「美羽様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!」
「落ち着いて七乃さん!?」
「嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
発狂する七乃を抑える包、それでも振りほどこうとする力は強く、美羽の下に駆け付けたい一心であった。そしてそれに感化したのか残存袁術軍も突撃を敢行したのである。
「袁術様を救え!!」
「袁術様を大将軍の下へ!!」
「一人十殺を心得よ!!」
それだけではなかった。見守っていた南陽の民達も突撃する残存袁術軍を支援するべく投石で孫策軍の警備隊、孫策に攻撃するのである。
「よくも袁術様を殺しやがったな!!」
「帰れ孫策軍!! 帰れ!!」
「女と子どもは逃げろ!! 男は武器を取れェ!!」
「石しか無いけど、やったれやったれ!!」
『かーえーれッ!! かーえーれッ!! かーえーれッ!!』
「な、何なのこれは………」
民達からの投石に孫策はたじろぐ。どうしてそこまで袁術に拘るのか、どうして袁術を選ぶのか。その自問自答で動けなかったのだろう。処刑台に立つ孫策を見て包は好機と見た。
「孫伯符ゥゥゥゥゥゥ!!」
包は弩(将和考案のクロスボウ)を構え、狙いを定めて発射した。狙われた孫策は身体を捻った事で即死は避けられたが矢は孫策の左肩に命中しそのまま倒れたのである。
「雪蓮!?」
「南郷、雪蓮を背負え!! このまま後退するぞ!!」
「分かった!!」
周瑜に乞われて南郷は孫策を背負い、警備隊程度の孫策軍は南陽城から後退するのである。
「美羽様!?」
包が処刑台に登り、頚と胴が離れた美羽を見つけて頚を抱き起こす。
「美羽様……申し訳ありません!! 私達にもっと力があればこのような事はぁ………!!」
永遠に目が覚める事はない美羽を見つつ包は大粒の涙を流すのである。そして城の外に退避した孫策達は態勢を建て直して再度南陽城を攻撃しようとした。
しかし、そこへ伝令が駆け込んできた。
「伝令!! 後方より『呂』の旗が見えます!! 他にも『張』と『華』もあります!!」
「呂……呂布か……」
「此処までのようだな……全軍、撤退だ!!」
「冥淋ッ!?」
「構うな南郷。どうやら我々は早まった事をしてしまったようだ……」
そして孫策軍は呂布隊らの追撃で更なる被害を受けつつ揚州へ帰還するのであった。
7日後、将和の隊が南陽に帰還した。そのまま将和は遺体となってしまった美羽と無言の再会をするのである。
「美羽……美羽……美羽ッ!!」
「討たれた頚は糸で縫いました。申し訳ありません将和様!! 我々が力及ばぬ為美羽様を………」
涙を流す将和に同じく涙を流す包はそう言うが将和は首を横に振る。
「いや、包達は良くやった。それに頚をも奪還してくれた。通常だったら身体もその辺に捨てられているから良くやってくれたよ」
「勿体無き言葉です……ですが……」
「………七乃か……」
「はい。あれから部屋に引き籠もりを……」
孫策軍の撤退後、七乃は一人部屋に引き籠もっており誰とも会おうとしなかった。
「分かった……俺がいこう。包達は済まないが南陽周辺の警戒を頼む」
「分かりましたッ」
将和の命に包は頭を下げ、張遼を主力にした警戒隊が南陽周辺を警戒するのであった。その夜、将和は七乃の部屋を訪ねた。
「七乃、俺だ」
『………………………………』
将和は言うが七乃からの返答は無かった。数度、問うたが返答は無かったので将和は扉を開ける。開けると部屋中に酒の匂いがした。床には空になった酒瓶が10数個も転がっており寝具に身体を委ねるように七乃が酒を飲んでいた。
酒しか飲んでいないので風呂にも入ってないし髪はボサボサであり目の下には隈が出来ていた。
「一人で酒盛りか?」
「………飲みます?」
「貰おう」
七乃は酒瓶を持って杯をしようとしたが将和は酒瓶を取り、一気飲みをする。
「ゴクッ……ゴクッ……ゴクッ……プハァ。相変わらず度数は低いな。以前に渡した清酒はどうした?」
「一夜で飲み干しましたよ」
「そうか」
そして将和と七乃、2人だけの酒盛りが始まるが互いに無言だった。杯が無くなれば両者の分を入れて飲み喉を潤す。不意に口を開いたのは七乃だった。
「……美羽様に仕えた時、天命だと思いました。何も知らない美羽様をからかうのは楽しくて……」
「フフッ……確か俺が仕えた時もからかっていたな……」
七乃の言葉に将和は苦笑する。そして気付けば美羽のああいった事、こうやった事を思い出しながらそう2人で語り合っていた。
「紀霊さんの乱の時も美羽様ったら何も分かってなかったんですよ」
「だろうな。あの時の表情は笑えたな」
「あー、そんな事思ってたんですか。酷いですねー」
「酷くはないだろ」
「酷いですよー。あれから将和さんの指導が入って美羽様も自分で考えるようになってきたんですからね」
「良い事じゃねぇか」
「美羽様も段々と君主としての在り方を見つけて……見つけていたのにぃ……」
七乃は再び涙を流し嗚咽を漏らす。その七乃に将和はソッと七乃を抱きしめる。
「済まん七乃……俺が悪いんだ。俺が美羽を勉強させようと……あのままだったら孫策も頚を落とす事はしなかった筈だ」
「それは結果論ですよ、どうなるかは分からないんですから」
「しかしだな……」
「分かってます。美羽様がもうこの世にいないのは分かっているんです。でも……まだ信じたくない心もあるんです」
そう言って七乃は静かに泣き、将和は無言のまま抱きしめるのである。そして漸く泣き止むと七乃は立ち上がる。
「フゥー、泣いて大分スッキリしました。ありがとうございますね将和さん」
「構わんよ。七乃の為なら俺は大抵な事はするからな」
「あら、将和さんでも無理な事はあるんですね?」
「オイオイ、俺は空とかは飛べないぞ」
「アハハハ、確かにそうですね」
笑う七乃であったが不意に顔を赤くする。
「どうした七乃?」
「そ、その……お風呂に入ってなかったので先程抱きしめられたなと……匂いました?」
「七乃の匂いが充満して目茶苦茶良かったぞ」
「もー!? もー将和さんったら!!」
そう言って将和の胸をポカポカと殴る七乃である。
「ハハハ、済まん済まん」
「もー!? 乙女にそう言う事は言ってはいけないですよ!!」
「え、乙女なん?」(真顔)
「もー!?」
将和のからかいに七乃は更にポカポカと胸を殴る。そんなからかっていたが不意に七乃が足を滑らすが将和が咄嗟に抱き抱えたので床にぶつかる事はなかったが、七乃が顔を挙げた時、互いに顔が近かった。ほぼ鼻と鼻が当たる寸前であるが七乃はスゥッと目を瞑る。
七乃の行動に将和もキスをして答えを出し数分後に寝具に2人で倒れたが七乃は顔をまだ赤くしていた。
「そ、その将和さん? せめて湯浴みをしてからでも……」
「俺は問題無い。七乃の充満した匂いを嗅ぎたいし」
「もー!? やっぱり将和さんは変態で……あんッ♪」
そして七乃の部屋から将和が出てきたのは2日後の事であった。出てきた七乃は肌艶々だが腰が抜けていたのでびっこ引くように歩くのであった。
数日後、交州攻略組も帰還してきた。今回は孫策軍の南陽侵攻もあり鬱林郡と蒼梧郡の攻略のみに留まっていた。
「何とか二郡は占領する事が出来ましたぁ。けど美羽様が……」
「いや、隠達はよくやってくれたよ。美羽の喪の期間中は何もしない。向こうが来たら全力で迎撃するけどな」
「分かりましたぁ。それと迎撃の時は私も参加させて下さいね。孫家には手痛い一発をお見舞いしてやりますからね」
隠はそう言っていたが目だけは真剣な表情だったので絶対に連れて行こうと思った将和である。なお、孫家憎しは隠の他にも包だったりする。
(史実、原作と孫呉に尽くした人間が孫呉を嫌うとは……世は何が起きるか分からんな)
そう思う将和であった。そして改めて皆を集めて軍儀を開く。
「皆にも通達しているが……美羽の喪の期間は何もしない。まぁ向こうから仕掛けてきたら全力で対処するがな」
「恋……頑張る」
「そうやなぁ。美羽っちの為にも頑張らんとなぁ」
「しかしだ三好将軍」
「どうした華雄?」
「我々は袁術軍で良いのか? 失礼なのは承知で尋ねるが美羽様という長はもういない。我々は誰を主君にしたら良いのだ?」
『……………………』
華雄の言葉は的確であり誰も答えられなかった。これまでは美羽という袁家が主君であった。しかし、美羽が討たれ、自分達はその残存戦力と他国からは見られているのだ。
「あ、それなら大丈夫ですよ」
『へっ?』
そう言ったのは七乃だった。
「これからは将和さんを主君に三好家を立ち上げたら良いですから」
「ブッ」
「あー、それなら安心やな。お菊ちゃん36号の開発に取り掛かれそうやな」
「真桜、減給な」
「ゲェッ!?」
将和の言葉に真桜は横山顔の曹操が関羽に出会ったかのような表情をする。
「それは兎も角……七乃、どういう事だ?」
「そういう事ですよ将和さん。美羽様の後を継げるのは将和さんしかいません」
「確かにそうですねぇ。美羽様が決断した政策の半分は将和が具申したモノですからねぇ」
「恋は将和を押す」
「恋殿がそう言うならねねも将和殿を押しますぞ!!」
「それは軍師としてどうなのかなぁねね……」
ねねの言葉に溜め息を吐く包である。
「俺は旦那に付いていく。ただそれだけだ」
「俺もですね」
「旦那、オレもだぞ」
「王双」
「というよりもオレはまだ記憶を取り戻してないから付いていくのは必然だな」
「でしょうね」
皆がやいのやいの話す様に将和は人知れず溜め息を吐いた。
(どうも俺は権力の座から逃げられんというわけか……これも于吉達の指図なんかねぇ……)
かつて日本の全てを握っていた男は苦笑する。
「取り敢えず落ち着け。そうだな、茶でも飲んで喉を潤そう」
将和はそう言って軍儀を中座して茶を飲んでから再度軍儀を始める。
「取り敢えずは皆の気持ちは分かった。それで本当に俺で良いんだな?」
『ッ』
将和の言葉に全員が無言で頷く。ならば将和も覚悟を決めた。
「……分かった。美羽の後を俺が継ごう。これより荊州は俺ーー三好家の領地とする!!」
その言葉に全員が頭を下げるのであった。そして荊州に次々と立札が立てられるのである。
「お、三好の旦那が袁術様の後を継いだのか」
「袁術様も可哀想になぁ……」
「おのれ孫家も我々の可愛い袁術様を……」
「お前は後で警邏隊に突き出すわ」
「三好の旦那なら上手くやってくれるだろ」
「んだんだ」
荊州の民達はそう言いながら新しい君主を迎えるのである。そして揚州の孫家では将和が荊州を継いだ事に悩ませていた。
「まさか三好が荊州を手にするとはな……」
「でもこれでより一層に荊州には手を出せなくなったわね」
「そうかな?」
「どういう事だ南郷?」
「暫くは無理かもしれないけど、荊州が欲しいなら策はあるよ」
「どんな策なの?」
「風前の灯である徐州かな」
南郷はそう言うのであった。
「よし、こんなもんかな」
「それは何ですかぁ?」
「軍の編成表だな」
政務をしていた将和は隠にそう言う。軍は以下の通りであった。
三好軍
総大将 三好将和
軍師 陸遜(隠)
中軍師 魯粛(包)
直卒隊
隊長 趙雲(星)
副隊長 黄忠(紫苑)
工作隊
隊長 李典(真桜)
第一遊撃機動師団
師団長 呂布(恋)
軍師 陳宮(音々音)
即応機動師団
師団長 廖化(泠牙)
第一師団
師団長 張郃(皇甫嵩 楼杏)
第二師団
師団長 張遼(霞)
第三師団
師団長 華雄(猫)
第四師団
師団長 廬植(風鈴)
第五師団
師団長 王平(狼)
文官側
参謀長兼諜報隊 張勲(七乃)
参謀兼外交官 鄧芝(楼嶺)
参謀 袁渙
参謀 楊弘
「私を軍師ですか? 宜しいんですか将和様?」
「宜しいも何も軍師はお前しかいないよ隠」
「……ありがとうございます将和様。隠、精一杯頑張りますね」
将和の言葉に隠は微笑むのであった。そして北の方では曹操と袁紹の争いは袁紹が官渡の戦いで敗北しそのまま行方を眩ますのである。曹操はそのまま冀州を占領し冀州の人的・物的資源を大きく保有するのであった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(_ _)m