

 

その言葉に、アインは驚きながらも妙に納得していた。何故、という言葉が出ないのは、ギャラルホルンへの不満が強く、CGSもとい鉄華団への認識が大きく変わった証拠だろう。

 

 

「ギャラルホルンへの原隊復帰は可能だろう………だが、戻ったところで、俺達では何も変えられない。ならばせめて、一人の大人として、彼等の支えとなりたい。…………それから逃げてしまえば、俺は自分を許せないだろう」

 

「………クランク、二尉」

 

「アイン、お前はどうする?」

 

「………自分も、残ります」

 

「いいのか、お前こそ。鉄華団に与するということは、ギャラルホルンの脱走兵として数えられてもおかしくはない。裏切り者になりかねないが、それでいいのか?」

 

「覚悟の上です。自分たちは罪の無い子供たちを、生きることに必死な彼等を殺そうとし、何人も犠牲にしました。ギャラルホルンの腐敗を正せないなら、せめて彼等を守る一助になりたい、と自分は思います」

 

 

そうか、と短く呟くクランクもアインの答えに不満を覚えなかった。それどころか、憑き物が取れたような穏やかな笑みを浮かべていたくらいだ。

 

 

「そうだ。アイン、これからは二尉と呼ばなくていい…………もう既に、ギャラルホルンを抜けた身だからな」

 

「は、はい!クランク二………ではなく、クランクさん!」

 

「もう少し気を抜いてくれた方がいいが…………まぁ、別に構わないか」

 

その後、すぐに戻ってきたセスティアに二人は答えを口にした。セスティアは二人の問いに疑問を覚えること無く、心から受け入れた。

 




クランクとアインの鉄華団加入、これでグレイズ・アインは防がれた(安堵)まぁ、別の犠牲が出るのですけれどね()
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